澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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ここで、TORCH(トーチ)症候群について触れておこう。

 トーチ症候群とは妊婦が免疫を持たずに罹患すると胎児に重い症状や障害を起こしうる感染症のことである。10週以前の胎児には特に被害が大きくなる可能性がある。
 そのため、妊娠前に免疫の有無が調べられるものは調べて、抗体価が低くてワクチン接種が可能な場合はワクチン接種を受けておく。妊娠中は生ワクチン(風疹、水痘など)接種はできないから。

 TORCHとは、  T トキソプラズマ症、
          O  Others 梅毒、水痘、コクサッキー,B型肝炎など(新型コロナウイルス感染はここに入る)。
          R  風疹(先天性風疹症候群)
          C サイトメガロウイルス感染症
          H  単純ヘルペス(口唇、性器)感染症
の総称である。

 トーチ症候群の症状
   *トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス感染症は、特に症状が出ないことが多く、妊婦が感染していること     に気付き難い。
   *胎児の発育不良が見つかり、初めて感染症を調べて発見されることも多い。
   *胎児の症状や先天的な形態異常の程度は様々である。

 トーチ症候群の検査・診断
    *血液検査
      抗体価を測る。
    *超音波検査によって胎児のサイズを計測し発育不良の有無を知る。
    *症状が出ないことも有る。

 トーチ症候群の治療法
    *感染症によって、治療法、抗菌薬は異なる。
    *単純ヘルペスは産道で胎児に感染するので、産道感染を防ぐため帝王切開を選ぶ。
    *サイトメガロウイルスに関しては、有効な予防・治療法が無い。   
 
、、
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 受精から胎児まで

 受精卵は、卵管から子宮まで移動し、2日ほどかけて4-5回分裂し細胞数が16-32個になった5日目頃、子宮に到着、子宮内で、卵胞を被う透明体という膜を破って子宮に着床する。
 透明体は鳥ならば卵殻、魚ならば卵膜にあたる。

 子宮に着床すると、卵胞は初期胚になり胎盤の元になる栄養外胚葉と、胎芽胎児に育ってゆく内部細胞塊に分かれる。
 
 2週には内胚葉、外胚葉ができ、3週で中胚葉ができ始め胚のサイズも次第に大きくなる。
 受精卵のサイズは直径0.15mmだが中胚葉ができる頃には0.2mmから2mmにサイズが増える。
 
 4週目には心臓肝臓ができ心臓が拍動を始める。この時期には2mmのサイズが5mmになる。
 4週になると胎芽期といわれる。

 胎芽期には尻尾と鰓(エラ)がついているように見える。
 
 尻尾はじきに消えるが、鰓状の頭部ははっきりとしてくる。

 鰓弓といい4段に別れている。上部から第1鰓弓、順番に第4鰓弓まで、頭部の板状の骨や底部の塊状の 骨を作り、12種の脳神経(嗅神経、視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経、顔面神経、、内耳神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経)や耳小骨を作り、聴いた音を内耳、大脳につなげる。鰓弓の裏側の鰓嚢 はユースタキー管(内耳と鼻咽腔を結ぶ管)、扁桃腺を納める空間、甲状腺、副甲状腺、胸腺を作る。大脳 の器を作り、大脳の機能を助けるなど、鰓弓はとても大切な器官である。しかも、鰓弓は2週間の間に、この大仕事をやってのける。
 
 5週になると、脊髄を納める脊椎管ができる。葉酸が不足すると、脊椎管の閉鎖不全をもたらし、二分脊椎、水頭症の原因になる。
 
 6週ではエコーで心拍動が見える。
 
 7週には手足の突起が出てくる。

 8週から、胎芽期は終わり、胎児期に入る。
 
 10週までに、ヒトの内蔵器官はすべて出来上がってしまう。この10週間の間に、感染、薬物、母体の異常などが胎児に働きかけると、重大な先天奇形を生じる。(後でまたこの問題を取り上げる。)

