『RED GARDEN』第１話（新番組）

　「原作：GONZO」とクレジットされている以上は、特に何かを原作として引っ張ってきたということはないのだろうなぁと思いつつ見てみた作品。

　ニューヨーク。同じ学園に通っているが、特に接点のない四人の少女――“ケイト”“レイチェル”“ローズ”“クレア”は、それぞれ朝から奇妙な感覚に襲われていた。昨夜の記憶がすっぽりと抜け落ちているのだ。そんな折、学園に“リーズ”の遺体が発見されたとの報が。おかげで午後から休校となり、家路に就こうとする四人は、しかし自分たちにしか見えない蝶の幻影を追ううち、公園でばったりと出会う。そんな彼女たちの前に「教育係」を名乗る女性“ルーラ”が。彼女から告げられた事実――四人は昨夜既に死亡していた、というのだ。驚愕するばかりの彼女たちの前に、謎の怪物が現われる。こいつを殺せと言う“ルーラ”の声が響く中、彼女たちの運命は……

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　監督が『ローゼンメイデン』シリーズのスマッシュヒットで人気監督の仲間入りをした松尾衡氏ということで、当方の周囲でも何となく注目を集めていたこの『RED GARDEN』。いきなりモード系に色彩が乱舞する中に小粋なフレンチポップっぽい（カヒミ・カリィあたりが歌ってそうな（←マテ））曲が絡むオープニングが流れてきて呆気に取られていると、剣呑にしていかにもGONZOテイストなヴィジュアルの本編が続いて、うぅむと唸ってしまうことしきり。最初これはハズレかな？　と思ったが、終わってみればまぁ普通に愉しめたのだった。

　さておき、いかにも外国マンガ（フランスにおける「バンド・デシネ」のような？）的なデザインのヴィジュアルでニューヨークが舞台、キャラはみんな外国人で不条理バトルモノと、のっけからあさっての方向。に暴走しまくっていたわけだが、かかる画面のテイストをいったんカッコに括って見てみると、話的には適度な意味不明さもあいまって、なかなか引き込まれるところではあった次第。“ケイト”“レイチェル”“ローズ”“クレア”の四人はみな何らかの形で“リーズ”とかかわりがあるという以外に何も共通点を持たず、で、その“リーズ”の死によって引き合わされて上述のごとき不条理状況に一挙に置かれてしまうことになるのだが、その前段階における、四人がどこかチトおかしい感覚にまどろむ描写が妙にドライなところや、彼女たちが蝶の幻影を見つけて以降の、畳み掛けるように不条理状況に置かれるシークエンスのリズム感などは存外味があって、ほよほよと見ていてもなかなか上手いなぁと個人的には思うところ。

　とは言うものの、この作品の最も強烈なところは、上述のごときヴィジュアル周りやあるいは話の不条理さもさることながら、何と言っても本編中に突如としてミュージカルシーンが挿入されるところにあると言っても、さほど的外れではあるまい。現時点において、四人の中で“リーズ”と最もかかわりが深い――遊園地で彼女と一緒に遊んだことがあるのだった――と思しき“ケイト”が、“リーズ”の訃報に接した後（風紀委員部隊の一人でありながら）学校をサボり、公園で悲しみのあまりいきなり歌い出すという按配だったのだが、あまりにも普通にミュージカルになるものだから、面食らってしまうことこの上なかったわけで。

　最近ではアニメの関連商品としてキャラクターソングがリリースされることがままあるもので（特に『テニスの王子様』や『アンジェリーク』あたりがものすごいことになっている様子）、当方の場合は「自分が演じるキャラ名義で声優が歌う」という構造自体に、まぁ理解はできるけれどもそんなに大々的にやることなのかという相反する感情を持ってしまうところではあるのだが、この作品のようにお歌を本編にねじ込むという発想はありそうでなかっただけに、面食らいつつも新鮮な感じに受け取った次第。「歌それ自体がすでに跳躍なのだ」というドゥルーズ＋ガタリを持ち出すまでもなく（『千のプラトー』p359）、歌うことそれ自体が日常と非日常を分かち、こちら側からあちら側へ跳躍していく重要な契機としてあることは、ここで改めて強調するまでもあるまい。ともあれ、この試みがどう進行していくかは、現時点では全く見えてこないのでアレなのだが、窮めてみる価値というのは十分にあるだろう。

　とりあえず今クールにおいては意外と数少ないオリジナル作品だけに、その帰趨には要注目といったところだろうか。さて……。

　＊番組公式サイト→http://anime.excite.co.jp/redgarden/index.html