澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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 初誕生のお祝いには、もう一つほとんど全国共通の行事がありました。

 お餅踏みでも登場した「箕」の中に、筆、矢立(携帯用の毛筆と墨壺のセット)、そろばん、本、鎌、ものさし、はさみ、餅、百つなぎ銭など、七種の道具や物を入れ、子どもに品選びさせる風習です。子どもが手に取ったもので将来の職業を占うのです。たとえば書物や筆をとれば学者に、そろばんをとれば商人に、はさみや糸巻きを手にする女の子は裁縫上手な人になるというわけです。

 この行事は、もとは中国から渡来したもので、礼(儀礼の知識)、楽(楽器の演奏)、射(弓矢の技術)、御(馬術)、書(文字を書くこと)、数(計算の技術)、合わせて成人するために身につけなければならない「六芸」を象徴する道具から一つを選ばせる行事でした。
 歴史は昭和初期ではなく、ずっと古くから続いてきた風習です。

 この行事もまた、お餅の行事同様、時代を超えて、親が子に託してきた夢を教えてくれます。

 いまのように、無限に大きい可能性の中からその頂点に到達する道を選んで、人をおしのけて、目の色変えてがんばらなければなければならない時代から考えると、身分制度や貧富の格差に苦しめられたむかしの、分相応の道を歩んでくれればいいという親の望み、安らぎのための行事だったと思います。

 時代が変わって、お誕生餅の必要性はもはや無くなったといってよいのではないでしょうか。わざわざ一升餅を通販で購入するより、どんな初誕生祝いでもいい、両親の子に託する思いが子に届きさえすれば。

 さて、たった今、一升餅が一番華やかにインターネットに登場しているのはどのサイトでしょうか?
 答えは、お食い初めや、お宮参り、一升餅など、赤ちゃんの成長に合わせた行事に使う品々のセットを販売している、商魂たくましい通販業者のサイトです。手を変え品を変えて、魅力ありげな宣伝を繰り広げています。赤ちゃんそっちのけで。

 


 「日本産育習俗資料集成」は昭和初期の資料ですから、現在とは違います。

 赤ちゃんが一人歩きを始める時期は、昭和初期の小児科学の医学書には12-15ヶ月と書かれています。現在では、初誕生日には約50%の子がひとり歩きできます(母子健康手帳参照)、昭和初期に誕生日前に歩けた子は、約10%くらいだったようです。この数字を基に、お餅を背負う初誕生の行事を考えてください。

 赤ちゃんが満一年前に歩くと、タッタリ餅と称して餅を背負わせて、わざわざ転ばせる風習が岩手、宮城、山形、群馬から報告されています。群馬からの報告には、一升餅を背負わせても歩く子は、将来、遠方に行って生活し、歩けなかった子は一生親の膝許近くで暮らすと記されています。

 北陸地方では、お餅のかわりに、おはぎやあんころ餅を投げつけます。甘くすると子どもがダメになるといって、あんこに砂糖を入れなかったそうです。餅を足に投げつけて座らせないと親不孝になると考えられていました。

 このほか、倒れずに歩くと、位負けする,利巧すぎてよくない、親を養わない、家に居つかないなど、一歳前に歩くことを、むかしの人は喜ばなかったようです。

 山梨では歩き始めた時に餅を背負わせて箕の中に立たせて健康を祝い、これを立ち餅と呼びました。
 長野では、箕の中に入れて「しいなは出て行け、良い実は残れ」と唱える。「しいな」とは、実の入らないもみがらだけの米のことです。みかけだけで実のない人間になるなという祈りでしょう。箕というのは、口が開いた籠のような道具で、米や麦を実ともみがらに分けるときに使います。選別の道具で、箕は誕生祝だけでなく、子どもの行事によく登場しますが、箕の中に残るような実のあるひとであってくれという祈りをこめたものです。

