澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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2014年05月

  理化学研究所(理研)のwebページを開いたら、
「抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みの一端を解明ー経験則を科学的に証明、子育ての新たな指針にー2013年4月19日」
という記事が目に入りました。理研の脳科学総合研究センター(江戸川進センター長)ユニットリーダー黒田公美さんの書かれたものです。すぐに育児の役に立ちそうな記事ですから、コピペします。理研、ユニットリーダー、コピペというと、小保方さんのSTAP論文報道以来耳なれた言葉ですが、小保方さんの霧に包まれた研究と違って、とても興味深い研究です。

  私たちは、ママが赤ちゃんを抱っこして歩くと泣き止んで眠りやすいことを、経験的に知っています。同様な行動はライオン、リスなどヒト以外の哺乳類にも見られ、母親が仔を口にくわえて運ぶと、仔は、丸くなって運ばれやすい姿勢をとります。これを「輸送反応」と呼んでいます。

  共同研究グループは、生後6ヶ月以内のヒトの赤ちゃんとその母親12組の協力を得て、母親に赤ちゃんを腕に抱いた状態で、約30秒ごとに「座る・立って歩く」という動作を繰り返してもらいました。その結果、母親が歩いている時は、座っている時に比べて赤ちゃんの泣く量が約10の1に、自発的な動きが約5分の1に、心拍数が歩き始めて約3秒程度で顕著に低下することを見いだし赤ちゃんがリラックスすることを科学的に証明しました。
  次に、母マウスが仔マウスを運ぶ動作を真似て、離乳前の仔マウスの首の後ろの皮膚をつまみあげると、ヒトの場合と同様に泣き止み、リラックスして自発的な動きと心拍数が低下し、体を丸めました。さらに、体を丸めて運ばれやすい姿勢をとるには運動や姿勢の制御を司る小脳皮質が必要なこと、おとなしくなる反応には首の後ろの皮膚の触覚と、体が持ち上げられ運ばれているという感覚の両方が重要であることが分かりました。また、この仔マウスの「輸送反応」を阻害したところ、母親が仔マウスを運ぶのにかかる時間が増加することも分かりました。哺乳類の赤ちゃんはおとなしくなる「輸送反応」によって自分を運んでくれる親の子育てに協力しているといえます。

以上が研究要旨のコピペです。

  赤ちゃんが頻繁に泣くことがママをいらだたせたり、母乳不足ではないかという不安に駆り立てたりすることは、赤ちゃんの健診を受け持っている私には良く理解できます。
泣いたら抱っこしておっぱいを飲ませれば赤ちゃんは落ち着くのですが、その回数が多いこともまた、ママの不安を引き出しているようです。

  赤ちゃんを泣かせっぱなしで寝かしておくことはしない方がよいのですが、すぐ授乳することに抵抗があれば、赤ちゃんをマルマル抱っこして部屋の中を歩いて見ることを試みていただいてもいいなと、この研究を読んで感じました。同じことを、ラ・レーチェ・リーグの本には、「赤ちゃんが泣き止まなかったら、赤ちゃんを肩にもたれかからせるように抱いて、部屋の中でダンスをしよう」と書いてありますが、アメリカのママの経験から生まれた表現ですね。

 仔マウスの首すじのような安心スポット・安心エリアが、ヒトの赤ちゃんにもあるかもしれません。ここに触っていると泣きやむとか、こんなふうに抱いた方が赤ちゃんが落ち着くとか、思わぬ発見もあるかもしれません。背を丸くしていると赤ちゃんがじっとしているとか、手に触っているとモロー反射が出にくいとか、読者の皆さんの発見・経験がありましたら、是非コメントをお寄せください。

寝冷え対策
  ヒトに快適な温度は、皮膚表面の温度で摂氏27-31度、気温としては摂氏18-28度です。夏でも明け方にはこれ以下に気温が下がります。眠っている間は体温調節の働きが鈍くなっていますから、体表面から熱が逃げ過ぎるまで気付かず、体温が下がり過ぎて鼻粘膜や体の内部まで体温の低下が及んで、鼻水が出たり、おなかの調子を悪くしたりしてしまいます。鼻や咽喉の粘膜の温度が下がり、鼻風邪ウイルスや胃腸炎をおこすウイルスの侵入を防ぐ体の働きも弱くなってウイルス性の風邪をひく原因にもなります。これを寝冷えと呼んでいます。
  
