澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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 産院退院からの1ヶ月間、初産の場合、母と子の生活は、予想以上に大変だと思います。

 9回にわたって、1ヵ月健診時までに経験された心配事、気がかりなこと、1ヶ月以後の経過などへの答えを、数千人の赤ちゃんの健診に携わってきた私の経験から書きました。ママの気持をやわらげることに役立てていただければ嬉しいと思います。

 赤ちゃんが子宮内で過ごす40週の間、ママやご家族は、赤ちゃんの成長を早くしようとか、栄養をもっとたくさん胎児に届けようとは思われなかったと思います。自然任せ、時間任せの時間だったはずです。

 赤ちゃんは出生した後も、胎内にいるときと同じように、自然に育つプログラムを身に付けています。
 
 間違ったおとなの発想で、余計なことをしようと考えるから、ママは赤ちゃんが期待にこたえてくれないと焦ったり、悩んだりされるのだと思います。1ヵ月健診のときのママのお話から、私は育児不安のかなりの部分は心配しないでよいこと、知ろうとしないでよいこと、知りようの無いことであることを痛感しています。

 なるべく単純で自然な育児を考えてくださいね。小さな不安、心配しないでいいことを積み重ねて、心配しながら育児をすることは、母乳の分泌を悪くしますし、赤ちゃんも絶えず緊張していなければならないだろうと思います。

 愛育病院の内藤壽七郎院長は、育児ノイローゼに近いママに、「お母さん、鏡で自分の顔を見て御覧なさい。ひきつってませんか?そんな顔だと赤ちゃんが落ち着けませんよ。笑った顔をして御覧なさい。口元をニーッと笑顔にして」と話されてました。

 赤ちゃんといることが楽しくて、楽しくてと考えながら育児されるママのほうが、赤ちゃんにとっても幸せです。

 疑問や心配事が生じたら、前回までの記事を読み直してくださいね。

 赤ちゃんの眠りが浅くて、よく泣いて、どうしてこんなに泣くんだろう、睡眠不足になるんじゃないかと心配されるママやご家族は少なくありません。
 
 これまでも何度かこのブログに書いてきましたが、ヒトの赤ちゃんにとって泣くことには生存権がかかっています。他の哺乳動物に比べて、ヒトの赤ちゃんは生まれてすぐには体を動かすことができず、泣いてママを呼び、抱き上げられてオッパイを飲ませてもらうことで生きていくことができます。頭が大きくて、頭のサイズに合わせて生まれてくるヒトの赤ちゃんは、生まれてすぐから自分で母の乳房まで移動できる他の哺乳動物より1年近く早産で生まれてきます。大声で頻繁に泣くことは、ヒトの赤ちゃんの特技です。体を動かせない代わりに与えられた生きる手段です。

 だから、赤ちゃんは眠りが浅く、ちょっとした刺激ですぐ眠りから覚め、大声で泣きます。頻繁に大声で泣くことを許されている赤ちゃんは、哺乳類の中でヒトの赤ちゃんだけです。家族、仲間集団が赤ちゃんを護ってくれるから安心して泣くことができるのです。

 産声の周波数はほぼ400ヘルツ(ドレミのラの音)で万国共通といわれていますが、最初の1ヶ月くらいは、赤ちゃんの泣き声は単調で、複雑な発声は不可能です。オッパイを飲むことを最優先にしている咽喉の構造のため、泣き声は一種類で事足りるように、ただ泣けばいいようにできています。おなかが空いた、オムツが汚れた、眠いなどを泣き声の変化で知らせることは4ヶ月ころにならないとできません。

 ただし、泣き声が単調でも困らないためには、赤ちゃんが泣いたら、なるべく早くママが抱き上げてオッパイを含ませるというフォローがなければならないのですがが。オッパイ以外に赤ちゃんを泣き止まさせる方法は無いと考えたほうがいいと思います。抱き上げてあやしても、赤ちゃんは泣きやんでくれません。明治時代のように新生児のうちから規律を身に付けさせようとか、時間を決めて3時間おき授乳しようとか考えないでくださいね。
 泣くのはおなかが空いているからだとか、ママのオッパイの出が悪いからオッパイ不足で泣くんだとか、母親失格だとか、ママが自分で自分を追い込むようなことは考えないでください。
 赤ちゃんの泣くことを母乳不足と結びつけることは絶対にしないで下さい。
 赤ちゃんは頻繁に泣くように作られて生まれてくるのだから、泣いたら抱っこしてオッパイをもませるだけでいいんだと考えてください。3ヶ月になれば、赤ちゃんは自分でオッパイを欲しがり、飲みたいそぶりを見せるようになりますし、夜まとめて眠るようになりますから。

