澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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 神経管とは何かの説明から始めましょう。
 
 私たちの脳脊髄などの中枢神経組織は、脳は頭蓋骨、脊髄は脊椎という骨の壁で密閉されています。骨の下には硬膜、クモ膜、軟膜という3層の脳脊髄膜がすっぽりと脳脊髄を包んでいます。脳や脊髄と脳脊髄膜との間にはクッションとして髄腋が充満し、脳脊髄は髄液の中に浮かんでいます。硬膜下出血、くも膜下出血、脊髄液減少症とかの病名を聞かれたことがおありと思います。脳脊髄が入った腔間には、血液とリンパ液以外は入れません。
  
 この大切な脳神経系の基になるのが神経管です。
 神経管は、受精後3-4週の間に、板状の胚葉が丸まって筒状になったものです。この期間にちゃんと筒が仕上がるのを助けるのが葉酸です。受精後3-4週といえば、まだ妊娠の自覚は無い時期です。こんなに早く大切な脳脊髄の原型が出来るってことをご存知でしたか。

 神経管が完全な筒状にならず、腰椎あたりに隙間が残ると、出生後、二分脊椎という診断名がつけられます。

 隙間が狭ければ丁寧に触診しなとそれとは分かりませんが、水頭症を起こしてくることがあります。潜在性二分脊椎という診断がつけられます。

 隙間が広ければ、袋状に髄膜が飛び出しますので、手術をして脊椎を閉じることが必要です。

 このような神経管閉鎖障害の発生頻度は、出産1万例に付き6-7例です。頻度が少ないようですが、もし閉鎖不全状態なら重い後遺症をのこします。妊娠成立前1ヵ月以上前から葉酸を充分量、食品とサプリメントで摂取していれば、頻度がぐんと減ります。

米国予防医学専門委員会(USPSTF=US Prevenntive ServicesTask Force) は、今年1月に、出産が可能な、または妊娠をを考えているすべての女性に、葉酸サプリメントの摂取を推奨すると発表しました。「米国女性の大半は,最善の効果を示すのに必要とされる量の食品を摂取していないので、400-800μgの葉酸サプリメントを内服すべきで、サプリの効果が最もよく現れる時期は、受胎の少なくとも1ヶ月前に始まり、妊娠お最初の2-3か月を通じて続く。」というものです。
 以上は神経管閉鎖障害の予防に関してのお話です。

 では、妊娠に気付いてから葉酸サプリを飲んでも意味が無いのかといえばそんなことはありません。母子健康手帳を交付されてからでも、葉酸サプリを飲み続けることには大いにメリットがあるのですが、そのあたりについては、次回に続けたいと思います。(続く)

 このところ、母子健康手帳について、いろいろ調べています。
 
 母子健康手帳は母子保健法という法律をもとに、厚生労働省令で記載する内容が定められています。それにプラスして役に立つ情報を記載することは、地方自治体の裁量で許されています。三重県津市が採用している「親子健康手帳」もその一つですが、三重県下では、省令で定められた内容にとどめ、表紙のデザインがさまざまな母子健康手帳が、地方自治体別に採用されています。
 
 省令で定められた母子健康手帳には、妊婦健診、乳幼児健診の結果や予防接種記録、ママが記載される項目などが主に使われているようですね。ネットのスレッドを読んでも、母子健康手帳は記録の為のものとして考えている方が多いようです。しかし、それだけではなく、母子健康手帳には、産科学・小児科学・精神神経学・心理学その他、妊娠・分娩・育児に関する専門家集団が作成した、とても内容が濃く、簡潔で、偏見のない情報が提供されています。中途半端な市販書より、ずっと頼りになることが記されています。是非、母子健康手帳は、記録のページではなく、ただ読むだけのページもしっかり読ん利用してください。
 
 例えば、「妊娠と食事 7カ条」というページには、①妊娠ビタミン”葉酸”をとろう。”神経管閉鎖障害の発生リスクを低減します”と書かれています。⑥「食中毒予防の為に〝洗浄・加熱”しよう」と書かれ、リステリア菌の危険性が書かれていますが、リステリア菌とは何か、ご存じのママは少ないと思います。大切なことなのですが、やや説明不足ですね。 
 