 13週には胎盤が完成し胎児は胎盤、臍帯を通して母体と繋がる・
 
 つわりの始まりも妊娠10週頃からで、つわりで妊娠を自覚する頃には、胎児の基礎作り勝負は終わっていると考えてよい。

 胎芽・胎児のサイズは
 4週には2mmから5mmに、
 5-8週の間に5mmから30mmに
 10週で70mmに急速に増える。
 13週には身長13cm、体重100gに成長する

 以上、耳慣れない言葉の列記で、読んでいただくのも、理解していただくのが難しいかもしれない。だから難しい部分はすっ飛ばして、とにかく、妊娠初期の10週までの期間がとても大切であることを理解してほしい。
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3)  葉酸の働き

  葉酸は、遺伝子・染色体の成分である核酸(DNA)を体内で合成する時必要な酵素の手伝いをする補酵素でビタミンB12は葉酸の働きを助ける役割を持っている。
 染色体は、体を構成する全細胞、ヒトならば37兆個の細胞すべてに、必ず1対入っている。
新生児も約3兆個の細胞で成り立っていて、全細胞に1対づつ、3兆対の染色体を持っている。

 人体はいわば複雑な有機化学工場で、無数といえるほどの酵素の働きで、アミノ酸(食物として摂取したたんぱく質から作られる)と、鉄、亜鉛、銅、硫黄、窒素、カルシュームなどの元素を材料にして、何種類ものたんぱく質を作り、それを使って体の組織を作っている。酵素が働きやすい体温と、酸素、水、炭水化物、脂肪、塩分を原料・エネルギー源としている。
いつ体のどの部分にどんなたんぱく質や元素が必要か、それをどう組み立てるか、その設計図が染色体である。

 染色体の中には1対の核酸がコイル状に納められ、2本の核酸はアデニン(A)、チトシン(C)、グアニン(G),
チミン(T)の4種類の塩基と呼ばれる物質が2個づつ対になって梯子のように核酸をつないでいる。
 これは塩基対と呼ばれ、染色体を百科事典と考えると、塩基対は文字1個の働きをする。AA=GG,CC=TTというふうに2個同じ「塩基がつながってもいい。
 たとえば、お酒を飲める飲めないを決定する塩基対はアルコールを分解する酵素を作り、遺伝子の中に、AAという塩基対を持っていれば飲んでも酔わない、AGは少しは飲める、GGはまったく飲めないの3グループにわかれる。日本人はAA50%,AG45%GG5%の割合でのめる飲めないが分かれる。ヨーロッパ・スラブの人はAAばかりで飲んでも酔わない。私はAG45%グループである。

 核酸が集まって染色体を構成し、人類では24対の染色体が1個の細胞の中に納められている。性染色体は、XXが女性、,XYが男性を決定する。X染色体に比べてY染色体は短く、入っている遺伝情報量が少ない。

 兆といえば私たちの身近には無関係の数字に思えるが、私たちの体を構成する細胞数は、成人37兆個、新生児3兆個なのである。

 この細胞一つ一つに入っている遺伝情報は30億文字、千ページの本千冊に相当する。
 この情報で1人の人を作ることができる。実際にはこの情報の一部分が引き出されて、皮膚、骨、内臓などを分担して作る働きをするのだが。
 
 1個の受精卵からスタートして3兆個の細胞にまで成長する胎児には膨大な量の核酸が必要でその細胞を作るのに必要な葉酸はこれまた膨大な量となる。
 だから妊娠中は勤めて葉酸が多く含まれた食品を食べ、不足分を葉酸サプリで補うことが推奨されている。

  (続く)

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 ヤナセクリニックのストローベリークラブで私が受け持っているクラスのテキストを、何度かに分けてブログで紹介します。お役に立てば幸いです。
 私が小児科医の立場で作ったテキストですから、行き届かない部分があると思いますが、お許しください。