 関西地方にも餅を背負わせる風習はありますが、力をためさせるとか、立てれば健脚になるとか、東日本・北日本とは違った意味を持たせています。

 九州地方では、餅踏みの風習があります。紅白の餅を踏ませ、子どもの将来を願い、、餅と持ちのゴロあわせでその家の地盤や財産を受け継ぐ儀式とし、その餅を近所に配ると記されています。
 大分県の報告では、子が誕生前に歩くのを嫌い、一升餅を重箱に入れて背負わせ、歩くところをほうきの先で突き倒すならわしがあるそうです。走り者(出奔者)にならぬようにとのまじないです。

 こうやって、初誕生と餅にまつわる全国の過去の行事をみますと、むかし親が子に託した希望、子どもの将来に事無きよう祈った心情がよくうかがわれます。人より出過ぎず、さりとておくれもせず、足腰強い人間になってほしいという、ひかえめな親心がわかります。このほうが人より一歩でも先んじてほしいと目の色を変えるより、親子とも心穏やかに日を過ごせたでしょう。image

 いつから始まった行事かわかりませんが、初誕生のお祝いとして、江戸時代から昭和初期まで日本中共通だったのは、餅を負わせたり、踏ませたりする行事です。
 
 農耕民族、稲作民族の日本人は、米や餅に特別な力があると思っていました。「重体の病人の耳元で、米粒を入れた竹筒を振って音を聴かせると持ち直す」というような言い伝えもありました。
 
 このように米に不思議な力があるという考えは、弥生人がまだ日本に渡来する前からあったのか、江戸時代の農民や奉公人は、年貢を米で納めて自分たちは雑穀を食べ、米や餅はめったに口に入らなかったから、特に米や米製品を大切に思ったのか、私にはそのあたりの知識がありません。

 しかし、初誕生に餅を搗くこと自体たいへんな贅沢だったに違いありません。そのお餅を赤ちゃんに背負わせるのですから、いかに赤ちゃんが一歳を迎えることが嬉しい大切な行事だったか、現代の私たちには想像もつきません。昭和に入っても、一歳までに亡くなる赤ちゃんの数は生まれてくる赤ちゃんの2割以上、時には5割以上だった時代なのですから。

 昭和初期に、民俗学者柳田国男氏が母子愛育会で、日本中のお産と育児に関する習慣、行事(産育習俗)が集められました。戦争をまたいでその記録は、ようやく、昭和50年に、恩賜財団母子愛育会編「日本産育習俗資料集成」として出版されました。私はその当時母子愛育会に勤めていましたから、一冊もとめて今も手元にあります。この中に、「初誕生」という項目があって、そこに日本中の初誕生祝いの習俗が記録されています。もちろん、お餅を背負うことや、それに似た行事が詳しく集められています。それをもとに、初誕生とお餅の関連を書こうと思います。

 「アカネ」ちゃんは、11ヶ月になったその夜に39度Cの発熱、翌々日には解熱しましたが、鼻汁と咳が出始めました。パパが風邪をひいていたので、それが伝染したようです。感冒のウイルスは生まれてすぐでも赤ちゃんに感染しますから、11ヶ月の「アカネ」ちゃんに伝染しても不思議はありません。
 初めての発熱なので、突発性発疹症かと思いましたが、外れでした。
 
 そういえば最近、ヤナセクリニックの健診では、4ヶ月児、10ヶ月児どちらも、突発性発疹症に罹ったという既往歴をママにうかがうことがほとんどありません。ちょっと不思議な現象です。突発性発疹症は3歳までに、ほとんどの子が感染することが血液中のウイルスの抗体検査で分かっているのですが、症状の出ない感染も20-40%あるといわれていますから、罹っても症状の出ない子が増えているのかもしれません。

 「アカネ」ちゃんは、この発熱後、しばらく、ママに抱かれてしか寝なくなったそうです。苦しかった時間を癒してくれる人はママしかありませんものね。

 11ヶ月と9日目、先月からずっと挑戦していた二階への階段を登り、二階を探検することに成功しました。
 
 11ヶ月13日、ひとり歩き4歩、初めてのアンヨです。誕生日に一升餅を背負う資格ができました。
 11ヶ月25日、ひとり歩きが23歩に伸びました。ゼンマイ仕掛けの人形のような、ガニマタ歩きですが、壁の手前でちゃんと足を止めます。シリモチついたり、前に手を付いたりして止まるのですが。

