6月17日に発売された富士通の2in1 PC、FMV LOOXの使用レポート第3回をお届けします。

未見の方は1回目2回目のレポートもご覧ください。

クリエイティブコネクト

概要

FMVサポートでは次のように説明されています。

FMV LOOXをお持ちのパソコンと添付のケーブルで接続することで、タブレットをセカンドディスプレイとして使用したり、ペンタブレットのように使用したりすることができます。

また、FMV LOOXとパソコンを併用するデュアルPC モードでは、パソコンのマウス・キーボードでタブレットを操作したり、タブレットとパソコンの間での大容量のデータ転送を高速に行ったりすることが可能です。

使用

クリエイティブコネクトを使用する際は、USB 3.xポートの空きがあるWindows 10以降が動作しているPCが必要になります。動作保証はFMV LOOXに付属のType-C - Type-Cケーブルで接続する場合に限られますが、USB Power DeliveryやDP Alt Modeは使用しませんのでType-Aポートへの接続でも動作可能です。

準備

まずは双方にクリエイティブコネクトの最新版ソフトウェアをインストールします。FMV LOOXの方はスタートからクリエイティブコネクトを起動すると最新版をダウンロード・インストールするよう促されますので、指示に従いインストールします。

相手側PCへのインストールは、先にUSBケーブルをつないでからFMV LOOX側のインストーラーを引っ張ってくる方法もあるのですが、ややこしいので富士通のサポートページからダウンロードしてきた方が早いでしょう。

インストールが終わって通知領域にクリエイティブコネクトのアイコンが出ていることを確認したら、USBケーブルを接続します。FMV LOOX側はUSB 3.2 Gen2のポート(下側)を使用します。しばらく待つとクリエイティブコネクトが自動起動して画面右下にメニューが表示されます。

LOOX CC Menu

デュアルPCモード

FMV LOOXと接続したPCとの双方を併用し、ファイルやクリップボードのデータをやり取りすることも可能なモードで、初期状態ではこのモードが選択されています。

デュアルPCモード使用中、マウスカーソルは原則どちらか一方にのみ表示されます。キーボードやマウス・タッチパッドの操作はどちらで行ってもマウスカーソルが表示されている側に送られます。LOOX側にマウスカーソルがあるときは画面左端を、相手側にマウスカーソルがあるときは画面右端を突き抜けるように動かすともう一方の側にマウスカーソルが移動します。双方の画面の位置関係は変更可能です。

LOOX CC config

エクスプローラー上でファイル・フォルダをドラッグし、もう一方の画面に持っていくことでそちらのディスク・ストレージにコピーすることができます。また、クリップボードにコピーしたテキストや画像をもう一方に転送してペーストすることも可能です。

試しに、ペイントソフトのRebelle5でレイヤーをコピーしてクリップボードの内容を見てみましょう。まずはコピーした側です。

LOOX CC copysrc

レイヤーの画像データが複数のファイル形式で保持されているほか、Rebelle固有の情報も含まれていますね。では、転送後のクリップボードも見てみましょう。

LOOX CC copydst

やはりWindowsの標準的な形式のみ転送可能ということのようです。

セカンドディスプレイモード

一方のディスプレイをもう一方の外付けディスプレイのように利用するモードです。HDMIやDisplayPortを使用したハードウェア的な接続ではありませんが、Windowsからは仮想のデバイスとして認識されます。以下のスクリーンショットは、OneMix3 Pro プラチナエディションをFMV LOOXのセカンドディスプレイにしている状態のものです。右半分がOneMix3側に表示されています。

LOOX CC DisplayShare

左端に見える設定アプリ上では、OneMix3のディスプレイが仮想のディスプレイとして認識され、配置を変更したりカラープロファイルを設定できるようになっていることがわかるかと思います。中央あたりに同じ画像を表示した2つの画像ビューアがありますが、よく見るとLOOX側とOneMix3側とでディスプレイに割り当ててあるプロファイルが異なるために表示も変わっているのが確認できます。

ちなみに、親機側でプロファイルを設定してもプロファイルのキャリブレーション情報(vcgt)はセカンドディスプレイには適用されません。ただし、セカンドディスプレイ側で元々適用されているvcgtはクリエイティブコネクト使用中も生きています。

