澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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2014年04月

  オムツも最近数十年の間にずいぶん変わりました。
  わたしが記憶している昭和初期には、赤ちゃんの両足を真っ直ぐにそろえて伸ばし、腰巻のように長方形オムツを巻きつけ、その上を雨合羽と同じゴム引き製ののオムツカバーで昆布巻きのように覆っていました。足の形をきれいにするため、行儀よく見えるように、赤ちゃんのうちから足をそろえている習慣をつけさせようという親心?だったようです。大腿骨の骨頭が寛骨臼からはみ出して、人為的に股関節脱臼を作ってしまう形です。そのため、股関節脱臼の赤ちゃんがたくさんいました。通気性ゼロですから、オムツかぶれもできやすく、赤ちゃんには優しくないオムツの時代でした。

 ビニールが出回るようになる昭和40年代にはビニール製のオムツカバーと四角く大きな布を三角巾の形に二つ折りにした三角オムツが使われるようになりました。ひいおばあちゃんの時代です。
かなり赤ちゃんの足の動きは自由になりましたが、ビニールのオムツカバーは、オムツかぶれには良いはずがありません。古浴衣を輪形に縫った長方形オムツも使われていました。古浴衣の木綿地は柔らかい感触でオムツによさそうですが実は、顕微鏡で見ると毛羽立ってオムツかぶれを作りやすかったのです。古浴衣がオムツに使われたのは、おとなが身に着けた衣類は赤ちゃんを守る力があるという何百年以上も前からの迷信が残っていたからです。

   昭和40年代後半には、従来のオムツの当て方、オムツカバーの構造は、人為的に股関節脱臼を作ってしまうから止めるべきだという声が、京都国立病院の石田勝正先生を中心に何人かの整形外科の医師から出てきて、オムツの当て方・赤ちゃんの抱き方と股関節脱臼の発生の因果関係を研究する研究班が、小児科医、産科医、整形外科医によって作られ、赤ちゃんの足の形はカエルのようにM字形をとらせることを基本にして、なるべく自由に足が動かせるようなオムツカバー、オムツの畳み方、オムツの当て方、赤ちゃんの抱き方が提案され、その結果、わずかな期間に日本の股関節脱臼の頻度は赤ちゃんの3%もあったものが,0.1-0.2%に激減しました。
   研究班の名前は、厚生省心身障害研究班のなかの「先天性股関節脱臼予防に関する研究班」といいます。昭和51年に厚生省に研究結果の報告をしました。私が愛育病院に勤務して直きのことで、研究班の下働きのまとめ役を命じられ、何年かオムツ、オムツカバー相手に時間を過ごしました。私にとって懐かしい、ちょっといいことをしたと鼻が高くなる思い出です。

  股関節脱臼を起こしにくいオムツカバーは、胴回りの部分をなるべく細くし、腰骨の上で固定し足の動きを妨げない形のもので、肝心の蒸れ、漏れが起きないように工夫を凝らしたオムツ・オムツカバーがニシキ、モナーテなどのメーカーによって市販されるようになりました。明治時代から現代にかけて、紙オムツも含めて赤ちゃんのオムツは、和服の形からショートパンツに進化したといえるでしょう。

  赤ちゃんの下肢をM型にしていても、その形に固定するのではなく、自由に動くことができる余裕がある限り、ガニまたになる心配はありません。オムツ・オムツカバー・小さくなった紙オムツで足の動きを妨げ、固定してはいけません。

  そして今は、紙オムツが布オムツより多く使われるようになりました。布オムツと紙オムツの優劣を競い、選択に頭を悩ますのはあまり利口なことではありません。どちらをとっても、間違いではありません。オムツ本来の機能を考えて、汚れたら取り替えるという単純な発想で使い分ければよいのです。費用も考慮条件に入るでしょうね。洗う手間と、費用とのバランスは、ママの裁量次第です。

  布オムツとそれに合ったオムツカバーも材質や形が進歩しています。古浴衣のオムツの時代は過去のものです。もちろん古布をオムツに再利用してもかまいません。古浴衣も古着も赤ちゃんを災いから守る力は持っていませんけれど。紙、布、併用、ママの好みで選んでくださいね。

 つい数年前まで、赤ちゃんの顔は石鹸を使わず、ぬるま湯でぬらしたガーゼで拭くだけというのが常識でした。
 しかし、生後2-6週にみられる顔のブツブツは皮脂腺の働きが思春期並みに活発なためにできるニキビが大部分です。たくさんできる子も、少ない子もあって個人差が大きいです。また、額や頭のすりおろしたチーズ片のような脂漏も活発な皮脂腺の働きでできるものです。洗わずに放置しておくと、大泉門の上あたりが厚いべとべとしたカサブタ状になり、昔はこれを胎毒と呼んでいました。こんな状態になったときは、ベビーオイルやオリーブ油を付けてふやかし、15分ぐらい経ったらふき取って、その後に石鹸できれいに洗ってください。赤ちゃんの体内に毒気などありませんから胎毒ではありません。ニキビ・脂漏合わせて乳児湿疹と呼ばれます。乳児湿疹は、1日1回の石鹸洗顔を続けていれば、生後6-8週で自然に消えていきます。アトピー性皮膚炎は乳児湿疹と入れ替わりに出てきますが、生後2ヶ月以前には出ることは少ないでしょう。
 そのようなことが判ってきましたから、乳児湿疹の対策としては、思春期のニキビ同様に石鹸で洗う必要があります。洗いすぎも良くありませんから、入浴時に石鹸で顔を洗ってあげてください。泡立てた石鹸を顔につけ、石鹸分が皮膚に残らないように何度かお湯でそっと洗い流し、乾いたガーゼや布で水分を押すようにして拭き取ってください。この時、こすらない様に気をつけてくださいね。油脂成分が入った洗剤や入浴剤は使わないように。保湿クリームや保護剤は必要ありません。ベビーオイル、オリーブ油、軟膏類はかえってニキビをひどくしますから気をつけてください。よくよくひどいニキビでなければステロイド入り軟膏も必要ありません。

