「李香蘭と支那の夜 〜名曲・蘇州夜曲の謎を解く〜」

かつて多くの国で愛された、日本の歌と映画がありました。 現在「国策映画」だと誤解され、マイナスイメージの多い「支那の夜」が再評価される事を願ってブログを作っています。 現在は「李香蘭」の歩みを昭和12年から順に書いています。 更新のペースは月一の予定。

昭和14年の李香蘭「ラジオ番組 電影名歌集」

昭和14年6月10日新京放送局の中央第二放送において、
ラジオ番組「電影名歌集」が
午後7時50分〜8時20分まで30分放送された。
李香蘭はこの番組で、満映映画の主題歌を6曲独唱している。
引用「満州新聞」昭和14年6月10日朝刊

プログラムは以下の通り。
電影名歌集
一、「富貴春夢」 映画「富貴春夢」より 作詞:曹彥 作曲:白春聲
二、「天涯路」 映画「冤魂復仇」より 作詞:曹彥 作曲:白春聲
三、「我的愛人」 映画「慈母涙」より 作詞:曹彥 作曲:白春聲
四、「時代姑娘」 映画「真仮姉妹」より 作詞:楊葉 作曲:白春聲
五、「玉茭之歌」(「鐵血慧心」)   映画「鐵血慧心」より 作詞:曹彥 作曲:白春聲
六、「陽春小唄」 映画「東遊記」より 作詞:劉盛源 作曲:永尾源
独唱(李香蘭)
伴奏(百楽音楽團)
指揮(白春聲)

6つの映画の主題歌のうち、李香蘭が出演していない映画は
「慈母涙」(「我的愛人」)と「真仮姉妹」(「時代姑娘」)である。
断定はできないが、出演作以外にも、
映画で主題歌を歌っていた可能性はある。

なお6曲のうち、「我的愛人」は李香蘭のレコードが確認されていない。

昭和14年の李香蘭「白蘭の歌」その1「白蘭の国」

今回から映画「白蘭の歌」の話を始める。
李香蘭の大陸三部作の一作目であり、彼女の名前が
日本で大いに知られるきっかけとなったこの映画。
ヒットして関係資料も多いだけに、かなり詳しく背景を調べる事が出来る。

東京日日新聞の連載小説

「白蘭の歌」は元々東京日日新聞(現在の毎日新聞)の
連載小説として始まった企画である。
映画とのタイアップもしており、連載時期の昭和14年8月3日〜翌年1月9日は、
映画が製作・上映された時期と重なる。【1】

原作者の久米正雄は、当時通俗小説の大物作家で、
前年内閣情報局に呼ばれ、文学者や音楽関係者を招いた
「ペン部隊」の一員として、中国の戦場に赴いたことがある。

今回「白蘭の歌」を書く為に取材旅行を行っており、
日本を旅立ったのは昭和14年3月27日。
李香蘭が「東遊記」撮影の為新京を出発したのが4月1日だから、
二人はちょうど入れ替わりになった事になる。

満州鉄道史
「白蘭の歌」に関して、私が見つけた限り、最も早い時期の資料は、
「満州新聞」昭和14年4月2日夕刊である。
東宝が満州を背景にした映画の製作に乗り出すというもので、
この時点では満映や李香蘭の話は出てこない。

満鉄との提携作で、原案は久米正雄だが内容は
「満鉄の建設史を中心とする大陸映画」というから、
メロドラマの大陸三部作とは随分違っている。

もっとも通俗小説の大家である久米正雄が作者である以上、
スポンサーである満鉄に気を遣った、
仮の構想だった可能性はあるのだが。

「キネマ旬報」昭和14年10月1日号より〜
大毎東日(東京日日新聞)のアイデアで、久米正雄に向こうを見せて
書かせることにした。久米さんが来たトタンに、
大毎の勢いで、満鉄から何万円か取っちゃった。


映画では長谷川一夫演じる主人公が当初満鉄の社員だったり、
国策的な満鉄の会議シーンが不自然に挿入されていて、
「何で?」と思ったのだが、
スポンサー対策という事であれば納得である。
WS000129

「白蘭の国」
4月11日、久米正雄は満映事務所で満映俳優達と、通訳を交えた
対談を行っている。
満州新聞では「出演俳優の首実検」と書かれているが、
主役に内定【2】していた李香蘭は、日本に滞在中で参加していない。
満映との提携作となる事も正式に発表されたが、
この時点のタイトルは「白蘭の国」である。

「満州新聞」昭和14年4月14日夕刊より〜
同映画の題名は「白蘭の国」となる筈で、
久米氏が先ず小説として書き下ろし、木村氏が脚色、
今夏満映の南新京スタジオ完成と同時に着手すべく予定されている、
スタッフ、キャストは未定、木村氏の腹案として日満両版を製作、
同時封切りとなるが、当方としては今春の大作「忠臣蔵」と並立する
今年の超大作として企画されたものである