1)  健全なる精神は健全なる身体に宿る。

  これは、古代ローマの風刺詩人の言葉として有名。しかし、彼の真意は健全な身体と、健全な精神と両方とも備わったら言うことなしという意味だという。
  これから妊娠して出産・育児される女性は心身ともに健康であってほしい。
母になる人が、身体能力を高め、少々の環境の変化に耐える身体を持ち、健全な精神を持つことから、育児は始まる。
 
 具体的には、母になる女性が、自身の感染症に対する免疫状態をチェックし、免疫の低下があれば、予防接種を受けておく(風疹、麻疹など)。
 妊娠中、出産に差し障るかもしれない異常は、注意すべきことについてあらかじめ産科医師の助言を受ける。
 タバコ、飲酒癖、習慣性薬剤は、やめる。

2)  葉酸は、何故妊娠前から飲み始めなければならないか。

   胎児の発育に必要な葉酸は、妊娠直後から必要になる。
 
 射精後1時間で卵子は受精し分裂を始める。この段階から胎芽、胎児に葉酸が必要になる。
、妊娠する機会があったら、受精を待たずに、即、葉酸摂取に気を配らなければならない。妊娠中の母体も、子宮内の胎盤その他の付属物や胎児の赤血球を作るためにも葉酸や鉄を大量に必要とする。 胎児と母体と両方に葉酸が必要である。

 葉酸が発見されたきっかけは、1920年代の栄養状態の悪い女性が働くインドの紡績工場で、妊婦の貧血が多く、酵母製剤を与えると貧血から回復することに気づいたイギリスの女医が葉酸の分離に成功したことに始まる。
 1930年代には、葉酸がホウレンソウに多く含まれていることに気づいたアメリカ人研究者が、緑葉に含まれるビタミンということで葉酸と名付けた。
 1940年代、二分脊椎(脊椎管閉鎖障害)の予防に葉酸が有効であることがわかり、受胎したらなるべく早く葉酸を摂取すること、食品だけでは不足する葉酸をビタミンB12と一緒に与えることが推奨されるようになった。

 (続く)
  

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 触覚に関しては、胎内から出生直後の新生児まで、手で色々なところを触っています。しかしこの行動は、人に近縁のニホンザル、チンパンジーでも同じです。大脳皮質を介さない行動で、サルのほうがヒトより先輩です。
 
 触覚メインの反射として哺乳反射があります・原始反射の代表格です。
 頬に触れるとそのほうに顔を向け、唇に触れるものに吸いつき、歯茎で噛み、舌で強く吸う一連の動作です。これが無ければ、思考や記憶の能力が無い新生児は、おっぱいを飲むことができません。外見には、おなかが空いた表現に見えますが、空腹満腹とは関係ありません。
 
 掌に触れたものを強く握る反射(無意識な把握反射)も原始反射です。やがて大脳の働きでコントロールされるようになると、掌の感覚は様々に分化し、形を認識し、表面の性状を感じとり(ざらざらしているとか、スベスベだとか、乾いているとか、濡れているとか)掌に触れるものを識別したり、用途に応じて使ったりできるようになります。ホムンクルスの大脳皮質機能図で手掌はとても大きな部分を占めます。ヒトの触覚器としては、口回りと手は特別重要です。
homunculus
  
 嗅覚・味覚に関しては、いろいろな観察記録があります。新生児は甘い液体が好きとか、ママの匂いをかぎ分けるとか、ママと他の女性の乳汁をかぎ分けているとか。でも私は、こういった観察記録、印象だけの記録はあまり信用しません。私が毎日診察している出生直後の赤ちゃんは、母乳も人工乳もただの水分も、ママの乳房も哺乳瓶も区別していません。甘い液体が好きといわれていても、甘い液体になっているビタミンK2シロップを飲んだ赤ちゃんは、いかにもまずそうな顔つきをし、嘔吐するベビーが多いのです。
  
 嗅覚味覚も、感じ取る末梢器官は胎内で完成していますが、その感覚を判断する大脳皮質と記憶器官は、視覚器(眼球)聴覚器(耳)同様、生後数ヶ月たたないと、つながらないのだと思います。

