この記事は、以前掲載した「CLIP STUDIO PAINTのカラーマネジメント機能を攻略せよ」を一部加筆・修正した改訂版です。

修正箇所には取消線を引いてあります。修正に至った要因としては、①検証の不備により誤った内容が書かれていた ②CLIP STUDIO PAINTのアップデートに伴い該当の事象が修正・仕様変更された ということが考えられますが、どちらに当てはまるかについてはリソースの不足のため調査を行っていません。

注意

  • この記事は、ICCプロファイルによるカラーマネジメントの基礎知識をお持ちの方や、Photoshopなど他のカラーマネジメント対応アプリケーションとCLIP STUDIO PAINTとの相互運用を考えている方向けに情報提供することを意図したものです。
  • この記事の内容は2016年9月下旬時点におけるものであり、CLIP STUDIO PAINTのアップデートにより食い違いが生じる可能性があります。
  • この記事に記載の内容は主にWindows 10(x64)、一部はWindows 7(x64)・OS X 10.9.5で検証しています。

概説

冒頭で触れたようにセルシス自身、「カラーマネジメント対応」ではなく「カラープロファイル対応」と微妙な言い方をしているわけですが、Photoshopをはじめとする他のカラーマネジメント対応アプリケーションと比較すると考え方に相違があり、結果としてカラーマネジメント対応と言い切るには抵抗のある仕様になってしまっている感は否めません。

ICCプロファイルによるカラーマネジメントの仕組みにおいて、RGBの値と画像や対象物のカラーは別のものとして考えられています。Adobe Photoshopなどカラーマネジメント対応のアプリケーションでは、画像に紐づけられたICCプロファイルを使用して画像のカラーを認識し、お使いのモニタに紐づけられたプロファイルを使用して、画像のカラーを適切に表示できるようRGB値を「翻訳」しています。

上記は拙作カラまねのユーザーガイドからの引用ですが、ICCプロファイルベースのカラーマネジメントではまず画像のカラーを(ICCプロファイルとの紐づきによって)明確にしておいて、そのカラーをモニタやプリンタや印刷物で再現するという考え方が根底にあります。モニタの表示を基準に他を合わせる、ではなく、画像のカラーを基準にモニタの表示やプリンタの出力をそれに近づける、という発想です。

Photoshopはその辺が徹底しており、カラーマネジメント関連機能は基本的に完全無効化することはできませんし、新規画像を作成すればデフォルトでは作業用プロファイルが紐づけられるようになっています。また、「ドキュメントのカラーマネジメントを行わない」と言ったらそれは「カラーマネジメント機能を無効化する」ではなく、「画像とプロファイルの紐づけを切って、成り行きに任せる」ことを意味します(※Photoshopではプロファイルが紐づけられていない画像には一時的に作業用プロファイルが使用されます)。

一方CLIP STUDIO PAINTは、従来カラーマネジメントは行わず、素のRGB値をモニタに出力した成り行きのカラーで運用してきたわけですが、それではPhotoshopなどとの連携で不都合が生じるため、その不都合が生じるポイントポイントにICCプロファイルをあてがって対処療法を施したという形になっています。そのため、キャンバスにICCプロファイルを紐づけてカラーを確定するという基本中の基本ができません。カラープロファイルプレビューでRGBプロファイルを選択するのはあくまで「そのプロファイルを使用したらPhotoshopなどではこう表示される」程度の意味づけしかされていないのです。

CLIP STUDIO PAINTのカラープロファイル関連は、パッと見には他のアプリケーションより設定項目や気に留めなければいけないところが少ないのでとっつきやすい印象がありますが、使いこんでいくと色々と筋の悪さや一貫性のなさ(一部は単に実装の悪さによるものですが)が気になってくるのではないでしょうか。現状ではどうしようもありませんので、各機能や設定、それに伴う挙動をしっかり把握して運用でカバーしていかざるを得ません。以下にまとめた解説が運用の一助となることを祈ります。

ヒント

現行のCLIP STUDIO PAINTには、

  • キャンバスにプロファイルを割り当てられない
  • そのためCMYKプレビューの変換元が決め打ちになってしまうが、その変換元が環境設定のRGBプロファイルでなくモニタのプロファイルになってしまっている

という2つの「まずい仕様」が存在するため、sRGBやAdobe RGBなどRGBベースの作業とCMYK出力前提の作業を混在させることが事実上不可能になっています。したがって、CLIP STUDIO PAINTを使用する際はRGB作業かCMYK作業かできっちり切り分けて運用していくことをお勧めします。