 それと、母子健康手帳がママの手に届くのは、妊娠8-11週です。妊娠届を市役所や健康センターに提出すると母子健康手帳が手渡されるやり方が多いようです。産科病医院で妊娠届に妊娠証明する時期が、安定期に入ってからですから已むを得ないのですが。
 
 実は、子宮内の胎芽・胎児のヒトとしての基本的な構造のほとんどは、妊娠10週くらいまでに出来上がりますから、母子健康手帳がママの手に渡る時から胎児を問題無く出産まで大切にしようと考えられても少し時間が遅いですね。例えば、神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症、水頭症)は受胎後2-3週間が大切で、葉酸が予防に効果があるとわかっていても、本当に葉酸を効果的に摂取しようとしたら妊娠前一か月前から葉酸を含む食品を食べ、足りない分をサプリで補う必要があります。アメリカでは、妊娠可能な年齢、環境になったら葉酸サプリを服用するよう推奨するようになってきました。

 そういうわけで、理想的な育児は妊娠前から始める必要があります。まずは、赤ちゃんを胎内で健康に育み、予防できる異常は予防し、病原体の胎内感染を避ける手段をとり、早産を避けて胎内で目いっぱい成長した赤ちゃんを出産していただきたいのです。
 そんな観点から、私のブログで、「妊娠前からの育児学」という視点を読者の皆さんに持っていただきたいと思い、新規に掲載を始めることにしました。私には役に立たないブログじゃない?と思われるママもいらっしゃると思いますが、次の妊娠の参考にしていただくとか、結婚妊娠前のお友達にお話しいただくとかにお使いいただければ幸いです。

 次回から、母子健康手帳に記載されている遅すぎる情報をメインに、具体的な事、葉酸とは何か、どんな働きをするのか、リステリア菌とはどんな細菌で、胎児にどう危険なのか、アルコールやタバコの習慣がある方には、いつから禁酒禁煙が必要なのかなどなどを掲載させていただこうと思います。

 
 なお、今秋10月から、ヤナセクリニックの母親教室の一コマとして、ブログと同じタイトルの講座を、私がスピーカーとして、設けていただく予定です。
 このテーマは、これまでのオッパイ教室のように妊娠中のママだけにお話しするのでは意味がありませんので、聴講に来ていただく方は、性別、年齢を問わずに、おいでいただくつもりです。ぜひ、関心をもたれた多くの方々に聞いていただきたいと願っています。
 
 
 
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 10年ほど前には、赤ちゃんは胎盤を通してママの免疫を貰っているから、生後6ヶ月間くらいは風邪をひかないという迷信がありました。最近は、この迷信を本気で信じているママはほとんど無いように思います。

 かつては、生活環境の中に感染症の病原体がたくさんあって、いろいろな感染症に罹ることが通過儀礼のように考えられていました。麻疹生ワクチンの誕生までは、自然感染による麻疹の免疫は終生ママの血液中に残ってて、それが胎盤を通して赤ちゃんの血液中に移行し、生後4ヶ月くらいは赤ちゃんは麻疹に罹りませんでした。限られた病気については、麻疹のように経胎盤免疫(母子免疫)が赤ちゃんを守ってくれていました。それが拡大解釈されて、6ヶ月までの赤ちゃんは風邪をひかないという迷信が生まれたのだと思います。

 実際は、どの月齢でも、もちろん生まれたての赤ちゃんでも、ほとんどの感染症に罹りますから気をつけてください。

 ママが罹る風邪や感染症は、すべて赤ちゃんも罹ります。

 ママ自身が予防接種で予防していても、その病気が環境から無くなってしまったた現在では、自然感染によって免疫を強化する機会がなく、予防接種の免疫が減る一方ですから、外国から入ってくる百日咳や麻疹にパパママ世代が罹っています。当然、赤ちゃんにパパやママが病気を感染させる」可能性が高くなっています。パパママが自身の免疫を調べ、弱くなっていたらワクチンの追加接種をすることが必要な必要な時代になりました。