  寝冷えを防ぐためには体の表面の温度を下げないように、皮膚と外気の間に、衣類で空気層のクッションを作っておけばいいのです。つまり、寝返りしても、うつぶせになっても肌が出過ぎないように、膝下、肘下くらいの長さの、長ズボン、長そでの、薄手のパジャマを着せて寝かせるのがいいでしょう。昔の金太郎さん型腹がけもおなかの冷えるのを防ぐには役立ちそうですね。手足の先の部分は、熱の放散をするのに必要ですから、すっぽり覆う必要はありません。

汗疹(あせも)
  あせもは、汗が汗腺の管を破って皮膚の中にしみ出す状態です。汗腺の出口が、脂肪や塩分でふさがるとできやすくなります。むれたり、こすれたり、日に焼けたりすると汗腺の出口がふさがります。
  
  対策は、汗をよく拭き取ること。やや熱めのぬるま湯でしぼったタオルやガーゼでこすり過ぎないように皮膚の表面の汗を拭き取ってください。
  
  夏でも「はだかんぼ」ではなく、ガーゼの肌着一枚は着せておいてください。眠りかけには汗をかきやすいですから、背中にガーゼや薄手のタオルを入れておき、眠りついたらそれを抜き出してあげるのもいいでしょう。
  
  入浴はあせもの予防にかかせません。暑い盛りには一日2-3回行水やシャワーで汗を流すと効果的です。
   
  エアコンや扇風機の風は直接当たらないようにしておきましょう。赤ちゃんを直接風に当てると皮膚温が下がり過ぎる心配があります。おとなでも扇風機のかけっ放しはいけないといわれているでしょう? それより、部屋の温度全体を下げるように考えてください。こどもは寝付く前にいったん体温が上がり、それから起きているときより1度ほど体温が下がります。その時、汗をかくのだと、前回書きました。それを思い出してくださいね。読み直していただければなおよく理解して頂けるでしょう。寝付いたら、弱くエアコンをかけておくのがいいでしょう。エアコンのおかげで、あせもだらけの赤ちゃんを診ることが少なくなりました。高齢者だけでなく、こどもの熱中症予防にもなります。

 エアコンの温度調節はリモコンの温度表示で決めないことも大切でしょう。部屋の広さや構造、エアコン吹き出し口の高さなど微妙な違いに適応できるほどエアコンは利口ではありませんから。最新の高価なエアコンではかなりいろいろな条件で判断する能力を持った家庭用エアコンもあるようですが。
   エアコンまかせにするよりも、赤ちゃんが眠る場所の、赤ちゃんの位置で、ママ自身が快適と思える環境を選んでください。室温は窮屈に数字で摂氏何度でなければいけないなどとと考えず、5度程度の幅で大まかに決めればいいのです。よく部屋の温度は何度が適当ですかという質問をママからいただきますが、お答えのしようがありません。部屋の天井付近と床付近の温度差も考えてくださいね。温かい空気は高い所に、冷たい空気は低い所に集まります。扇風機を使って上下の空気をかきまわすこともよいかもしれません。

  赤ちゃんの衣服は、夏はママより一枚少なく、冬は一枚多くと話していられる先輩小児科医がありました。大まかには、そんな感覚です。
   
   汗の分、口からの水分補給を多めに。母乳栄養なら、母乳だけで水分も補給できますから、ことさら、湯ざましをあげる必要はないのですが。
   
   ベビーパウダーは、細かい球状の粉末の表面に汗を吸着し蒸発させるためのもの、ママの手のひらで薄く延ばして、粉を赤ちゃんが吸いこまないようにしてください。パフで、はたいてつけるのは避けてください。たくさんつけたり、時間がたって皮膚の表面で固まったりしていると逆効果、かえって汗腺をふさいであせもの原因になります。

  できてしまったあせもの治療は、かかりつけの医師に相談して、症状に合った塗り薬を処方してもらいましょう。でも、できたあせもを薬で治療するよりも、なるべく作らない工夫のほうに力を入れてくださいね。 

  ヒトの汗腺数は、一人当たり200-500万個といわれています。これだけの数の汗腺を持って赤ちゃんは生まれてくるのですが、出生後の環境によって、実際に働く汗腺(能動汗腺)の数は違ってきます。全部の汗腺が働くわけではありません。
 