RGBベースで作業をする場合は作業に使用したいプロファイルを環境設定のRGBプロファイルに指定します。また、CMYK作業をする場合は、モニタのプロファイルを指定してください。後ほど解説に出てきますが、環境設定をリセットすることで確実にモニタのプロファイルを設定できるようになります。

sRGBで作業しながらCMYKプレビューも見たい、と考えている方はカラまねなど補助ツールの使用を検討してください。詳細は「CLIP STUDIO PAINT PROとカラまねのコンビネーション」の使用例2をご覧ください。

各機能・項目の解説

ファイル形式

CLIP STUDIO PAINTで埋め込みICCプロファイルに対応するファイル形式は、

  • TIFF
  • JPEG(.jpg)
  • Photoshopドキュメント(.psd)
  • Photoshopビックドキュメント(.psb)

の4種です。上記以外は読み書きともに埋め込みプロファイルを扱うことができません

Note : CLIP STUDIO PAINT専用のファイル形式(拡張子.lip または .clip)はカラープロファイルプレビューの設定としてモニタのプロファイルと「プレビューするプロファイル」が記録されますが、これを埋め込みプロファイルと同様に考えるのは適当ではありません。

CMYKカラーでの入出力についても、前述の4種が対応しています。

環境設定(カラー変換)

  • RGBプロファイル

    デフォルトのRGBプロファイルを指定します。初期状態ではCLIP STUDIO PAINT起動時点におけるモニタのプロファイルが選択されます(つまりモニタの既定のプロファイルを変更してCLIP STUDIO PAINTを再起動させるとこの部分も変化します)。一度でも任意のプロファイルを指定した場合はそのプロファイルで固定されます。

  • CMYKプロファイル

    デフォルトのCMYKプロファイルを指定します。初期状態ではJapan Color 2001 Coatedが選択されています。特に理由がなければこのままでよいでしょう。

  • レンダリングインテント

    デフォルトのレンダリングインテントを指定します。変更を確定すると現在のプレビューにも影響します。ただしウインドウやドキュメントの設定が変わったわけではなく、一度プレビューをオフにして再度オンにすると元に戻る他、ファイルにも変更結果は保存されません。

    Photoshopなどで見られる黒点の補正(BPC)は使用できません。

  • 使用ライブラリ

    カラー変換を実際に行うエンジンを選択します(Mac版はIccLibraryのみで設定項目自体が存在しない)。Microsoft ICMの場合はシステムにインストールされているCMM(カラー変換モジュール)が使用されます。Adobe CMMなどサードパーティー製のモジュールがインストールされている場合にどのモジュールが使用されるのかは不明(未調査)です。IccLibraryはCLIP STUDIO PAINTに同梱されている変換エンジンです(実態はSampleICCプロジェクトのIccProfLibです)。変更を確定すると各ウインドウに影響しますが、設定が変更されているわけではなくプレビューのオンオフ切り替えで元に戻ります。

カラープロファイルプレビュー設定

確認する方法がないので分かりにくいのですが、新規キャンバスは「未設定」の状態です。一度も設定を確定せずにファイル保存した場合、該当の設定項目は空の状態でファイルが作成されます。

  • プレビューするプロファイル

    シミュレーション対象のプロファイルを指定します。新規ドキュメントの初期値はモニタのプロファイルになります(したがって未設定の状態でプレビューをオンにしても表示は変化しません)。

    RGBのプロファイルを指定した場合、"指定プロファイル→モニタのプロファイルの変換"が表示に適用されます。CMYKのプロファイルを指定した場合は"モニタのプロファイル→指定プロファイル→モニタのプロファイル"の変換が表示に適用されます。

  • レンダリングインテント

    変換時に使用するレンダリングインテントを指定します。新規ドキュメントの初期設定は環境設定のレンダリングインテントになります。CMYKプロファイル指定時、モニタのプロファイルへの変換には知覚的のインテントが使用されるようです。

  • 使用ライブラリ

    変換時に使用するカラー変換エンジンを選択します。新規ドキュメントの初期設定は環境設定の使用ライブラリになります。

  • 設定の適用範囲

    同一キャンバスのウインドウを複数開いていて特定のウインドウのみを設定したい場合や、一時的にプレビュー設定を変更したいだけの場合は「このウインドウのみに設定する」を選択します。

    「このウインドウのみに設定する」を選択したプレビュー設定の有効期間はプレビューをオフにするまでとなります。

マルチモニタ環境について

カラープロファイルプレビューはマルチモニタ環境に対応していません。キャンバスのウインドウをどのモニタ上に配置したとしても、プライマリモニタのプロファイルを使用して変換が行われます。

詳細は「CLIP STUDIO PAINT PROとカラまねのコンビネーション」の使用例3をご覧ください。

カラー系パレット

カラーサークルなどのカラー系パレットはカラープロファイルプレビューの影響を受けません。これはスクリーンショットを撮ってRGB値を拾ってみれば指定値と同じであることから容易に判断できます。