 赤ちゃんの眠りは、頻繁に目を覚まし泣いて存在をアピールするために、浅い眠り(REM睡眠)がおとなよりずっと多くなっています。胎内で胎動が多かった時間帯、夕方から深夜に掛けて、出生後も頻繁に泣くことが多いようです。その時間帯、頻繁に授乳するとママは疲れるし、おっぱいの張りもなくなるので、ママが私のオッパイ出てないんだと落ち込んでしまわれる魔の時間でもあります。
 でも、これは何の不思議も無い現象で、2ヶ月にはいると赤ちゃんが変わってきますから、それまで待ってください。決してママ自身を追い込まないように、責めないようにしてください。もちろん、ミルクを補足して解決することでは有りません。
 オッパイは、張りを感じないほど授乳するほうが分泌量が増えます。どんなに頻繁に授乳しても、赤ちゃんが吸いついたら40秒後には乳腺で新しい母乳が作られ、射乳反射があり、赤ちゃんはごくごくと飲んでくれるはずです。これまでに何度も同じことをこのブログに書いてきましたから、以前のブログをお読みいただいて参考にしてくださいね。

 よく泣いて、長い時間オッパイを離さないから、赤ちゃんが睡眠不足になるんじゃないかという心配は、まったくありませんからね。出勤時間も約束の時間もなく、好きなだけ寝たり起きたりできる特権を赤ちゃんは許されているのですから。
 
 赤ちゃんは泣くように作られてるのだから逆らっても無駄、もっと眠らせようという働きかけも不可能で、赤ちゃんはマイペースを崩してくれませんから、おとなの発想で逆らわないでください。

 母乳栄養、人工栄養どちらでも、赤ちゃんは鼻呼吸を続けながら、乳房・哺乳瓶をくわえっ放しでオッパイを飲んでいます。オッパイを飲み込むために短い時間息継ぎをしているという説もありますが、私は空気を鼻から吸い込みながら同時にオッパイを口から飲みこんでいるのだと考えています。
 
 生まれてしばらくの赤ちゃんの咽喉や口の構造は、オッパイを飲むためだけに適しています。よく泣きますが、単純な音域の泣き声で、空腹や不快感を知らせるような複雑な泣き方は、3-4か月にならないとできません。
 
 赤ちゃんは、空気とオッパイの混じったものを胃に飲み込み、呼吸器にも吸い込んでいます。気管上部にはオッパイが入り込み、咽喉や鼻腔にオッパイがたまります。
 
 胃に入った空気は腸を経て、オナラになって体外に出て行きますから、赤ちゃんは頻繁に、授乳の度にオナラをします。腸に移動した空気は、おなかを膨らませますから、赤ちゃんのおなかはカエルのおなかのように空気で充満しています。真っ赤な顔をしていきんだり、ウーンと大きな声を出したりするのも、おなかの空気の仕業ですから心配要りません。おとなから見ると苦しそうに見えるので、ママが心配されますが、心配の種にしないでくださいね。
 
 胃にたまった空気に圧されて、オッパイが口から溢れ出ますから、その対策として赤ちゃんを縦抱きにしてゲップを出させます。でも、ゲップはうまく出るとは限らないし、胃の中の空気はゲップで口から出さなくても、オナラになって出て行きますから、ゲップが出るまで必死に背中をさする必要は全然ありませんから、儀式のつもりで適当に切り上げてください。
 
 鼻や咽喉や気管上部など呼吸器に入ったオッパイは、鼻の奥のグズグズ音や、咽喉のゼロゼロ音の原因になります。

 鼻のグズグズは鼻つまりと表現されることが多いのですが、単にオッパイがたまっているだけのことが多いようです。ほんとうに鼻がつまれば赤ちゃんはオッパイが飲めなくなります。くわえた乳首を離して苦しがります。乳首をくわえたままで、スースー鼻呼吸ができている限り、鼻つまりではありません。咽喉のゼロゼロも同じです。
 
 母乳の場合は、鼻の奥や咽喉の母乳は、鼻から侵入する外界の異物や病原体をブロックする役目を果たします。中耳に入っても、気管上部に入っても、母乳である限り心配する必要はありません。
 
 ミルクの場合は、赤ちゃん糸って100%異物ですから、呼吸器の感染や、中耳炎の原因や、アレルギーの原因になりますから、小児科医として私は、できることなら赤ちゃんは母乳で育って欲しいと願ってます。

