澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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 手記を引用している母乳栄養に挫折したママは、頻繁に乳房マッサージに通い、乳房のケアを続けていたのに、赤ちゃんのおっぱいの飲みがよくならなかったと書いています。

 前回のブログに書きましたように、乳房マッサージはあくまでも母乳の流れる「ルートの整備で、赤ちゃんがママの乳首を深く吸い込んで赤ちゃんの舌で乳首をクチュクチュ飲みで刺激してくれなければ母乳は出ません。乳房マッサージだけどれだけ繰り返しても無駄です。
 
 赤ちゃんの哺乳の状態までちゃんと見て、適切な助言が与えられなければ、乳房マッサージ師として片手落ちです。うまく深吸い、クチュクチュ刺激までママがコツを自然につかめれば母乳は出るはずです。コツがつかめなければ母乳は出ません。ここに、乳房マッサージの限界があることをよく知ってくださいね。

 母乳がダメだから哺乳瓶で人工栄養にという転換は、内容がまるきり違います。ミルクを入れる容器が有って、その先にゴムその他で作られた人工乳首が付くという哺乳瓶は、何百年も変っていません。乳首の材質や形を変えても意味有りません。手記のママは、色々な哺乳瓶を試してみたと書いていますが、哺乳瓶を取り替えても解決には結びつきません。
 
 何度も書いてきましたが、母乳はママの乳首に刺激を与えて、それに反応して乳腺が母乳を作り、乳管が収縮して母乳が赤ちゃんの口に注ぎ込まれるものです。赤ちゃんは乳首を刺激するのに大変な努力をして、疲れ果てて哺乳をやめるのです。
 
 それに対して哺乳瓶は、逆さにするとミルクが自然に滴下するように乳首の穴の大きさを加減し、赤ちゃんは母乳を飲む努力に比べたら比較にならない吸い方でミルクを口に入れることができます。哺乳で疲れることが無いから、量をきちんと計算して与えないと飲みすぎてしまいます。飲みすぎの結果、体重が不自然に増えてしまいます。

 哺乳瓶の乳首になれないということをよく聞きますが、授乳の時の抱き方、赤ちゃんの姿勢、母子間の距離がまるきり違いますから、赤ちゃんは途惑って当然でしょう。

 手記のママは、母乳栄養に成功できるはずの無い努力をして挫折されたのですから、この例で母乳栄養は難しい、成功するのは大変だとは決して考えないでくださいね。

 最初の赤ちゃんに母乳を飲ませる→うまくいかない→乳房マッサージを受ける→やっぱり授乳がうまくいかない→哺乳瓶で人工ミルクを与える→こちらもうまくいかない→哺乳瓶と乳首をいろいろ探して取り替えてみる。

 ずーっとつながりのある一連の成り行きに思えますが、「授乳の技術」と「乳房マッサージ」と「哺乳瓶による人工栄養」はまるきり違う別の問題で、一連のものと考えないでくださいね。

 一番大切なのは、ママの乳首と赤ちゃんの口をしっかり結びつけることです。これを助産師さんはラッチオンと表現しています。英語では”latch on”、latchはドアなどの掛け金のことです。掛け金を下ろすように、赤ちゃんの口とママの乳首を繋ぐことをラッチオンといいます。

 ラッチオンしたら、ママの乳首が赤ちゃんの上顎の深い位置に届いて、赤ちゃんの舌がママの乳首を包むように、転がすようにくわえて、クチュクチュ刺激できるようにしてあげる必要があります。これが「深吸い」の状態です。乳輪がほとんど見えなくなるほど深く乳首を赤ちゃんの口に入れるという表現と同じ意味です。

 これがうまくできないで、乳首を赤ちゃんが歯茎でくわえてしまうと、乳首をいためますし、おっぱいは乳腺から分泌されません。この状態を助産師さんは「浅吸い」といいます。    
    浅吸いと深吸いを、船の錨に例えて見ましょう。浅吸いは錨が海底に届いてない状態、深吸いはしっかり海底に錨が降りて船を動かないようにしている状態です。錨本来の働きは海底に届いていなければなりのません。海底に届いてない錨は役目を果たさず、船は流されてしまいます。

 浅吸いでは、赤ちゃんの舌はママの乳首におっぱいの分泌をうながす刺激を伝えることができませんから、何時間も乳首をくわえさせてもおっぱいはでてきません。赤ちゃんは、じれてのけぞったり泣いたりしてママを疲れさせます。

 うまく深吸いさせることができたら、乳首に伝わる刺激がママの脳に送られ、脳下垂体からプロラクチンやオキシトシンが分泌されて乳腺でオッパイが作られ乳首から赤ちゃんの口の中へ母乳が流しこまれます。赤ちゃんは吸わなくてもオッパイがほとばしり出てくるんです。射乳という表現そのままに。人工栄養の哺乳瓶での哺乳と、まったく違いますから、この順序を覚えておいてくださいね。哺乳瓶による哺乳を説明するときに必要ですから。