 胎盤を通じて赤ちゃんに移行する免疫グロブリンは分子量が小さなIgGという免疫グロブリンに限られており、感冒やインフルエンザは母子免疫の効果が無く、免疫グロブリンでは感染を予防できない水痘、ヘルペス口内炎も母子免疫の有無に関わらず生まれたての赤ちゃんに感染します。
 風疹は、ママが妊娠前に生ワクチン接種を済ましていれば、母子免疫で赤ちゃんが守られます。
 麻疹は、最近は予防接種から時間が経って免疫が少なくなったママ世代に自然感染者の発生が見られていますから、母子免疫の効果はなくなっていると考えるべきでしょう。おたふくかぜも、ワクチン接種をせず自然感染も無かったままの場合は母子免疫は働きません。

 こう考えると、母子免疫によって6ヶ月までの赤ちゃんは感染症に罹らないはずという古い迷信は、もはや通用しません。

 母乳(初乳も含めて)に含まれる免疫グロブリン(胎盤を通過できない分子量の多いIgAが大部分です)も同じです。現状では、麻疹や百日咳、インフルエンザなど、身近で赤ちゃんにとっては危険な感染症に対しては、母乳中の免疫グロブリンの働きは期待できません。母乳中のIgAは、ひとつの感染症の病原体に対してそれに対応する免疫グロブリンが一対一の対応をしているので、何万種類もの抗原に対して何万種類もの抗体の免疫グロブリンの集合体なのです。母乳中の免疫グロブリンは一種類だけで、それがすべての病原体に対抗しているのではありません。たとえば、麻疹の抗体を持たないママの母乳・初乳中には麻疹ウイルスに対する免疫グロブリンは存在しないのです。

 もちろん、初乳を飲むことで赤ちゃんの腸粘膜の表面が免疫グロブリンに覆われて、アレルギーの抗原を無力化する事は出来ます。ママが血液中に持っている抗体に対応する細菌やウイルスを無力化する事は出来ます。でも、初乳中の免疫グロブリン量が多くても、本来最も気がかりな感染症を予防する働きは薄れてきていますから、以前ほど初乳に子だわる必要はありません。このあたりは、感染予防という観点では、母乳・初乳の常識を書き換えなければなりません。

 でも、免疫グロブリンの効果は期待できなくても、母乳中には、リゾチームとか、ラクトフェリンなど抗菌作用のある物質が含まれていますから、それらの物質が赤ちゃんを感染症から守ってくれます。
 
 また、母乳中には、間接的に赤ちゃんの善玉腸内細菌を増やす働きを持った物質(オリゴ糖など)が含まれていますから、母乳を与えることで赤ちゃんの腸内に善玉ビフィズス菌を増やすことが出来ます。善玉ビフィズス菌が多いと、先日ニュースに流れた蜂蜜の危険性、蜂蜜に入り込んで赤ちゃんを死に追いやったボトリヌス菌の芽胞の活性化を抑えることが出来ます。蜂蜜を赤ちゃんに与えないことはもちろん大切ですが、母乳も赤ちゃんの力強い味方であることを理解してください。

 母乳授乳後、鼻の奥がグジュグジュ音を立てたり、咽喉がゼロゼロ・ゴロゴロ音を立ててママを心配させるかもしれませんが、これは母乳が鼻の奥や咽喉に入り込むせいです。母乳によって鼻から侵入する細菌やウイルスをブロックする大切な働きと考えられます。鼻から侵入する細菌による中耳炎は、人工栄養児に比べると母乳栄養児でははるかに少ないのです。母乳の効用です。鼻の奥のグジュグジュは、赤ちゃんが乳首をくわえて離さず、鼻呼吸ができるているのなら、鼻づまりではありません。母乳が鼻を護っているんだと考えてください。

 母子免疫も、母乳・初乳中の免疫グロブリンも、赤ちゃんの感染予防の主役と言えなくなった現在ですが、それ以外の母乳の栄養、安全性などの長所は絶対的です。どんなに人工栄養のミルクが進歩しても母乳を超えることはできません。ぜひ、母乳で赤ちゃんを感染症から守ってあげてください。