 臍(へそ)は、胎盤から伸びる臍帯が胎児の体内に入り込む場所の名残りです。カエルは卵生ですからおへそはありません。おへそは、受精卵がママの胎内である期間成長して胎児になる動物、胎生動物だけにあります。
 
 臍帯は出生と同時に必要がなくなり、胎盤が娩出されると、赤ちゃんのおへそに近いところで糸で縛られ、赤ちゃんから切り離されます。赤ちゃんのおなかの表面に残った臍帯は、数日で萎縮し脱落します。臍脱といいます。
 
 臍脱後、何週間も、赤ちゃんのおへそがいつまでもジュクジュクしていることがあります。1ヶ月健診のおへその診察では、大部分が臍肉芽腫です。おへそがジュクジュクしている時は先ず、おへその窪みの奥のほうをのぞきこんでみます。赤みを帯びた、エノキダケの頭のような湿った半球状のものが見えれば臍肉芽腫です。火傷や切り傷などの深い傷が治っていく時、傷の表面に赤い小さな粒粒ができるのが肉芽です。同じ肉芽が差遺脱の傷跡にできたものが臍肉芽腫です。処置は、肉芽の表面を硝酸銀液で焼き生理的食塩水で硝酸銀を中和させておけば、数日でおへそは乾きます。処置は、焼くといっても痛みはありませんし健康な皮膚が傷つくこともありません。
 臍肉芽腫のエノキダケの頭が大きくて茎まで見えるほどだったら、茎の付け根を糸で縛ることもできます。数日で縛った先が萎縮して脱落します。
 
 稀に、尿膜管遺残のために、おへそからサラサラした液体が出続けることがあります。尿膜管は臍帯の中に通っている赤ちゃんの尿を胎盤に送る管のことです。成人してから発見されることもあり、フィギュアスケートの羽生弓弦選手が手術を受けて話題になったのを覚えている方もお有りでしょう。手術をして尿膜管をふさぐ必要があります。
 
 出べそも気にされる方が多いですね。おとなの親指の先くらいまでの出べそは問題ありません。臍帯が通っていた穴(臍輪)は自然に狭くなりますし、腹筋が発達し、腹壁の皮下脂肪が厚くなれば、おへそは自然に引っ込みます。とても大きな出べそで、押し込もうとすると出べその中身がグジュグジュとおなかに戻っていく感じがあったり(大部分は腸ではなく、エプロンのように腸を保護している大網ですが)、稀に腸の一部が出べそに入り込んで腸を塞いでしまうような事があったら手術が必要です。
 
 男児の陰嚢に水がたまる陰嚢水腫は、ライトで透かして見ると。均一な赤いスクリーンを見るような感じです。触った感じは、縁日の風船釣のゴム珠のような感じです。これは、やがて水が吸収されますから心配要りません。
 
 同じ陰嚢のふくらみでも、光に透かすと中に何か入っているような感じがあり、指で押し込むとグジュグジュとなかみがおなかに戻っていく時は鼠径ヘルニアです。ふくらみを押してもおなかに戻らず、嘔吐・便秘や、痛そうに泣くような時は緊急手術が必要です。嘔吐・便秘・腹痛が無くて戻りにくい場合は、眠ると筋肉がゆるんで自然に戻ることが多いでしょう。鼠径ヘルニアは、自然治癒は少なく、ヘルニアバンドで抑えておいても効果がありませんから、いずれ手術が必要です。
 
 女児では、鼠径部がはれ、小指の先くらいの、リンパ腺のようなグリグリした球状のものを触れることがあります。卵巣のヘルニアです。無理に押し込もうとすると、卵巣や周囲が脹れて傷むようになりますから、とりあえずは様子を見てください。泣き寝入りすると、おなかに戻ることが多いようです。

 男女児とも、鼠径ヘルニアは放置せず、かかりつけ医に診てもらってください。

イ) 顔にブツブツができて、だんだん増えている。アトピー性皮膚炎?
 
