電波的な彼女
電波的な彼女】 片山憲太郎/山本ヤマト スーパーダッシュ文庫


あん? おや? え……これ、新人の作品? 第三回新人賞の佳作受賞作か。新人だわ。
えらくまあ……なんというか、きっちりと仕上げてるというか、粗らしい粗が見当たらないというか。少なくとも私が気になるような類の粗は見当たらなかったように思う。
えー? なんか読んだあとにジワジワ来たぞ。これってもしかして凄く面白いんじゃないの? いや、興奮するような面白さじゃないんだけど、なんかこう、スナック菓子かと思って食べたらしっかりと地に足のついた晩餐をご馳走になったような気分。なんちゅうか、予想を裏切られた。てっきりドタバタラブコメディだと思ってた。全然違うし。
あいやー、なんかジワジワきたわ、ほんとに。上手いよ、これ普通に上手い。えー、なんでこれ佳作なの? 話が派手じゃないから? キャランとした女の子が出てこないから? でも派手じゃないけど地味でもないぞ、これ。妙に味があるというか、気づくと作中に没頭されられてるような吸引力が文章にある。あっさりしてるようで歯ごたえがあった。……むう、なんか佳作が似合うかも。

事件の犯人はわりとすぐに分かる。難しくもなんともない。ただ平易であると思えば気になるほどでもない。妹はなんのために出たんだ? といわれるかもしれないけど、あれは雨の家庭環境を端的かつ明朗に表現するには必要なキャラだったと思われる。
なんか作品全体に無理してるところがない。実に過不足なく書くべきことを必要なだけ書けている。なんか媚びてくれなくて素っ気無い気すらするけど、こういう風に感じる作品って結構少なくて、大概もうちょっとここらへん詳しく書いて欲しい、とか、ここらへん肩力入りすぎ、とかもうちょっとこの人についてじっくり掘り下げて見せて欲しかったとか、物足りなさを感じてしまうことが多いだけに、いいかもと思わされた。これ新人かー。

キャラクターも電波的な彼女というタイトルを考えるとキャラキャラしてないな。堕花雨も電波というわりにはキワモノでもないし。他にもこれといってありがちな人はいないようないるような。堕花妹がそうか?
あと、肉体が傷つく描写が非常に痛々しい。読んでてこっちが痛くなるような描写はこれまた珍しいかもしれない。あっ、ラストらへんなんか「ひぐらしのなく頃に」を思わず思い浮かべてしまったかも。思わず本、顔から遠ざけたのは内緒だ。結構本気で怖かった。痛めつけ方とか怯える反応とかが生々しくて、ゾクっときたのは間違いない。うん、そう考えるとやはり表現力・情景描写力かなりのものかも。
うむ。堅実な実力者あらわる、みたいな印象だ。
銀盤といい現代魔法といい、微妙に侮れんな、ダッシュ文庫。