 
 日常生活では、赤ちゃんを感染症から守る方法はただ一つです。風邪であれ、インフルエンザであれ、罹っている人、罹っていそうな人を、赤ちゃんに近づけないことです。
 
 どんなに大切な来客でも、上のお子さんのお友達でも、発熱、鼻水、咳がある人から赤ちゃんを隔離してください。ママが風邪をひいてしまったり、唇にヘルペスの症状が出たりしたら、手洗い、マスク着用を忘れないでください。人ごみに赤ちゃんを連れださないようにしてください。6ヶ月まで、それが無理なら3ヶ月までの赤ちゃんは、特に、病人から遠ざけることで感染症を防いでくださいね。

 赤ちゃん時代から始まって高齢者に至るまで、伝染病をワクチン接種で予防することが広く普及しました。種類も多く、もたもたしていると接種時期に間に合わないことも出てくるし、任意接種のワクチンは、公費負担がない地域では、高価で経済的負担もたいへんですね。

 病原体に人為的操作を加えて作るワクチンですから、副作用も無くすことはできません。百日咳ワクチンのように、ワクチン接種で病気が少なくなると、副作用のほうが問題にされ、接種を中断したら数年後再び百日咳の発生が増え、ワクチン接種が再開された例があります。ワクチン接種を中止してワクチン接種を受けられなかった世代の間では、成人後に百日咳を発症する人が出ています。おたふくかぜ生ワクチンは、麻疹、風疹の生ワクチンと三種混合でワクチン接種が始められたのですが、おたふくかぜワクチンのウイルスで無近世髄膜炎になった人があって、おたふくかぜ生ワクチンが除かれ、任意接種としてワクチン接種が続けられています。

 免疫の持続期間もワクチンによって長短様々ですが、いずれにせよワクチンによる免疫効果は長続きしません。時間が経つにつれて抗体価は下がっていきます。
 麻疹を例に取りますと、自然感染で出来た免疫は60数年以上保存されていることが19世紀末にあきらかにされました。デンマーク領ファロー島で65年ぶりに麻疹が流行した時、65年前の流行時に罹患した老人からは患者が一人も発生しなかったことがわかりました。自然感染の免疫は強いのです。
それに比べて現行の麻疹生ワクチンは2度接種しても60年もの間免疫を維持することは出来ません。

 どの伝染病についても、罹患、予防接種で獲得した免疫は、周りにその病気が流行するたびにワクチンの追加接種のように自然感染によって発病せず、免疫だけを強くします。これをブースター効果といいます。周りに病気が無くなれば自然感染によるブースターは得られなくなりますし、ワクチンを追加接種しなければブースター効果は得られず、免疫は先細りになります。ワクチンで伝染病の感染を阻止した私たちは、伝染病がなくなったために免疫の維持が難しくなっているという皮肉な時代です。

 このようにして、百日咳も、麻疹も、たぶんポリオも、地球上から消えることは無く、、患者は発生し続けます。私が今回、「予防接種の限界」という、ブログの項立てをしたのは、この問題が、予防接種を受ける前の赤ちゃんに及ぼす影響を、読者のパパ、ママに考えていただきたかったからです。

 先日来、麻疹が外国から空路日本に侵入したことが報道されました。百日咳も、成人間の発生が問題になっています。そのため、パパ、ママが感染して、それが赤ちゃんに感染する機会があることに気付いてください。

 赤ちゃんに及ぼされる伝染病感染の機会、危険を解決する方法は簡単です。

 パパ、ママが、ご自分のワクチン接種歴、抗体の維持状況を調べ、赤ちゃん出生以前にワクチンの再接種などの方法で免疫を強化し、パパ、ママから赤ちゃんに病気を伝染させないよう考えてくださいね。生まれてくる赤ちゃんを伝染病から守るために。

