ヤメ判弁護士 喜多村勝徳の 企業法務のススメ

ヤメ判とは、判事=裁判官 をやめた弁護士のことを指します。 定年後、ヤメ判になる人は多いのですが、働き盛りのヤメ判必ずしも多くありません。 裁判官だったということで、裁判が有利になるかどうかはわかりませんが、裁判官だったらこう考えるだろうな、ということはかつての同僚だから良くわかります。 企業法務担当者に法務力をつけてもらうことを使命だと思っています。

2011年11月

契約書の文例・一般条項 (5)

契約書の文例・一般条項 (5)

 

8 不可抗力

 

次のような条項が通常どのような契約にも書かれます。これを不可抗力条項といいます。

 


甲及び乙は、本契約の一部又は全部の不履行につき、その不履行が、天災、地変、火災、ストライキ、戦争、内乱その他の不可抗力による場合、その事由の継続する期間に限り、相手方に対し、その不履行の責を免れる。


 

民法第415条は「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする」と定め、民法第543条は「履行の全部又は一部が不能になったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」と定めています。


 

契約に基づく債務が履行できない場合、通常なら相手方から契約を解除され、損害賠償を請求されることになりますが、債務不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるとき(債務者の責めに帰すべき事由によらないとき)は、解除や損害賠償はできないということです。

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質問と回答(決算公告)

本ブログの管理人で大学時代の同級生から、知人から聞かれたことや、自分が常日頃疑問に思っていることについて、いくつか質問を頂戴しています。それを事例形式にして回答を考えてみました。

まずは決算公告に関する質問から。

当社は、決算公告を官報に掲載するとしていますが、一度も掲載したことはありません。掲載料が高いことと、他社も掲載していないからです。定款を変更して自社ホームページに掲載してもいいのだと聞いたことがありますが、ホームページはお客様の注文を受ける営業マンみたいなものだから、それは止したいと思います。決算公告を掲示するだけのサイトに掲載してもらっても良いと聞いたことがありますがどうでしょうか。それから、決算公告をしないと100万円以下の罰金だと聞きましたが、そのうち「払いなさい」と言ってくるのでしょうか。

株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければなりません(会社法第440条第1項)。これを決算公告といいます。公告をしなかったとき、または不正の公告をしたときは、役員が100万円以下の過料(罰金ではありません)に処せられます(会社法第976条第2号)。

株式会社の場合、株主は出資金の限度でしか責任を負わないという有限責任の原則がありますから、会社の債権者にとって会社財産のみが返済の原資です。したがって、会社の財産状況は正しく第三者に開示されなければならないというのが、決算公告を法令によって義務づける理由です。


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契約書の文例・一般条項 (4)

6 完全合意

 

以前、口約束による「言った、言わない」という紛争を避けるために、契約書に書いてあることが全てだという趣旨の条項(完全合意条項)を契約書に書くことがあるという話をしました。

http://blog.livedoor.jp/yamehan_bengoshi/archives/4550256.html#more)。

 

今回は、その意義と問題点について説明したいと思います。

 

完全合意条項の文例は、通常次のようなものです。

 

本契約は、両当事者の合意のすべてであり、本契約締結前における両当事者間のすべての明示又は黙示の合意に優先する。

 

前にも説明しましたが、英米法には、当事者が書面によって契約をし、それが完全かつ最終的な合意であることを意図した場合には、その契約書と異なる合意が契約書作成以前に存在したとしても、それを裁判所において証拠にできないものとする考え方があります。これを口頭証拠の原則といい、完全合意条項はそれを契約書に明記したものです。

 

相手方から、契約書に書いてあること以外に別の合意があったという主張が出て紛糾することを避けたいのであれば、完全合意条項を記載するのがよいでしょう。

 

口約束を証拠にしないという趣旨を明示するために、次のような文言を念のために追加することも考えられます。


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契約書の文例・一般条項 (3)

契約書の文例・一般条項 (3)

 

5 解除

 

前々回、更新拒絶と約定解除権の行使について説明しました。いずれも契約の終了に特段の理由を求めない条項ですが、今回は、当事者の一方に一定の事由が生じたことにより相手方が契約を解除することができる旨を定めた条項について説明します。

 

この場合、解除原因となる事由として、次のような条項を記載するのが普通です。

 

いずれの当事者も、相手方に以下の事由が生じた場合、直ちに本契約を解除することができる。

(1) 本契約の条項の一つにでも違反し、相手方から相当な期間を定めて是正の催告を受けたにもかかわらず、当該期間内に是正されなかったとき

(2) 差押、仮差押、仮処分、滞納処分を受けたとき

(3) 破産、特別清算、会社更生、民事再生の申立があったとき

(4) 支払停止又は支払不能となったとき

(5) 銀行取引停止処分を受けたとき

(6) 監督官庁から営業の停止を命じられたとき

(7) 主要な株主・取締役の変更、事業譲渡・合併・会社分割等の組織再編、その他会社の支配に重要な影響を及ぼす事実が生じたとき

(8) 解散したとき

(9) その他前各号に準ずる事由が生じたとき

 

(1)は契約違反、(2)から(5)は信用の悪化、(6)から(8)はビジネスパートナーとしての適格性の喪失であり、いずれも継続的契約関係における信頼関係を破壊する事情であって、解除権を発生させる根拠として合理的なものです。この場合、約定解除権の行使のときのように予告期間を置かないのが普通です。

 

形式的には(1)から(8)に該当しない場合であっても、実質的に継続的契約における信頼関係を破壊する事由がある場合も解除することができるように、(9)のような条文を記載することがあります。

 

文例はいずれの当事者にも解除権があるという形で記載されていますが、これに反し「甲は、乙に以下の事由が生じた場合・・・本契約を解除することができる」というように、一方当事者にのみ解除権があるような形で記載されている契約書案を見ることが時々あります。しかし、そのような「不平等条約」は適当とは思われませんから、文例のような形に改めるべきでしょう。

 

個別の解除事由についていくつかコメントします。

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契約書の文例・一般条項 (2)

4 期間の定めのない契約

 

前回は契約期間の定めと更新拒絶、解除権の留保について説明しました。では、契約期間を定めなかったら、一体どうなるのでしょうか。

 

期間の定めがないと永久に契約は続くのかと思われるかも知れませんが、そのようなことはありません。期間の定めがないということは、当事者は何時でも契約を解除できるということを意味しているのです。

 

例えば、民法第636条は、当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者はいつでもその返還を請求することができると定めており、期間の定めのない寄託契約はいつでも解除できることを前提にしています。

 

もっとも、期間の定めのない借家契約の解除には正当事由が必要です(借地借家法第28条)し、期間の定めのない労働契約の解除(解雇)は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効です(労働契約法第16条)。これらは、社会的弱者である借家人や労働者を保護するために、法律によって解除権が制限されているのです。

 


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