ダビデの心臓

【ダビデの心臓】  スズキヒサシ/尾崎弘宜  電撃文庫

 それは、どことなく不気味な色を帯びた現実味のない物語だった。
 ──ソロモンの血を引く<ダビデの心臓>を持つ者は、一週間以内に同じ<ダビデの心臓>を持つ者の心臓を喰わなければならない──
 西洋人形のようなミラという女の子はそう告げると、日本刀と鋭い爪が付いた鉄の手袋を僕に渡したのだった。この時から世界は僕の敵になった──。現代に甦る異端の神話、登場!



 てっきり新人の作品かと思ってたら『正しい怪異の祓い方』の人だった。それでも、あらすじやネタが魅力的だったので、期待半分不安半分で読み出したのですが…………。
 うーん。
 このネタ、物凄く面白いんですよ。上のあらすじ以上に本編での凄惨な展開、少数間での争いかと思えば、老若男女問わずの殆ど世界規模のバトルロイヤルだし、容赦なく無慈悲に人は死ぬし。人間の心臓を喰らうという禁忌と自分が悪魔となってしまうかの究極の二択を突きつけられたり、と。一つ一つの要素はとても面白い。これはダークな生存闘争物語として良作となる要素をこれでもかと持っている。なのに、なんかもう台無しだ。なんでこんなに希薄な作品になっちゃってるんだろう。全然登場人物の悲痛な叫びが伝わってこない。悪夢のような悲惨さが伝わってこない。絶望も苦悩も恐怖も諦めも悲しみも、ちゃんと描いてあるのに伝わってこない。何よりも生々しい感情の発露をぶつけてこないといけないはずのこんな作品で、ここまで情感を感じられなかったらどうしようもないんじゃないのか? それともこっちの受け手の問題?
 繰り返して言いますけど、これ絶対面白くなれるはずなんですよ。舞台設定だってストーリー展開だって、上手く仕立ててる。それなのに、なんでこんな希薄になっちゃうのかなあ。勿体無くて身もだえしそうです。ああ、もったいない!!