屍の王(角川ホラー文庫)
牧野修〔著〕


噂に聞いていたホラーの傑作『屍の王』が角川ホラー文庫で復刊されたというので、なにごとも試しだと買ってみたわけですが。
正直、さっぱりでした。うーん、やはりホラーは合わないのかな。話の筋にも目新しさを何も感じなかったし、三部に至っては元となった神話、モチーフにしたというよりそのままどころか劣化させたような感じで興ざめさせられてしまったし。
グロテスクな描写や恐怖を湧き立たせる描写に関しても、やはり私の感性から外れているのか気持ち悪いとも怖いとも何も感じるものがなかった。ゾッとするような表現力なら甲田氏の『Missing』の方がよほど怖かった。どうもただ状況を描写しているだけで、怖さを引き立たせるような演出に欠けているというかなんというか。淡々とし過ぎてて味気ない感じ。
なにより興ざめさせられてしまったのが、電話をかけてくる人物。これが謎と恐怖の根幹を握る存在としてはあまりに喋り方やら語る内容が軽薄で、多分これで一気に醒めてしまったんだと思う。どうにもニヤニヤと笑ってる嫌らしげな底の浅そうな人間を想像してしまって、こういう存在には必須であって欲しい得たいの知れなさ、未知ゆえの重苦しさがまるで感じられなくて参った。どうもなあ。
如何せん、やはり歯応えが薄いのよ。宮部みゆきさん(訂正:失礼、小野不由美さんでした)の『屍鬼』までとは言わないけど、この手の話にはそれなりの腹に溜まるような厚みが欲しい。なんとも物足りませんでした。パサパサ。