 生後6週くらいまでは、皮脂腺の働きが思春期並みに活発です。母体から移行したアンドロゲン(男性ホルモン)のによるニキビです。乳児湿疹と云われています。見かけは思春期のニキビ同様、キスチョコ型円錐形のブツブツです。皮脂腺の働きで、赤ちゃんの肌は指で触るとベトベトして、眉や頭に粉チーズのようなものが出てくることもあります。
 
 乳児湿疹は、生後2週くらいから出始め8週くらいまでに自然に消えます。それまでは、入浴の時に、石鹸を泡立てて付けて、お湯で洗い流してください。こすらないことと、石鹸をよく洗い流すことが大切です。外用薬は不要です。

 アトピー性皮膚炎は、生後2か月以後、乳児湿疹と入れ替わるように出てきます。出生直後からアトピー性皮膚炎が出ることはないようです。胎盤を介して胎内で胎児がアレルギーの原因物質に感作されることや、母のアレルギー抗体が胎児に移行することが有るのか無いのかはっきりしていませんが、あるとしても、ごく稀でしょう。

ロ) おむつかぶれ
 
 生後1か月くらいは、赤ちゃんは授乳の度にオナラをしウンチをします。胃直腸反射という胃腸の原始反射の為です。この反射は1か月過ぎると自然に消えていき、短い期間にウンチの回数が激減します。2か月頃には、母乳栄養の赤ちゃんは1日1回前後までウンチの回数が減りますが、決してコロコロの固いウンチになることはなく、よく消化された色の濃い粘っこいウンチが大量に出ます。ウンチの回数が減ったから母乳が足りなくなってきてるんだとは決して考えないでください。母乳の出と赤ちゃんの排便回数は関係ありません。

 ウンチの回数が減るまでは、オシリ周囲が赤くなり、そのままにしておくと皮が赤剝けになってしまいますから、オシリが赤いなと思ったらぬるま湯で洗ってください。

 台所で使う食器洗い洗剤のボトルをよく洗って、ぬるま湯を入れ、おむつ替えの時、ボトルのぬるま湯で赤いオシリや鼠蹊部などをよく洗ってください。下に古いバスタオルでも敷いておけば、洗面器もたらいも持ち出さずに済むでしょう。洗った後は乾いた布などで濡れた皮膚の水分を吸い取ってください。決して、こすらないようにしてください。

 ただれて赤剝けになったおむつかぶれは外用薬で治療しなければなりませんが、そうなる前に洗っていれば、ただれて痛々しい感じにならずに済みます。

 ママから「ミルクはどれくらい補足したらいいの?」と質問されることがよくあります。
 
 育児用粉乳は改良が進んで、現在では、赤ちゃんの発育を妨げず、安全に使えるようになりました。母乳がどうしても与えられない場合は、ミルクを与えれば、赤ちゃんはちゃんと育ちます。
 しかし、育児用粉乳が母乳と肩を並べるようには絶対にならないでしょう。
 人間の赤ちゃんには、できる限り母乳が第一選択です。母乳は百%ママの血液成分から作られます。胎内で臍帯を通ってママの血液成分が胎児を成長させていることには、だれも疑問を感じないでしょう?育児用粉乳は百%人間の血液成分とは無縁のものから作られています。臍帯血同様、母乳はママの血液成分を原料にして乳腺で分泌されるものだから、母乳が赤ちゃんにとって最高の栄養なんです。
 それと同じように、牛乳で牛の赤ちゃんは問題なく育ちますが、人間の赤ちゃんは牛乳にいろいろ手を加えないと牛乳では育ちません。
 
 生後2-3か月までの赤ちゃんは、空腹感・満腹感を感じる能力(脳力?)がありませんから、母乳の場合は、赤ちゃんは満腹して飲み止めるのではなく、飲み疲れて飲むのを止めます。だから、単純に、赤ちゃんが泣いたら抱き上げて母乳を飲ませ、飲み止めたら寝かせ、泣いたら、寝かせた直後であっても3時間後であっても、また抱き上げて母乳を飲ませればいいのです。ミルクは、哺乳瓶、人工乳首で哺乳することには努力は必要なく、疲れることなく作っただけ飲んでしまいますから必要以上に大量にミルクを飲んで、むやみに体重ばかり増えて、成人後のメタボの種を蒔くことになってしまいます。
  
 出産直後の産院では、赤ちゃんの脱水症、低血糖、体重増加不良、ママの疲労などを防ぐ目的でミルクが補足される場合が多いようです。特に初産の場合は、母乳がよく出るようになるのが遅く、乳首や乳腺のトラブルも起こりやすいので、ミルクに頼る必要がでてくるようです。
 
 このような背景を考えて、ミルク補足の必要の有無は、慎重に考えてくださいね。どのくらいミルクを補足するかも、母乳の出方を考慮して、体重1kg当たりのミルク量を細かく計算する必要があります。ミルク缶に書かれた大雑把な数字で考えず、母乳の価値をよく理解している産科医、小児科医、助産師に相談されることをお勧めします。
 