  赤ちゃんは、生まれてすぐは汗をかきません。成熟児では2週間以内に発汗が見られるようになります。未熟児ではやや遅れるようです。その後発汗能力は急速に発達して、満2歳ころには、おとなとほとんど同じ数の能動汗腺が働くようになります。日本の環境ではその数は約230万個くらいで、熱帯ではもっと多く、寒い地方ではもっと少ないと考えられています。つまり、満2-3歳までの環境で汗をかく能力が決まってしまうわけです。夏には赤ちゃん時代から、1日に2時間程度汗をかく機会がないと能動汗腺が充分に発達しません。赤ちゃんをエアコン環境の中ばかりで育てるのではなく、戸外でも室内でも、しっかり汗をかく環境と時間が必要です。1日2時間くらいは汗をかかせて、汗をかいた後は入浴や行水をさせて汗をとり、それから涼しいエアコン環境ですごさせるというやり方がよいのではないでしょうか。
  数年前までは、赤ちゃんに冷房はいけないと考えているおばあちゃんやママがあって、健診の時、汗疹だらけの赤ちゃんを診ることがよくありましたが、さすがに最近では、エアコンの普及、その快適さ、熱中傷予防問題などもあって、赤ちゃんがエアコン環境で過ごすことへの抵抗は少なくなったようです。

  余談ですが、人類のノマド化という言葉を聞かれたことがありませんか?ノマドとは定住せず移動する生活をしている人たちのこと、本来はモンゴルやアフリカなどの遊牧民を指す言葉です。近代社会では、交通手段や情報伝達手段の発達で、世界中自由に飛び回って仕事をする人が増えつつあります。このような人たちも、最近はノマドと呼ぶようになりました。近未来には、ノマドとして、日本の中だけでなく極寒から猛暑の地の果てまで、どこででも暮らせる適応能力が今以上に求められるようになるでしょう。気候への適応という視点に絞って考えても、零下数度から摂氏40度までの気温(現在の三重県中部の気温の範囲ですが)に楽々と適応できる身体能力、体力が必要です。基本的に、この範囲の気温適応力が身についていれば、この範囲外の場所でも適応は容易でしょう。将来のエネルギー事情によっては、文明の利器と、それを製作し働かせるエネルギーに、すべてを頼って生きることが難しくなるかもしれませんし、地球の温暖化の問題にも直面することになるでしょうから、これは大切な問題です。
  今育ちつつある子どもたちを、健康で力強く未来を生き抜く人材に育てあげることは、私たちおとな皆の義務と希望です。その為には、未来に予想される環境変化に適応できる能力を子どもたちに与えなければなりません。その目的の中の小さな、しかし大切な一つが、子どもたちの能動汗腺を育てることです。
  最近夏になると繰り返される熱中症騒ぎは、冷房・エアコンなどの人工環境に浸り過ぎた日本人が、すでに若者までが、日本の気象に適応できなくなってきている証拠です。赤ちゃん時代から、暑さ寒さに負けない、もっと健康なおとなに育てなきゃね。
  
  汗の量は、おとなより子どもの方が多いといわれています。子どもは体表面積当たりの基礎代謝量がおとなの3倍にもなり、そのエネルギーを皮膚から逃がすために汗の量が多くなります。夏以外の季節では、子どもはおとなの2倍近く汗をかきます。
  夏、起きているときと眠っているときの子どもの発汗量を測定したら、眠っているときの方が多かったという研究もあります。おとなは環境温度が29度C以下だと寝汗をかくことが少ないのですが、子どもはもっと低い温度でも寝汗をかきます。
  子どもは四季を通じて、眠りついて1時間-1時間半くらいの間に寝汗をかくのが普通です。でも、健康で食欲があり、よく遊ぶ子の寝汗は心配はいりません。微熱の出る感染症(代表はかつて流行していた結核症ですが)ではおとなも寝汗をかくことが多く、その記憶から子どもの寝汗もたちの悪い感染症のせいではないかと心配されることが最近まで続いていました。でも、子どもは寝てしばらくの間は寝汗をかくのが当然なのだと考えてください。
  眠りついてすぐは一時的に体温が上昇し、その後起きているときより1度C近く体温が下がいますが、寝汗がこの体温下降を演出しているのだと考えられます。
  室温が高かったり、寝具の中の温度が高いと、その分汗が多くなります。
  
