自民党大阪市会議員団では、平成27年4月の統一地方選挙を前にして「総合区」の活用を政策として明記したものを発表している。詳細については、後ほど改めて記載する。

 住民投票後、橋下市長の「総合区についても検討する」という言葉をもって一気に認知される様になった「総合区」。しかしながら、「総合区」という言葉だけが独り歩きをして、「総合区」とは何なのか?、「総合区」を設置することがどの様な変化をもたらすのか?・・・といった実体が語られることは残念ながら少ない様な気がする。
 結果として、住民投票の問いかけであった「特別区を設置するか否か」が反対多数となったが、賛成も半数を占めていたことを受けて、「特別区⇒総合区」のシフトがあるかのような印象を持たれる方も少なくない様だ。すなわち、特別区の設置は断念されたが、複数の行政区を合区して総合区にするというのが「総合区」の考え方という受け止め方がある。しかし、これは誤りである。

 以前から主張させて頂いているが、我々は「総合区」を「特別区」に対しての対案と捉えているわけではない。マスコミの煽りで、対案と位置付けられることを全面的に否定するつもりもないが、「特別区設置」こそが現状に対する対案であり、我々も現状維持を重んじるわけではないことから現状を転換する方向性として「総合区の活用」を提案しているのだ。

 前ふりが長くなったが、では「総合区」とは何なのか?

 参考: 「総合区」…地方自治法の一部を改正する法律の概要

 簡略化して表現するならば、「行政区⇒総合区」であり、行政区がアップグレードされたものである。昨年改正された地方自治法により初めて「総合区」という言葉が出てきたが、実は、行政区のアップグレードについてはこれまでも様々な検討がなされ、様々な取組みが各政令市で実施されてきたことを忘れてはならない。
 大阪市においても、都市内分権の流れを受けて、平松市政の時には行政区長の権限強化が図られた。また、区政会議や地域活動協議会という取組みの序章が始まっている。橋下市政においても、象徴的な公募区長をはじめ、行政区に権限や財源を付与する取組みが進められており、私も何度も橋下市政における評価すべき点として議会でも触れている。

 「総合区」では、区の仕事内容を条例で定めることとされている。これまでは、要綱・規則で定められていたものを議会承認案件の条例へと格上げをし、仕事の裏図けを条例によって担保することになる。このことによって、予算編成権がない(予算編成権はあくまでも市長にある)市長の指揮監督を受ける区長であっても、条例に基づき、より区民目線での予算提案を市長に対して行う事が可能となる。
 また、総合区長は議会の同意を得て選任される特別職となることで、住民代表である議会の関与が深まり、リコールの対象ともなることから、より住民に近い存在となる。

 今後の課題としては、どのような仕事を総合区長の事務として位置付けるか?である。現在の大阪市の行政区は他の政令市と比較して、まだまだ区に下ろせる事業があることは明確である。身近な行政を目指すにあったて、どの様な事業を地域判断に委ねるのが効果的であるかが今後の検討課題である。大阪市の持てる権限や財源も活かし、スケールメリットを損なわせることなく、行政区の役割を総合区として拡充する。
 
 我々は、「総合区」の活用に向けての取組みをチンタラするつもりはない。私が「ゆっくり」と表現したことを強調して、勝手に後ろ向きであるかのような発信をされているマスコミ報道もあるが、住民自治に関する取組みなので、よく住民の意見を聞き、且つ、(自民党が多数会派でもないことから)他会派との調整もしながら進めるという意味であることはご理解頂きたい。

 冒頭記載の様に、自民党大阪市会議員団では既に「総合区」活用の方針を明確にしている。
 北区、中央区の大阪中心部における行政区でいずれか一か所、東淀川区、平野区といった人口規模の比較的大きい行政区でいずれか一か所、二か所について総合区を平成28年4月1日からモデルケースとして設置し、その状況を見定めて、総合区を増やしていく。将来的には、11ぐらいの総合区を設置することを念頭におき、総合区活用を「イレブンプラン」とも表現させて頂いている。
 総合区の活用と合区は一体ではない。他会派では、合区したうえで「総合区」を活用するという考え方もある様だが、自民党はそう考えてはいない。勿論、現在の24区体制における問題点も認識しているが、地域コミュニティーの重要性を考える時、合区ありきの議論をすべきとは考えていない。しかし、総合区の活用を契機として、例えば調達事務を複数の行政区で行いハブとなる行政区を総合区として位置付けるということも念頭に置いている。5年、10年という年月の中で、自然な流れで合区が実現することもあるだろう。
 今回の特別区設置における強引な上から目線で勝手に決められた区割りが否定された事を踏まえれば、24行政区の各区における地域性というものは大切にしていくのが民意であると受け止めている。

 ただ、上記はあくまでも自民党大阪市会議員団の指針であることから、今後は他会派とも協議をして、方向性の一致を模索し、その上で住民の意見も盛り込みながら、今年秋ごろを目指して提言・提案ができる状態にしたいと考えている。

 特別区設置が否定されて、すぐに「総合区」「総合区」…早く早くと煽り立てる雰囲気には違和感を覚える。特別区設置が否定されたからこそ、どの様な現状転換を図るのかということを早急に提示すべきであることは理解するが、「総合区」については、行政区のもとでも転換をしつつあるものであり、住民に直結する部分もあることから地に足着いた議論を経て方向性が示されるべきものと考える。