 初誕生のお祝いには、もう一つほとんど全国共通の行事がありました。

 お餅踏みでも登場した「箕」の中に、筆、矢立(携帯用の毛筆と墨壺のセット)、そろばん、本、鎌、ものさし、はさみ、餅、百つなぎ銭など、七種の道具や物を入れ、子どもに品選びさせる風習です。子どもが手に取ったもので将来の職業を占うのです。たとえば書物や筆をとれば学者に、そろばんをとれば商人に、はさみや糸巻きを手にする女の子は裁縫上手な人になるというわけです。

 この行事は、もとは中国から渡来したもので、礼(儀礼の知識)、楽(楽器の演奏)、射(弓矢の技術)、御(馬術)、書(文字を書くこと)、数(計算の技術)、合わせて成人するために身につけなければならない「六芸」を象徴する道具から一つを選ばせる行事でした。
 歴史は昭和初期ではなく、ずっと古くから続いてきた風習です。

 この行事もまた、お餅の行事同様、時代を超えて、親が子に託してきた夢を教えてくれます。

 いまのように、無限に大きい可能性の中からその頂点に到達する道を選んで、人をおしのけて、目の色変えてがんばらなければなければならない時代から考えると、身分制度や貧富の格差に苦しめられたむかしの、分相応の道を歩んでくれればいいという親の望み、安らぎのための行事だったと思います。

 時代が変わって、お誕生餅の必要性はもはや無くなったといってよいのではないでしょうか。わざわざ一升餅を通販で購入するより、どんな初誕生祝いでもいい、両親の子に託する思いが子に届きさえすれば。

 さて、たった今、一升餅が一番華やかにインターネットに登場しているのはどのサイトでしょうか?
 答えは、お食い初めや、お宮参り、一升餅など、赤ちゃんの成長に合わせた行事に使う品々のセットを販売している、商魂たくましい通販業者のサイトです。手を変え品を変えて、魅力ありげな宣伝を繰り広げています。赤ちゃんそっちのけで。

 


 「日本産育習俗資料集成」は昭和初期の資料ですから、現在とは違います。

 赤ちゃんが一人歩きを始める時期は、昭和初期の小児科学の医学書には12-15ヶ月と書かれています。現在では、初誕生日には約50%の子がひとり歩きできます(母子健康手帳参照)、昭和初期に誕生日前に歩けた子は、約10%くらいだったようです。この数字を基に、お餅を背負う初誕生の行事を考えてください。

 赤ちゃんが満一年前に歩くと、タッタリ餅と称して餅を背負わせて、わざわざ転ばせる風習が岩手、宮城、山形、群馬から報告されています。群馬からの報告には、一升餅を背負わせても歩く子は、将来、遠方に行って生活し、歩けなかった子は一生親の膝許近くで暮らすと記されています。

 北陸地方では、お餅のかわりに、おはぎやあんころ餅を投げつけます。甘くすると子どもがダメになるといって、あんこに砂糖を入れなかったそうです。餅を足に投げつけて座らせないと親不孝になると考えられていました。

 このほか、倒れずに歩くと、位負けする,利巧すぎてよくない、親を養わない、家に居つかないなど、一歳前に歩くことを、むかしの人は喜ばなかったようです。

 山梨では歩き始めた時に餅を背負わせて箕の中に立たせて健康を祝い、これを立ち餅と呼びました。
 長野では、箕の中に入れて「しいなは出て行け、良い実は残れ」と唱える。「しいな」とは、実の入らないもみがらだけの米のことです。みかけだけで実のない人間になるなという祈りでしょう。箕というのは、口が開いた籠のような道具で、米や麦を実ともみがらに分けるときに使います。選別の道具で、箕は誕生祝だけでなく、子どもの行事によく登場しますが、箕の中に残るような実のあるひとであってくれという祈りをこめたものです。

 関西地方にも餅を背負わせる風習はありますが、力をためさせるとか、立てれば健脚になるとか、東日本・北日本とは違った意味を持たせています。

 九州地方では、餅踏みの風習があります。紅白の餅を踏ませ、子どもの将来を願い、、餅と持ちのゴロあわせでその家の地盤や財産を受け継ぐ儀式とし、その餅を近所に配ると記されています。
 大分県の報告では、子が誕生前に歩くのを嫌い、一升餅を重箱に入れて背負わせ、歩くところをほうきの先で突き倒すならわしがあるそうです。走り者(出奔者)にならぬようにとのまじないです。

