【アヤカシ・ヴァリエイション】 三雲岳斗/沙汰 LINE文庫

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美貌の青年、真継晴の周囲で繰り返し起きる悲惨な事故。
それは晴の祖父、座倉統十郎が持つ骨董品「匣」の相続を争う、親族たちの謀略だった。
命を狙われた晴の護衛として雇われたのは、横浜山手に店を構えるという、骨董品店「杠屋(あかなしや)」の面々。
彼らは、いわくつきの古道具「特殊骨董」の始末を請け負う特殊骨董処理業者であり、彼ら自身もまた特殊骨董の化身――付喪神なのだという。
呪われた「匣」の秘密と晴の過去を知るために、座倉家に乗りこんだ晴と杠屋の妖かしたち。

そこで彼らが出会った真実とは――?

サークルクラッシャー男版、という来歴を持つ主人公。いや、本人ふとした瞬間に消えてしまいそうな儚げな白皙の美人さんなんで、主体的に女性を誘い誘惑して、なんていうキャラではないのだけれど、女性遍歴の噂からして来るものは拒まず、というスタイルだったんだろうか。もしくは、拒めなかったのか。どうもテンプテーション並に女性の理性を飛ばしてしまうかんばせみたいだし。
性格も社交的とは程遠い内向的なものですから、そりゃ友だちとかも出来なかっただろうし、そもそも周りに不幸があまりにも多い人生は彼自身の事を慮り心配してくれる知人ですらいなかったのでしょう。
何気に、彼を拾ってくれた骨董店の老店主とか人情を持って接してくれる人は結構居たようにも見えますけど。ただまあ、晴自身自分の人生に後ろ向きすぎてそういう周りに目を配る余裕もなかったんだろうなあ。
だからこそ、晴の生まれから何故こんなにも繰り返し不幸が起こるのか、そして何が晴を守っているのか、彼の疑問をすべて解き明かしてくれることになる「杠屋(あかなしや)」の面々との出会いは、まさに彼の内面を変えるターニングポイントでもあったのでしょう。
理不尽であっても理由があったのなら、それを克服することが出来る。それはまさしく希望でしょう。
そんな彼に希望をもたらした「杠屋(あかなしや)」の面々ですけれど、若き女性社長の真緒さんを差し置いて、どう見てもメインヒロインはガタイのいいゴツい強面の兄ちゃんな和泉なんですよね。見た目怖いし豪快そうで、言動もやや荒っぽく威圧的という雑に見えるタイプなのにこの男、内面はやたら繊細だし実は料理上手だったり乙女か!
いやもうほんとに、自分の来歴である血腥い過去をズルズルと引きずって克服できないまま持て余して、それでいて他人に触れられたくないと警戒する猫みたいに尖って、と繊細さ加減が並じゃないんですよね。敵対勢力の狩野さんてば、和泉のこと狙ってるみたいだけど性格あまりにもあわなさすぎて手に入れても毛が抜けるじゃないけど、ストレスで錆びるんじゃないのか?
ただこれだけ繊細な和泉が、どうして晴に関しては受け入れたのか、そのあたりの理由がはっきりしなかったはちともやもや。晴の特異体質ゆえなのか、それとも過去に傷ついているモノ同士の共感なり共鳴だったのか。
肝心の和泉が過去にどこに忌避感を感じているのか、具体的な回想云々はまったくなかっただけに、和泉の原点に対しての取っ掛かりが全然なかったんですよね。
対して、晴の方ももう一つはっきりとした意志を最後の方まで感じさせず、なんとなく流されるように終盤まで行ってしまったので、和泉が晴を受け入れてコンビを組む展開もなあなあでそこに行き着いたという感じでイマイチ盛り上がりというかハッタリみたいなものが効いていなくて、インパクトも薄かった気がします。晴の主人公としての存在感がなあ。
これに関しては「杠屋」の他の面々も掘り下げという意味ではあまり手が回っていなくて、真緒にしてももう一人の重要人物である水之江にしても、ずっと出ずっぱりだったわりに表面的なキャラとしてはともかく、どういう人物なのかと踏み込んで焦点を当てると思ったよりも見えてこないんですよね。舞台設定や状況説明、晴のこれまでの出来事や座倉家の事情というあたりに手が取られてしまって、というあたりなのかもしれません。第一巻でよく見る形ではあるのですけれど。
なので、全体的に薄味気味だったかなあ、という印象でした。シリーズが続いて登場人物が掘り下げられていったりキャラ同士の関係が深まっていけばまた違ってくるのかも知れませんが。

三雲岳斗作品感想