以降、新聞紙上では暫く「白蘭の国」表記が続く。
「朝日新聞」昭和14年7月16日夕刊より〜
満映・東宝の大陸映画
第一作「白蘭の国」


私の知る限り新聞で「白蘭の歌」表記が見られるのは、
キャストが正式発表され、中国ロケを報じる
「満州日日新聞」8月27日付以降である。

久米正雄との出会い
入れ違いになっていた李香蘭と久米正雄が初めて顔を合わせたのは、
満州の祝日である5月2日の「訪日宣誓記念日」。
昭和14年の李香蘭「5月2日訪日宣誓記念日と陽春小唄」
この日に予定されていた陽春小唄のイベントに参加する為、
帰国して間もない時期だった。

「満州新聞」昭和14年5月6日夕刊より〜
動員デーに顔合わす 「白蘭の国」のご両人
李香蘭は先日久米氏が来京したときは東京へ行っていて遭えずいまが
初対面ながら「久米先生ってとてもいい方ねえ」と大喜び、

問題の日満親善映画「「白蘭の国」は
日本の娘と満人少女が言葉の交換教授をやるという
場面が出てくるため
久米さんは主役にぜひ李香蘭嬢でなくてはならぬという、
李香蘭は嬉し気な表情にはにかみをみせて
「だってまだ私が主役とは決まってませんのよ」

しかし当の久米さんはこの人をおいては他にないと強い懇望ぶりで、
どうやら「白蘭の国」主役は決まったと同然というところ

WS000318

参考資料
【1】 「久米正雄微苦笑の人」小谷野敦 中央公論社458p
「文芸春秋」昭和14年7,8月号「満州信片」
【2】「李香蘭 私の半生」山口淑子・藤原作弥 新潮文庫123p

「萬世流芳」の賣糖歌がyoutubeに

読者の方に教えて頂いたのですが、youtubeに
映画「萬世流芳」で李香蘭が賣糖歌を歌う動画がupされています。
李香蘭ファンには待望の動画ですが、
この時点では再生数400と、存在が殆ど知られていないようです。

賣糖歌のシーンは二つあり、それぞれ動画がupされています。
折角の機会ですから、ストーリーの中でどのような意味を持つのか、
解説していきます。

一回目の賣糖歌


WS000038
(0:00)最初に、阿片窟の従業員がオルゴールを奏でます。
これは阿片窟を経営するエリオット夫妻が、
客を楽しませる為に用意したものです。

WS000042
(0:05)オルゴールの音色と共に、李香蘭が登場。
Aメロを歌い・・・
(ちなみにこの時飴を客に配っていますが、断られています。)

WS000073
(0:28)音色がオルゴールからオーケストラに変わり、
李香蘭が階段を降りて1Fフロアに行く所でBメロ開始。

WS000084
WS000046
WS000047
WS000079
(1:26)「阿片で極楽になっている所に飴はいかが」と
歌う李香蘭に客は魅了され、飴は大いに売れます。

WS000050
(1:43)左の男は、李香蘭の婚約者役の王引。
阿片中毒者で自堕落な生活をしています。

2回目の賣糖歌
阿片窟経営者のエリオット夫妻は李香蘭を気に入り、
もう一度賣糖歌を歌うよう依頼します。


WS000088
(0:14)右はエリオットの妻

WS000093
WS000091
WS000094
(1:34)今回の曲調は、先程とは売って変わって、スローテンポ。
しかも、背中が弓のように曲がるだの、
口が猿の様になるだの、阿片の害毒を訴えるものに変わっています。

WS000095
(1:41)最初はご満悦だった従業員も、顔色を変えます。

WS000096
(1:44)客は顔を見合わせ。

WS000099
(2:11)王引は反省。

WS000107
(2:38)阿片窟は、いたたまれない雰囲気に。

WS000101
(2:40)しかし中国語のわからないエリオット夫妻は、
何が起こっているのかわかっていません。

WS000102
(2:56)忠告しにきた従業員を黙らせています。

WS000103
(3:04)歌のフィナーレに、カデンツァを披露する李香蘭。

WS000105
(3:59)拍手を送るエリオット夫妻でオチを付けて、
2回目の賣糖歌は終わります。

この後、事情に分かったエリオットの妻が李香蘭を平手打ち。
(たぶん、映画「支那の夜」のパロディだと思います)
心を入れ替えた王引が助けに入るアクションシーンがあります。

更にこの後、阿片中毒の王引が阿片治療薬「戒煙丸」で全快。
喜んだ李香蘭が、夜の山のセットで「戒煙歌」を歌うシーンがあります。
こちらも賣糖歌に負けないくらい美しいシーンなので、
見たい所ですが・・

記事検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

最新コメント
  • ライブドアブログ