ヤメ判弁護士 喜多村勝徳の 企業法務のススメ

ヤメ判とは、判事=裁判官 をやめた弁護士のことを指します。 定年後、ヤメ判になる人は多いのですが、働き盛りのヤメ判必ずしも多くありません。 裁判官だったということで、裁判が有利になるかどうかはわかりませんが、裁判官だったらこう考えるだろうな、ということはかつての同僚だから良くわかります。 企業法務担当者に法務力をつけてもらうことを使命だと思っています。

2011年12月

契約書の文例・一般条項 (8)

11 譲渡禁止

 

長期的な契約関係の継続を前提とする場合、相手方が契約上の地位や契約に基づく権利を第三者に譲渡し、担保に提供したりすることは、信頼関係の維持という観点から望ましくありません。そこで、次のような条文を置くことになります。

 

当事者は、本契約上の地位あるいは本契約に基づき取得した権利を、第三者に譲渡し、担保に供してはならない。ただし、相手方の事前の書面による承諾がある場合はこの限りでない。

 

ただし書きは、例えば、当事者の一方が事業の譲渡を行う場合や、資金繰りのために代金債権を第三者に譲渡または担保提供する場合などを念頭においています。契約上の権利義務はほんらい譲渡可能な財産であり、相手方が承認すれば譲渡を有効として差し支えないからです。

 

書面による承諾を要求するのは、「言った、言わない」の紛争を予防するためです。


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質問と回答(写真の著作物)

今回の質問は著作権に関するものです。

 

プロのカメラマンと同じアングルで撮影してホームページにアップしても、著作権を侵害したことにはならないと聞いたことがありますが、本当でしょうか。使っている機材が違うから全く同じには写らないという理解でいいでしょうか。

 

著作権法第10条第1項第8号は著作物の例示として写真を挙げており、写真が著作物であることに疑いはありません。

 

著作権法第2条第1項第1号は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義していますが、写真の場合、撮影、現像、焼き付け等のいろいろな場面で撮影者が独創的な工夫を凝らしますから、それが創作的な表現であると認められるのです。

 

この場合、創作性とは高度なものでなくても構いません。素人カメラマンが撮影した写真の著作物性を認めた平成7年の青森地裁判決は、次のように判示しています。

 

ところで、一般に写真撮影は機械的作用に依存する部分が多く、精神的操作の余地が少ないものと認められ、この点において他の著作物と趣を異にすることは否定できない。しかしながら、写真の撮影についても、主題の決定、被写体・構図・カメラアングル・光量・シャッターチャンス等の選択について創作性が現れる余地があり、このような創作性が認められる限り、写真の著作物性が肯定されるものと解するのが相当である。

 

(中略)本件写真は、いずれも写真撮影については全くの素人である原告が撮影したものではあるが、主題の決定や被写体・構図等の選択について撮影者である原告の前記学問的観点からの個性が現れており、創作性も認められるものであるから、著作権法上の著作物であり、原告がその著作権を有するものと認めるのが相当である。

 

ですから、質問者はプロのカメラマンの写真を問題にしていますが、実は撮影者がアマであっても同じことです。

 


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契約書の文例・一般条項 (7)

10 仲裁

 

契約当事者間に紛争が生じた場合、訴訟をするのではなく、仲裁によって解決する方法があります。

 

仲裁法第2条によると、仲裁とは、既に生じた民事上の紛争又は将来において生ずる一定の法律関係に関する民事上の紛争の全部又は一部の解決を一人又は二人以上の仲裁人にゆだね、かつ、その判断に服することです。紛争を仲裁に付する旨の合意を仲裁合意といい、仲裁人の判断を仲裁判断といいます。

 

仲裁合意は書面でしなければなりません(仲裁法第13条第2項)。ただし、書面でした契約の一部に仲裁合意を内容とする条項があれば、それでも仲裁合意として有効です(同条第3項)。

 

契約書に仲裁合意を書く場合、次のような文例が考えられます。

 

本契約から生じる全ての紛争については、日本商事仲裁協会の商事仲裁規則により、仲裁によって解決するものとする。

 

 

 

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契約書の文例・一般条項 (6)

9 管轄裁判所


契約当事者間で紛争が起きたとき、最終的には裁判で決着をつけることになる可能性がありますが、その場合の裁判所をあらかじめ契約書で指定しておくことがあります。

 

民事訴訟法第11条第1項は「当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる」と規定しており、当事者が合意で裁判所を指定することを認めています。これを合意管轄といいます。民事訴訟法第4条と第5条は管轄裁判所についての定めを置いていますが、これらはいずれも当事者の便宜を考慮して定められたものですから、当事者がそれと異なる裁判所で訴訟を行うことを認めても特に問題はないからです。

 

