澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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 私たちの体は、例えていえば、大きな有機化学工場です。遺伝子の情報を元に、遺伝子からの命令を伝える物質がこういうタンパク質を作れと末端の製造部署に伝え、細胞が酵素の働きを借りて、命令された物質を作ります。その指揮系統の流れは、いつも同じ環境におかれていないと、命令が滞ってしまいます。それを、恒常性(ホメオスタチス)といいます。酵素、タンパク質の世界ですから、体温は酵素が働きやすい一定の温度でなければなりませんし、血液中の血球・アミノ酸・ブドウ糖・脂肪・電解質(ミネラル)・ホルモン・ビタミン・水分も、一定の濃度に維持されています。
 
 体温に関していえば、体内の温度が一定の幅を超えて高くなれば、皮膚表面の血管が拡張して血液を体の表面に集め、さらに汗をかき、体の表面を水や氷で冷やし、風に当たって体の表面の温度を下げます。最近では文明の利器としてエアコン、冷房が体温を下げる手段の仲間入りしました。
 
 体温が低くなりそうなら、体表の血管が縮小して手足が冷たくなり、筋肉を小刻みに動かして熱を作ります。体の震えや、足踏みや、歩いたり走ったりすることとで熱を作り体温を上げるようにします。衣服を重ね着するのは、体表の熱を逃がさないためです。焚き火に当たったり、エアコン・暖房を使ったりします。温かい飲み物、食物も消化管を温める役に立ちます。
 
 砂糖を口にして、血液中のブドウ糖濃度が必要以上に高くなれば、膵臓からインシュリンというホルモンが分泌されてブドウ糖の血中濃度を下げます。 

 これらは、体の恒常性を保つための働きのほんの一部分の例です。

 体を鍛えるということは、このような体の働きを強めることです。暑い夏に汗をかいて汗腺の働きを強くし、寒い冬に薄着で寒さになれ、冷たい空気を吸って咽喉の粘膜の温度が下がらないようにすることは、自らの力で恒常性を強める役に立ちます。
 
 汗腺の数は、二歳代でその後の人生分が作られますから、暑さに慣れて汗腺数を増やすことは幼児期の初期に大切なことです。
 
 暑い夏に戸外で体を動かす習慣、寒い冬に皮膚を鍛え、体を動かし、冷たい空気を吸うことは、生涯を通して必要なことです。

 ひるがえって、現代の子供たちの環境はどうでしょうか。

 家族のお付き合いでエアコン完備の生活をし、自力で寒暑に慣れる能力を身に付ける機会が減っています。
 
 学校や塾の行きかえりは自動車で送り迎えされて、歩く能力が低下してます。
 
 エアコンも自動車も、今ほど自由に使える時代が過ぎたら、今の子供たちは自力で恒常性維持に対応することが困難でしょう。

 自動車もエアコンも贅沢な食物も、文明がもたらした恩恵は、鍛えられた体力に自信を付けてから使うべきものと私は考えています。

 最近の夏の暑さに対処できない世代が増え、熱中症が増えているのも、自力で夏を乗り越える体力を持たない人が増えているからだと私は考えています。

 育児のひとつの目標として、ぜひ、お子さん方の体力アップを考えてください。

 血液中のビタミンDが少ないと、くる病になります。
 
 2013年頃、NHKTVの放送で、人工ミルクに比較して、母乳中のビタミンDが少ないという話題が取り上げられました。
 育児用粉ミルクには、たっぷりビタミンDが混ぜられていますので、この放送を見たお母さんたちの中には母乳をやめて人工栄養に切り替えなきゃと考えた方がたくさんあったようです。

 最近また、先日開催された「外来小児科学会」という医師の集まりで、母乳栄養児の血液中のビタミンDが、人工栄養児の血液よりずっと少ないという研究発表があり、それが日経メディカルという日経新聞の医学関係のネット記事で取り上げられ、最近また、ママの間で、わが子がくる病になっては大変という心配が広がり、今回もまた、一日一回は人工栄養を与えるようにされた方があるようです。