 母乳栄養の赤ちゃんは、授乳の間に乳管にたまったおっぱいを飲むのではなく、毎回新しいおっぱいが作られて赤ちゃんはそれを飲み込めばいいのです。乳首にクチュクチュ刺激が与えられて、赤ちゃんにオッパイが届けられるまでの時間は約40秒です。この時、赤ちゃんがむせることがあります。母乳を飲ませると赤ちゃんがむせると言われるママは少なくありませんが、大部分は乳首をくわえさせて40秒後の現象です。

 新生児の赤ちゃんは夜昼かまわず、短い時間間隔で眠ったり目覚めたりしていますから、眼が覚めたら頻繁に泣きますが、前回の授乳から5分後に泣き出しても、2時間後であってもかまわずに乳首を含ませてくださいね。乳首を与えられさえすれば赤ちゃんは泣き止みますから。生後1ー2ヶ月は飲ませ過ぎの心配は不必要です。

 授乳間隔があいて乳房の張れを感じたら、せっかくたまったおっぱいがもったい無いとは考えず、搾乳して捨ててください。乳房が張った状態は、乳腺に対しては、これ以上おっぱいは要らないよという、おっぱい分泌を抑えるサインになってしまいますから。なるべく乳房の張れを感じないようにしてください。

     さて、言葉で表現すれば以上のようになるのですが、始めて赤ちゃんに授乳されるママには、活字で読むだけでは、言葉通りに深吸いさせるのは難しいでしょう。コツと時間と経験が必要な個人プレーですから。

     そこで必要なのは、一対一でコツを教えてくれる経験豊富な助産師でしょう。

     私が勤務しているヤナセクリニック外来には、助産師チームによる「母乳外来」という組織があります。  乳房マッサージでおっぱいの流れる路作りもお手伝いしますが、乳房マッサージより大切な深吸いのコツ、赤ちゃんの抱き方、手首を痛めない授乳を、ママと赤ちゃんペアに熟練助産師が一対一で授乳の様子を観察しながら助言しています。

     乳房マッサージは、おっぱいが作られて乳頭から噴き出してくるまでの水路作りで、どんなに水の流れの良い水路があっても、そこを流れるおっぱいが作られなければ意味ないですよね。水路は乳房でいえば乳管ですが、そこを流れるおっぱいを作るノウハウをママに知っていただく役割が助産師チームのもう一つの重要な役割です。

   ヤナセクリニックの母乳外来は、自画自賛ではありますが、とても優れたシステムと思います。このようなチームが、日本中に、もっともっと増えればいいのですが。

   乳房マッサージと、ママが赤ちゃんにおっぱいを上手に飲ませる技術は、別のものであることを理解してくださいね。
     
   ヤナセクリニックでは、助産師チームの母乳外来の他に、保育士6人のチームがあり、色々な育児クラスを開いています。託児もお引き受けしています。   
   
   いちごママクラスは2-4ヶ月のベビーとママのクラスです。ひとり育児になりがちなママには、お友達作りの機会になりますので、月1回のクラスに数回来て下さるママが少なくありません。私が生後数ヶ月間の赤ちゃんの成長や発達についてお話をし、質問にお答えし、保育士が楽しい時間をママにすごしていただけるよう工夫を凝らしてお相手します。  
   
   だっこ&ねんねクラスは、ベビー整体と、赤ちゃんの落ち着くだっこの仕方、スリングの使い方、赤ちゃんの寝かしつけのコツなどをテーマにしたクラスです。  
   
   ベビーマッサージクラスも月1回のクラスです。  
   
   育児サークルは外部の講師をお招きしてお話を聞いたり、保育士が企画するクリスマス、七夕などの季節の行事を行うクラスです。  

   離乳食クラスもあり栄養士が担当します。お料理クラスもあります。  
   ママとベビーのための、ヨガ、ビクス、フィットのクラスもあります。  

   医療チームの手が届かない育児の方法などを、保育士チームがきめ細かくうめています。  

  医師、助産師、看護師、保育士、栄養士が、それぞれの分野で、ママとベビーのためのチームワークを行なっているヤナセクリニックのあり方を、その一員としての私は、ひそかに素晴らしいと声援を送っております。

 最初の赤ちゃんを抱いたママをみていますと、全身コチコチに緊張してます。
 二人目の赤ちゃんを抱いたママは、ゆったりとしてみえ、手首の腱鞘炎の訴えは無く、コチコチ感はほとんどみられません。

 最初の赤ちゃんでは、どの程度の力で抱けば安全か、その加減がわかりませんものね。
 
 ゴルフの初心者の頃は、ほかのスポーツでも同じなのですが、全身がコチコチに緊張していて、ボールを打つとミスショット、力のわりに球が飛びません。私も、こんな時、コーチに「肩の力を抜いて」とよくいわれました。