 赤ちゃんは、生後一ヶ月くらいは排便回数が多く、母乳を飲ませるたびに反射的に排便とオナラをします。1か月過ぎると、母乳を飲めば排泄する反射が消えて、排便回数が減りますが、それまでの間は、おむつかぶれができやすいと思います。こちらも、オトナのウォッシュレットと同じように、肛門周囲やオシリが赤くなったらぬるま湯で洗ってください。この時役に立つのは、食器洗い用液体洗剤の空きボトルです。似たようなプラボトルは百円均一ショップにも売っているそうです。空きプラボトルを良く洗って、オムツ替えのとき、ぬるま湯を入れておきます。片手で握れて、握り方の強弱でお湯の量が調節できます。赤ちゃん用のママの手動ウォッシュレットです。汚れをきれいにした後、オシリの場合も顔と同じように、水気はこすってふき取らずに、乾いた紙や綿、布で押すようにして拭き取ってください。以前はこの後ベビーパウダーをつけることが多かったと思います。ベビーパウダーの役割は、水分を吸着することが主です。パウダーの1粒1粒は球形ですから表面積が板状の場合より格段に大きく、オシリだけでなく汗をかきやすい季節にも湯上りなどによく使われます。ベビーパウダーが水分を吸着して皮膚の表面で固まってしまっていたら必ずふき取って新しく付け直してくださいね。パフでパタパタはたきつけずに、ママの手のひらで伸ばしてそっと赤ちゃんの皮膚につけてください。呼吸器に吸い込まないように気をつけて。

  赤ちゃんのいびつな頭と向き癖は、ママもおばあちゃんも、世代を超えて気にされる方が多いようです。
  
  結論から言えば、頭のいびつと向き癖は、赤ちゃんが自力で頭の向きを変えることができない間だけの問題で、なにもしなくても時間が経てば、赤ちゃんが自由に寝返りし、お座りをするようになって、自然に目立たなくなってきます。10歳になるとおとなのサイズの帽子がかぶれるようになるという表現を、イギリスの医学書で読んだことがありますが、四肢の成長より脳神経系の成長発達の方がスピードが速いのです。だから、いびつ頭が左右対称に近づくまで10歳まで待ってくださいね。脳の大きさも、それを納める頭蓋骨も大きくなり、自然にその個人固有の頭の形が出来上がりますから。設計図は両親の遺伝情報ですから、後頭部絶壁の両親からは短頭型(前後の長さが短い)の子が育ちます。日本人には短頭型が多いようです。そんなわけで、私の絶壁頭が気に入らないから、この子は前後に長い格好いい頭の形にしたいと望まれても無理です。うつぶせ寝だと頭の形が良くなるといわれたこともありましたが、その流行も廃れたたようですね。ついでですが、赤ちゃんによっては、うつぶせ寝が好きな子があります。仰向けで寝付きにくい子は、うつぶせ寝を試みてもいいかもしれません。
  頭の形が知能に影響することはありません。頭はなかみが勝負どころですから器の形はどうでもよいのです。生まれつきの小頭症や、いろいろな原因で生じる水頭症は手術が必要になりますが、頻度は低いです。

  向き癖は胎内から始まるそうですが、出生後に作られる向き癖もあります。頭蓋骨の耳の後ろにある乳様突起といわれる骨の出っ張りと胸骨・鎖骨をつなげる胸鎖乳突筋という筋肉があります、くびを左右に回す役割の筋肉で、鏡を見ながら首を左右に回すと、首筋に太い筋肉が見えると思います。その筋肉の途中に、産道の中か生まれてすぐ位に肉芽腫という小指の頭ぐらいの大きさのしこりができ、その側の筋肉の伸びが悪くなって頸が傾く、筋性斜頚という状態です。しこりを胸鎖乳突筋腫といいます。このしこりは数ヶ月で小さくなり、一方で筋肉は成長して長くなりますから、向き癖も自然に治ります。50年ほど前にはこのしこりをマッサージしたり、筋肉が骨に付着する部分の腱を切ったりするものと考えられていましたから、ひいおばあちゃん世代には気になる症状かもしれません。現在は放置しておいていいものといわれています。めったにありませんが、ヤナセクリニックでも昨年ひとり胸鎖乳突筋腫の赤ちゃんがありました。

  単なる向き癖が原因になって生じるいびつ頭は上述のように、自然によくなります。赤ちゃんのうちに何とかしようとしても無理です。ひいおばあちゃん世代はドーナツ枕を思い出されるかもしれません。でも、今なお市販され続けているドーナツ枕も、タオル枕も赤ちゃんには効果が無いでしょう。枕に頭を乗せてジッとしている赤ちゃんはいませんから。

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