 赤ちゃんの体重の数字を気にされる方が多いのですが、1日当たりの体重増加量を30gと考えては多すぎます。母乳の場合は、最低1日20gの体重増加なら問題ありません。
 
 母乳は、単に体を大きくする栄養物だけではなく、ママに抱かれて声を聴いて、目で見て、匂いを感じて、抱きしめられて、ゆっくり揺すられて、授乳に伴うママの動作のすべてが赤ちゃんの脳を発達させます。
 
 ミルクを補足する必要があったとしても、必要とする条件がなくなったら、なるべく早く母乳だけで育児するように考えてください。

 ハイドロロコイドは最近創傷処置に使われる、傷口を湿った状態に保って治癒を促すための、傷口を被覆密閉する物質です。かつては、傷口は乾燥させ、抗生物質軟膏で無菌状態を維持して治癒を待つと考えられていましたが、最近では、傷口部分に分泌される体液を利用して傷を治すという考え方に変わりつつあります。余計なことをせず、自然まかせ、人に備わった自然治癒能力で傷を治すという考えです。

 市販のハイドロロコイドパッドは何種類か発売されていますが、代表的なものはバンドエイドのジョンソン&ジョンソン社から市販されている、「キズパワーパッド」です。用途、範囲に応じて、大小様々なタイプがあります。

 最初の赤ちゃんを母乳で育てる場合に、案外てこずるのは、乳頭部のこすれ、切れの痛みです。バーユとか羊の油とかを塗り、細菌感染があれば抗生剤軟膏を塗るくらいしか対処法がなく、頻回に母乳を与える必要上、乳頭のキズはとても長引き,治りにくい厄介もののようです。痛みも強く、ママはその痛みに耐えるしかありません。

 ネット記事では、乳頭のキズに「キズパワーパッド」を使用してうまくいった経験記事がたくさんアップされています。
 
 先日、8ヶ月の赤ちゃんに授乳中のママから、赤ちゃんの歯が生えてきて、乳首を噛まれ傷ができ、その痛みで授乳がつらいという相談があり、「キズパワーパッド」の使用をお勧めしました。昼過ぎに「キズパワーパッド」で乳頭部を覆い、夜には痛みがなくなり、翌翌日には傷口がふさがっていたと知らせていただきました。効果抜群だったようです。
 乳頭のトラブルでお困りのママは、試してみられたらいかがですか。他の軟膏と併用しないこと、まず流水で傷ついた部分をきれいに洗うことなど、いくつか注意事項がありますから、添付文書をよく読んでから使ってくださいね。

 やけど、床ずれ、擦り傷、引っかき傷にも有効です、

”五つ月を 越すと近所へ 義理を欠き”
 岩田帯をしめる頃になると、おなかが目立って恥ずかしく、表へ出ることも遠慮するという、しとやかな江戸時代の女心を詠っています。
 いまや、五ヶ月以後は動いても流産の心配は無い、旅行するなら五ヶ月以後と言われています。看護師さんたちも、出産予定日6週間前まで仕事を続けています。

”子を持ってから 三ン日を やっと塗り”
 江戸時代は、月の一日、十五日、二十八日を式日といい、休日とされていました。お祝いや寄り合いは式日の行事です。子持ちになって、お化粧するひまがが式日の三日しかなくなってしまったという場面なのですが、今のママは、上手に余暇を見つけて、化粧もお出かけもしてますね。

”粉をふいた 子を抱いて出る 夕涼み”
 風呂あがりにベビーパウダーをつけた子を抱いて夕涼み。
 江戸時代のベビーパウダーは天花粉。天花粉とは、キカラスウリの根からとった澱粉です。牡蠣粉(牡蠣の殻を砕いて粉末にしたもの。日本画の胡粉にも使います)も使われたようです。内藤壽七郎先生は、ベビーパウダーをボレイコといってらっしゃいました。熊本生まれの内藤先生らしい。現在市販されているベビーパウダーは、タルク(滑石)の微細粉末を使っています。いずれも、微細な粉末が量あたりの表面積が大きいことから、汗を吸い取り蒸発させる目的で汗取りに使われてきました。タルクの粉末は肺に吸い込ま無いほうがよいので、赤ちゃんの顔や胸にパフではたきつけるのは避けたほうがよいでしょう。化粧品会社、育児用品会社は安全と言っていますが、肺に吸着すると取れにくいものですから。天花粉、牡蠣粉は名前だけが残って、今では使われていないと思います。
 江戸時代の風物詩として、路地の縁台に天花粉で白くなった赤ちゃんを抱いた母親が座っている様子が目に浮かびます。