 結論からいえば、母乳栄養児では確かに人工栄養児に比べて血液中のビタミンDは少ないが、くる病になっている子は調査対象の赤ちゃんには見当たらなかったということでした。でも母乳栄養児にはビタミンD欠乏児が多いというタイトルが付いてしまうと心配になりますよね。
 NHKの場合も、今度の場合も、番組製作者や研究発表者は、事実を述べただけで責任はないのかもしれませんが、この発表が拡散した時のママたちへの配慮には欠けていたと言わざるを得ません。

 ビタミンDはご存じのように太陽光の紫外線を皮膚にあてれば、体内で合成されます。太陽光が弱く、日照時間が少ない極地に近いところの人種は色が白く、美人に見えますが、あれは紫外線を目いっぱい体に取り込みたいからです。赤道に近くなると、メラニンの多い肌の色が黒い人種が増えてきます。日本はその中間。やや薄褐色の肌です。肌の黒い人がイギリス以北に行くとくる病になります。逆に、肌が白い人たちは、赤道の近くでは強い赤外線、紫外線の為に肌を傷め皮膚がんの原因にもなります。日本人は、日本人の肌の色で、ちょうどよい太陽光を受け取ることができます。普通に手足を日光にさらしていれば、ビタミンD不足は起こりません。何かの理由で戸外に出ず、食物制限をしたりすればビタミンD欠乏を起こします。

 日本に住んで、自然の中で、自然に生活していれば、何も問題は起こりません。このことを、特に強調しておきたいと思います。

 地球上の生物はすべて、人類も含めて、太陽が何億年もかけて、地球に与えてくれたものによって、生命を維持していますし、現在も、これからも、太陽を離れては生存できません。
 
 私たちが現在使っている化石燃料は太陽エネルギーが姿を変えたもの。
 
 自然エネルギーは太陽系の一員としての地球が太陽の運行によって与えられたエネルギーです。
 
 唯一、太陽エネルギーによらないエネルギーは、核(原子力)エネルギーですが、人類はまだ核エネルギーを安全なものに手なずけることが出来ていません。

 太陽の力を再認識すべきですね。ビタミンDもその一つです。肝油も、もとはと言えば、太陽光の恩恵を受けて生存している動物の肝臓から抽出しているんです。

 私たちは、人類の手で獲得してきた文明の恩恵を受けて現在生活しています。しかし、文明の利器は両刃の剣で、本来人類が持っている力を弱めています。自動車、エアコンによってどれほど本来の生命力を弱めているか考えてみてください。

 太陽の下で、文明の利器を離れて、本来人類が持っている力を、できる限り鍛え、取り戻すべきです。文明を離れても生命を維持しうる体力を取り戻して初めて、文明を上手に活用できるのではないでしょうか。

 これからママになる女性も、ぜひ、日本人には無理な白い肌に憧れたりせず、日焼け止めを使ったりせず、体の中にビタミンDをたくさん作ってください。胎内の赤ちゃんにもママの血液中の豊富なビタミンDが胎盤をとおして与えられます。母乳中にもビタミンDが出てきます。
 生まれてきた赤ちゃんの為にも、日光が柔らかな朝夕の一刻を、手足を出して日光に当たりながら散歩する習慣をつけてください。

 母乳にはビタミンDが不足しているなどという、舌足らずな、センセーショナルなニュースに惑わされないで、日光を浴びながら、母乳を赤ちゃんに飲ませ続けてあげてくださいね。

 それでも足りないと心配なら、肝油製剤もありますし、ビタミンDが豊富な食物もたくさんありますから。

 難しい学問的な説明は省略しますが、私は充分その知識を持っていますから、いつでもご質問、ご相談ください。

 神経管閉鎖障害の予防だけでなく、葉酸は生涯を通じて必要なビタミンB群の一員です。

 19世紀半から20世紀前半にかけて、ビタミンA,ビタミンD、ビタミンC、ビタミンB群などのビタミンが次々に発見され、その働きが明らかにされました。
 
 葉酸は、1930年頃、イギリスのルーシー・ウイルス(Lucy Wills)という女性医師によって発見されました。彼女がしばしば訪れていたインド、ボンベイの紡績工場で、女工が妊娠すると悪性貧血を起こすことを知り、酵母エキスから作られた栄養補助食品「マーマイト」が治療効果をもつことを発見しました。この時は、アカゲザルを実験動物に使って研究をすすめたので、ビタミンM(monkeyのM)と名付けられたようです。ビタミンMという名は、今は使われていません。ビタミンB 群の一員なのですが、葉酸と呼ばれています。
 