 私は、末梢の感覚器が大脳皮質の各分野とつながって働き始めるのは、すべての感覚皆同時期だろうと感じています。
 たとえば成人した私は、ラーメンを見たら、匂いでその味を想像し、記憶の中のおいしかったラーメンを思い出し、ついでに、そのラーメンを食べた場所や、その周辺の風景までまとめて頭に思い浮かべます。
 有名なマルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」では、紅茶に浸したマドレーヌの香りで、過去を思い出す場面から小説が始まります。
 
 私たちの味覚嗅覚も、大脳皮質の各分野がお互いにつながりあったところからスタートするのではないでしょうか。
 生後数週するとママの匂いを、他の女性と区別するというロマンティックなお話は、残念ながら単なるお伽噺ではないかと私は考えています。
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ヒトの胎児・新生児を理解しようと思った時、必要な条件が3つあります。

①最新の脳科学、人間生物学の研究成果を知ること。
 この分野の研究結果は日々に増加しています。それを基礎に、過去の間違った研究結果で正しいものは残し、誤っているものを捨てる必要があります。

 たとえば、新生児が泣くのは空腹だからという考え方は間違いです。赤ちゃんは、3ヶ月半過ぎまでは空腹満腹を大脳皮質で感じては居ません。大脳皮質のもう一段下の動物脳で、不安,安心を感知して反応しています。新生児の原始反射がその例です。
いつもの泣き方と違って、激しい泣き方をするときは、無意識に不安を感じているからでしょう。

 たとえば、誘発したモロー反射には、赤ちゃんは激しく泣きます。モロー反射は赤ちゃんを不安にするようです。通常の診察では、新生児はうるさそうに小さな声で泣いて、じきに泣き止みます。そのままにしておくと、次第に泣き方が激しくなり、火がついたような泣き方になり、泣き止ませるのがたいへんになってしまいます。放っておかれることの危険を感じているからです。

②赤ちゃんの観察記録についてふるい分けること.
 はるか以前に記録され、いまだに残っている観察記録は、正しいものは残し、否定されているものは消去することが大切です。
 
 赤ちゃんを抱く時、母親は無意識に左胸に抱くという仮説。 これはその後の検証で否定されています。

 胎児は胎内で母の声を聴いていて、出生後も母の声に反応するという仮説。胎児は胎内で音楽を聴きおぼえていて、母の心音のリズムに出生後も泣き止むという仮説も実証不可能です。

 胎児の大脳は視る、聴く、触った感触、味やにおいがわかっているという仮説は、疑問です。
 五感すべての感覚器は胎内で完成していますが、大脳と繋がっていず、最初の記憶器官である海馬は機能していませんから、胎内の記憶を出生後も持ち続けることは不可能です。胎内記憶はあり得ません。
 大脳辺縁系という場所で、太古の動物から何億年も持ち続けてきた快不快、安全危険の感覚は無意識のうちに働くでしょうから、無意識の反応はあり得ますが、大脳では意識されていません。

 1990年代に子宮内に聴音装置を入れ胎外の音が胎児に届いて反応するという研究が発表され、出生後も胎内で聞いていた音を覚えているという仮説が信じられました。いまだに新生児に聴かせる母の心音や、モーツアルトの音楽テープやらが商品として売られていますが、こういった仮説はあり得ないことです。大脳皮質以下の反応として、音やリズムの好き嫌いはあるかもしれませんが。育児書にこんな話が引用されていたら、その育児書は読まない方がいいでしょう。

③動物の進化学を基に、億年単位の動物の進化の視点から、ひとの赤ちゃんも見直す必要があると云うこと。
 例えば、動物の四肢の構造は、魚から人間に至るまでほとんど同じです。ヒトの上肢は、肩関節から上腕骨が一本腕関節から先に橈骨、尺骨の2本の骨があり、手根骨、5本4節の手のひらに続いていますね。魚の鰭もほぼ同じ構造です。