CMYKカラースライダーで色選択した場合のRGB値は、環境設定のCMYK→環境設定のRGBの変換によって得られる値となります。また、CMYKカラースライダー以外(スポイトツール含む)で色選択した場合の、CMYKカラースライダーのCMYK値は環境設定のRGB→環境設定のCMYKの変換によって得られる値となります。

ファイル読み込み

ICCプロファイルが埋め込まれているファイルを読み込むと、埋め込みプロファイルがプレビュー設定のプロファイルとして指定されます。

ファイルがCMYKの場合、埋め込みプロファイルがあれば、そのプロファイルから環境設定のRGBプロファイルに変換されます。埋め込みプロファイルがなければ、環境設定のCMYKプロファイルから環境設定のRGBプロファイルに変換され、プレビュー設定には環境設定のCMYKプロファイルが指定されます。

ファイル保存・書き出し

保存・別名複製保存をするか、ファイル形式を指定して保存画像を統合して書き出しするかでプロファイルの埋め込みについての扱いが異なります。例外として、PhotoshopドキュメントとPhotoshopビックドキュメントは複製保存においても統合して書き出しと同じ扱いになります。

  • 複製を保存

    カラープロファイルプレビューの設定でRGBプロファイルが指定されていれば、そのプロファイルが埋め込まれ、されていなければ埋め込みなしでファイルが作成されます。

  • 統合して書き出し

    カラープロファイルプレビューの設定で表現色と同じタイプのプロファイルが指定されていればそのプロファイルが埋め込み(and/or 変換)用プロファイルとして使用され、指定されていなければ環境設定のRGB/CMYKプロファイルが使用されます。プロファイルを埋め込むか埋め込まないかはチェックボックスで選択できます。

    CMYK書き出し時の変換元プロファイルは、カラープロファイルプレビュー設定でRGBプロファイルが指定されている場合は環境設定のRGBプロファイルが使用され、されていない場合はモニタのプロファイルが使用されます。

ちょっと複雑なのでCMYK書き出しについて整理しましょう。

  • プレビュー設定が未設定またはRGBプロファイルの場合

    環境設定のRGBプロファイル→環境設定のCMYKプロファイル

  • プレビュー設定がCMYKプロファイルの場合

    モニタのプロファイル→プレビュー設定のCMYKプロファイル

環境設定と異なるRGBプロファイルを指定してカラープロファイルプレビューをしている場合、そのカラーを基準にCMYK書き出しされるだろうと考えてしまうのは誤りですので十分注意してください。

不具合

特に記載のない場合、既に修正済みとなっています。できるだけ最新版にアップデートすることをおすすめします。

特定の条件でカラー変換の結果が不正になる

Windowsにおいて「使用ライブラリ」にIccLibraryを選択し、ファイルパスに日本語が含まれるプロファイルを使用する場合に該当します。バージョン1.2.0で修正済みです。

OS X(macOS) 10.8以降で表示カラー全般がWindows版や10.8未満のOS Xと異なる

CLIP STUDIO PAINTによる描画カラーがシステムによりsRGBとみなされてしまうことによる事象です。カラープロファイルプレビューだけでなくUIを含む全ての表示に影響があります。

この問題はバージョン1.4.1で修正済みです。

CMYK JPEGで書き出したファイルが72dpiになる

バージョン1.6.0で修正済みです。

Q&A

インクジェットプリンタ出力用にプレビューすることはできるか?

実用上はできない。プレビュー設定でインクジェットプリンタのプロファイルを指定することはできますが、それで得られるプレビュー結果はプリンタドライバの設定で色変換を完全にオフにした場合のものであり、特性的にsRGBやAdobe RGBとは全く異なります。そのプレビューを見ながら作業をするのは現実的ではないでしょう。

一般的なインクジェットプリンタのドライバはsRGBのデータを受け取ることを想定しているので、通常はsRGBでプレビューを行います(上級機種では入力側のカラースペースを任意に選択できるものもあるので、その場合はドライバ側の設定に合わせてください)。ただしプリンタ出力で再現できないカラーをプレビュー上で確認することはできないので注意が必要です。

sRGBの素材をAdobe RGBでプレビューしているキャンバスに配置したらどうなる?

プレビュー上のカラーが変化する。sRGBのものをAdobe RGBのキャンバスに配置しようと思ったら、当然sRGB→Adobe RGBの変換をしなければ元のカラーを保てないのですが、CLIP STUDIO PAINTにはそういう機能はありません。変化を抑えるにはPhotoshopやGIMPなどを使ってあらかじめ変換を行っておく必要があります。