【鬼神新選供‥豕篇】  著:出海まこと  電撃文庫

 目次に目を通さずに読み始めてしまったので、突然157ページから紀行文がはじまったときには本気で面食らいました。もう誰も彼もが言及しているだろうけど、これは言わずにはおれません。
 短いっ!!
 ただでさえ薄いのに小説部が三分の二ぐらいしかないというのはもう遣る瀬無いです。物足りない、お腹空いた。

 幕末から明治にくだった時代の新撰組もの。主役が永倉新八というのはやはり珍しいんですが、蓮っ葉な江戸っ子の雰囲気だ良く出てて、あまり新撰組の中では印象の無かった新八、現金ですけどかなり好きになりました。丁度大河ドラマの方でも山口が永倉役でイイ味を出しているのも重なったかもしれません。
 ただ、こちらの新八がもう三十越えて凄く童顔なものだから子供みたいにも見られる、というキャラクターなのに対し、大河の方はまだ二十代のくせに山口のおっさん顔というギャップがまた……。大河の方、あれ初登場時まだ十代だったんですよね。あまりに無謀なのを作ってる側も判ってたのか、近藤か土方かどっちかか忘れましたけど「お前より年下だぞ」「ええ!?」みたいな演出が(笑)
 さて、幕末の戦いで死んだはずの土方や沖田などの新撰組隊士が甦り、新八と敵対する事になるのですが、山田風太郎作品と同じで、ある意味これ誰もが一度は夢想する状況なんですよね。新撰組の隊士同士で真剣に殺しあえば誰が一番強いのか?
 幕末だとどうしても斬り合いの実力者というのは新撰組に集約してしまいますからね。志士は切った張ったとはまた別の立場だし、どうしても剣の強さへのギラギラとしたものに焦点を当てると、新撰組内部に収まってしまう。けれど、新撰組同士で殺しあうというわけには……いや、結構あるか(汗
 二巻でついに斎藤一も登場。ただ、斎藤一というとるろうに剣心のイメージがとてつもなく強いので、まだだいぶ違和感が。出てきたばっかりですし。
 そういえば大河のオダギリジョーもこんな雰囲気だな。

 チャンバラシーンは極めて秀逸です。津本陽を思わせる迫真と理屈の利いた撃剣シーンは見応えタップリ。新撰組の有名な集団戦術も余すところ無く描かれています。しかも、現実的当然さ(刀は折れる曲がる、多対一では敵わない等々)と同時にイメージを湧き立たせる演出に秀でた魅せる文章で。
 以前からですが、この出海さん、アクション系の動的シーン描写に関しては本当に上手いですわ。トップクラスに位置付けてると私は思います。

 いや、早く続き出してよ、ほんとに。川上稔や冲方みたくあんな分厚く書けって云わないから。



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