コロナの影響でバイトが週2.5勤(給料は5勤分払われるらしい)になっている。

最近は、冠を持つ神の手というフリーゲームで暇を潰している。

どういうゲームかというと、王の継承者候補として田舎から城に連れて来られた14歳の主人公が、城で訓練を積み能力値を上げつつ、11人いる攻略対象と人間関係を築き、エンディングを迎える事を目的とするゲームである。市販の物で言えばときめきメモリアルに近いが、他の恋愛ゲームとはひと味もふた味も違う。というかそもそも恋愛ゲームではない。恋愛は一部分に過ぎない。

まずこのゲームで特徴的なのが、印象度というシステムである。このゲームには印象度という主人公自身の感情値があり、相手キャラを好いたり嫌ったりする事が出来る。
対象キャラに好かれるか嫌われるかだけの他のゲームとは違って、このゲームでは感情が双方向であり、例えば「相手は自分の事が好きだが、自分は相手の事が憎い」といった状況になったりもする。
また、印象度によって選択肢の派生があり、例えば相手キャラを邪険に扱ったり殺害する選択肢を選ぶには、憎悪の印象度を高めておく必要がある。
更に、反転という、感情を豹変させる特殊システムがあり、好きだったキャラをいきなり嫌ったり、または嫌いだったキャラをいきなり好きになったりする事も可能である。

次に、主人公が男にも女にもなれる、という点もこのゲームの大きな特徴である。
このゲームの人間は現実世界の人間と異なり、14歳までは男でも女でもない未分化という状態であり、15歳になり成人の儀を通じて男または女になる。
主人公は14歳で城に連れて来られて、1年後のエンディングで男または女になる。つまりゲーム中は男でも女でもないので、男キャラとも女キャラとも恋愛関係になる事が出来る。
更に、エンディングで性別を自由に選べてしまうので、例えば男キャラと恋愛関係を築いておきながら、敢えて自分も男になってしまう、といった真似まで可能である。その場合は裏切りエンドとなる。
このゲームの世界の子供が男でも女でもないという設定は、作者が男キャラばかりまたは女キャラばかりを書きたくないと思ったが為に捻り出した珍妙な設定なのだが、実際このゲームの攻略対象11人は老若男女個性に富んでいる。

そして、イベントの派生の多さが半端ではない。相手キャラの主人公に対する好感度、主人公の相手キャラに対する印象度に加え、能力値による派生も至る所にある。例えば、手紙を読む場面では主人公の知力値によってその中身を読めるかどうかが派生したり、溺れる人を助けるには武勇値が必要だったり、という具合である。
またエンディングも、愛情、裏切り、友情、憎悪、殺害とバリエーション豊かである。しかも、愛情Aエンド、愛情Bエンド、といった風に、同じ種類の別エンディングが複数あり、特殊な手順を踏んだり、複数キャラを絡めないとたどり着けないエンディングもある。

選択肢のみならず、大して重要ではない些細な台詞や文もパラメータやフラグによって細かく変化するので、とにかくテキストの派生量が膨大であり、それでありながら文章力も高い。キャラは個性的で人間味があり、書き分けも素晴らしい。この手のゲームでは最高傑作と言えると思う。このゲームシステムとテキストを一人で構築した作者は神としか言い様が無い。

このゲームは、俺が今までやったゲームの中で一番凄いと思ったゲームである。
ただ、凄いと思う事と面白いと思う事は別で、10年位前にこのゲームを初めてやった時は、面倒臭すぎて、全エンド攻略出来ずに途中で投げた。今はwikiの情報が増えているし、当時よりは頑張れるものの、やっぱり面倒臭い。
全体的に難度がやや高目で、序盤から計画的にイベントをこなさないと簡単にキャラ無しエンドになってしまう。また、訓練の能力上昇値のランダム要素が強く、特に王になるルートでは能力値がかなり要求されるので、頻繁にイベントバックを押さないといけないのが面倒臭い。
まあ、万人向けのゲームではないのは確か。ゲームに分かりやすい派手さや爽快感を求める人とか、文盲には向いてない。逆に、面倒臭いチマチマしたゲームが好きな人や文章や台詞を読むのが好きな人にはお薦め。

グラフィックが凄いゲームはこれからも腐るほど出るだろうが、こういう文章が地味に凄いタイプのゲームは中々ない。
ゲーム業界には、絵が上手い人やグラフィック技術やプログラミング技術に優れる人は腐るほど居るんだろうが、文章やシナリオをきっちり書ける人がかなり不足しているんじゃないかと思ったりもする。例えばFF15とか、グラフィックは素晴らしいがストーリーが稚拙で凄い叩かれてたみたいだし。
まあ今時、グラフィックが優れていて分かりやすいゲームじゃないと売れないだろうからな。
営利企業がこの手のゲームを作るとするなら、美少女や美男子ばかりを前面に押し出した、安直なゲームになってしまいがちだろう。
そういう意味で、このゲームは営利企業には作れないタイプのゲームで、個人製作のフリーゲームならではの良作だと思う。