【Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 01】 之 貫紀/ ttl KADOKAWA

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これぞインテリ式ダンジョン攻略!!!

ダンジョンができて3年。ダンジョン攻略が当たり前になった世界で、
社畜として生活していた芳村が、不意に訪れた不幸?な偶然で世界ランキング1位にランクイン!
のんびり生活に憧れて退職し、ダンジョンに潜ることにはしたものの、
手に入れてしまった未知のスキルに振り回されて、ダンジョン攻略最前線にかかわることに。スローライフの明日はどっちだ――!?

これまた、表紙絵の絵柄が昭和だ。いやこれ、ガチでスニーカー文庫とかの創刊あたりで見かけたようなデザインですよ? そのわりに口絵とか見ても古臭い感じがなく、今風の造形も見受けられるあたりいい所取りしつつ、という感じなのだろうか。イラストレーターの人の他の挿絵作品などを見ても、特別昭和風とか平成初期風、という様子でもなかったので意図的か制作側からの指示あって、という所なんだろうか。

作品の世界は、突然世界中にダンジョンが現れ始めた現代の地球。異世界と繋がっているのでは、と仮説が色々と持ち上がっているのだけれど、各地に出来たダンジョン内部にはモンスターが徘徊しているものの、今の所異世界の知性ある存在との接触は出来ていなくて、ダンジョン内の資源や「スキル」と呼ばれるダンジョン内でモンスターを倒すことで稀に獲得できる能力が付与されるオーブを目的に、各国それぞれにダンジョンを探索するための施策を行っている状況。
大体、探索者の人選も含めて国ががっつりと管理している、というのは現実的だわなあ。異世界という外部からの政治介入がない以上、ダンジョンという異常に対しては地球上の国家がそれぞれに対応していかないといけないわけで。そうそう現代で新たなフロンティア、という具合に無差別に民間の参入、市民個人個人が無差別にダンジョン探索を始める、というわけにはいかないよなあ。

とまあ、そんなわりと窮屈、というかしっかりとダンジョンが管理されている中で、突然発生したダンジョンにひっかかり、なんやかんやあって特別なスキルを獲得してしまったのが、ブラック企業で研究職として働いていた主人公。そう、武器をぶんぶん振り回して喜ぶタイプではなくて、モンスターの死骸をばらして体構造を調べたり、ダンジョンの壁を叩いて硬度やら組成やらを確かめて嬉々とするタイプの研究者である。
案の定、ダンジョンをどんどん攻略していったり、強力なモンスターを倒したり、名を売って英雄になる、なんて所業にはとんと興味を示さずに、自分の中に生まれたスキルとダンジョン内の未知の検証に明け暮れだすのである。ブラック企業の悲惨な環境から逃れても、自分からブラックな仕事環境を自前で用意してしまうタイプのダメな人でもある。でも、好きこそものの上手なれ、というわけで、趣味に明け暮れてるのはもう仕事じゃなくて遊びの範疇なんですよね。
ただ、取り扱っているものが世界を混沌に導いているものの最先端も最先端なものですから、そこから未知を検証して新たな情報を獲得したり、今まで不可能だったことを可能にしてしまったりすると、そこから金銭という利益が生じてしまうのですね。
主人公が研究馬鹿というのを嫌ほど知っている後輩の三好ちゃん、先輩の身に起こった事実を知り彼がダンジョンで色々と調べ倒そうとしているのを知った途端に、エージェントやります、と手を上げて彼が発見したり生み出すだろうあれこれを管理し、雑務庶務事務を引き受け、彼が好きにやりたいことをやれる環境を整えるように動き回りだしたのは、先見の明があるというかなんというか。
彼女が色々と場とか環境とか整えてくれなかったら、主人公も言うほど何も出来なかっただろうし、よい後輩を持ったものである。
まあ、その報酬と来たら一般人の人生を百回繰り返しても余るだろう金を稼ぐことになってしまうのですけど。桁が個人の扱う規模じゃねえw
そして、それを惜しげもなく検証と研究に費やしていく、研究バカw
そりゃね、金は好きなことに費やすのが一番の贅沢なんだから、彼らとしては思う存分贅沢していると言えるのかもしれないけど、金の魔力にまったく囚われていない、というのは凄いなあ、と。普通はこれだけ、ポンと数十億単位稼いじゃったら頭おかしくなるもので、三好ちゃんも眼がぐるぐるしてるんだけれど、芳村さんてば予算気にせず検証できるぞー、と喜んでるくらいで金に対する執着とか全然ないもんなあ。三好ちゃんも、金銭感覚若干おかしくなってますけど金のためではなく先輩のため、という観点は一貫してブレないので、その辺は安心できますし。良いコンビなんだよなあ。

ただ、彼らが扱っている研究の内容と来たら、これまでダンジョン関係の蓄積されてきた情報を無に帰して、ダンジョン攻略の様相を根底から変えてしまいかねないものなだけに、価値が数十億どころじゃあないんですよね。兆単位まで行ってもおかしくないんじゃないだろうか。
それだけ重要な鍵を握っているとなると、彼らの身辺が危なくなってくるわけで。いやこれ、自分たちの現状認識、どれだけ危ない立ち位置に立っているのか、全然気づいていないんじゃないだろうか。彼らなりに危険は感じているだろうけど、実際の危険度と認識の隔たりが凄いことになってそう。
ぶっちゃけ、ほぼ身元自体は特定されてるのだから、外国の諜報機関にサクッと拉致られても不思議じゃなさそうで、怖いのなんの。まだ今の所、芳村さんたちが何を握っているのか、わかっていないのもあって手を出しかねているようにも見えるのだけれど、ヤバい所だったらとりあえずとっ捕まえて吐かせりゃいいじゃないか、と平気で乱暴な選択を取りそうでひたすらこわい。
これ、本当に大丈夫なんだろうか。
今の所、ダンジョンランカーの上位との取引や、インドの大富豪?らしき人物との縁もあって、彼らの身の安全を保証してくれそうな勢力なども現れているし、地元の日本の各機関も彼らのことは重要視しているので、簡単に拉致られたり、ということはもうなくなっているとは思うのだけれど。

しかしこれ、本当にダンジョン攻略モノとは一線を画するんですよね。なにしろ、まだ芳村さんはダンジョンは一階しか入ってないし、倒しているのはスライムばかり。
それで、これだけのムーブメントを起こして世界中を騒然とさせているのだから、そりゃあ面白い。

なんかうんちくとか多いという話だったのだけれど、そうだったっけ? わりと薀蓄語りなんぞは好きな方なので、気にならないくらいすんなりと頭に入ってしまったのかもしれない。
芳村たちがもたらそうとしているパラダイムシフトに対して、果たして世界はどのように転がり、どんな反応が起こっていくのか。まだはじまったばかりで、これからの盛り上がりを想像してワクワクしています。