 こうやって、初誕生と餅にまつわる全国の過去の行事をみますと、むかし親が子に託した希望、子どもの将来に事無きよう祈った心情がよくうかがわれます。人より出過ぎず、さりとておくれもせず、足腰強い人間になってほしいという、ひかえめな親心がわかります。このほうが人より一歩でも先んじてほしいと目の色を変えるより、親子とも心穏やかに日を過ごせたでしょう。image

 いつから始まった行事かわかりませんが、初誕生のお祝いとして、江戸時代から昭和初期まで日本中共通だったのは、餅を負わせたり、踏ませたりする行事です。
 
 農耕民族、稲作民族の日本人は、米や餅に特別な力があると思っていました。「重体の病人の耳元で、米粒を入れた竹筒を振って音を聴かせると持ち直す」というような言い伝えもありました。
 
 このように米に不思議な力があるという考えは、弥生人がまだ日本に渡来する前からあったのか、江戸時代の農民や奉公人は、年貢を米で納めて自分たちは雑穀を食べ、米や餅はめったに口に入らなかったから、特に米や米製品を大切に思ったのか、私にはそのあたりの知識がありません。

 しかし、初誕生に餅を搗くこと自体たいへんな贅沢だったに違いありません。そのお餅を赤ちゃんに背負わせるのですから、いかに赤ちゃんが一歳を迎えることが嬉しい大切な行事だったか、現代の私たちには想像もつきません。昭和に入っても、一歳までに亡くなる赤ちゃんの数は生まれてくる赤ちゃんの2割以上、時には5割以上だった時代なのですから。

 昭和初期に、民俗学者柳田国男氏が母子愛育会で、日本中のお産と育児に関する習慣、行事(産育習俗)が集められました。戦争をまたいでその記録は、ようやく、昭和50年に、恩賜財団母子愛育会編「日本産育習俗資料集成」として出版されました。私はその当時母子愛育会に勤めていましたから、一冊もとめて今も手元にあります。この中に、「初誕生」という項目があって、そこに日本中の初誕生祝いの習俗が記録されています。もちろん、お餅を背負うことや、それに似た行事が詳しく集められています。それをもとに、初誕生とお餅の関連を書こうと思います。

 「アカネ」ちゃんは、11ヶ月になったその夜に39度Cの発熱、翌々日には解熱しましたが、鼻汁と咳が出始めました。パパが風邪をひいていたので、それが伝染したようです。感冒のウイルスは生まれてすぐでも赤ちゃんに感染しますから、11ヶ月の「アカネ」ちゃんに伝染しても不思議はありません。
 初めての発熱なので、突発性発疹症かと思いましたが、外れでした。
 
 そういえば最近、ヤナセクリニックの健診では、4ヶ月児、10ヶ月児どちらも、突発性発疹症に罹ったという既往歴をママにうかがうことがほとんどありません。ちょっと不思議な現象です。突発性発疹症は3歳までに、ほとんどの子が感染することが血液中のウイルスの抗体検査で分かっているのですが、症状の出ない感染も20-40%あるといわれていますから、罹っても症状の出ない子が増えているのかもしれません。

 「アカネ」ちゃんは、この発熱後、しばらく、ママに抱かれてしか寝なくなったそうです。苦しかった時間を癒してくれる人はママしかありませんものね。

 11ヶ月と9日目、先月からずっと挑戦していた二階への階段を登り、二階を探検することに成功しました。
 
 11ヶ月13日、ひとり歩き4歩、初めてのアンヨです。誕生日に一升餅を背負う資格ができました。
 11ヶ月25日、ひとり歩きが23歩に伸びました。ゼンマイ仕掛けの人形のような、ガニマタ歩きですが、壁の手前でちゃんと足を止めます。シリモチついたり、前に手を付いたりして止まるのですが。