 赤ちゃんの扱いも同じです。手首の力を抜いて、なるべく赤ちゃんの頭を手首から先で支えようとせず、両方の二の腕(前腕)で抱くようにすると、手首を傷めないですみます。

 肩に力が入っていると感じたら、肩の力を抜いて、肩を落としてリラックスするといいでしょう。

 乳首の傷は、授乳のとき、赤ちゃんの上あごに深く乳首を入れてあげないと、赤ちゃんは乳首を歯茎でくわえて左右に顔を動かしてしまいますから、乳首を傷めてしまいます。

 まず必要なことは、赤ちゃんい深吸いさせるのコツを身に付けることです。

 深吸いさせるように、浅吸いにならないように、乳首のくわえさせ方を、助産師さんや育児の先輩に教わってください。

 浅吸いだと乳首に授乳をうながす有効な刺激を赤ちゃんが与えてくれず、赤ちゃんはじれるし、おっぱいはでないし、ずっと抱きっぱなしの状態が続いてしまいます。深吸いのコツをまずつかんでください。

 毎食、ご飯を軽く二杯、和食中心でという授乳中のメニューが、インターネットに溢れてます。水1日2-3リットルも定番。常々大食で水を大量に飲む習慣の方にはいいでしょうが、これがオッパイを出すための義務となれば苦痛でしょうね。でも、この食事メニューは異常です。

 成人女性1日の推定エネルギー必要量は2000kcal前後で、授乳期には350Kcal増しというのが、学問的に推奨される食事摂取基準の数字です。

 妊娠前の食事量を20%程度増やせば充分なのです。米飯軽く1杯(150g)240Kcalですから、ご飯なら2杯弱で授乳に必要なエネルギーは充たされてしまいます。ご飯以外に副食物をいろいろ食べる必要がありますから、ご飯は1日一杯増やせば充分でしょう。

 和食に拘る必要もありません。洋風の食事が好みなら洋風でいいのです。

 おっぱいの出をよくする魔法のレシピはありません。炭水化物、タンパ気質、脂肪を満遍なく食べることが大切です。
 鯉こくとかお餅とかは、食生活が貧しかった江戸期の庶民にとっては効果があったでしょうが、食品が溢れる現代には当てはまりません。
 
 現代でもなお授乳中は脂肪の多い食品は避けるべきと言われていますが、これも無視していい考え方です。乳腺を詰まらせるといわれますが、むやみに脂っこいものばかり食べればそれも起こりうるかもしれませんが、適量の脂肪はむしろ積極的に食べなければいけません。

 意識してなるべく多く摂取する必要があるのは、鉄、カルシュウム、ビタミンA・Dと葉酸を含んだ食物でしょう。

 葉酸は日々成長して体細胞を増やしている赤ちゃんは大量に必要としていますし、鉄は授乳中のママには足りなくなりがちです。二人分必要なんですからね。カルシュウムもママの摂取量が少ないと、赤ちゃんとママ二人分意識的に食べてください。授乳期に必要なサプリメントや人工製品に頼らなくても、食事で充分摂取できるはずです。

 そして好みの食事を、美味しく楽しく食べることが授乳中も絶対必要な条件です。自然の食欲に任せて、好きなだけ食べてください。義務的にならず、強制されることも無くですよ。

前回のブログの続きです。

 母乳栄養に関しては、このブログの最初に何度か取上げていますから、タイトルに「母乳」という言葉が出てくるページを拾い読みしてください。できれば、ブログを読み直していただいてから今回のブログを読んでいただきたいです。

 今回は、赤ちゃんが順調に育っているかを判断する数字について書きたいと思います。

 日本では、体重が大きいほど健康な赤ちゃんという判断基準が、ずーっと続いています。

 たぶん、太平洋戦争後の赤ちゃんコンクールで、体重が大きい赤ちゃんが、優良児に選ばれることが多かったのが影響しているのでしょう。育児用粉ミルクが改良されてミルク育ちの赤ちゃんが増え、母乳に比べて電解質が多い粉ミルク育ちの赤ちゃんがコンクールでは有利でした。今から考えると、単に水ぶくれの赤ちゃんが多かっただけなのですが。

 かつては、産院でも、約1週間の産後入院から退院する赤ちゃんの体重を、出生時体重以上に戻すことが産院の努力目標にされていました。

 1ヶ月健診では、体重が1kg増えていることが目標とされたいました。

 その流れが今も続いていて、体重増加が悪いと判断すると、ミルクを足して体重を増やそうとする傾向が医療側(医師・助産師側)に残っているように感じます。


 1970年頃から、人工栄養より母乳栄養を推進すべきと言う風潮が高まり、WHO、UNICEF主導で世界的に母乳栄養が推進されてきました。

 母乳栄養児の体重増加に関して、UNICEFは、1日あたり「18g」という数字を挙げています。

 アメリカ中心に、母親の手で立ち上げられたLLL(ラ・レーチェ・リーグ)は1日あたり「15g」と言う数字を挙げています。

 この数字で母乳栄養の赤ちゃんは問題なく成長します。
 育児は大きな赤ちゃんに育てることが目標ではなく、健康で能力のある成人に育てることなのですから。

 でも、日本の一般的な考え方では間違いなくもっとミルクを足して1日30gの体重増を目指すべきと指導されるでしょうね。

 赤ちゃんの体重の増え方が悪いのは私のおっぱいの出が悪いからだと心配されているママたちに、ぜひ認識を改めていただきたいと思います。

 産院では、哺乳量測定が行われると思います。この数字もそれほど価値のある数字ではありませんから、ママは哺乳量の多い少ないを数字で示されても、聞き流してしまってください。哺乳量の数字は正確ではなく、
助産師が参考にする数字で、ママが気にする数字ではないと考えてください。