 葉酸という名はまだそのころには無く、1940年頃のアメリカで、ホウレン草から抽出された結晶が貧血治療に効果があることが発見され、葉酸(folic acid)と名付けられました。ホウレン草の缶詰を食べるとパワーが出るポパイの漫画は1928年から始まったそうですが、ポパイに熱狂した少年が成人して研究者となり、ホウレン草の缶詰を筋肉増強剤の研究対象にしたというストーリーもありそうですね(笑。 私の勝手な想像ですが。
 

 その後の研究で、葉酸は、核酸が体内でつくられる過程で働く酵素の働きを助ける、「補酵素」であることがわかりました。人体は、複雑な有機化学物質の集合体ですから、例えば自動車工場で、幾つもの部品が作られ、その部品を組み合わせて複雑な部品が作られ、という順に何段階もの過程を経て、自動車がつくられるように、人体という化学工場でも何段階もの物質がつくられ、その各段階で働く酵素、その酵素の働きを助ける補酵素があります。葉酸のように一番末端の補酵素であっても、それがなければ完璧な製品は完成しないのです。葉酸の大切さを理解していただけたでしょうか。
 
 「核酸」は、遺伝情報を保存・伝達し、人体を作り上げるために、人体を構成する細胞に必ず含まれる大切な物質です。「遺伝子」といえばわかりやすいですね。
 
 胎児の体を作り育てるためにも、貧血になりがちな母体の貧血を予防するためにも、葉酸を摂取することが必要です。妊娠早期の胎児の神経管を作るためには葉酸は妊娠前から摂取する必要がありますが、妊娠の診断がつき、母子健康手帳が配布されてからも、葉酸が不足しないよう、葉酸を多く含む食品を食べ、足りない分をサプリの形で口に入れることを忘れないでくださいね。妊娠中、授乳中だけでなく、女性だけでなく、老若の別なく、すべての人に葉酸は大切なビタミンです。

 葉酸は、牛レバー(妊娠中は、トキソプラズマや細菌感染を起こさないよう、気をつけて扱って、よく加熱して食べなければなりませんが)、ホウレン草、グリーンアスパラガス、キャベツ・芽キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、大豆・大豆製品、えび、ビール酵母、ジャガイモ、アボカド、ライ麦粉などに含まれています。加熱では壊れにくいとされています。以上のような食品をなるべく食べてください。妊娠中は胎児の分まで葉酸を食べなければなりませんから、普段よりたくさん、葉酸を含む食品を食べるよう気をつけてください。
 それに加えて、葉酸、それにプラスしてビタミンB2、6、12,などを配合した市販のサプリで、400μgほど追加した方がよいといわれています。食品とサプリ合わせて1000μgを超えなければ、過剰摂取による副作用はないとされています。1000μg口にするのはかなり大変ですから、とりすぎの心配はまずないと思います。

 神経管とは何かの説明から始めましょう。
 
 私たちの脳脊髄などの中枢神経組織は、脳は頭蓋骨、脊髄は脊椎という骨の壁で密閉されています。骨の下には硬膜、クモ膜、軟膜という3層の脳脊髄膜がすっぽりと脳脊髄を包んでいます。脳や脊髄と脳脊髄膜との間にはクッションとして髄腋が充満し、脳脊髄は髄液の中に浮かんでいます。硬膜下出血、くも膜下出血、脊髄液減少症とかの病名を聞かれたことがおありと思います。脳脊髄が入った腔間には、血液とリンパ液以外は入れません。
  
 この大切な脳神経系の基になるのが神経管です。
 神経管は、受精後3-4週の間に、板状の胚葉が丸まって筒状になったものです。この期間にちゃんと筒が仕上がるのを助けるのが葉酸です。受精後3-4週といえば、まだ妊娠の自覚は無い時期です。こんなに早く大切な脳脊髄の原型が出来るってことをご存知でしたか。