 その他にできるようになったことを紹介します。

 「フーフーしてね」というと、フーフー吹く動作ができます。
 「ヒラヒラ」というと、手をグーパー、グーパーと、開いたり握ったりします。

 食事の時、食器をひとりで持ちたがるようになりました。

 食事は朝昼晩の離乳食と、おやつ。母乳は1日3回、それと風呂上りに牛乳30cc、。

 初誕生祝は家族揃っての食事会で、一升餅は採用されませんでしたが、バースデーケーキにロウソク1本。「アカネ」ちゃんが、自分で吹き消しました。

 これで、ママによる「アカネ」ちゃんレポートは一段落です。
 
 赤ちゃんは、寝返りなり、ひとり歩きなりを、赤ちゃんひとりひとりの別々のペースで、時間を追って刻んでいきます。

 母子健康手帳に記された成長記録は、複数の同じ月齢の赤ちゃんができるようになることを数字化して示しています。横断的観察による数値です。

 一年間の赤ちゃんの成長過程を時間を追って記録する方法(縦断的観察)は、時間とこまめな記録が必要で、たくさんの赤ちゃんの縦断的記録は得ることがとても難しいと思います。
 このブログでは、「アカネ」ちゃんというひとりの赤ちゃんをママに1年間レポートしていただいて、小児科医である私がハッとするような新しい情報を勉強させていただきました。
 
 「アカネ」ちゃんの記録を目安にして、たくさんのママに、ご自分の赤ちゃんの成長過程を理解していただくことができますように願っています。image
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「アカネ」ちゃん、10ヶ月になりました。

 アンパンマンが好きな「アカネ」ちゃんは、、絵本のアンパンマンや、アンパンマンアンパンをずっと記憶しているようです。3週間ほど前から言い始めた「アンパンマンパンパン」とか、アンパンマンに似た言葉を繰り返して口に出したいるようです。写真のアンパアンマンを見ても、笑ってアンパンマンと言っています。

 10ヶ月と20日で、ヤナセクリニックの10ヶ月健診でした。見慣れないスタッフが数人で計測したりだっこしたりするせいか、大泣きの健診でしたが、2週間前に顔を合わせた私を見て、泣き止んでしばらくじっと見つめていました。

 乳児の記憶持続時間は、6ヶ月から1歳半くらいまでは24時間という研究結果が最近発表されていましたが、繰り返し見ているものに関しては、もっと長く記憶が持続するようです。そうでなければ、10ヶ月健診ではどの赤ちゃんも大泣きするのですが、その理由が説明できません。10ヶ月の赤ちゃんは、家族と家族以外をちゃんと見分けているのですからね。前回のブログに書きましたように、「アカネ」ちゃんがアンパンマンの絵本の筋をちゃんと覚えていることも説明できません。反復して目にするものに関しては、9ヶ月以後の赤ちゃんは1ヶ月以上記憶が残るのだと思います。

 10ヶ月と2週の「アカネ」ちゃんは、8つ切りの林檎を手にとって、かじるようになりました。バナナが好きになって、バナナを見ると、バババと興奮するのだそうです。

 この時期のエピソードをいくつかご紹介します。

 絵本の読み聞かせ会でおとなしく聞いていたそうです。アンパンマンミュージアムで、ショーを見ながら拍手したり楽しそうに過ごしたそうです。

 伝い歩きが始まり、、階段を上りたい衝動が強く、目が離せなくて大変とのことです。

 ちょっと変わったエピソードとしては、ママ同士がお友達の、2歳児のアイリちゃんとの初対面。

 終始「アカネ」ちゃんは不機嫌だったそうです。「アカネ」ちゃんがアイリちゃんを触りに行くのですが、叩くようにしか触れず、アイリちゃんがそれを嫌がり、ママが「アカネ」ちゃんの手を押さえたりするのが気に入らなかったようです。アイリちゃんにオモチャをとられても不機嫌になり、ママはかなりくたびれたそうです。

