【Fate/Requiem 1.星巡る少年】 星空 めてお/NOCO TYPE-MOON BOOKS

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―――昔、大きな戦争があった。
戦争は終わり、世界は平和になった。今では誰もが“聖杯”を持ち、運命の示すサーヴァントを召喚する。
ただ一人の少女、宇津見エリセだけがそれを持たない。
少女は、世界で最後に召喚されたサーヴァントの少年と出会う。
だが彼女はまだ、自分の運命を知らない。

今度FGOでコラボするということで、そう言えば買ったあと読んでなかったなあ、と手にとって見ました。
……も、紅葉ぃぃぃ!!??
ちょっ、なんか紅葉さんが、鬼女紅葉がどえらい姿になってるんですけど!? 度肝抜かれましたわ、エジソンがライオン丸だったのよりも驚いたわ!
ほんと、なんでダイナソーになってるの!? 鬼女紅葉の伝説に恐竜とか関係するような話はなかったと思うんだけど。しばらく呆気にとられて紅葉ことモミさんばかり注視してしまって気もそぞろになってしまった。見てくれ恐竜だし、クラスはバーサーカーだし、という理性も知性も欠片もなさそうな待遇なのに、なんでか作中でも屈指の常識人で温厚で優しい人、人? 恐竜なんですよね。ちなみに草食恐竜じゃなくて、二足歩行で人間一口で上半身くらい丸かじりでモギ喰っちゃえるくらい凶暴そうな肉食恐竜です。どこに狂化が掛かってるんだろう。見てくれ?

というわけで、誰しもが聖杯を持ち、サーヴァントを召喚して共連れている都市秋葉原。SF作品めいた近未来都市として発展したその都市は、果たして本来の地球の歴史と地続きの未来なのか、と疑ってしまうくらい特異な発展を遂げている。方向性としてはFateシリーズの派生作品の中でもFate/EXTRAの側の方向性なのだろう。聖杯戦争の結果として世界がこういう形になってしまった、という事だけれど、それにしてもここまで変わってくるとブレードランナーとかマルドゥック・スクランブルなどの種類のSF作品をFateという題材でやってみました、と考える方がいいのかもしれない。
主人公のエリセは、この誰しもが聖杯を持つ都市で数少ない持たざるもの。持てなかった者。サーヴァントを連れられないものとして阻害されながら、同時にサーヴァントを殺す者として死神として恐れられている。ほかからハズレ、孤独にたゆたいながらもこの都市にしがみついている彼女が何に拘っているのか、どんな信念を有しているのかは定かではない。結構、自問自答しながら自分の心境のようなものは語ってくれるのだけれど、その内容は取り留めもなくはっきりとしたものではなく、曖昧模糊とした心情を自分でも定められないままそのまま垂れ流しにしているようなものなので、いまいち彼女の方向性がわからないんですよね。彼女自身わかっていないのだろうけれど、それならそれで構わないのですけれど、そんな彼女の曖昧な心情に染め上げられたように物語そのものの基軸、方向性のようなものもフワフワとして何を描きたいのか、というのがよくわからないままぼんやりと話は進んでいってしまう。
いや、都市を大混乱に陥れるテロリストみたいなのが居たり、エリセの親族で頭があがらない人が何らかの目的をもって動いていたりするので何がしかの展開が転がっているのは確かなのだけれど、それを見定めるべき足元が定まらないというか、踏ん張ろうにも足元がふわふわしていて落ち着いて見極められないというか。
偶然なのか必然なのか、出会って一緒に過ごすことになった記憶喪失のサーヴァントの少年、いや少年というよりも幼い男の子のエリセの関係も、またよくわからないんですよね。エリセは一緒に居たい、離れがたいという心持ちはあるみたいなんだけれど、この男の子も存在自体がふわふわしていて掴みどころがなく何を考えているかわからない。赤ん坊がニコニコ笑っていても機嫌が良さそうというのが伝わってくるだけで、具体的に何を考えているのかわからない、というタイプの掴みどころのなさ、なんである。
最後、どうしてエリセと契約を結ぶことになったのかも唐突でよくわからなかったし、どうしてエリセが突然彼の真名を知ったのかもわからない。というか、英霊ってそこまでアリなの? という正体だし、なるほど特徴的というか特異的な正体で人類史における彼の役割からも、この男の子の持つだろう指針というものは、大きな物語として動かすに十分な背景を持っているんだろうけど、今の段階だとサッパリだもんな。

……ともかく、全体的にぼんやりとしていてキャラの心情にしてもストーリーの方向性にしても、作品のテーマにしても曖昧模糊として何を描こうとしているのかよくわからない、というのが本当のところ。完全に「感性」型の作品と言えるのだろう。考えるな感じろ!の世界である。具体的な局所的な理解ではなく、全体をぼんやりと把握して雰囲気を以て感じ取り、なんとなく受け止めて、言葉にならない領域で包み込んでダイレクトに吸収しろ、てなものなのだろう。そもそも、作者の人のこれまで手掛けた作品を見ると、そういうタイプの作家さんなのだというのがわかるじゃないか。
【Forest】とか、内容はさっぱり覚えていないけれど、よくわからなかった!というのだけはよく覚えているし、あの独特な雰囲気だけは未だに忘れていないもの。