 神経管が完全な筒状にならず、腰椎あたりに隙間が残ると、出生後、二分脊椎という診断名がつけられます。

 隙間が狭ければ丁寧に触診しなとそれとは分かりませんが、水頭症を起こしてくることがあります。潜在性二分脊椎という診断がつけられます。

 隙間が広ければ、袋状に髄膜が飛び出しますので、手術をして脊椎を閉じることが必要です。

 このような神経管閉鎖障害の発生頻度は、出産1万例に付き6-7例です。頻度が少ないようですが、もし閉鎖不全状態なら重い後遺症をのこします。妊娠成立前1ヵ月以上前から葉酸を充分量、食品とサプリメントで摂取していれば、頻度がぐんと減ります。

米国予防医学専門委員会(USPSTF=US Prevenntive ServicesTask Force) は、今年1月に、出産が可能な、または妊娠をを考えているすべての女性に、葉酸サプリメントの摂取を推奨すると発表しました。「米国女性の大半は,最善の効果を示すのに必要とされる量の食品を摂取していないので、400-800μgの葉酸サプリメントを内服すべきで、サプリの効果が最もよく現れる時期は、受胎の少なくとも1ヶ月前に始まり、妊娠お最初の2-3か月を通じて続く。」というものです。
 以上は神経管閉鎖障害の予防に関してのお話です。

 では、妊娠に気付いてから葉酸サプリを飲んでも意味が無いのかといえばそんなことはありません。母子健康手帳を交付されてからでも、葉酸サプリを飲み続けることには大いにメリットがあるのですが、そのあたりについては、次回に続けたいと思います。(続く)

 このところ、母子健康手帳について、いろいろ調べています。
 
 母子健康手帳は母子保健法という法律をもとに、厚生労働省令で記載する内容が定められています。それにプラスして役に立つ情報を記載することは、地方自治体の裁量で許されています。三重県津市が採用している「親子健康手帳」もその一つですが、三重県下では、省令で定められた内容にとどめ、表紙のデザインがさまざまな母子健康手帳が、地方自治体別に採用されています。
 
 省令で定められた母子健康手帳には、妊婦健診、乳幼児健診の結果や予防接種記録、ママが記載される項目などが主に使われているようですね。ネットのスレッドを読んでも、母子健康手帳は記録の為のものとして考えている方が多いようです。しかし、それだけではなく、母子健康手帳には、産科学・小児科学・精神神経学・心理学その他、妊娠・分娩・育児に関する専門家集団が作成した、とても内容が濃く、簡潔で、偏見のない情報が提供されています。中途半端な市販書より、ずっと頼りになることが記されています。是非、母子健康手帳は、記録のページではなく、ただ読むだけのページもしっかり読ん利用してください。
 
 例えば、「妊娠と食事 7カ条」というページには、①妊娠ビタミン”葉酸”をとろう。”神経管閉鎖障害の発生リスクを低減します”と書かれています。⑥「食中毒予防の為に〝洗浄・加熱”しよう」と書かれ、リステリア菌の危険性が書かれていますが、リステリア菌とは何か、ご存じのママは少ないと思います。大切なことなのですが、やや説明不足ですね。 
 
 それと、母子健康手帳がママの手に届くのは、妊娠8-11週です。妊娠届を市役所や健康センターに提出すると母子健康手帳が手渡されるやり方が多いようです。産科病医院で妊娠届に妊娠証明する時期が、安定期に入ってからですから已むを得ないのですが。
 
 実は、子宮内の胎芽・胎児のヒトとしての基本的な構造のほとんどは、妊娠10週くらいまでに出来上がりますから、母子健康手帳がママの手に渡る時から胎児を問題無く出産まで大切にしようと考えられても少し時間が遅いですね。例えば、神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症、水頭症)は受胎後2-3週間が大切で、葉酸が予防に効果があるとわかっていても、本当に葉酸を効果的に摂取しようとしたら妊娠前一か月前から葉酸を含む食品を食べ、足りない分をサプリで補う必要があります。アメリカでは、妊娠可能な年齢、環境になったら葉酸サプリを服用するよう推奨するようになってきました。

 そういうわけで、理想的な育児は妊娠前から始める必要があります。まずは、赤ちゃんを胎内で健康に育み、予防できる異常は予防し、病原体の胎内感染を避ける手段をとり、早産を避けて胎内で目いっぱい成長した赤ちゃんを出産していただきたいのです。
 そんな観点から、私のブログで、「妊娠前からの育児学」という視点を読者の皆さんに持っていただきたいと思い、新規に掲載を始めることにしました。私には役に立たないブログじゃない?と思われるママもいらっしゃると思いますが、次の妊娠の参考にしていただくとか、結婚妊娠前のお友達にお話しいただくとかにお使いいただければ幸いです。