”迷い子の 親はしゃがれて 礼を言ひ”
 長屋総出で迷い子探し。無事発見。しゃがれ声が親心をあらわしてます。迷い子探しは、大きな声でこの名を呼びながら、あちらこちら歩きます。そういえば、映画「ウッドジョブ」に、迷い子探しのシーンがありました。

”ねんねこの、腰は左右へ 少し振り”
 おんぶは、安全で暖かくて、子守しながら両手が使えると言う便利な方法です。しかし、明治時代に、ガニマタになると言って否定されました。それ以後現在まで、おんぶのメリット・デメリットがいろいろ論じられています。否定する人も肯定する人もあります。現在では、おんぶされた子を見ることは街中ではとても少なくなりました。家では、おんぶを愛用されているママもあります。前に抱くほうが、顔が見えて安心感があるのでしょうか。抱っこの外出は、足元が見えにくくて、はらはらすることもありますが。
 おんぶに限らず、前抱きのだっこバンドでもスリングでも、抱っこした子をゆっくり揺らしているママがほとんどで、ゆっくり揺すられることが赤ちゃんにとって心地よいことを、経験的にママが感じ取っていられるからかもしれません。理屈抜きで自然にママの体が動いてしまうのかもしれません。「腰は左右へ少し振り」は、今も残ってますね。
 おんぶも抱っこも、長時間続けることは避けてくださいね。エコノミークラス症候群と同じように、赤ちゃんの体や足の動きを束縛し続けると、股関節脱臼状態になることが心配です。
”負われた子 のどぼとけまで 陽があたり”も、子守に雇われる女の子がいたころはよく見かける情景だったのでしょう。

”女房は 客へ添乳の 申しわけ”
”添乳して 棚に鰯が ござりやす”
 子どもに乳を飲ませていれば、天下御免で仕事やしきたりを無視できたよい時代の情景です。客が来ても知らん顔、亭主が帰ってきても食事の支度をせずにすむといった、のんびりした社会環境は、母乳が子育ての絶対条件だった時代の生活が生み出したルールだったのでしょう。

”安産着 鷺とすっぽん 舞ひ遊び”
 産着は昔は大切なものでした。背中に糸飾りを縫いつけた背守り、すくすく伸びるようにという祈りをこめた麻の葉模様、魔よけの色とされていた赤い産着など、定めない赤子の生命をつなぎとめるための心づかいが込めらtれていました。鶴が鷺に、亀がすっぽんに見えたところで、親心は親心、貧しい親の姿を茶化していますが、つきはなしていないところが私は好きです。

 江戸川柳は、飾らない江戸庶民の姿を今に甦らせるタイムマシーンです。
 誹風柳多留という川柳集から幾つか拾って見ましょう。

”かみなりを まねて腹掛け やっとさせ”
 金太郎の腹掛けをご存知ですか。昔の男の子には、おなかを冷やさないように、腹掛けをさせていました。
昔話の絵本の定番だった、熊と相撲をとる金太郎の絵なんて、もう過去のものでしょうか。
夕立がきて空気が冷えてくると、子どもがおなかを冷やすのが心配です。そこで、「かみなりさんにおへそ取られるよ」と腹掛けをさせる口実に雷さんが登場するのですが、江戸時代に限らず、つい50年位前までは、子どもがおなかを悪くすると生命に関わることが多かったので、この川柳はおかしいだけでなく、懸命な親心も感じられますね。

”取揚婆 屏風を出ると 取り巻かれ”
 取揚婆は産婆、今の助産師さんのこと。お産は家でするもので、屏風の陰で。産婆さんの手で赤ちゃんが取り揚げられていました。生まれた子が五体満足か、男の子か女の子か、一刻も早く知りたい気持ちは今も昔も変わりません。

”子ができて 川の字なりに 寝る夫婦”
 明治以後の欧米育児学が、川の字なりの添い寝添い乳を奪ってしまいました。赤ちゃんを窒息させるから危ないとか、自立心を妨げるとかいう理由で。でも、赤ちゃんは這えるようになると、勝手にママの布団にもぐりこんで来ます。現在では、母と子のふれ合いや、授乳の視点から、添い寝添い乳の利点が見直されています。睡眠薬や、泥酔や、睡眠薬・鎮静剤の服用の場合を赤ちゃんの窒息の危険も考えられますが、ママはそばに寝ている赤ちゃんの体動に合わせて、ベッドの上でダンスをしていると、添い寝の観察をしたイギリスの研究者が表現しています。

”乳貰いの 袖につっぱる 鰹節”
”乳貰いは 冬の月へも 指をさし”
”南無女房 乳をのませに 化けてこい”
 この3句は母をなくしたこのために貰い乳に行く男やもめの父親がテーマです。
 
