【閉鎖師ユウと黄昏恋歌】 著:扇智史  ファミ通文庫

 偶にこういう作品をポンと出してくるから、エンターブレインは侮れないんですよ。値段高いけど。
 説明台詞への入り方とかが序盤まだ拙い気もしますが、この全編に跨るまさに黄昏といった雰囲気の醸成は秀逸。こういったタイプの作風は電撃文庫に多いのですが(富士見ではまず見ない)、エンターブレインでも偶に紛れ込んでいるんですよね。『BLOODLINK』なんかが印象として近いかも。
 ただ、あれよりも前半ライトな、良くある非日常が普通の中に紛れ込んできて、という展開とともに、二人居るヒロインの片割れは巷によくあるボーイッシュな元気少女、もう片方も不思議電波少女と見せかけつつちゃんと一般常識を持っていると幾度も強調する事で、全然普通――日常に危うさを感じさせなかっただけに、あの予想通りに進行しつつ、あっさりと予想から逸脱してしまった展開は絶句しました。
 50ページにも渡るエピローグでの何処か淡々とすらしている内面描写といい、毎月大量に生産されるライトノベルの中にあって一種の無視できない鋭利さを感じさせる小説でした。
 第5回えんため大賞編集部特別賞受賞作ということは新人さんですかね。こりゃまた買いの人が増えてしまったか。


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