 次回から、母子健康手帳に記載されている遅すぎる情報をメインに、具体的な事、葉酸とは何か、どんな働きをするのか、リステリア菌とはどんな細菌で、胎児にどう危険なのか、アルコールやタバコの習慣がある方には、いつから禁酒禁煙が必要なのかなどなどを掲載させていただこうと思います。

 
 なお、今秋10月から、ヤナセクリニックの母親教室の一コマとして、ブログと同じタイトルの講座を、私がスピーカーとして、設けていただく予定です。
 このテーマは、これまでのオッパイ教室のように妊娠中のママだけにお話しするのでは意味がありませんので、聴講に来ていただく方は、性別、年齢を問わずに、おいでいただくつもりです。ぜひ、関心をもたれた多くの方々に聞いていただきたいと願っています。
 
 
 
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 10年ほど前には、赤ちゃんは胎盤を通してママの免疫を貰っているから、生後6ヶ月間くらいは風邪をひかないという迷信がありました。最近は、この迷信を本気で信じているママはほとんど無いように思います。

 かつては、生活環境の中に感染症の病原体がたくさんあって、いろいろな感染症に罹ることが通過儀礼のように考えられていました。麻疹生ワクチンの誕生までは、自然感染による麻疹の免疫は終生ママの血液中に残ってて、それが胎盤を通して赤ちゃんの血液中に移行し、生後4ヶ月くらいは赤ちゃんは麻疹に罹りませんでした。限られた病気については、麻疹のように経胎盤免疫(母子免疫)が赤ちゃんを守ってくれていました。それが拡大解釈されて、6ヶ月までの赤ちゃんは風邪をひかないという迷信が生まれたのだと思います。

 実際は、どの月齢でも、もちろん生まれたての赤ちゃんでも、ほとんどの感染症に罹りますから気をつけてください。

 ママが罹る風邪や感染症は、すべて赤ちゃんも罹ります。

 ママ自身が予防接種で予防していても、その病気が環境から無くなってしまったた現在では、自然感染によって免疫を強化する機会がなく、予防接種の免疫が減る一方ですから、外国から入ってくる百日咳や麻疹にパパママ世代が罹っています。当然、赤ちゃんにパパやママが病気を感染させる」可能性が高くなっています。パパママが自身の免疫を調べ、弱くなっていたらワクチンの追加接種をすることが必要な必要な時代になりました。

 胎盤を通じて赤ちゃんに移行する免疫グロブリンは分子量が小さなIgGという免疫グロブリンに限られており、感冒やインフルエンザは母子免疫の効果が無く、免疫グロブリンでは感染を予防できない水痘、ヘルペス口内炎も母子免疫の有無に関わらず生まれたての赤ちゃんに感染します。
 風疹は、ママが妊娠前に生ワクチン接種を済ましていれば、母子免疫で赤ちゃんが守られます。
 麻疹は、最近は予防接種から時間が経って免疫が少なくなったママ世代に自然感染者の発生が見られていますから、母子免疫の効果はなくなっていると考えるべきでしょう。おたふくかぜも、ワクチン接種をせず自然感染も無かったままの場合は母子免疫は働きません。

 こう考えると、母子免疫によって6ヶ月までの赤ちゃんは感染症に罹らないはずという古い迷信は、もはや通用しません。

 母乳(初乳も含めて)に含まれる免疫グロブリン(胎盤を通過できない分子量の多いIgAが大部分です)も同じです。現状では、麻疹や百日咳、インフルエンザなど、身近で赤ちゃんにとっては危険な感染症に対しては、母乳中の免疫グロブリンの働きは期待できません。母乳中のIgAは、ひとつの感染症の病原体に対してそれに対応する免疫グロブリンが一対一の対応をしているので、何万種類もの抗原に対して何万種類もの抗体の免疫グロブリンの集合体なのです。母乳中の免疫グロブリンは一種類だけで、それがすべての病原体に対抗しているのではありません。たとえば、麻疹の抗体を持たないママの母乳・初乳中には麻疹ウイルスに対する免疫グロブリンは存在しないのです。

