ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

【ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ】 滝本竜彦 角川文庫

 ある日、謎のチェーンソー怪人と戦う美少女と遭遇してしまった主人公。無気力に過ぎる日々に飽き飽きとしていた彼は、退屈な日常から脱するために美少女を手助けしようと考えるんだけど、手助けというより邪魔? ありゃま。でもしつこく手助けのようなお邪魔のようなことをするうちに…………ってな感じで話は進んでいく。
 滝本竜彦って今まで未読だったんですけど、想像してたイメージと全然違いましたね。もっとギラギラして尖り捲くった他人を寄せ付けないような話を書くのかと勝手に思い込んでいました。舞城とか佐藤友哉とかみたいに。
 ところがどうしてどうして。近年稀に見るくらいに真っ直ぐな作風の人じゃありませんか。尤も、真っ直ぐとは言っても、ジャンパーのポケットに両手を突っ込んでヒョコヒョコと雑踏を潜り抜けるような肩に力の入っていない真っ直ぐサではありますが。それでも妙に捻くれたところもなく信念に凝り固まった所も無く皮肉めいた所も無く、思いのほか素直で自然体な内容。
 主人公の考え方とかは今となってはちょいと使い古された観もあるんですが、この本が書かれたのがそもそもそのちょいと昔になるわけですし、この手の考え方をする登場人物が出てくる作品がワラワラと現れる、その先駆的牽引的作品なわけですから使い古された、なんて言葉は筋違い。いや、それどころか嫌味がなくてすっきりと書かれてるこの「根がティハッピー・チェーンソーエッジ」は同傾向の作品に比べてスッと懐にまで入り込むような読みやすさがあるし、清涼感みたいなものさえ感じた。
 濁りがないんですよ、濁りが。爽やかですらある。うん、面白かった。