 これは無理からぬこと。2歳児は「テリブルツー」(恐ろしい2歳)と呼ばれるように、自我が発達してきているので、歳下の赤ちゃんを可愛がる余裕はありません。
 子ども同士で協同遊びができるようになるのは早くて3歳になってからです。9ヶ月の「アカネ」ちゃんと2歳児のアイリちゃんの組み合わせは少し早すぎました。

 赤ちゃんと2歳児の兄姉の組み合わせは家庭でもよくあります。2歳間隔の出産は、一番多い組み合わせではないかと思います。
 2歳児には、ダメ、アトデ、マッテという言葉は通用しません。近寄ってきたら抱き寄せてハグしてあげることが唯一の方法です。赤ちゃんがうらやましく、嫉妬もあって、甘えたがり、赤ちゃんと同じように扱って欲しいのですから。
 でも、2歳児が悪い子に見えても心配いりません。無理なしつけはかえって悪い結果を生みます。
 3歳児になれば、アトデ、マッテがある程度理解できるようになり、4歳児5歳児は我慢ができるよい子になりますから、このあたりの幼児の扱い方を間違えないでくださいね。image

 8ヶ月に入った「アカネ」ちゃんは、高ばいが上手になりました。高ばいの姿勢で片手を挙げることができます。時々、仰向けで背中をそらせてブリッジをしています。
 
 手先が器用になって、花のそばに寄って、高ばい片手挙げの姿勢で、人差し指で花をチョンチョンと触ります。身の回りにあるスイッチやボタンを人差し指で押すことも好きです。コンセントに指を入れて感電することもあるので、コンセントにはカバーが必要です。

 半固形の離乳食を手でつかみ、グーパーして感触を確かめているようです。手のひらにつかんだものを机に塗りつけたりもします。汚いからダメといわず、好きにさせておいてくださいね、ほんの一時の行動ですから。
 広告を散らかして破って遊ぶのも好きな赤ちゃんが多いですね。
 マグを持ちたがって、マグからストローで飲み物を吸うことができます。

 なんでも指先でつまんだりひろったりしますから気をつけてください。糸くずや髪の毛のような細い小さいものもつまめるようになります。これは10ヶ月健診の通過項目のひとつですが、8ヶ月頃からできるようになります。

 「アカネ」ちゃんは、パンを手で持って、自分でむしゃむしゃ食べるようにもなりました。

 体全体の動きとしては、つかまり立ちができるようになります。初めは爪先に力をいれていますが、やがてかかとを床に付けてしっかり立つようになります。つかまり立ちの次には、座った状態やうつ伏せの状態から独り立ちする段階に進みます。

 8ヶ月末から9ヶ月にかけて、記憶力、考える力、感情表現も進歩してきます。
 「アカネ」ちゃんは歯が生えてきて、ママの乳首を噛んでしまいました。ママが思わず、強く「痛い」と言ってしまってから、オッパイを飲むのをためらうようになったそうです。
 ママが床でストレッチして顔を伏せると、「アカネ」ちゃんはママが泣いていると思うのか、ハイハイダッシュでママのそばに来て、手でママの顔を上げさせようとすると、ママのレポートに書かれていました。
 ママが「アカネ」ちゃんに声を掛けると、「アカネ」ちゃんは答えるように声を出し返してくるようにもなりました。

 9ヶ月に入って「アカネ」ちゃんは、つかまらずに3秒くらい独り立ちするようになりました。カーテンを使って、イナイイナイバアをsh手見せます。リズムに乗って手を叩いたり、振ったりピョンピョン跳ねたりします。
繰り返し読んであげる絵本の内容を覚えて、好きな箇所で笑って最後におしまいのベーをして見せます。「イヤ」と「アンパンマン」が言えます。泣きまねと本気泣きを使い分けます。

 「アカネ」ちゃんだけでなく、どの赤ちゃんも似たような成長過程を歩んでいられると思います。なるべく一緒に遊んで、歌やら、絵本の読み聞かせやら、おしゃべりやらをしてあげてください。積極的に働きかけることが、赤ちゃんの次の発達の引き金になるのですから。image
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先ず、「アカネ」ちゃんレポートから。