 もちろん、初乳を飲むことで赤ちゃんの腸粘膜の表面が免疫グロブリンに覆われて、アレルギーの抗原を無力化する事は出来ます。ママが血液中に持っている抗体に対応する細菌やウイルスを無力化する事は出来ます。でも、初乳中の免疫グロブリン量が多くても、本来最も気がかりな感染症を予防する働きは薄れてきていますから、以前ほど初乳に子だわる必要はありません。このあたりは、感染予防という観点では、母乳・初乳の常識を書き換えなければなりません。

 でも、免疫グロブリンの効果は期待できなくても、母乳中には、リゾチームとか、ラクトフェリンなど抗菌作用のある物質が含まれていますから、それらの物質が赤ちゃんを感染症から守ってくれます。
 
 また、母乳中には、間接的に赤ちゃんの善玉腸内細菌を増やす働きを持った物質(オリゴ糖など)が含まれていますから、母乳を与えることで赤ちゃんの腸内に善玉ビフィズス菌を増やすことが出来ます。善玉ビフィズス菌が多いと、先日ニュースに流れた蜂蜜の危険性、蜂蜜に入り込んで赤ちゃんを死に追いやったボトリヌス菌の芽胞の活性化を抑えることが出来ます。蜂蜜を赤ちゃんに与えないことはもちろん大切ですが、母乳も赤ちゃんの力強い味方であることを理解してください。

 母乳授乳後、鼻の奥がグジュグジュ音を立てたり、咽喉がゼロゼロ・ゴロゴロ音を立ててママを心配させるかもしれませんが、これは母乳が鼻の奥や咽喉に入り込むせいです。母乳によって鼻から侵入する細菌やウイルスをブロックする大切な働きと考えられます。鼻から侵入する細菌による中耳炎は、人工栄養児に比べると母乳栄養児でははるかに少ないのです。母乳の効用です。鼻の奥のグジュグジュは、赤ちゃんが乳首をくわえて離さず、鼻呼吸ができるているのなら、鼻づまりではありません。母乳が鼻を護っているんだと考えてください。

 母子免疫も、母乳・初乳中の免疫グロブリンも、赤ちゃんの感染予防の主役と言えなくなった現在ですが、それ以外の母乳の栄養、安全性などの長所は絶対的です。どんなに人工栄養のミルクが進歩しても母乳を超えることはできません。ぜひ、母乳で赤ちゃんを感染症から守ってあげてください。

 
 日常生活では、赤ちゃんを感染症から守る方法はただ一つです。風邪であれ、インフルエンザであれ、罹っている人、罹っていそうな人を、赤ちゃんに近づけないことです。
 
 どんなに大切な来客でも、上のお子さんのお友達でも、発熱、鼻水、咳がある人から赤ちゃんを隔離してください。ママが風邪をひいてしまったり、唇にヘルペスの症状が出たりしたら、手洗い、マスク着用を忘れないでください。人ごみに赤ちゃんを連れださないようにしてください。6ヶ月まで、それが無理なら3ヶ月までの赤ちゃんは、特に、病人から遠ざけることで感染症を防いでくださいね。

 赤ちゃん時代から始まって高齢者に至るまで、伝染病をワクチン接種で予防することが広く普及しました。種類も多く、もたもたしていると接種時期に間に合わないことも出てくるし、任意接種のワクチンは、公費負担がない地域では、高価で経済的負担もたいへんですね。

 病原体に人為的操作を加えて作るワクチンですから、副作用も無くすことはできません。百日咳ワクチンのように、ワクチン接種で病気が少なくなると、副作用のほうが問題にされ、接種を中断したら数年後再び百日咳の発生が増え、ワクチン接種が再開された例があります。ワクチン接種を中止してワクチン接種を受けられなかった世代の間では、成人後に百日咳を発症する人が出ています。おたふくかぜ生ワクチンは、麻疹、風疹の生ワクチンと三種混合でワクチン接種が始められたのですが、おたふくかぜワクチンのウイルスで無近世髄膜炎になった人があって、おたふくかぜ生ワクチンが除かれ、任意接種としてワクチン接種が続けられています。