 その他にできるようになったことを紹介します。

 「フーフーしてね」というと、フーフー吹く動作ができます。
 「ヒラヒラ」というと、手をグーパー、グーパーと、開いたり握ったりします。

 食事の時、食器をひとりで持ちたがるようになりました。

 食事は朝昼晩の離乳食と、おやつ。母乳は1日3回、それと風呂上りに牛乳30cc、。

 初誕生祝は家族揃っての食事会で、一升餅は採用されませんでしたが、バースデーケーキにロウソク1本。「アカネ」ちゃんが、自分で吹き消しました。

 これで、ママによる「アカネ」ちゃんレポートは一段落です。
 
 赤ちゃんは、寝返りなり、ひとり歩きなりを、赤ちゃんひとりひとりの別々のペースで、時間を追って刻んでいきます。

 母子健康手帳に記された成長記録は、複数の同じ月齢の赤ちゃんができるようになることを数字化して示しています。横断的観察による数値です。

 一年間の赤ちゃんの成長過程を時間を追って記録する方法(縦断的観察)は、時間とこまめな記録が必要で、たくさんの赤ちゃんの縦断的記録は得ることがとても難しいと思います。
 このブログでは、「アカネ」ちゃんというひとりの赤ちゃんをママに1年間レポートしていただいて、小児科医である私がハッとするような新しい情報を勉強させていただきました。
 
 「アカネ」ちゃんの記録を目安にして、たくさんのママに、ご自分の赤ちゃんの成長過程を理解していただくことができますように願っています。image
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「アカネ」ちゃん、10ヶ月になりました。

 アンパンマンが好きな「アカネ」ちゃんは、、絵本のアンパンマンや、アンパンマンアンパンをずっと記憶しているようです。3週間ほど前から言い始めた「アンパンマンパンパン」とか、アンパンマンに似た言葉を繰り返して口に出したいるようです。写真のアンパアンマンを見ても、笑ってアンパンマンと言っています。

 10ヶ月と20日で、ヤナセクリニックの10ヶ月健診でした。見慣れないスタッフが数人で計測したりだっこしたりするせいか、大泣きの健診でしたが、2週間前に顔を合わせた私を見て、泣き止んでしばらくじっと見つめていました。

 乳児の記憶持続時間は、6ヶ月から1歳半くらいまでは24時間という研究結果が最近発表されていましたが、繰り返し見ているものに関しては、もっと長く記憶が持続するようです。そうでなければ、10ヶ月健診ではどの赤ちゃんも大泣きするのですが、その理由が説明できません。10ヶ月の赤ちゃんは、家族と家族以外をちゃんと見分けているのですからね。前回のブログに書きましたように、「アカネ」ちゃんがアンパンマンの絵本の筋をちゃんと覚えていることも説明できません。反復して目にするものに関しては、9ヶ月以後の赤ちゃんは1ヶ月以上記憶が残るのだと思います。

 10ヶ月と2週の「アカネ」ちゃんは、8つ切りの林檎を手にとって、かじるようになりました。バナナが好きになって、バナナを見ると、バババと興奮するのだそうです。

 この時期のエピソードをいくつかご紹介します。

 絵本の読み聞かせ会でおとなしく聞いていたそうです。アンパンマンミュージアムで、ショーを見ながら拍手したり楽しそうに過ごしたそうです。

 伝い歩きが始まり、、階段を上りたい衝動が強く、目が離せなくて大変とのことです。

 ちょっと変わったエピソードとしては、ママ同士がお友達の、2歳児のアイリちゃんとの初対面。

 終始「アカネ」ちゃんは不機嫌だったそうです。「アカネ」ちゃんがアイリちゃんを触りに行くのですが、叩くようにしか触れず、アイリちゃんがそれを嫌がり、ママが「アカネ」ちゃんの手を押さえたりするのが気に入らなかったようです。アイリちゃんにオモチャをとられても不機嫌になり、ママはかなりくたびれたそうです。