5ヶ月:寝返りの回数が徐々に増えている。
5ヶ月10日:離乳を始めた。上手に食べる
 気に入らないことがあると、ブウーーといい、朝おはようと声を掛けたら、オアオーと返事するような声が返 ってきた。真似しているのかな?
 外では無表情、家族以外の人はジッと見つめているだけ。家では大きな声で笑っているのに。
 本をめくるのが上手。両手が器用に動く。手遊びが多くなった。
 仰向けで足を挙げてで足先をつかむ。

6ヶ月:引っ越して環境が変わったせいか、夜頻繁に起きて泣く。相手が大変で、ママくたくた。引越しする 
 までは、夜よく寝てくれたのに。
 寝返りが上手になり、仰向け→腹ばい→仰向けと転がっている。うつ伏せでオシリを上げて前に進もうとする。欲しいものの方に行きたいらしい。
 おなかをつけて、両手両足を挙げて飛行機のスタイルを繰り返している。
 オッパイを離乳食後に飲ましていたが、機嫌がいいので忘れてしまった。必ず離乳食後に授乳しないといけないのだろうか。

7ヶ月:支えがあれば座れる。うつ伏せで方向転換する。
 絵本のページを始めから終いまで、丁寧にめくっている。
 ママが「だっこ」と声を掛けながら手を差し出すと、アカネも手を差し出してくる。
 ジッとしていないので、写真が撮りにくくなった。
7ヶ月半ば:下の前歯が生えてきた。
 ベーと舌を出す。
オシリ拭き入れから紙を取り出し、床を拭いたりする。
 夜泣きが少し減ってきた。後追いが始まりママの姿が見えないと泣く。
 携帯電話に興味。自分が触りたいときと、ママが携帯を掛けるのを嫌がるときと、表情が違う。後の場合の方が目がコワイ。
7ヶ月末:何かつかまるものがあるとつかまって体を起こす。

 
 運動機能から見ると、5ヵ月で寝返りの回数が増え、ごろごろ転がれるようになり、うつ伏せでオシリを上げて前に進もうとする。欲しいおもちゃのほうへ行きたいという欲求が原動力になってますね。
 おなかをつけて手足を上げての飛行機スタイルや方向転換ははいはいの準備です。
 7ヶ月で支えがあると座れ、7ヶ月末には手に触るものにつかまって体を起こそうとするのは、つかまり立ちの初期段階です。着々と運動機能が発達しています。

 この時期、手の動きの発達が目立ちます。ママの真似だったり、「アカネ」ちゃんの意志表現だったり、感情表現もどんどん発達していることが分かります。
 ママの後追い泣きもこの月齢に多くなります。トイレにも行けないというママのお話は、何人ものママから聞きました。ママの声が聞こえれば安心できるように、じきに赤ちゃんは成長しますから、それまでは、トイレも一緒に入ったらと、私は助言してます。

 環境が変わったら夜泣きが始まったという「アカネ」ちゃんのお話、経験されたママもあると思います。
おとなが気がつかないような環境の変化にも、赤ちゃんは敏感です。照明、壁紙、天井の色など、ちょっとしたことでも落ち着けないのだと思います。「アカネ」ちゃんの夜泣きは、1ヶ月くらいで卒業できたようですね。待っていれば、自然に環境になれてくれます。ママが傍らにいてくれる安心感は必要ですが。

 前回のブログでも触れましたが、4ヶ月以後の赤ちゃんは、同じことを繰り返し、繰り返しやり続けながら、次の課題に挑戦していきます。ひとつひとつの動作はばらばらに見えますが、それは大きな区切りの準備段階です。寝返り、手遊び、手足の協同、うつぶせ・仰向けで見せる、いろいろな姿勢や動作が組み合わされて、はいはい、つかまり立ち、伝い歩き、一人歩きという移動手段獲得に繋がっていきます。