 授乳回数、授乳時間も几帳面に守ろうとはせず、赤ちゃんが泣いたらおっぱいを含ませる。飲み疲れて赤ちゃんが飲みやめたら寝かせる。次にまた泣いたら抱き上げてオッパイをお含ませる。数時間空いても、数分後に赤ちゃんが泣いても、時間にこだわらないでくださいね。

 ただし、授乳の技術に関しては、しっかり正しい飲ませ方をしていただきたいのですが。

 「①産後すぐから母乳が不足していた私」という表現について考えて見ましょう。投書した女性の年齢も家族構成もわかりませんから、一般論にならざるを得ませんが。

 妊娠していない状態での乳房の大小は、乳房の脂肪量の多寡によるもので、乳腺細胞の数量とは無関係です。乳腺細胞が集まった乳腺葉とそれに繋がる乳管(オッパイを送り出す管)のセットは、片側6~10本の範囲で個人差があります。

 妊娠すると、乳腺細胞が大きくなり、その集合体の乳腺葉が大きくなります。オッパイの原料を運ぶ血流が増えて、全体として乳房が大きくなります。この段階では、まだ母乳分泌の多寡を判断することはできないでしょう。

 産後すぐには母乳は出ません。

初乳は妊娠末期に分泌され乳腺葉・乳管にたまった濃厚な乳汁で、蛋白質や免疫物質,血液中と同じ種類の生きた抗菌細胞が多く含まれています。30年ほど前、始めて消化器官として使われる赤ちゃんの腸の壁を護るために、初乳はぜひ飲ませるべきものと強調される小児科医さんがいらっしゃいましたが、その効果判定に関してはまだ研究されなければならない部分があると思います。

 初乳から移行乳を経て、毎日赤ちゃんが飲む母乳になります。

 1ccあたりのsIgAや抗菌作用を持つ物質、生きた細胞類は初乳に多いのは事実ですが、初乳に限らずそれ以後も母乳中に免疫物質、抗菌物質、生きた細胞は母乳に混じって分泌され続けます。

 1日総哺乳量で考えれば、母乳を飲んでいる限り、赤ちゃんの腸は母乳に守られ続けます。
 
 人工栄養で授乳をスタートしたら絶対不利かといえば、これまた、それほどのことは無いだろうと思います。

 授乳開始後4週間くらい経つと、赤ちゃんの腸壁から、赤ちゃん自身が作った免疫グロブリンが染み出してくると言われています。

 初乳を飲ませられなかったとしても、ママが後悔したりしょげたりしないでくださいね。
 
 蛋白質や免疫物質による初乳の効果はさておいても、授乳はなるべく早く始めることがママにも赤ちゃんにとっても、授乳・哺乳になれるためにも、母と子の絆を結ぶためにも、良いことです。
 
 本格的にオッパイが分泌されるようになることを母乳来潮と言いますが、来潮の時期は個人差があり、出産後2日目を中心に、3日目までに90%のママの乳腺が母乳を分泌するようになります。この時期が早いか遅いかも、母乳不足かどうかの判断基準にはなりません。

 さて、いよいよ授乳を始めるといろいろママの悩みが出てきます。
 
 具体的なお話の前にまず、生後1-2か月の赤ちゃんとはどんな存在か考えてみましょう。

 胎内で胎児はママの睡眠と目覚めに合わせて胎動が活発になったり静かになったりしています。それは2016年のノーベル医学生物学賞を受賞した「概日リズムを制御する血液中の物質が、ママの血液から胎盤経由で赤ちゃんに送られることによります。ママが大きな音でびくっとすると、胎児もびくんとしますが、これも胎児が胎内で聞いた音に直接反応するのではなく、ママの血液中に増える神経伝達物質が赤ちゃんにも送られるためと思われます。

 赤ちゃんは胎内で外界の音を聴き、それを記憶する。だから出生後胎内雑音や胎内で聴いた音を聞かせると静かになるという発想は、40年も前の、想像による結論で、現代の新しい手法でしっかり検証しなおさなければなりません。音を感音器官が捉えても、それを大脳に届け記憶することは現在の常識ではあり得ないと思います。
 
 赤ちゃんが出生すると、ママから胎盤経由で与えられていた神経伝達物質や性ホルモン、栄養や酸素が貰えなくなりますから、赤ちゃんは胎内と全く違う環境で生きなければなりません。
 
