天槍の下のバシレイス 1.まれびとの棺(上)】  伊都工平/瑚澄遊智  電撃文庫

 突如世界中に出現した『塔』と巨大生物群により、日本もまた東西に分断されていた。
1960年代まで文明の後退した西日本東部辺境・南兵庫で、川中島敦樹は高校に通いつつ防災団の一員として活動する。同級生でもある仲間たちと異形の敵から街を守り、やがて来る人類再起の日を待ちながら──。
『第61魔法分隊』の伊都工平が贈る待望の新シリーズ、遂にスタート



最近、わりと良く見かけるようになった対異生物戦争もの。
この手の戦争ものって、EGコンバットやガンパレードマーチ、ディバインフロントなどを見ても分かるように、完全に意志の疎通不可能な(ガンパレは微妙に違うが)異種生命体との人類生存戦争なんで、なんか通常の戦争ものより素直に燃えられるんですよね。負ければ絶滅に繋がるという切迫感や絶望感もあるわけで。それでいて正義の戦争かというとそうではなくて、スターシップトルーパーズが何気に戦争反対のメッセージの篭った作品であるように、生き残ろうとあがいているはずの人間側も極端な右傾化に走ったり派閥抗争が繰り広げられていたりと、すんなりとは収まっていないわけで。そんな時代を背景に複雑な思いを抱きながらそれでも生き残るために最前線で戦う少年少女を描くというテーマはやはり魅力的なコンテンツなんだなーと再認識。それだけ描くのが難しいタイプだとは思うんだけど、こういうのを手がける作家って結構みんな上手いこと料理してるんですよね。
んで、このバシレイスも実に良かった。前作『第61魔法分隊』がどうにも評価が難しい作品で、はっきり言ってしまうと全然面白くもない話だったんですけど、そのまま続きを読むのを放棄するにはどうにも気に掛かる作品で。結局全5巻揃えてしまったという無視してしまうには何か引っかかるという不可解なタイプの作品だったんですよね。
微妙に、新作であるこのバシレイスにもあの不可解な感触をどことなく感じるわけですが、前作と違って今回はなんか詰まらんなーと思ってしまうような事もなく、無視できなかったなんらかの要素を大幅に引き出しためっちゃ面白い作品になったんではないでしょうか。
舞台が現代日本というところで、主人公たちを取り巻く状況や情勢が分かりやすかったからかもしれません。前作だとどうも権力構図やらが実感しきれないところがありましたから。
あと、南兵庫というところも。地元なんで、地名が並ぶだけでだいたい頭に浮かぶんですよね、戦況とか。

最初の二話まで、ちょっと登場人物のキャラクターが地味かなー、と思ってたんですが、三話で一気に引っくり返りました。伊都さんってこんなの書けたのね。完全に日常パートの話だったんだけど、いやもう笑い転げました。腹痛い。
キャラクターの個性に寄っかかるんじゃなくて、上手いことそれぞれのキャラを生かしながら話の組み立てで見せるタイプの実に見事なコメディ。この話一話で、登場人物たちの魅力を一気に引き出したんじゃなかろうか。少なくとも、私はこれでこの話に出てくる連中、一気に好きになりました。楽しい楽しい。
伊都さんの得意技とも呼べる兵器ギミックも連装刀や多脚戦車など味のあるものが満載で、いやはや楽しみなシリーズが始まりましたわ。MY大ヒット。
あと、あの主人公の敦樹って名前、紛らわしいよ。途中まで男かと思ってたw 言葉遣いも男だったし。