【吉永さん家のガーゴイル 4】 田口仙年堂/日向悠二  ファミ通文庫

 …………(涙)
 ハートフル・オブ・ハートフル。ファミ通文庫はこの作家を見つけたことを誇るべきだ。もう名実ともにレーベルの看板作品と言ってもいいと思う。とてもとても優しいお話。
 今回は世界最高の錬金術師にして、謎の骨董店『兎轉舎』店主のお姉さん高原イヨが、ガーゴイルを造った当時の過去のお話。謎のアイテム「記憶発掘装置」で眠ったまま起きなくなってしまったイヨを起こすために、ガーくんと双葉、和己の兄妹がイヨの意識内に展開されている過去へと向かったら、そこには高原と名乗る褌男と双葉たちをイヨの意識内に送り込んだ錬金術師東宮天弥の祖父らしき青年がガーゴイルを作っていて…………。
 ガーくんが製作されたのは昭和初期。イヨ姉さんの外見はどう見ても二十代。この話を読むまでは何百年も生きている謎の愉快な錬金術師のおねーさんという印象だったのですが。読後のこの切ないともなんとも表現しがたい感傷は、読んでもらわないと分からないでしょう。ただ、この人がただの能天気なだけの人ではなく、とても深みのある大きな人なんだとひしひしと感じました。よく何十年も何百年も生きている人間というキャラクターは登場しますけど、これほど年月を経たという重さと儚さと強さを感じさせるキャラクターを私は今、ちょっと思い浮かべられません。
 ガーくんを作るという夢に情熱を傾けた二人の男、そんな彼らを傍から見守り、支えたお姉さん。本編でそんな三人の理想と現実の狭間で苦悩しながら、それでも真っ直ぐに夢を適えるために笑顔で頑張った、そんな熱い思いの滾る青春をこの上なく素敵に描いていただけに、夢からの帰り道にイヨが飄々と語る話が哀しくて切なくて、何よりその話を笑って話すお姉さんが本当に切なくて。兎轉舎という何だか良く分からない号に込められていた思いにまた、涙を誘われました。
 イヨさん、お騒がせで突拍子もない人物でお話を外から引っ掻き回し、また上手く纏めてくれるお助けキャラみたいに今まで受け止めていましたけど、今回のでとてもとても好きな、敬意すら覚えるキャラになりました。
 老若男女を問わずに、この素晴らしい作品はたくさんの人に読んで欲しい。

 巻頭のカラー漫画、本編とは全然関係ないんだけど(双葉の服装だけ?)すっげー面白かった。読み返すたびに、笑う、笑う、笑う、笑う。腹いてぇ(笑) 買わない人も本屋で立ち読み推奨。ちうか、梨々ちゃんってあんな性格だったか?