 5-7ケ月になると、個人差が目立ってきます。歯の生え方、太った子痩せた子のばらつきが目立ちます。手の動き、体の動きも発達の早い子遅い子が出てきます。でも、待っていれば必ず同じレベルに発達しますから、ママが焦って、赤ちゃんに無理な働きかけをしないでくださいね。脳科学を基礎にした発達をうながす体操など考える必要はありません。image
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 1ヶ月健診のとき、フィリピンや南米の赤ちゃんは、ミトンをしている子が多いようです。手の触感をジャマするから、ミトンはしないほうがいいよと話してきましたが、何か理由がありそうだと気付きました。パパが日本人でママがフィリピン人のご夫婦が健診に来られた時、聞いて見ました。その答えは、最初に爪を切るときまで、爪を伸ばしっぱなしにしておくのだという答えでした。爪の保護のためのミトンだったのですね。

 フィリピンでは、最初に摘んだ爪と、最初にカットした産毛を、小さな袋に入れて遺しておくのだそうです。フィリッピン全土そうするわけではなく、しない人もあり、部族、地方によっても違うようですが。

 疑問が解けたので、それ以来、ミトンは止めなさいとは言わないことにしました。

 日本にも、臍の緒を残しておく風習があります。臍の緒だけでなく、生後1週間くらいで頭の産毛を剃る習慣があり、剃った産毛も臍の緒と一緒に残す地方がありました。臍の緒は、生きるか死ぬかの大病をした時、煎じて飲むと生き延びられるという言い伝えはかなり広い範囲の地域にあるようです。
無事生まれた赤ちゃんの臍の緒は、産神の力が残っていると考えられたのでしょう。

 私の臍の緒もまだ無くさずにしまってあります。
 先日、取り出してみました。3×8cm位の桐の箱に、和紙で包まれて入っています。箱の表には、「御臍の緒」と書いてあり、箱の裏側には、私の生年月日(昭和6年12月24日)、出生時間(午後5時だったようです)、父と母の名前と年齢、出生場所(自宅の住所です)、産婆さんの住所姓名が書かれています。
 私の名前と生年月日、両親の名前と年齢は、父の楷書の字できちんと書かれています。四角張った楷書は、見たことが無いほど丁寧にきちんと毛筆でしるされています。
 和紙に包まれた臍の緒は、赤黒く干からびて、一回り半の細長い輪になっていますが、伸ばせば10cmくらいの長さです。
 産毛は入っていません。昭和6年頃の三重県では、臍の緒だけを残す習慣だったのでしょう。

 父の楷書を見て、言いようの無い感動が湧きました。私は兄弟が多く、八番目のこども、七男ですが、父の字はとても丁寧に書かれていて、その文字から父の愛情を強く感じました。
 ミルクを飲ませたり、オムツ替えしたりするはずが無い父ですが、子にとっての父は、その父が育メンでなくても、ちょっとしたことでも強く感じるものなんですね。

 そういえば、12月24日生まれの私ですから、母は産褥、父と長兄が正月のお節作りをしたのだと兄に聞かされたことがあります。母は産後の疲れで眠っていることが多く、母に砂糖はどれくらい、味付けは塩かタマリ醤油かと聞いても、母は夢うつつで、シオシオオタマリと言うだけだったそうです。その年のお節はどんな味だったのでしょうか。この話、今思い出しても目が熱くなります。

 母子健康手帳の前半の方に、「乳幼児期の成長と育児のポイント」というページがあります。3-4ヶ月児については「表情も豊かになりにっこり声を立てて笑うことも、音のするほうを向いたり、物を目で追ったり、動きが増えてきます。」とかかれています。主な成長の目安は「首のすわり」でしょうか。

 アカネちゃんの成長記録を基に、もう少しきめ細かく見てみましょう。
 
 赤ちゃんは2ヶ月頃から人の顔を見てニコニコ笑うようになりますが、咽喉の構造が未発達なので、声を出して笑うことはできません。はっきりと、嬉しい、楽しい、面白いなど、感情表現として笑い声を立てるようになるのは、3ヶ月半ば頃からです。

 おもちゃに手を伸ばして、自分で握るようにもなります。おもちゃに興味を持つほどに大脳が発達した証です。

 足のキックが強くなったのは、大脳皮質→小脳→脊髄の順に下降してきた脳脊髄の神経支配下に、赤ちゃんの下肢が入ったからです。4ヶ月に入ったアカネちゃんが、両足を挙げてドーンと下ろすことを繰り返しているのは、早速、下肢を使って、寝返り・お座りに繋がるからだの動きのトレーニングをしているのです。

