北アルプス登山案内人組合連合会 会長 松本正信さん 

※以下は上記の抜粋記事です。

「夏山も怖いが、冬山はもっと怖い」 (松本)

―現役の信州登山案内人で、地区の民間救助隊長でもある松本さん。登山者と遭難者を見続けてき て、最近の登山者の傾向、特徴などでお気づきの点はありますか?

松本 2018年、今年の夏山は、猛暑で脱水や熱中症になる方、登山道が乾燥し てスリップや転滑落する中高年登山者が多く、大町署では過去 最多の 77 件の山岳遭難が発生しました。

個人登山者は各自の 体力・技術に見合ったコース選定を、ツアー登山では、ツアー 会社が参加者の登山経験をしっかりチェックしてほしい。

ま た、猿倉の登山相談所で、猿倉~大雪渓~白馬岳~祖母谷温泉 の 1 泊 2 日以上必要なルートを、日帰りする予定で入山した 単独の女性登山者に、白馬岳で宿泊するよう指導しましたが、 宿泊せずに今でも行方不明になっているケースがあります。相 談員のアドバイスに耳を傾けて、素直に聞いてほしい。
 
―具体的にどのような遭難がありましたか?

松本 今年の 9 月に、唐松岳ツアーに参加した 60 歳代の女性が唐松岳頂上山荘から下山中、 登山道でスリップ転倒、骨折し、背負い搬送して八方池山荘に降ろしました。本人は、 思った以上に大変なコースでしたと話していました。

10 月には五竜岳から遠見尾根西遠 見山付近を単独で下山中の 40 歳代男性が足を滑らせて骨折、15 時に通報、17 時 30 分 に現場到着、22 時 30 分にテレキャビン山頂駅着、県警と救助隊員 6 名で 70kg の遭難 者を背負い搬送で降ろしました。より早く病院へとの思いで、テレキャビンを運航していただき、索道会社の御協力のおかげで救助活動がスムーズに出来ました。
 
―登山者をガイドしていて「危ないな」と感じる登山者の方はいらっしゃいましたか。
松本 初めての雪渓で、アイゼンの履き方も知らずに現場に来る方、雪渓トラバースでアイゼ ンをひっかける方、足つきや歩き方が危うい方など、登山の基本を説明することが多々 あります。登山中に膝がわらったり、疲れてくると思考力が落ちて、ザレ場で滑る方も 多いです。
 
―バックカントリーのガイドもされていますが、スキー・スノーボーダーの最近の傾向や特徴を教えて ください。
松本 ジャパウ(ジャパンパウダー)の雪を滑りたいインバ ウンドの方、未圧雪を滑りたい方が増えています。雪 崩の誘発、木に衝突して骨折、ホワイトアウト状況下 での道迷い、沢筋に下りて戻れない等の遭難が発生し ています。昔と違い、目的別にスキーも多様化してい ます。ビーコン・ブローブ・スコップ等があるから大 丈夫でなく、滑ることにより雪崩が発生することを認識して、雪崩のメカニズムを知り、 弱層テストをした上で、気象・斜面・地形にそったバックカントリーをしてほしい。

特 に、許可されたコース外(パトロールエリア)を滑り、白馬ルール(P30 参照)を理解 して準拠していただきたい。「積雪&斜度があれば雪崩はおきる」「夏山より冬山はもっ と怖い」のです。
 
「事前に山をしっかり調べて計画を立てることが、山の楽しみの一つ」 (松本)
 
―登山者やバックカントリースキー・スノーボーダーが安全に山を楽しむために、ぜひアドバイスを お願いします。
松本 登山では、自分の足で登る体力や登山技術など総合 力を身につけて、自分に合った山選びを特に考えて ほしい。また、より高い山へ、より難しい山へのチャ レンジング意識はいいが、ステップアップと山に登 る回数を増やしてトレーニングを積むことを実践し てほしい。バックカントリーでは、雪崩に巻き込まれ ないように、未然に雪質チェック、コース判定、ルー トファインディング、天候、気候の状況を把握して入 山してほしいです。
 
―長年にわたって登山者やバックカントリースキー・スノーボーダーを見守る松本さんの熱い想いを お聞きしました。夏山も冬山もオールシーズン楽しめるのも、登山・バックカントリーの大きな魅力 ですよね。ステップアップしながら、信州の山を安全に楽しみましょう!