ただし、法令に専属管轄の定めがある場合、それ以外の裁判所を管轄裁判所と合意しても無効です(民事訴訟法第13条第1項)。例えば、株主総会決議取消の訴えは、当該株式会社の本店所在地を管轄する裁判所の管轄に専属します(会社法第834条、第835条第1項)。したがって、株式会社と株主又は役員との間で、会社の本店所在地以外の場所を管轄する裁判所を株主総会決議取消訴訟の管轄裁判所と合意しても無効です。

 

民事訴訟法第11条第2項によれば、合意管轄は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければなりません。当事者間の紛争の全てについて管轄裁判所を定めるという無限定な合意は無効ですし、口約束で裁判所を指定することはできないということです。書面であればよいので、例えば、手形振出人が手形面上に管轄裁判所を記載し、その後所持人がそれを承諾する旨の書き込みをすれば、それでも合意管轄は成立します。

 

合意管轄には、専属的合意管轄と競合的合意管轄があります。前者は、合意された管轄裁判所のみが管轄を有するもので、後者は法令で定まった管轄裁判所のほかに管轄裁判所を追加するものです。

 

専属的合意管轄を定める場合、次のような文例になります。

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質問と回答(顧問弁護士の役割)

今回の質問は、企業における顧問弁護士の役割に関するものです。



企業の顧問弁護士をやっていて、社員の個人的なトラブル対応を頼まれることってありますか。といいますのも、私の知人の会社の顧問弁護士は、契約書のチェック以外は全然やってくれなくて、離婚問題で困っている部下のことを相談したら、それは契約範囲外だと言って、取り合ってくれなかったそうです。




少なくとも、この先生が離婚問題みたいなごちゃごちゃしたことに関心がないのはわかっていたらしいんですが、そういうことに熱心な先生を紹介してくれるくらいのことは、期待したんだけど全然かまってもらえなかったそうです。こういうことって、期待するほうが間違っているのでしょうか。




会社経営にとって、従業員の個人的な問題も引き受けてくれる顧問だと一番助かるんですけれど、弁護士から見るとこれって無理筋の要望なんでしょうか。



企業の顧問弁護士が従業員の個人的な問題について相談を受けることは珍しくありませんし、それが事件になれば、当然受任するのではないでしょうか。顧問契約書に従業員の法律相談や事件の受任をすると定めることはまれでしょうが、契約書になくても普通引き受けると思います。


もちろん、「忙しくて手が回らない」とか、「離婚事件は経験がないので自信がない」などといって断る弁護士はいると思いますが、「契約書の範囲外」だと言って取り合わない弁護士がいるとは思われません。


あるベテランの先生は、「顧問会社を持つことは、顧問料をいただくことだけがメリットなのではない。会社の従業員全員が潜在的なお客さんなのだ」という話しをしておられました。これが普通の弁護士の感覚ではないかと思います。


もちろん、離婚問題のような人間関係の込み入った事件を引き受けることを「気が重い」と感じる弁護士は少なくないと思います(私もそうです)。そういう場合は、知り合いの弁護士を紹介すればよいので、取り合わないということはないと思います。


知人の顧問弁護士の態度は、お聞きする限り、にわかに信じがたいものです。これは、依頼者である知人との関係がさほど親密でないためか、あるいは、弁護士にある種の韜晦があるのでしょう。


これは自戒を込めて言いますが、企業経営者と顧問弁護士とは、「先生がいるおかげで、うちの社員たちは思いっきり仕事ができています」と言えるような人間関係を作って欲しいものです。それに、弁護士には専門職としてのプライドがありますから、そこを上手に引き出すのも経営手腕のひとつではないでしょうか。


なお、企業の経営者には、従業員が安心して働けるよう配慮すべき義務があります。もちろん、従業員の離婚問題について弁護士を紹介することが雇用者の法的な義務だとは言いませんが、それくらいのことはしてあげるのが適当でしょう。


従業員が自分の離婚問題を上司(社長でしょうか)に相談するというのは、社内の良好な人間関係がうかがわれまるエピソードではありますが、たぶん切羽詰まった状況なのでしょう。何とか助けてあげて欲しいものです。


ここはひとつ、顧問弁護士ともう一度じっくり話し合って、従業員の離婚問題の相談に乗ってもらうよう説得すべきです。そして、顧問弁護士との良好な関係を構築するきっかけとしてもらえたらと思います。


なお、企業が顧問弁護士を持つことのメリットについては、以前このブログにも書きました(http://blog.livedoor.jp/yamehan_bengoshi/archives/4550277.html#more)ので、読んでいただければと思います。




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 弁護士 喜多村 勝徳

k.kitamura★marunouchi-law.com

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丸の内法律事務所

千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビルヂング404区

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