 22時に寝て3-5時まで続けて眠るようになったのは、一日の生活の中で昼と夜が分かれ始めたことを示しています。地球上のすべての動植物は、皆、生きていくために夜と昼が必要です。ヒトの場合も、昼と夜では、大脳も、脳幹部に中枢を持つ自律神経も働き方が異なります。ホルモンの分泌、神経刺激物質の種類が夜と昼では違います。眠っている間に記憶が固定されるとか、成長ホルモンは夜間睡眠中に多く分泌されるとか、聞かれたことがあるでしょう? 3-4か月の赤ちゃんは、昼夜の区別がつき始める大切な時期を迎えています。単に「夜まとめて寝てくれるようになって楽になったなあ」というママの気持以上に大きな意味があるんです。

 3-4か月には、咽喉の構造が変わってきます。咽喉が頚椎1個分くらい長くなります。生後1-2ヶ月は、顎の下はすぐ胸だったのが、3ヶ月過ぎると首が姿を見せ始めます。オッパイを誤飲しないように気道の入り口すれすれまで伸びていたノドチンコが短くなります。この変化は、強弱高低いろんな種類の声を出すことができるようになることを示していますし、もうひとつ、オッパイ以外の半固形、固形の食物を食道に送りこめるようになってきた証でもあります。

 この変化によって、声の種類が増えます。生まれてまもなくはドレミのラの音しかでなかった泣き声が、いろんな声、いろんな泣きで、おなかが空いた、眠い、気持が悪いなどの感情、感覚を表現できるようになります。
泣き方や発声でママと対話しているんです。アカネちゃんのいろいろな声の記録を読み返してみてくださいね。

 もうひとつ、食物を飲み込むための咽喉の変化に加えて、舌の動きも、押し出す働きから、食物を咽喉の奥に送り込む動きに変わってきます。オッパイだけを飲んでいる時期には、赤ちゃんの舌の動きはママの乳首を強く押す動作が主です。アカネちゃんも、3ヶ月半ばでは口に入れたご飯粒を舌で押し出していますが、数週間後にはもぐもぐして飲み込んでますね。舌が圧す働きをしている時期に離乳食を食べさせようとしても、舌でベーッと押し出してきます。押し出さなくなったら、離乳食を食べる準備完了です。

 4ヶ月後半のアカネちゃんは、朝から晩まで「ブルル、ブルル」と唇を使って声を出す遊びにひとしきり凝っています。いろんな声を出す練習のひとつです。寝返りをしようと何度もトライしていたアカネちゃんが突然寝返りに挑戦することをやめてしまいます。そのかわり、仰向けで首を持ち上げたり、ブリッジをしています。そしてある日、突然寝返りに成功します。
 
 赤ちゃんは、滑らかに順序を追って発達するのではなく、細かい動作をばらばらに練習して、ある日練習成果を総合して寝返りに成功するんです。この過程を知って、私はとても感動しました。横断的調査では分からないことを、時間を追って縦断的にアカネちゃんに教えてもらって、小児科医になって60年目にやっと、赤ちゃんの発達の実像を知ることができたんですから。

 アカネちゃんは4ヶ月健診で軽い股関節脱臼があると健診医に言われ、整形外科を受診して異常無しでした。
 4ヶ月健診は、赤ちゃんの股関節の異常の有無をチェックする上で、とても大切な節目です。4ヶ月健診で股関節脱臼が疑われれば、それ以前と違い確実な診断をつける必要があります。もし股関節の異常が見つかれば、それ以前のように抱き方に気をつけるだけでは済まず、強制装具を使ったり、場合によっては手術が必要になることもあります。股関節脱臼だけでなく、4ヶ月はいろいろな点で、大きな節目です。
4ヶ月健診は必ず受診してくださいね。




