現時点で知られていること、検証されていることをまとめました。まず対応表を見ていただいてから、各ブラウザについて説明をしていきたいと思います。

OS Xについては最新の環境で検証できる実機を持っていないため、記載の情報と異なる場合があります。それ以外も含め、お気づきの点がありましたらコメント欄でお尋ねください。

■主要ブラウザのカラマネ対応表

 IE8IE9Fx2Fx3Fx3.5~SafariChromeOpera
v2プロファイル対応××※2
v4プロファイル対応×××※2※3×※4
非画像の扱いn/aスルーn/asRGBスルー/sRGBスルースルー※5スルー
プロファイル無し画像の扱い
※1
n/aスルーn/asRGBスルー/sRGBスルースルー※5スルー
変換エンジンn/aMicrosoft CMMn/aLittle CMSqcmsApple CMMqcms※6Little CMS2
CMYK JPEG画像××××××

※1非画像・プロファイル無し画像の扱いについて、スルーはカラースペースの変換を行わない(カラマネに対応していないブラウザと同じ)こと、sRGBは対象のカラースペースをsRGBと仮定して扱うこと(CSSの仕様に沿った扱い)、を意味します。

※2 Firefox 8以降では設定の変更で◎。

※3 Safari 5.0.5のWindows版はv4プロファイルを扱えなくなっていました(コメント欄で指摘していただいたグーとモコさんに感謝)が、現在配布されている最新版では直っているようです。

※4 Mac版は◎。

※5 "--enable-monitor-profile"オプションつきで起動させた場合はsRGB扱い(ただし不具合あり)。

※6 Mac版はApple CMMと思われる。

■ブラウザ毎の解説

Internet Explorer

Mac版はColorSyncオンでカラーマネジメントが効きましたが、既に当方で検証できる状況にないのでここでは扱いません。

Windowsではバージョン9からカラーマネジメント対応となりました。v2、v4プロファイルともに扱うことができますが、モニタ側のカラースペースをsRGBとして扱う特殊な仕様のため、適切なカラーで表示することができない問題があります。特に広色域モニタのユーザにとっては頭の痛い問題といえるでしょう。

ちなみに、DirectXフィルタを使ってsRGBの画像をうまく表示させるという裏ワザ(?)があります。次のsRGB画像をIEとFirefoxまたはSafariの表示と比べてみてください。モニタのプロファイルが適切に設定されていれば広色域モニタでもきちんと表示されているはずです。DirectXフィルタはIE8以前でも有効なので、どうしてもsRGBで扱いたいという画像には試してみるのもよいでしょう。

さらに余談ですが、IE9ではCMYK JPEG画像を正常に読み込めるようになっています。前述の仕様のため、ありがたみが半減してしまっているのが惜しいところです。

追記:モニタプロファイルの問題について以下の情報を得ていますが、当方にて検証したところ、Windows 8 Pro上のIE10では改善がみられませんでした。続報が入り次第当記事にて報告予定です。

追記2:IE10では修正されていないという報告をいただきました。

開発チームにフィードバックしてもらえるそうなので、近い将来改善されることを期待しましょう。

Firefox

Firefoxはバージョン3からカラーマネジメント対応となっていますが、3.0系と3.5以降とでは色々違います。

まず、3.0系では初期設定でカラマネオフになっているため、有効にするため設定を変更しなければなりません。その辺はGoogle先生に訊いてみてください。

次に変換エンジンによる違いがあります。3.0系ではLittle CMSをカスタマイズしたものが使用されていました。Little CMSはv4プロファイル完全対応ではない(Little CMS2はv4対応)のですが、v4プロファイルでも解釈可能な情報は処理してくれるのでそれなりには表示できるようです。一方、3.5以降は自前のqcmsエンジンに置き換わった影響で、v4プロファイルだけでなくv2プロファイルのサポートまで不完全なものとなっており、例えばインクジェットプリンタのプロファイルなどLUTベースのプロファイルが非対応となっています。Firefox3.5以降では次の画像のうち2つ目が明らかに明るく表示されてしまうはずです。しかしFirefox3やSafariでは両者ともほぼ同じ明るさで表示されます。

matrix_profile_samplelut_profile_sample

まあインクジェットプリンタのプロファイルを埋め込むことはまずないと思いますが、プロファイル作成ツールで作ったカスタムプロファイルの場合、設定によってはLUTプロファイルを作ることができたりしますので気を付けておいた方がいいかもしれません。

Note:Firefox 8以降ではgfx.color_management.enablev4をtrueにすることでv4プロファイルが使えるようになり、LUTプロファイルの処理も改善されます。

もうひとつの注意点ということで、画像以外のオブジェクトやプロファイルのない画像の扱いについて。Firefox3ではCSSの仕様に沿って、それらをsRGBであると仮定するようになっています。しかし、カラマネ対応で先行したSafariなどはそれらについてカラースペースの変換を行わず、カラマネ非対応のブラウザと同様の表示となります。そのため、Firefox3.5以降は初期設定ではSafariなどと同様の動作をするように改められています。カラマネ有効な3.0系からのアップグレードでは3.0の動作が引き継がれるようですが、3.5以降から使い始めたユーザで、3.0系の動作を希望する場合はgfx.color_management.modeの値を1に変更してください。

Safari

普通にカラーマネジメント対応です。特に設定とかもありません。FirefoxみたくプロファイルのないオブジェクトをsRGBとみなすオプションがあるといいのですが。

Note:OS X 10.8上のSafariでは埋め込みプロファイルのない画像を特定のカラースペースと見なすような挙動を示す、などの噂を目にすることがありますが実物を触ったことがないため詳細不明です。

Chrome

Mac版は16以降、Windows/Linuxは22以降で画像のカラーマネジメント表示に対応しました。Windows/Linuxでは、Firefoxの変換エンジンであるqcmsが採用されています。カラーマネジメント対応の主要な処理はWebKit部分に実装されている(WebKitといってもSafariとは異なる実装なので注意)ため、将来的には他のWebKit採用ブラウザでも画像のカラーマネジメント表示に対応してくるものが出てくるかもしれませんね。

ちなみに以前存在していた--enable-monitor-profileオプションですが、実は現在も使えます。有効にするとすべてのオブジェクトがsRGBとみなされるのですが、通常の(プロファイル埋め込み画像に対する)変換処理と排他になっていないために重複して変換がかかってしまうという残念な仕様になっています。

Opera

バージョン12.10より画像のカラーマネジメント表示が実装されました。変換エンジンにLittle CMS2を採用しているためv4プロファイルにも対応しています。Windowsで試したところ現状ではモニタのプロファイルを取得していないっぽいですので今後のアップデートに期待したいところです。

■その他

以下の画像を見てください。

matrix_profile_samplematrix-shaper_profile_sample

カラーマネジメント表示対応ブラウザでは、たぶん2つ目の方がやや浅いというか、彩度が低いような感じになっていると思います(モニタによっては違いが分からないかもしれません)。しかし画像をダウンロードしてPhotoshopで表示させるとどちらもほぼ同じに見えるはずです。このことは画像のカラースペースからモニタのカラースペースへ変換する際にBPC(黒点の補正)が適用されるかどうかの違いで生じるものです。どちらも間違いではないですが、表示に違いが出るケースもあるよというのは覚えておくといいでしょう。