 でも心配はいりません。赤ちゃんの体の構造はとてもよくできています。呼吸、循環などの体外生活への適応以外に、ヒトの赤ちゃんは、自力で動けない代わりに頻繁に泣くというママを呼ぶのに最高の手段を持っています。

 生後数か月までの赤ちゃんの一日の生活リズムは、夜昼の区別なく小刻みに浅い眠りと深い眠り、目覚めの状態が入れ替わって、浅い眠りの状態では、ちょっとした刺激で泣きます。この状態を、おとなの概日リズム(サーカディアンリズム)に対して、ウルトラディアンリズムといいます。徐々に赤ちゃんの睡眠覚醒のリズムは概日リズムに移行していき、4ヶ月くらいになると、夜の睡眠時間が数時間まとまってきて、夜は眠り昼は起きているリズムができてきます。それまでは、夜よく寝てくれるようにミルクを飲ませて満腹にしておこうなど、おとなの知恵で工夫しても、効果は無いでしょう。

 人間以外の哺乳動物の赤ちゃんと違ってうまれてしばらくは、ヒトの赤ちゃんは自力で動けませんから、大声で泣いてママを呼び、おっぱいを飲ませてもらって静かに落ち着きます。これは哺乳動物の中で人類だけの特技です。

 口の構造はオッパイを飲むための構造をしています。おっぱいを飲むための原始反射もたくさん持っています。ママの乳房を与えられれば、ママの手を借りて乳首を深く口の中に吸い込み、舌で乳首を包むようにしてリズミカルに刺激します。この刺激がママの脳経由で脳下垂体からオキシトシン・プロラクチンなどのオッパイを作り赤ちゃんの口に送り込むホルモンが分泌されます。この繰り返しで最初の3ヶ月間の赤ちゃんは成長していけるのです。

 この赤ちゃんの泣きを、空腹や不快の表現とされている育児書が多いのですがそうではありません。赤ちゃんが不快や空腹を感じるようになるのには何カ月か必要です。

 赤ちゃんは、意思や感情と無関係に泣くのですから誤解しないでください。空腹をおとなのように大脳で感じることは、1-2か月ではまだできません。

 ではなぜあのようにオッパイを欲しがるのでしょうか。

 赤ちゃんが泣くたびにおっぱいを飲ませているのに、乳首を離した赤ちゃんを寝かせると、すぐまた泣いて、おっぱいを欲しがる。頻繁に授乳しているから、おっぱいは脹らないでいつもぺしゃんこ。私のおっぱいは出が悪くて、赤ちゃんを満足させられないんだ。ミルクを足さなきゃ赤ちゃんがかわいそうと考えたら、とたんに母乳栄養が負担になり、ママを悩ませることになります。

 母乳育児は難しいとママを悩ませる原因は、この思考過程にあります。

 母乳の出が悪くて母乳栄養ができないのではなく、ママの母乳不足という思い込みが母乳栄養を難しくするのです。

 
 赤ちゃんは意識はしてないけれど、おっぱいを飲む前でも、充分飲んだ後でも、いつでも空腹状態でいるようにできているのだと考えてくださいね。ママのおっぱいが足りている、いないに関係なくです。

 泣いたらママが抱き上げて乳房を与えてくれる。舌が疲れるまで飲んでまどろむ。下に寝かせた途端にまた目が覚めて泣く。
 
 ここで、「おっぱいが足りないから泣くんだ」と思うか、「赤ちゃんはまだ空腹満腹を意識することはできないんだ。余計なこと考えずに、泣いたらおっぱいあげればいいんだ。おなかがすいているから泣くんじゃない。赤ちゃんは泣くことでママを呼び、おっぱいを飲ませてもらえば泣き止むんだ」と考えるかで、母乳栄養に成功するか、失敗するかが分かれます。育児の難易度の差もできるのだと思います。

 赤ちゃんが泣いたら余計なことを考えずにおっぱいを含ませるやり方だと、赤ちゃんは頻繁にオッパイを飲んでいることになりますが、いくら飲んでも飲みすぎることはありませんから心配しないでくださいね。無制限に、頻繁におっぱいを飲むことで、赤ちゃんは大脳を成長させ、体を急速に大きくしているのですから。 どんなに頻繁に授乳しても限度があって、一日当たり体重が80グラム以上増える赤ちゃんはいませんから。

 そして、赤ちゃんが3ヶ月になれば、空腹感・満腹感を大脳で感じることができるようになり、ママにおっぱい飲ませてというサインを送り、短い時間おっぱいをゴクゴクし、チュクチュク遊び飲みして、おっぱいを離すようになりますから。授乳回数も一日5-6回に減ります。

 先日、かかりつけの小児科の若い女医さんに、「ママはおっぱい飲ませすぎ。時間を空けて、授乳の回数を減らしなさい」といわれたんだけどと相談にこられたママがありました。この場合は、授乳回数を減らしなさいと指導された女医さんが間違っています。