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 赤ちゃんの成長を評価する調査方法は2種類あります。
 前回のブログで取り上げた、母子健康手帳の乳幼児発育曲線のように、赤ちゃんの月齢1か月ごとに男女500大変な人づつ、12カ月で12,000人の赤ちゃんを全国から無作為に選び出し、各月齢別、男女別に身体計測値を統計処理し、平均値、標準偏差値を求めてグラフ化する調査方法は、横断的調査といいます。短期間に一気に数字が得られ、結果が出ますから、ほとんどの統計調査は横断的調査です。
 それに対して、ひとりの赤ちゃんの成長を時間を追って観察する方法は、縦断的調査といわれます。縦断的調査は、長い時間が必要で、情報を得るには、赤ちゃんの場合、いつも赤ちゃんの傍で赤ちゃんの成長を見ているママに情報提供をお願いせねばなりません。縦断的調査ができれば、赤ちゃんの横断的調査と違い、個人差、環境の影響を含めて、赤ちゃんの実態に即した成果が得られるのですが、実施が困難です。

 これから、このブログでは、3か月以後の赤ちゃんの成長について、縦断的調査に協力をお願いした一組の母と子の、ママによる赤ちゃんの成長観察記録を基に、満1歳のお誕生日までの成長を追っていきます。
無味乾燥な横断的調査の数字、グラフと違った、血の通ったレポートをお読みください。

 協力していただいた赤ちゃんはアカネちゃん、平成27年8月生まれ、母乳育ち。ママは20歳代後半、アカネちゃんは初産です。アカネちゃんは、在胎38週6日で生まれ、出生時身長47.5cm、体重3118gでした。
 観察と記録はママにとって大きな負担だったことと思います。アカネちゃんレポートを始めるにあたって、心から、ありがとうと申し上げます。

 早速、始めることにします。」

 3か月半ば:面白いことがあると、「ウゲー」と声を出して笑う。
 おもちゃを、ママが握らせなくても、
 自分で手を伸ばしてつかむようになった。
 足のキックが強くなった。
 22時に寝て、3-5時まで眠る。

 4カ月:床の座布団の高低差を利用して、偶然に、寝返りができた。もう少しで、平らな床でも寝返りができそう。
 ご飯粒をつぶして口に入れてみたら、舌で押し出してきた。
 仰向けに寝た状態で、両足を挙げて、かなり激しく、ドーンと下す。寝返りを試みて、できないとくやしそうな顔をする。泣き顔、得意げな顔、表情が豊かになった。

 4カ月半ば:「ブーブー」と言う。キャーと奇声。
 ご飯粒をつぶして口に入れたら、いつの間にか口から無くなって、ヨダレがたくさん。
 眠い時は目をこする。あくびをする。高めの声で「ンー」とぐずる。体や頭が熱くなる。
 うれしい時は、ニコニコ顔で声を出している。抱っこしていないときは、体を支えていると、ピョンピョンして飛び跳ねる。
 おむつがぬれた時は、低い声で「ンー」と言って、足を挙げる。泣く。
 お腹がすくと、「ンーン」と言いながら、体をのけぞらせる。オッパイを飲むときの口付きをし、舌を出して「クチュクチュ」する。しっかり飲む時間は5-10分、遊び飲みはする時としない時とある。寝る前は、寝付くまで遊び飲みしている。5-10分くらい。
 授乳回数は1日8回くらい。入浴直後にオッパイ、1時間後くらいにもう一度続けて欲しがる。
 睡眠時間は、5-6時間続けて眠る。
 4カ月健診は近所の小児科で受けた。軽い股関節脱臼があると言われたが、整形外科を受診し、レントゲン写真を撮り、異常なしと言われた。

 4カ月後半:朝から晩まで「ブルル、ブルル」と唇を使って声を出している。おもちゃをしっかり持って振り回し、おもちゃがすっぽ抜けて飛んでしまうほど。
 寝返り練習をパッタリ止めてしまった。仰向けで頭をグーッと上げてくる。腹筋運動のように。
 声は、アー、ウー、ウンガー、キャーなど。

 5カ月になる前日に寝返りができた。

 アカネちゃんの動作などの意味については、次回のブログで。image
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