また、右側に前回のレポートで登場した筆圧・傾きのテストツールが表示されていますが、筆圧を検知しているのが確認できますね。つまり、FMV LOOXを液晶タブレットのように使うだけでなく、FMV LOOXに接続したPCを液晶タブレットとして使うことも可能というわけです。

セカンドディスプレイ側に表示される内容は、いったん圧縮が行われて動画データとして転送され、そのあと展開・表示されるという流れになっています。そのためタイムラグや圧縮に伴うにじみ・ノイズが発生します。

その他の注意点として、セカンドディスプレイにする側を普段マルチディスプレイで使用している場合、同じ構成のままで接続しないとセカンドディスプレイモードにうまく切り替わらない可能性があります。先ほどのスクリーンショットも、普段はOneMix3 Proに液晶タブレットを接続していてクリエイティブコネクトを試すときは本体のみだったのですが、途中まで切り替えようと努力しながらも最終的にはあきらめてしまうような感じになってしまっていました。そのため、液晶タブレットを接続した状態で再度試したところ、本体のディスプレイではなく液晶タブレットがFMV LOOXのセカンドディスプレイとして表示される挙動になっています。

しくみ

PC周辺機器のジャンルとしてUSBリンクケーブルというものがありますが、クリエイティブコネクトも同様のものが内蔵されていると考えられます……といいますか、デュアルPCモード自体市販のリンクケーブルでできることそのままですよね。現在販売されている製品ではセカンドディスプレイモードにあたる機能を持ったものがありませんが、かつてはj5createからJUC700 USB 3.0 Wormhole Switch DSSという製品が販売されていて、これがペン対応を除けばほぼほぼクリエイティブコネクトと同等の機能を持っていたようです。

デバイスマネージャーを見ると次のようになっています。選択状態のUSB Composite Device以下がクリエイティブコネクト関連のものです。

LOOX CC DeviceManager

このうち、MCT 7500 Remote NDIS6.0 Based Deviceはデバイスの種類としてはネットワークアダプタとなっていて、ファイル転送やセカンドディスプレイモードの動画転送に使われます。タスクマネージャーで確認したところ、画面全体が大きく変化するような状況では80Mbps台のビットレートでストリーミングされているようです(画面の変化が全くないときは0になります)。フルHDの動画としては高いビットレートだと思いますが、その割に画質が芳しくないのは処理の負荷を抑えることを優先した処理になっているということなのかもしれません。

デバイス名に出てくるMCTはMagic Control Technology社を指しています。Magic Switchという名称でリンクケーブルも取り扱っているようですね。サンワサプライから販売されているKB-USB-LINK4も同社のOEM品です。

また、マウスやキーボードもUSBデバイスとして認識されていることから、ソフトウェア的にイベントを発生させているわけではなくハードウェアレベルで再現されているようです(実際、一方のHID準拠マウスを無効にするともう一方のマウス・タッチパッドを使って操作することができなくなります)。タッチパネルやペンのデバイスは見当たりませんので、セカンドディスプレイモードのタッチパネル・ペン対応はソフトウェアでのエミュレーションで実装されていると考えられます。

液晶タブレットとして使う場合に筆圧が1024段階になる、という制限が主に絵描きユーザーからツッコミの対象になっていますが、WM_POINTER系のメッセージを拾ってその情報を送るという実装であれば、筆圧が1024段階に正規化された値として取得されるためつじつまが合うように思います。

試用後の感想

セカンドディスプレイモードは「クリエイティブ」と名の付く機能としてはちょっと中途半端な性能なのが引っかかるな、というのが率直な感想です。FMV LOOXともう一台のPCの双方を立ち上げた状態で使える、というのがマストだったがゆえのこの仕様なんだと思いますが、セカンドディスプレイモードはデュアルPCモードと分離したうえでハードウェア的な実装……ディスプレイ・タッチパネル・デジタイザ(ペン)を内部的に切り離して純粋にDisplayPort / USBデバイスとして他のPCに接続できるような……にしてもらった方がパフォーマンスや汎用性(DP Alt Mode接続なら少なくともディスプレイはmacOSやLinuxでも使える)の面で実用的だったと思います。