  赤ちゃんがおとな並みに空腹や満腹感を大脳で感じることができると考えないで、少なくとも出生後1~2ヶ月間は泣いたら乳房を含ませる。単純にそれだけでいいと思います。

 ママと赤ちゃんの関係は赤ちゃん主導の単純なものなのです。

 プログラムされた遺伝情報に従って、赤ちゃんは自然に大きくなっていきます。ママや家族は、赤ちゃんが自然に自由に振舞える環境を用意してあげればよく、おとなの意思を働かせて赤ちゃんを大人の希望にあわせて育てようと考えても、赤ちゃんはそれに従ってはくれません。(つづく)

 前回のブログで紹介した、母乳栄養がうまくいかなくて人工栄養に切り替えたママの手記、繰り返し読んで見ると、色々疑問が湧いてきます。
 
 「ママ中心に書かれていて、赤ちゃんの出番が少ない。母子以外の家族について全く書かれていない。乳房マッサージはママだけが行って、ベビーは連れて行ってないのか。
 たぶん、手記は本当にママが書いたものでしょうが、その手記を新聞社がリライトしたのだろう。リライターは男性か育児経験の無い女性で、母乳栄養の知識が欠けている記者らしい。
 要するに、「母乳栄養はこんなに大変なんですよ。母乳に拘らないで、人工栄養に切り替えたほうがママの気持ちが落ち着き、ベビーも幸せです」という、母乳栄養に対するネガティブキャンペーンが目的らしい。」
 私はこのように受け取りました。

 それでも、幾つか問題をピックアップできました。

 ① 産後すぐから母乳が不足していた私。
 
 ② 母乳のため白いご飯を毎食2膳食べ続けた。和食中心で、水分量2-3リットル飲んだ。
 
 ③ すべてが初体験、抱き方もままならず、とにかく必死でした。
 
 ④ 1時間近く吸わせても、10分後にはまた泣く状態。
 
 ⑤ 地域の母乳外来、乳房マッサージに週1回は通い続けてた。
 
 ⑥ 肩はパンパンに張り、手首は腱鞘炎、乳首の亀裂。
 
 ⑦ いろいろな哺乳瓶を購入して試した。
 
 ⑧ 頑張れば頑張るほどストレスがたまる。 

 次回から、これらの問題一つ一つについて、ご一緒に考えましょう。(続く )

 このシリーズを書こうと思ったきっかけは、あるネット記事からです。無断で引用させてもらいます。悪いことに使うんじゃないから許されるでしょう。

 ファンファン福岡 {ホップ・ステップ・産後}「母乳不足で悪戦苦闘!私が母乳をあきらめた日」
という記事です。2016年8月付けの記事ですから、お子さんはもう大きく育っていられると思います。


”産後すぐから母乳が不足していた私。哺乳瓶を嫌がる子どものため何とか母乳で満足させてあげたいと、できる限り色々なことをしてみますが、精神的に参ってしまう一方でした。母乳のため!と白ご飯を毎食2膳以上食べ続けた結果は・・・・・

産後は当たり前に母乳が出るものだと思っていましたが、実際に産まれてみると,なかなか母乳の分泌が増えなかった私。

最初はとにかく赤ちゃんに吸わせることが大事!と言われ、一生懸命おっぱいを吸わせますが、初めての出産ですべてが初体験で赤ちゃんの抱き方もままならず乳首の形もあまり良くない状況で、とにかく必死でした。

1時間近く吸わせてもあかちゃんのお腹は満たされず、10分後にはまた泣く状態・・・。

母乳量が足りないので粉ミルクを飲ませようとしますが、哺乳瓶が嫌らしく、くわえようともしてくれません。

結局「ミルクを飲んでくれないので、母乳を出すしかない!」
そう思い必死でできることをしました。

先ず、食生活。

和食中心とし、母乳の出に良いとされるものを片端から調べ、朝からしっかりたべました。
冷えがよくないらしいので真夏でも温かいものを飲み、元々水分摂取量は少ない方だったのですが、1日に2~3リットルは頑張って飲みました。

また、地域の母乳外来に毎週通い、分泌を促すための乳房マッサージを助産師さんに行ってもらいました。
自宅でも乳房マッサージやセルフケアを怠らず、今思えば家の中でほぼおっぱい丸出しの状態でした。

それでもなかなか分泌量はアップせず、赤ちゃんは放っておけば1時間以上おっぱいを吸い続けるのです。
毎回飲み足りない赤ちゃんを無理やり乳首から離し、泣かせてしまっていました。

気づけば、わたしはボロボロの状態でした。

授乳時間が長いので、肩はパンパンに張っており手首は腱鞘炎に・・・。
乳首は保護具を付けなければいけない程に亀裂が入っており、激痛でした。

なんとかミルクを飲んでくれないかと、あらゆる形の哺乳瓶を購入し試してみますがそれでもダメ。 
哺乳瓶の代金や母乳をアップさせるというハーブティー、毎週通っていた母乳外来の代金は馬鹿にならず、経済的にも負担は大きかったのです。