同様に、ヒト以外のサルたちの胎内発育も、胎内の動きも、ヒトの胎児と大差ありません。体のあちこちに触ったりニホンザルもチンパンジーも同じことをやっています。
 
 しかし、ヒトの場合は、直立二足歩行に適した独特の体形を持ち、大脳という大きな頭の構造があるため、出産は大きな頭が産道をを通過できる時期に、他のサルが胎内で成熟して生まれるのに比べて、未熟な状態で生まれてこなければなりません。歩行開始までに約1年が必要なことでわかるように、出生時には大脳の記憶ゼロの状態から徐々に発育しますが、その間は、母がつききりで育てなければなりません。その結果、四肢の動きや、記憶や、思考といった、サルには無い、高級な能力が身につくのですが。

 ヒトの胎児・新生児・乳児を正しく理解するには、以上の3点の観点から考えなければなりません。未整理の育児記録を、みな、ごちゃ混ぜに書いた育児書や、ごみ屋敷のような育児常識に頼っている限り、育児常識の矛盾はなくならず、ひいては育児困難もなくならないでしょう。

次回はタイトルの視聴覚以外の感覚について具体的に考えようと思います。(続く)                
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 触覚・嗅覚・味覚も、視覚・聴覚同様、感覚を受け取る道具は胎内でほぼ完成していますが、大脳には繋がっていません。
 神経伝達物質は、脊髄、脳幹部では働いていますが、大脳では出生直後には未完成です。これも、視覚・聴覚と同じです。大脳皮質をヒトの脳と考えると、原始的反射と言われる無意識な動作は一段と古い動物脳に支配されています。、
 
 大脳と繋がっていませんから、胎内・新生児期の赤ちゃんの動きは無意識な動作です。原始反射はその現れです。

 新生児期の赤ちゃんは、たくさんの原始反射を持っています。胎内で完成し、子宮内で、手で触ったり指を吸ったりしています。口周りの原始反射で乳首をくわえ、哺乳することができます。非対称性緊張性頚反射で、左右の手を別々に動かし、手のひらに触るとぎゅっと握ります。
 
 モロー反射の目的は諸説ありますが、終生残る反射です、パラシュート反射の前段階かもしれません。
 
 背筋に触ると体を左右にひねる反射もあります。

 足の内側の皮膚をくるぶしあたりで触ると、足の親指をぎゅっとジャンケンのグーのように内側に曲げます。足の裏をかかとから指に付け根までこすると、親指をそらします。チョキやパーの形です。(親指を上にそらす反射はバビンスキー反射といいます。)

 原始反射は、生後数カ月で消失すると本に書かれていますが、実は消失はせず、大脳と全身の骨格筋肉が繋がると、無意識な反射が、大脳の指令で意識的に動かされるようになります。しかし、そうなるまでに数カ月かかります。大脳皮質の支配が失われるような大脳の異常状態(外傷、脳出血、認知症末期など)にはまたでてきます。
 
 大脳皮質主導で原始反射が使われるようになって始めて、ヒトがヒトらしく行動できるのです。ヒト以外の動物と同じような反射は、無意識な生命維持に使われるものが多く、呼吸、循環、排泄、恐怖などは、大脳の支配がなくても活動します。

 では、ヒトらしくってどういう意味でしょうか。

 直立二足歩行、手が使える動物として、ホモ・サピエンスは最近数万年間、ほとんど変わっていません。文明にくるまれている現代の私たちも、数万年前の言葉も文字も持たないホモ・サピエンスも,ひとくくりにできる動物です。
 
 他の動物に比べて、ヒトの特徴、優位性は、下肢が発達し、長時間歩行ができ、上肢が多目的に使え、特に手のひらは情報を受け取り、その情報に対応できるということにあります。

 次回は、今回書いたことを前提にして、具体的に、ヒトと、ヒトの赤ちゃんの感覚について考えましょう(続く)
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 前回のブログで、新生児の眼球は胎内で完成しているが、