 産後の母子の死亡率が高かった時代には、乳の無い子と、飲む子がいなくなった母が、町にたくさんいました。乳の無い子の父親が、子を亡くした母の乳を飲ませてもらいに子を抱いて歩く姿が珍しくなかったのでしょう。袖に突っ張る鰹節は、赤ちゃんが泣いたら鰹節をしゃぶらせて一時しのぎをするためのもの。貰い乳のお礼は鰹節だったという説もあります
 
 2句目は、母を亡くした子を貰い乳に連れて行く途中、泣き出した子ををあやすために、冬の寒空の月を指差して、ホラお月さんだよと話しかけている父親の姿。
 
 3句目は、亡くなった妻の位牌に、乳を飲ませに化けてきてくれと拝んでいる困惑した父親像でしょうか。

 いまや、日本中どんな離島でも山の中でも育児用粉乳が手に入ります。母を亡くす子も、子を亡くす母もほとんどありません。
 この川柳は、幸いなことに過去のものとなりました。 でも、母乳の通信売買という記事が新聞に載ったのは、ついこのあいだでしたね。

 母乳に関係して、初産のママが心配されることが多く しかし、心配要らないいくつかの事をまとめてお答えします。
  ゲップが出しにくい。
  よくオッパイを吐く。しゃっくりが多い。
  おなかがパンパンに張っている。
  よくいきむ。真っ赤な顔をしてうなる。
  排便回数が多い。オナラが多い。
 この5つの問題は、すべて赤ちゃんが母乳を飲む仕組みに関係が有ります。
 
 赤ちゃんは乳首をくわえっぱなしで、口で呼吸をすること無しに、スースーと鼻で呼吸をしながら、母乳をゴクゴク飲み込んでいます。離乳が始まって、オッパイ以外のものを飲み込むことができるようになるまでの最初の数ヶ月間だけの離れ業です。ママは鼻呼吸しながら口の中の物を飲み込むことは絶対できないはずです。離乳期以後は、食べ物を飲み込むときは呼吸を止め呼吸器に誤嚥することを防ぎ、呼吸する時は食べ物を飲み込むことはできません。
 
 生後間もない赤ちゃんは、首が短くて、顎のすぐ下は胸のように見えるでしょう?月齢が進むに従って、赤ちゃんの咽喉は縦に伸びてきて、4ヶ月にもなれば、呼吸と嚥下がオトナのようにきちんと分かれます。この頃には、泣き声が多彩になって、高低長短強弱さまざまな声、泣き声が出るようになります。眠い、おなかが空いた、オシリが汚れてるなどの赤ちゃんの訴えをママが聞き分けられるようになります。お話しするように、いろいろな声を出すようになります。
 
 生まれてすぐの赤ちゃんの咽喉はオッパイを飲むことだけに特化していると言っていいくらいで、泣き声の高さは産声と同じように、ドレミの「ラ」周辺の高さの泣き声一種類だけで単調、おなかが空いたとかオシリが汚れて気持ちが悪いとかを泣き声で聞き分けることはできません。前回書きましたように、生まれてすぐの赤ちゃんは頻繁に泣きますが、その泣き声に対して、何故泣くんだろうと泣く理由を考えて首をひねる必要は無く、赤ちゃんが泣いたら、余計なことを考えず、赤ちゃんを抱き上げてオッパイを飲ませてあげれさえすれば、赤ちゃんの泣き声の役割はかなえられるというわけです。

 赤ちゃんの喉頭蓋(気管を開閉する喉の蓋)は、オトナより高い位置、第3頚椎辺りにあり、口蓋垂(ノドチンコ)が気管入り口に覆いかぶさっているので、口蓋垂を開閉しないでも、空気と母乳が混ざったオッパイが、うまく気管にも消化器にも流れ込みます。

 消化器にはオッパイと一緒に大量に空気が流れ込みますから、胃にたまった空気を追い出すためにゲップを出させる必要があると考えられています。でも、ゲップを出さなくても、最初の1ヵ月間ぐらいは、赤ちゃんには胃ー直腸反射という奥の手を持っています。オッパイを飲むとそれに反応してオシリからオナラとウンチを出す反射です。この反射は1ヵ月間だけでそれ以後は消えます。