 免疫の持続期間もワクチンによって長短様々ですが、いずれにせよワクチンによる免疫効果は長続きしません。時間が経つにつれて抗体価は下がっていきます。
 麻疹を例に取りますと、自然感染で出来た免疫は60数年以上保存されていることが19世紀末にあきらかにされました。デンマーク領ファロー島で65年ぶりに麻疹が流行した時、65年前の流行時に罹患した老人からは患者が一人も発生しなかったことがわかりました。自然感染の免疫は強いのです。
それに比べて現行の麻疹生ワクチンは2度接種しても60年もの間免疫を維持することは出来ません。

 どの伝染病についても、罹患、予防接種で獲得した免疫は、周りにその病気が流行するたびにワクチンの追加接種のように自然感染によって発病せず、免疫だけを強くします。これをブースター効果といいます。周りに病気が無くなれば自然感染によるブースターは得られなくなりますし、ワクチンを追加接種しなければブースター効果は得られず、免疫は先細りになります。ワクチンで伝染病の感染を阻止した私たちは、伝染病がなくなったために免疫の維持が難しくなっているという皮肉な時代です。

 このようにして、百日咳も、麻疹も、たぶんポリオも、地球上から消えることは無く、、患者は発生し続けます。私が今回、「予防接種の限界」という、ブログの項立てをしたのは、この問題が、予防接種を受ける前の赤ちゃんに及ぼす影響を、読者のパパ、ママに考えていただきたかったからです。

 先日来、麻疹が外国から空路日本に侵入したことが報道されました。百日咳も、成人間の発生が問題になっています。そのため、パパ、ママが感染して、それが赤ちゃんに感染する機会があることに気付いてください。

 赤ちゃんに及ぼされる伝染病感染の機会、危険を解決する方法は簡単です。

 パパ、ママが、ご自分のワクチン接種歴、抗体の維持状況を調べ、赤ちゃん出生以前にワクチンの再接種などの方法で免疫を強化し、パパ、ママから赤ちゃんに病気を伝染させないよう考えてくださいね。生まれてくる赤ちゃんを伝染病から守るために。

 初誕生のお祝いには、もう一つほとんど全国共通の行事がありました。

 お餅踏みでも登場した「箕」の中に、筆、矢立(携帯用の毛筆と墨壺のセット)、そろばん、本、鎌、ものさし、はさみ、餅、百つなぎ銭など、七種の道具や物を入れ、子どもに品選びさせる風習です。子どもが手に取ったもので将来の職業を占うのです。たとえば書物や筆をとれば学者に、そろばんをとれば商人に、はさみや糸巻きを手にする女の子は裁縫上手な人になるというわけです。

 この行事は、もとは中国から渡来したもので、礼(儀礼の知識)、楽(楽器の演奏)、射(弓矢の技術)、御(馬術)、書(文字を書くこと)、数(計算の技術)、合わせて成人するために身につけなければならない「六芸」を象徴する道具から一つを選ばせる行事でした。
 歴史は昭和初期ではなく、ずっと古くから続いてきた風習です。

 この行事もまた、お餅の行事同様、時代を超えて、親が子に託してきた夢を教えてくれます。

 いまのように、無限に大きい可能性の中からその頂点に到達する道を選んで、人をおしのけて、目の色変えてがんばらなければなければならない時代から考えると、身分制度や貧富の格差に苦しめられたむかしの、分相応の道を歩んでくれればいいという親の望み、安らぎのための行事だったと思います。

 時代が変わって、お誕生餅の必要性はもはや無くなったといってよいのではないでしょうか。わざわざ一升餅を通販で購入するより、どんな初誕生祝いでもいい、両親の子に託する思いが子に届きさえすれば。

 さて、たった今、一升餅が一番華やかにインターネットに登場しているのはどのサイトでしょうか?
 答えは、お食い初めや、お宮参り、一升餅など、赤ちゃんの成長に合わせた行事に使う品々のセットを販売している、商魂たくましい通販業者のサイトです。手を変え品を変えて、魅力ありげな宣伝を繰り広げています。赤ちゃんそっちのけで。

 


 「日本産育習俗資料集成」は昭和初期の資料ですから、現在とは違います。

 赤ちゃんが一人歩きを始める時期は、昭和初期の小児科学の医学書には12-15ヶ月と書かれています。現在では、初誕生日には約50%の子がひとり歩きできます(母子健康手帳参照)、昭和初期に誕生日前に歩けた子は、約10%くらいだったようです。この数字を基に、お餅を背負う初誕生の行事を考えてください。