 ①大脳皮質とつながるには2か月以上かかり、神経細胞のニューロンという突起の先端部であるシナプスが神経細胞同士をつなぎ合わせないと、大脳の神経細胞は働きださないこと、
 ②シナプスからシナプスへの情報伝達は、神経伝達物質(neurotransmitter)という体内で生成される化学物質がになっているということ、
 ③神経伝達物質はとても種類が多く、それぞれの役割が違っていること、
 ④大脳皮質の視覚中枢と眼球から伸びる視束がつながってようやく眼球に入ってくる情報が大脳に伝わるようになり、生後4週間のウルトラディアンリズムが大人の様なサーカディアンリズムに移行すること

などを紹介しました。

 出生したばかりの赤ちゃんの大脳の視覚野は全く働いていなくて、当然、胎児の大脳も働いていません。すべては出生に始まり、長い時間をかけて体外生活から獲得する情報や知識を大脳の引き出しに収め、知識、人格、感情などを、ひとりひとりが自力で作り上げていくのです。

 聴覚も、視覚と同じでしょう。
 
 音を感じる聴覚器官は胎内で完成していますが、ママの腹壁を通して胎児に届く音は記憶されていない、大脳皮質に記憶する場所がないと考えるべきでしょう。

 胎内記憶、出生時の記憶などはカルトの世界の話で、大脳生理学、脳科学の世界では存在しないものです。

 1900年頃、日大医学部産婦人科学教授室岡一先生が、子宮内に届く、ママの腹壁外の音を録音され、その結果から、胎児は音を聞いて記憶しているのだというストーリーが生まれました。
 神経伝達物質の役割がまだ話題に上らなかった頃のことです。

 その頃のストーリーを根拠にした、胎内で聴こえるママの心音を録音したテープやCDは今も販売されていますし、胎内で聞かせる音楽テープやCDも販売されています。

 しかし、2000年頃から、神経伝達物質の種類が続々増えて、その働きが明らかになり、現在では、2000年以前の研究はほとんど根拠なしと言われるようになりました。
 
 Lee Salkというアメリカの発達生理学の教授が、ママは無意識のうちに、利き腕に関係なく、赤ちゃんを左胸の方に抱くという観察結果を発表されました。今も引用されている書物がありますが、この説も現在は根拠なしと言われています。
 
 モツアルトの音楽は妊娠中にママが聴き、赤ちゃんもそれを聴くと、胎児、ひいては赤ちゃんの情操が発達するという説も、胎児は現在も1万年前も同じように受精して、同じように胎内で成長するのですから、胎児にとってモツアルトが特に優れた音楽という根拠が無くなります。モツアルトの音楽はは高々数百年の歴史しかないのですから。
 
ママが好きな音楽を聴いて気持ちが落ち着いていると、ママを落ち着かせる神経伝達物質が赤ちゃんに胎盤を通して移行し、胎児もじっと落ち着いているのだといわれるようになってきました。

 ママの心音に似た音を聴かせると、新生児が落ち着くというお話もあります。これも、現在の脳科学、大脳生理学を基礎に考えると、根拠がありません。

 聴覚に関しても、視覚同様、胎内で聴覚器官は完成しているが、大脳につながってはいない。

 赤ちゃんは白紙の大脳で生まれ、出生後の大脳の発達を待って、経験や知識を記憶し成長するのだと考えた方が合理的だと思います。
 視覚だけが特別で、他の感覚は視覚と違う成長をするとは考えられませんものね。