気づけば、満たされずに延々とおっぱいを吸い続ける赤ちゃんを抱きながら、私は涙していました。

せきを切ったかのように涙が止まらなくなり、一人大泣きしました。

散々泣いた後、「こんな状態ではいけない」と我に返り、ようやく母乳を諦める決心がついたのです。

それからは、「赤ちゃんが泣いてもおっぱいは与えず、哺乳瓶でミルクを飲ませようとしました。

丸1日は泣き続けミルクを飲みませんでしたが、心を鬼にし、「頑張って!」とひたすら哺乳瓶をくわえさせました。
翌日には少しずつコツを摑んでミルクを飲んでくれるようになり、それjからは完全にミルクに移行することができたのです。

今思えば何故もっと早くこうしなかったのかと思いますが、初めての子育てで無知なことばかりで、本当に必死だったのだと思います。

産後のホルモンバランスも影響していたのではないかと思いますが,頑張れば頑張るほどストレスはたまり、完全に逆効果でした。「こう育てたい!」という強い思いは誰にでもありますが、割り切ることも子どものためになるということを学ばされた最初の経験でした。” 



この記事を、皆さんはどう思われますか。ぜひコメントをお送りください。

それをもとに母乳育児環境を良くするには何が問題か?どうすれば母乳育児の大変さ、苦しさを減らすことができるか、読者の皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

私自身は、産科クリニックで赤ちゃんを診察する立場の小児科医として、この記事を書かれたママの周りの、母乳外来や母乳マッサージをされた母乳育児を支援する専門プロが、このママについてまったく無力であった理由を考えて見たいと思います。

ぜひ、コメントをお送りください。










 私たち現生人類は、世界中ほとんど皆、単一種のホモ・サピエンスです。
 皮膚色の違いや、鼻の高低や、身長や下肢長の差は生活環境に適応するための小さな変異で、遺伝子上の差は極めて少ないです。
 
 直立して、他の四足動物の後肢にあたる2本の足で歩き、歩行に使わない前肢は、手として使うようになりました。直立できることで重い大きな頭を支えることができます。大きな頭は、発達した大脳のためです。

 大脳が発達したので、記憶、思考能力が発達しました。言葉でコミュニケーションがとれ、その言葉を文字で記録できるようになりました。

 20万年前アフリカで出現したホモ・サピエンスは、狩猟採集生活に適した進化を遂げた人類です。それ以後現在まで、ほとんど進化していませんから、現代人も20万年前のホモサピエンスも、能力的に大差ありません。  走るスピードはそれほど速くないけれど、汗腺が発達して体温を調節でき、サバンナの野生動物がオーバーヒートして動けなくなるまで、獲物をじっくり追跡してつかまえることができました。言葉で意思を伝え合い、グループで狩猟をしました。集団で生活していましたから、他の野獣に襲われても集団で身を守り、家族が安全に生活できました。

 しかし、直立二足歩行の代償として、骨盤の傾斜、構造が変化して出産が難しくなりました。円筒形の骨盤、産道を持ったイヌにあやかりたくても無理。ヒトの胎児は、狭く曲がりくねった産道を通り抜けて出生します。大きな大脳を納めた頭蓋が産道を無事通過できるように、胎内で成熟しきれずに、他の動物より未熟な状態で出産しなければなりません。これを、アドルフ・ポルトマン(バーゼル大学生物学・動物学教授:1897-1988)は、ヒトは生理的早産であるといっています。
 具体的に言えば、他の哺乳動物の赤ちゃんは、生まれて間もなく立ち上がり、自力でママのオッパイにたどり着きますが、ヒトの赤ちゃんは、泣いてママを呼び、抱き上げて乳を含ませてもらえなければ生きていけません。体全体の成熟を後回しにして、頭の大きさで在胎期間が決まっています。

 このような条件は、ヒトにとって不利と見る考え方もありますが、出生後の経験、知識の吸収、記憶とその再現、応用など、出生時の白紙に近い大脳を徐々に発達させるためにはむしろ有利と私は考えます。

 赤ちゃんを診るたびに感じることですが、生まれたらすぐ必要になる、哺乳のための口腔の構造、哺乳のための原始反射は完璧に備わり、さしあたりすぐ必要でないものは手抜きされて後日の発達に任せてあるヒトの赤ちゃんの洗練された合理性には驚かされます。

 以上書いてきた内容から、育児の基本を読み取っていただけると嬉しいです。
 新生児は、空腹であるとか、母乳が足りないとか余計なことは考えていないと思います。ひたすら泣いて、ママに抱き上げられて乳を含み、泣くたびに母乳を与えられて、無制限にオッパイを飲み、体や脳を作っていきます。
 もし、新生児が要求を泣き声で知らせる必要があるのなら、いろいろな泣き方ができるはずですが、現実は、泣き声で赤ちゃんの意思を読みとることは、3ヶ月までは、不可能です。新生児の泣き声はいつも同じで、泣き声で空腹を知ることはできない。いつも空腹といえばそうだし、空腹でなくて泣いてもオッパイで静まります。
 