 赤ちゃんが満一年前に歩くと、タッタリ餅と称して餅を背負わせて、わざわざ転ばせる風習が岩手、宮城、山形、群馬から報告されています。群馬からの報告には、一升餅を背負わせても歩く子は、将来、遠方に行って生活し、歩けなかった子は一生親の膝許近くで暮らすと記されています。

 北陸地方では、お餅のかわりに、おはぎやあんころ餅を投げつけます。甘くすると子どもがダメになるといって、あんこに砂糖を入れなかったそうです。餅を足に投げつけて座らせないと親不孝になると考えられていました。

 このほか、倒れずに歩くと、位負けする,利巧すぎてよくない、親を養わない、家に居つかないなど、一歳前に歩くことを、むかしの人は喜ばなかったようです。

 山梨では歩き始めた時に餅を背負わせて箕の中に立たせて健康を祝い、これを立ち餅と呼びました。
 長野では、箕の中に入れて「しいなは出て行け、良い実は残れ」と唱える。「しいな」とは、実の入らないもみがらだけの米のことです。みかけだけで実のない人間になるなという祈りでしょう。箕というのは、口が開いた籠のような道具で、米や麦を実ともみがらに分けるときに使います。選別の道具で、箕は誕生祝だけでなく、子どもの行事によく登場しますが、箕の中に残るような実のあるひとであってくれという祈りをこめたものです。

 関西地方にも餅を背負わせる風習はありますが、力をためさせるとか、立てれば健脚になるとか、東日本・北日本とは違った意味を持たせています。

 九州地方では、餅踏みの風習があります。紅白の餅を踏ませ、子どもの将来を願い、、餅と持ちのゴロあわせでその家の地盤や財産を受け継ぐ儀式とし、その餅を近所に配ると記されています。
 大分県の報告では、子が誕生前に歩くのを嫌い、一升餅を重箱に入れて背負わせ、歩くところをほうきの先で突き倒すならわしがあるそうです。走り者(出奔者)にならぬようにとのまじないです。

 こうやって、初誕生と餅にまつわる全国の過去の行事をみますと、むかし親が子に託した希望、子どもの将来に事無きよう祈った心情がよくうかがわれます。人より出過ぎず、さりとておくれもせず、足腰強い人間になってほしいという、ひかえめな親心がわかります。このほうが人より一歩でも先んじてほしいと目の色を変えるより、親子とも心穏やかに日を過ごせたでしょう。image

 いつから始まった行事かわかりませんが、初誕生のお祝いとして、江戸時代から昭和初期まで日本中共通だったのは、餅を負わせたり、踏ませたりする行事です。
 
 農耕民族、稲作民族の日本人は、米や餅に特別な力があると思っていました。「重体の病人の耳元で、米粒を入れた竹筒を振って音を聴かせると持ち直す」というような言い伝えもありました。
 
 このように米に不思議な力があるという考えは、弥生人がまだ日本に渡来する前からあったのか、江戸時代の農民や奉公人は、年貢を米で納めて自分たちは雑穀を食べ、米や餅はめったに口に入らなかったから、特に米や米製品を大切に思ったのか、私にはそのあたりの知識がありません。

 しかし、初誕生に餅を搗くこと自体たいへんな贅沢だったに違いありません。そのお餅を赤ちゃんに背負わせるのですから、いかに赤ちゃんが一歳を迎えることが嬉しい大切な行事だったか、現代の私たちには想像もつきません。昭和に入っても、一歳までに亡くなる赤ちゃんの数は生まれてくる赤ちゃんの2割以上、時には5割以上だった時代なのですから。

 昭和初期に、民俗学者柳田国男氏が母子愛育会で、日本中のお産と育児に関する習慣、行事(産育習俗)が集められました。戦争をまたいでその記録は、ようやく、昭和50年に、恩賜財団母子愛育会編「日本産育習俗資料集成」として出版されました。私はその当時母子愛育会に勤めていましたから、一冊もとめて今も手元にあります。この中に、「初誕生」という項目があって、そこに日本中の初誕生祝いの習俗が記録されています。もちろん、お餅を背負うことや、それに似た行事が詳しく集められています。それをもとに、初誕生とお餅の関連を書こうと思います。

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