ヤメ判弁護士 喜多村勝徳の 企業法務のススメ

ヤメ判とは、判事=裁判官 をやめた弁護士のことを指します。 定年後、ヤメ判になる人は多いのですが、働き盛りのヤメ判必ずしも多くありません。 裁判官だったということで、裁判が有利になるかどうかはわかりませんが、裁判官だったらこう考えるだろうな、ということはかつての同僚だから良くわかります。 企業法務担当者に法務力をつけてもらうことを使命だと思っています。

2011年09月

契約の相手方(3,4)

3 代表権・代理権の制限

 

代表取締役は会社の一切の業務を行う権限があるのが原則ですが、法律上、代表取締役の一存ですることのできない契約もあります。

 

代表取締役と会社とで利害が相反する場合、取締役会の承認を得なければなりません(会社法第356条)。例えば、A社の代表取締役甲がB社の代表取締役を兼務しており、しかも、A社とB社の事業が競合するときは、甲がA社を代表して契約を締結するにはB社の取締役会の承認が必要です。A社とB社が同業者であれば、甲がA社の代表取締役として契約を締結すれば、自分が代表取締役を務めるB社の潜在顧客を奪うことになりかねません。甲は、B社において自身の利害と会社の利害が相反することになります。そこで、甲の業務執行を監督する立場にあるB社の取締役会の承認を得なければならないのです。

 

重要な財産の処分や多額の借財は、代表取締役が単独ではできず、取締役会の決議が必要とされています(会社法362条4項1号、2号)。代表取締役の独断専行によって会社に損害を与えることを防止するための規定です。ここで、何が「重要な財産」や「多額の借財」に当たるかは、処分資産や借財の価額、会社の総資産に占める割合、処分や借財の目的、会社の内部規定などによって判断されるべきものですが、後日紛争にならないよう、疑問のある場合はできるだけ取締役会の承認決議を求めるのが適当でしょう。

 

 

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契約の相手方 (1,2) 

今回は会社を相手に契約を締結する際の問題点について書きます。少し長くなるので、何回かに分けてアップしたいと思います。

1 代表と代理

 

会社と契約するといっても、実際に契約書にサインするのは、社長や役員、社員などの個人です。その場合、その個人に契約を締結する権限があれば契約は有効であり、会社はその契約に法的に拘束されますが、その個人に権限がなければ契約は無効です。

 

会社のために契約を締結する方法には、代表と代理があります。

 

代表とは、それを与えられた個人(これを代表者といいます)の行為がすなわち会社の行為とみなされるものをいいます。代表者が契約をすれば、イコール会社が契約をしたことになりますから、会社が法的に拘束されることは当然というわけです。 
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契約の自由とその限界-強行規定違反

1 はじめに

 

今回のテーマは初心者にはなかなか骨が折れるのではないかと思います。しかし、この項を読み通したとき、リーガルマインドというのはどういうものか、その一端に触れたと感じられるはずです。とりあえず、頑張ってついてきてください。

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契約の自由とその限界-公序良俗違反

契約書には原則として何を書いても構いません。契約の法的拘束力の根拠は当事者の意思にありますから、当事者が自由な意思で約束した事項は、原則としていかなるものにも法的拘束力が認められます。これを契約の自由の原則といいます。

 

しかし、契約の自由にも限界があります。この点について、民法は次のように定めることでその限界を示しています。

 

民法90条(公序良俗)

 公の秩序又は善良な風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とする。

 

ここにいう「公の秩序」とは、国家社会の一般的利益を指し、「善良の風俗」とは、社会の一般的道徳観念を指すといわれています。しかし、この二つを明瞭に区別することは難しく、一括して「社会的妥当性」といわれています。契約の法的拘束力を認めることが社会的に見て妥当性を欠くときは、契約を無効にしようという考え方です。なお、法律行為とは法的効力を発生させる行為一般を指す用語であり、契約もそのひとつですから、公序良俗に反する契約は無効ということになります。

 

では、具体的に公序良俗に反する契約にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

かつて、芸娼妓契約といって、未成年の娘の親が売春業者から借金し、借金のかたに娘を売春宿で働かせ、その報酬を弁済に充てるという、まさに人身売買といってよい前近代的で個人の尊厳を無視する契約がありました。もちろん、吉原などの遊郭で公然と人身売買が行われていた江戸時代ならいざ知らず、近代国家を目指した明治政府が人身売買を公認するはずもなく、明治初期に芸娼妓解放令が発布され、裁判所も、早い時期から、売春婦として働かせる契約は公序良俗に反して無効であるとしていました。

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契約書を読まずにサインしても法的拘束力はあるのか

最近流行ったテレビドラマに「JIN~仁」という、幕末にタイムスリップした医師南方仁の活躍を描いたものがあります。その中に、仁先生が開発した新薬の製造費用調達のため、坂本龍馬が悪徳医師から新薬のノウハウと販売権を担保に400両の借金をするという場面がありました。龍馬は、7年後に返せばよいと言われ、借用証書をろくに読まずにサインし、千両箱を持って仁先生の元に急ぎます。しかし驚くなかれ、借用証書には返済期限は7日後となっており、期限に悪徳医師が取り立てに来た、さてこのピンチを仁先生はどうやって切り抜けるのかというお話です。

 

ドラマでは、別の資金提供者が現れ、めでたく借金を返済して新薬を守ることができたのですが、ひるがえって考えると、この借用証書は明らかにおかしい。もちろん、返済期限が7日後という点がおかしいので、それでも借用証書にあるとおり7日後に返済する義務があるとするのは、いかにも正義に反するように思われます。

 

では、法律家はそれをどう説明するか。もちろん、現代の民法を適用したらどうなるかということです。



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