 これは無理からぬこと。2歳児は「テリブルツー」(恐ろしい2歳)と呼ばれるように、自我が発達してきているので、歳下の赤ちゃんを可愛がる余裕はありません。
 子ども同士で協同遊びができるようになるのは早くて3歳になってからです。9ヶ月の「アカネ」ちゃんと2歳児のアイリちゃんの組み合わせは少し早すぎました。

 赤ちゃんと2歳児の兄姉の組み合わせは家庭でもよくあります。2歳間隔の出産は、一番多い組み合わせではないかと思います。
 2歳児には、ダメ、アトデ、マッテという言葉は通用しません。近寄ってきたら抱き寄せてハグしてあげることが唯一の方法です。赤ちゃんがうらやましく、嫉妬もあって、甘えたがり、赤ちゃんと同じように扱って欲しいのですから。
 でも、2歳児が悪い子に見えても心配いりません。無理なしつけはかえって悪い結果を生みます。
 3歳児になれば、アトデ、マッテがある程度理解できるようになり、4歳児5歳児は我慢ができるよい子になりますから、このあたりの幼児の扱い方を間違えないでくださいね。image

 8ヶ月に入った「アカネ」ちゃんは、高ばいが上手になりました。高ばいの姿勢で片手を挙げることができます。時々、仰向けで背中をそらせてブリッジをしています。
 
 手先が器用になって、花のそばに寄って、高ばい片手挙げの姿勢で、人差し指で花をチョンチョンと触ります。身の回りにあるスイッチやボタンを人差し指で押すことも好きです。コンセントに指を入れて感電することもあるので、コンセントにはカバーが必要です。

 半固形の離乳食を手でつかみ、グーパーして感触を確かめているようです。手のひらにつかんだものを机に塗りつけたりもします。汚いからダメといわず、好きにさせておいてくださいね、ほんの一時の行動ですから。
 広告を散らかして破って遊ぶのも好きな赤ちゃんが多いですね。
 マグを持ちたがって、マグからストローで飲み物を吸うことができます。

 なんでも指先でつまんだりひろったりしますから気をつけてください。糸くずや髪の毛のような細い小さいものもつまめるようになります。これは10ヶ月健診の通過項目のひとつですが、8ヶ月頃からできるようになります。

 「アカネ」ちゃんは、パンを手で持って、自分でむしゃむしゃ食べるようにもなりました。

 体全体の動きとしては、つかまり立ちができるようになります。初めは爪先に力をいれていますが、やがてかかとを床に付けてしっかり立つようになります。つかまり立ちの次には、座った状態やうつ伏せの状態から独り立ちする段階に進みます。

 8ヶ月末から9ヶ月にかけて、記憶力、考える力、感情表現も進歩してきます。
 「アカネ」ちゃんは歯が生えてきて、ママの乳首を噛んでしまいました。ママが思わず、強く「痛い」と言ってしまってから、オッパイを飲むのをためらうようになったそうです。
 ママが床でストレッチして顔を伏せると、「アカネ」ちゃんはママが泣いていると思うのか、ハイハイダッシュでママのそばに来て、手でママの顔を上げさせようとすると、ママのレポートに書かれていました。
 ママが「アカネ」ちゃんに声を掛けると、「アカネ」ちゃんは答えるように声を出し返してくるようにもなりました。

 9ヶ月に入って「アカネ」ちゃんは、つかまらずに3秒くらい独り立ちするようになりました。カーテンを使って、イナイイナイバアをsh手見せます。リズムに乗って手を叩いたり、振ったりピョンピョン跳ねたりします。
繰り返し読んであげる絵本の内容を覚えて、好きな箇所で笑って最後におしまいのベーをして見せます。「イヤ」と「アンパンマン」が言えます。泣きまねと本気泣きを使い分けます。

 「アカネ」ちゃんだけでなく、どの赤ちゃんも似たような成長過程を歩んでいられると思います。なるべく一緒に遊んで、歌やら、絵本の読み聞かせやら、おしゃべりやらをしてあげてください。積極的に働きかけることが、赤ちゃんの次の発達の引き金になるのですから。image
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