転生学園幻蒼録】 天羽沙夜/岩崎美奈子  電撃ゲーム文庫

 ゲームのノベライズが成功するケースとして、主に二つの要素が見受けられると思う。
 一つはストーリー展開の裁量自由度、もう一つは1巻完結に拘らない文章サイズの余裕。
 特にこの両者に制限が加えられると、まず失敗する。ろくなものが出来ない。幾ら腕のいい作家といえど、ボリュームのあるゲームのストーリをなぞらされながら、僅か一冊に凝縮しようとすると色々なところに無理が出てくる。大雑把に言うと、あらすじの上っ面を撫でただけの、内容の薄っぺらな詰まらない話しか出来てこないのだ。
 榊涼介氏の【ガンパレードマーチ】や冲方丁氏の【カオスレギオン】など、ゲームノベライズの成功例を見ると、そこらへん良く分かると思う。この二つは、上記した要素にかなりの自由度を与えられている。逆に言うと、そのカオスレギオンだって、上記の制約があった一巻の評価はかなり微妙だ。

 この転生学園幻蒼録もまた、この制約さえなければかなり面白いものになれたんではなかろうか。
 ゲーム自体もプレイしたことが無く、著者である天羽 沙夜氏も初読みなのだけれど、前半は比較的楽しく読み進めることが出来ていた。キャラ同士の掛け合いもなかなか軽快で淀みが無く、悪くは無かったのだけど、中盤らへんから話が駆け足にカッ飛び初めて話の展開も流れも人物同士の関係や思惑やらも、大鉈を振るわれてしまって端折られる端折られる。結局、後ろのほうはあらすじをなぞるかのように味気なく終わってしまった。明らかに書かなければいけない内容とサイズが合ってない感じ。
 前半がなかなか読めていただけに、どうにも勿体無いという思いばかりが残ってます。多分この天羽さんは、自由にやらせたらかなりいいもの書けるんじゃないでしょうか。少なくとも、元からあるキャラや世界観を自分のものにして自在に動かす技量はあったと思う。
 こういう書かせ方は上手くないと思うんだけどなあ。作家にもあまりよくないし、ゲームの売り上げにも良くないと思う。実のところ、前半読んでる間はこのゲームって結構面白そうかも、と購入への興味がちょっと湧いてたんだけど、後半のグダグダで一気にその気も萎えてしまった。繰り返すけど、こういう書かせ方は勿体無いと思うんだけどね。