 ママの乳房は赤ちゃんを満足させる魔法の力を持ってます。
 泣く→オッパイ→静まる、この単純な繰り返しで赤ちゃんは育ちます。20万年前は体重計も時計もありませんでした。現代でも、新生児の育児に時計も体重計も必要ないと思います。余計な知識や、働きかけや、道具は、不要です。必要な能力は20万年前のホモサピエンスと同じように、赤ちゃんにすべて備わっています。それを信じて扱ってあげれば、育児困難はうんと少なくなると思います。(続く)

 胎児・新生児に関して、遺伝子の解析、脳科学の進歩によって新しい知識が増えていますが、まだわからない事がたくさんあります。しかし、赤ちゃんについて根拠のある情報は、とても多くなりました。その情報をもとに今言えることは、古い胎児・新生児像は、かなり広範囲で書き直す必要があるということでしょうか。

 嗅覚.味覚.触覚.聴覚.視覚は五感といわれて、その器官は胎内で完成していますが、記憶装置である大脳にはまだ繋がってはいません。

、嗅覚味覚の器官は脳に近い部分にあり、危険な臭いや味に反応する、ヒト以外の動物と共通の役割を持っています。大脳皮質が無くても、間脳で感知機能が働きます。呼吸、循環、消化排泄同様、出生時から働き始め、生命維持の働きをします。ヒトの嗅覚味覚は、他の動物とは少し違いますけどね。大脳にも伝って、聴覚、視覚、触覚とも繋がって、料理を見たらその味、初めて食べた時の感触、料理中の焼ける音などが同時に感じられますよね。

 触覚に関しては、赤ちゃんが体に触ったり指を吸ったり、シャックリしたりしていることは、胎児の映像撮影で捉えられていますが、これらの行動で生じる感触を記憶している証拠はありません。

 聴覚に関しては、胎内で胎児にいろいろな音が届いていることは事実です。体外に比べれば低い周波数で、低いデシベルの体外より弱い音が子宮内で録音されています。胎児の聴覚器はその音を聞き取ってはいるでしょうが、その音を意味の有る音として記憶しているかどうかは不明です、胎内音をもとに赤ちゃん像を推理した書物が出版され、胎児に音楽を聴かせて、出生後も赤ちゃんはその音楽を覚えているようだという推理をし、その推理をもとに出生後に同じ音楽を聴かせるとか、胎内音を録音したものを新生児に聴かせると静かになるとか、それを胎教の手段にするとか、録音した音を販売するなどされていますが、これも科学的に客観的に有効かどうかの根拠はありません。新生児の聴覚テストは、聴覚器の反応を調べるもので、脳波などの大脳皮質の反応を調べているのではありません。

 視覚に関しては、胎内で眼球の機能は備わり、明暗を感じる細胞、色を感じる細胞は胎内から未完成ながら働き始めていると考えられますが、左右の眼球が大脳皮質の視覚野につながり遠近がわかり、見たものを記憶するには生後2ヶ月間かかります。

 胎内記憶、出産時の記憶があるというネット記事は多いのですが、それを客観的に裏付ける証拠はありません。

 生まれたばかりの赤ちゃんが泣くのは不快感の表現と書かれた書物がありますが、実際に赤ちゃんを見ていると、オシリが濡れても、低血糖で死の危険があっても、誤嚥で呼吸困難を起こしていても赤ちゃんが泣いて知らせることはありません。

 「授乳後も泣いている。こぶしを吸っている、口をもぐもぐさせている」のは空腹のサインだと書かれた権威ある本がありますが、「 」内に書かれていることはすべて原始反射です。空腹感は3ヶ月過ぎないと獲得できない高等な感覚で、オッパイを飲ませても泣きやまないのは、赤ちゃんが意識的に発する空腹サインではありません。

 赤ちゃんは、いつでも乳首を含ませればオッパイをごくごく飲み始め、泣き止みます。口の構造も、呼吸も、口のもぐもぐ、チュウチュウも、みなオッパイを飲むための道具立てです。原始反射を空腹のサインと考えれば、赤ちゃんはいつでも空腹なんだ、オッパイが足りないんだ、ミルクを足さなくちゃ、とママを人工栄養に誘導してしまいますが、すべての原始反射も、生まれつき備わった口の構造も、オッパイを飲むためのものだと捉えれば、泣くからミルク補足という短絡思考に陥らずに済むはずです。

 私がヤナセクリニックで出産直後の赤ちゃんを診察し、1ヶ月健診を受け持つようなって10年になります。1年に500人の赤ちゃんが出生されますから、10年間に5000人の赤ちゃんを2回宛診察しています。計1万人の赤ちゃん数です。
 その経験から言えば、、赤ちゃんの専門家とされている人たちによって、いかに間違った情報が垂れ流され、赤ちゃんの実像が捻じ曲げられ、その情報を信じて育児にあたるママたちを苦しめてきていることか。

 ほんとうの赤ちゃんの姿を素直に理解すれば、育児不安で悩むママがうんと少なくなるのに。

 次回も赤ちゃんの実像と、間違った育児情報について、具体的に書きます、(続く)












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