 2ヶ月目にはいると赤ちゃんの排便回数は激減することが多いのですが、これは、胃腸の消化液の分泌が増えて消化能力が高まることと、空気をたくさん呑む哺乳から、あまり空気を呑まない哺乳に変わってくるために、自然に排便回数が減り、胃ー直腸反射が必要なくなるからです。母乳が出なくなってウンチの回数が減るのではありませんから心配要りません。排便回数が減った分、水分量が少なくよく消化された白いブツブツがない軟らかいウンチがまとめて大量に出るようになります。固くて出にくいウンチになることは無いはずです。
 言い換えれば、胃ー直腸反射は、ゲップの形で口から空気を追い出さなくても、口からゲップを出さなくても、オシリからオナラを出す働きをしているのです。

 呼吸器(気道上部)にも、空気と母乳が混じったものが入りますから、鼻の奥がグジュグジュ音を出し、喉の辺りではゼロゼロが聴こえます。どちらも、母乳である限りは悪いことはしませんから、心配する必要はありません。この状態を鼻がつまっていると表現されるママが多いのですが、鼻呼吸しながらオッパイが飲み込めるなら、鼻づまりではありません。鼻の奥まできれいにしようと考えないでください。鼻の穴をのぞいてみて、ハナクソがあるようなら、それは取り除いてください。

 気管の中にも、かなり奥まで母乳が入るのだそうですが、母乳である限りは問題ありません。母乳は、100%ママの血液から作られるもの、赤ちゃんの体のどこに入り込んでも、アレルギーや肺炎の原因にはなりません。私は、鼻の奥や喉の母乳は、空気中の異物を気管の奥に入らないよう防ぐ役割を持っているのだろうと考えています。赤ちゃんにとってマイナスの現象ではなく、赤ちゃんを護る役割を持っていると思っています。
 人工栄養でもミルクが鼻や喉や中耳や気管にに入ると思われますが、ミルクの場合は、アレルギーや中耳炎の原因になりうると考えます。
 赤ちゃんの咽喉の構造が母乳用にできているのですから、赤ちゃんになるべく母乳を飲ませるほうが自然で安心ではありませんか?
 
 さて、ゲップの問題です。ゲップはいつも上手に出るものではありませんから、長時間抱っこしてゲップが出るまで背中をさすっている必要はありません。ゲップが出なくて胃に空気が残っていても、じきにオシリからオナラとして出て行きますから。
 ゲップが出ないままて仰向けに赤ちゃんを寝かせると、口からダラダラと、時には吹き出すように大量に、母乳が溢れてくると思いますが、ふきとっておきさえすればそれで充分です。頻繁に、みぞおち辺りが凹むくらいに嘔吐する赤ちゃんの場合は消化器の異常を考えなければなりませんが、胃の中の空気に圧されて溢れてくる溢乳は、赤ちゃんはすぐにオッパイを飲んでくれますし、体重の増加にも影響しません。吐乳と溢乳は全く別の現象で、吐乳は発育に影響が出てきますし検査も必要ですが、溢乳は心配する必要がありません。溢乳を防ぐためのゲップ出しは、母乳栄養の赤ちゃんではそれほど気を使わずに、程々にした方がいいでしょう。極端な言い方をすればゲップ出しは、どうでもいいことのひとつです。

 シャックリはオタマジャクシから始まって、水陸両棲動物には必要な反射です。急に呼吸器に液体が押し寄せてきた時、気道を瞬間的に閉鎖して肺が水浸しにならないようにする反射がシャックリです。人間の赤ちゃんも、胎内で羊水に浮いている赤ちゃんはよくシャックリをしています。胎児は未だ働いていない肺を持っていますから、水陸両棲動物状態ですからね。
 出生後も、赤ちゃんはよくっシャックリをします。オタマジャクシの名残だと考えてください。心配しないでも赤ちゃんのシャックリはそれほど長い時間続くものではありませんから。シャックリは子ども時代に多く、成長するにしたがって減り、高齢者では脳神経系の病気が無ければ、ほとんど出なくなります。

 おなかが張っている、よくいきむ、真っ赤な顔をしてうなる。これも、空気を一杯飲み込むからです。どの赤ちゃんもそうですから、心配の種にしないでください。胃ー直腸反射が消える頃には減少するはずです。「赤ちゃんが苦しそう」と表現されるママもありますが、これはママの感情移入、赤ちゃんは苦痛が有っていきむのではないと思います。赤ちゃんに聞いて見ても返事は返ってきませんから、小児科医の勝手な判断ではありますが。

 排便回数が多い、オナラが多いという心配事の答えは、もうお分かりですね。最初の1ヵ月、胃直腸反射が活発な間は、オッパイを飲ませればオナラとウンチが出るようにできているのが、赤ちゃんです。

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