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産院から退院して赤ちゃんと生活を始められて、まずママをびっくりさせるのは、赤ちゃんが昼夜の別無く小刻みに泣くことでしょう。この状態は、約4週間続きます。この時期の赤ちゃんは、一日のリズムを受け入れる仕組みができていないからです。  私たち人類(ホモ・サピエンス)の歴史をさかのぼってみましょう。 最近の数万年間は、人類の遺伝子はほとんど変化していません。  今おなかの中に居る赤ちゃんの成長は数万年前と同じです。ママを含めて、おとなも、外見、体の構造、大脳をはじめとする脳神経系、すべて数万年前と同じです。  数万年の間に、文化や文明は大きく進歩していますから、社会構造や衣類や、病気の予防や治療、外見を美しく見せる化粧などは数万年前とは大きな違いがありますが。 この事実を踏まえて、一日の生活リズムがどのようにコントロールされているか考えて見ましょう。  数万年前には、人工の明かりはほとんど使われなかったでしょうから、一日のリズムは太陽の動きをもとに決めらていました。   朝明るくなると、太陽の光が目に入り、その感覚が、間脳を経て、脳の睡眠・覚醒中枢に送られ、一日の始まりがリセットされます。   この仕組みは数万年前も今も変わりません。成長した子どももおとなも24時間が一日の長さです。これを概日リズム(サーカディアンリズム)  日暮れ以後には、眠りを誘う仕組みが働き、翌日の日の出まで眠ることになります。  現代でも、このリズムに従うこと、早寝早起きがもっとも自然で健康的といわれてますね。起きている状態も必要ですが、眠りもまた心身を健康に保つために欠くことができません。  太陽の光で目が覚めて、夜になると眠くなって、眠りについて、翌朝太陽の光でまた新しい一日が始まる。  このリズムは全身の様々な遺伝子(たとえば時間遺伝子)の働き、神経伝達物質(セロトニン、メラトニンなど)の働きによっても維持されています。  胎児は、ママの血液中の神経伝達物質が胎盤を経て赤ちゃんに届きますので、胎動の激しい時間や静かな時間は、ママの睡眠・覚醒に合わせて変化しています。  出生後は、ママの血液経由で、目が覚めたり、眠くなったりする神経伝達物質を受けとることができません。  赤ちゃんの眼球が光を受け取る働きは胎内で完成しているのですが、その刺激を間脳や大脳に送る神経のルートができていません。    網膜に届いた光情報を元に一日のリズムをリセットする神経細胞の集まっているところが、視交叉上核です。  左右の眼球は左右半分づつに分けられてそれが交叉していて、眼球の網膜で感じた情報は左右別々の視束を通って脳に送られるのですが、視交叉のすぐ上にある視交叉上核は、網膜で感じた光刺激によって全身の体内時計を24時間リズムに調節する役割をしています。   ①視交叉上核は生後4週間は、まだ働いていません。     ②視交叉上核は大脳の睡眠中枢、覚醒中枢にも情報を送るのですが、この働きは生後1-3ヶ月は機能していません。     ③生後3ヶ月以降になると、ようやく眼球の網膜と視交叉上核がつながり、視交叉上核と睡眠・覚醒中枢もつながります。    このように、目に入る光を元に24時間の生活リズムが作られるようになるまでには、3段階、3ヶ月以上が必要です。     ①の段階では、睡眠と覚醒は小刻みに短時間づつ繰り返されています。生後4週間の赤ちゃんは16時間くらい眠っているのですが、浅い眠り(レム睡眠)の割合が多く、そのため頻繁に起きて泣くのです。   ②の段階では、光で時間のリセットができませんんで、暗闇の中にずっとおかれているのと同じ状態で、約25時間を1日とするフリーランリズムが生体リズムになりますから、24時間リズムより一日が約1時間長くなり、リズムも少しづつ概日リズムから遅れていきます。   ③の段階でやっと、おとなと同じように1日が24時間リズムになります。  もうひとつ、生活リズムに関係するものがあります。それは、メラトニンです。    メラトニンは間脳の後部にある松果体という内分泌器官で作られます。夜になるとメラトニンの分泌が増え眠くなります。    松果体の働きも生後4週間は弱いので、生後4週間の赤ちゃんのリズムは、夜昼の区別が無い状態になります。この 生後4週間のバラバラリズムは、ウルトラディアンリズムといわれます。規則なし、超バラバラリズムという意味です。 このリズムが、生後4週間の夜昼無しの赤ちゃんの泣きの理由です。  おなかが空いているから、オムツが濡れたから、おっぱいが足りないからこんなに頻繁に起きて泣くんだとママを惑わせますが、そうではないのだということを、まず、理解してくださいね。  この期間の赤ちゃんとの付き合い方は、泣いたら赤ちゃんに授乳することしかありません。飲ませすぎではないのかと心配されるかもしれませんが、飲ませすぎになることはありませんから、安心してオッパイを飲ませてください。ミルクを補足しても泣き止ませる効果はありません。    ママによっては、母乳中にメラトニンが分泌されることがあります。赤ちゃんが夜寝てくれて助かるといわれるママがありますが、母乳中のメラトニンの量が多いママなのでしょうね。  いずれにせよ、赤ちゃんは月齢を追って夜眠るようになり、3ヶ月になると空腹感、満腹感を赤ちゃんが表現してくれるようになります。4か月以後は、夜の睡眠時間が3-4時間まとまってきます。  最初の4週間は大変でしょうけど、それ以後徐々に赤ちゃんが成長とともに変わってきて、夜昼が別れてきますから、あせらずに、赤ちゃんに任せて、その時を待ってくださいね。
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 赤ちゃんの一か月健診で、これまで10年ほど、たくさんの赤ちゃんを診察してきました。
初めて出産されたママは、顔も体もこわばって、たくさんの、心配しないでいい心配を私に話されます。しかし、二人以上の出産後のママは、ほとんど心配事が無くなっているようです。無意味な心配をされなくなるんでしょうね。

 今回は、数多い心配事の中で、胎児の眠りと、出生後約4週間の新生児の眠りと泣きを中心に考えてみましょう。
 なぜ、胎内では、胎動が多い時間と静かな時間があるんでしょう?
 なぜ、生まれてからほぼ4週間、赤ちゃんはあんなに泣くんでしょう?

 この理由は、最近の睡眠科学、脳科学の進歩で実態がかなりはっきりしてきました。

 まず、赤ちゃんは、空腹感やオッパイの出の多い少ないで泣くのではなく、オムツの濡れた不快感で泣くのでもないということ。理由無く、眠りが浅くなれば泣きます。ほとんどのママがこの事実を誤解されています。
 
 誤解の元は、赤ちゃんは生まれた時には、ママと同じような、おとなの感情、感覚を持っているという先入観です。  赤ちゃんの表現するものを、おとなの感覚を基礎に考えないことが育児の大変さをかなり減らしてくれるでしょう。  「この泣き方はお腹が痛いからだろう。とても苦しそうに顔を真っ赤にしてうなっている。」と考えると、ママの心配が増幅されるでしょうが、赤ちゃんは、単に、おなかのトレーニングをしているだけなのです。  例えば、空腹感は3カ月頃にならないと、赤ちゃんは感じることができません。お腹が空いているみたい、おっぱいが足りないみたいという感じは、赤ちゃんは私と同じように感じているはずだというママの感情移入の産物です。
 
 泣く理由の第一は、母乳の出が悪くて満腹にならないからだと考えるママが多いですが、そうではありません。

 赤ちゃんの口元を見ると、唇を吸ったり、指を吸ったり、口元をモグモグ動かしたり、いかにも、おなかがすいたと表現しているように見えますね。
 大きな子どもや大人なら、空腹の表現かも知れません。でも生まれてすぐの赤ちゃんでは、あの口元の動作は、無意識な原始反射で、あの動きがすべてオッパイを飲むために必要な動作なのです。空腹のn表現ではありません

 オッパイを飲ませるとすぐ、赤ちゃんおしりから、オナラとウンチが出ます。口から入ったら、すぐ、おしりから出る。
 あれは胃直腸反射という原始反射のひとつです。ほぼ一ヶ月くらいあの反射が続き、一ヶ月過ぎると反射が消えて、ウンチの回数が突然減ってきます。この過程も、赤ちゃんに備わったプログラムのひとつなのです。  次回は赤ちゃんの眠りについて考えましょう。(続く)
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