  寝汗に限らないことですが、横向きに寝ていると体の下になる部分が圧迫され、反対側の上の部分に発汗します。右を下にして眠ると左側に発汗します。圧迫性半側性反射性発汗といい、世界的な「汗腺の生理学」研究者であった、名古屋大学名誉教授久野寧博士が発見された現象です。たぶん、汗が蒸発しやすい側の発汗を多くするという目的の自然力なのでしょう。
  その応用で、鼻風邪で鼻が詰まっているとき、右を下にして寝ると左の鼻の通りがよくなります。横にならなくてもわきの下あたりの側胸部を強くつまむと反対側の鼻の通りがよくなります。軽い鼻つまりの時に試してみてください。
  しかし、赤ちゃんの授乳後グズグズと鼻の奥が詰まったような感じに思えるときに、赤ちゃんの脇をつねってみても、赤ちゃんはつねられた痛さで泣くだけで、鼻通し効果はありません。授乳後の鼻グズグズは母乳が鼻の奥に残っているからで、鼻汁の分泌が多いわけではありませんから。赤ちゃんに応用しないでくださいね。

 

  爽やかな緑の五月、でも、もうすぐ暑い夏がきます。夏に間に合うように、何回かに分けて、赤ちゃんの夏対策を考えてみましょう。すこし理屈っぽくなりますが、先ずは、赤ちゃんに限らず私たちヒトの体温調節の仕組みから。
  
  人類は、体温を一定の範囲に維持して生きている恒温動物です。環境の温度が変わっても体温が37度前後に保てるように体の仕組みができています。体温を維持するためのエネルギーは、暖房や日光、火の助けを借りることもできますが、大部分は飲食物を消化し体内に取り込んで作られるブドウ糖やグリコーゲン、脂肪、時にはたんぱく質を熱に変えます。熱を作るのに必要な酸素は肺から血液に取り込まれ、熱源になる物質と化合して熱を発生します。その結果できる炭酸ガスは肺に送られて体外に排出されます。

  外気温が低くて体温を上げる必要がある時や、風邪やインフルエンザなど熱が出る病気になると、体が震えることは皆さん経験されたことがあるでしょう。あれは、筋肉を小刻みに収縮させて熱を作りだすためです。逆に、体温を外に逃がさないようにするためには、手足の末梢血管を収縮させて皮膚の表面の血管を流れる血液量を減らします。だから、熱の上がる前に顔色が蒼白くなったり、寒い時に手足が冷たく白っぽく見えたりします。

  体温を平熱に保つのに必要な熱以外の余分な熱は、血液によって皮膚の表面に運ばれます。皮膚の表面に運ばれた熱は、輻射・伝導・対流・蒸発という物理現象によって体外に放出されます。中学・高校の授業で聞かれたことがあるでしょう。
  輻射は離れたところにある温度の低い物体に熱を奪われることです。氷の表面に手を近づけると、触らなくてもヒンヤリ感じます。暑い砂浜や日光に温められた壁の前では熱く感じます。これが輻射現象です。
  伝導は、直接触れ合っている物体に間で、高温の方から低温の方に熱が移動する現象です。氷枕やヒエピタで頭を冷やすのは伝導の応用です。
  対流は、暖められた空気が上昇して去り、その後に冷たい空気が入って、たえず入れ替わっている現象です。夏はもともと空気の温度が高いので、輻射も対流も、体を冷やすためにはうまく働きません。
  蒸発は液体が気体になる現象で、このとき気化熱というエネルギーが必要です。私たちは暑いと汗をかきます。汗は皮膚の表面から蒸発していきますが、このとき気化熱を皮膚から奪っていきます。汗でぬれた肌に風が当たると涼しく感じるのは蒸発と対流の作用です。
  人体では、皮膚表面の輻射・対流・伝導によって熱の3/2が放散し、残りの3/1が汗と呼吸で体外に逃げて行きます。

  このように、汗は体温調節に大切な役割を演じているのですが、汗はあまり気分のよいものではありませんし、子どもの場合は寝汗、あせもなど、親泣かせの存在にもなります。
  汗は皮膚の表面にある汗腺から分泌されます。汗腺は、手のひら、足のうらに最も密度濃く、たくさんあります。精神的な緊張で手のひらは汗ばみます。次に汗腺が多い場所は、頭と顔です。赤ちゃんが頭に汗をかきやすいのは汗腺が多いからです。後頭部、わきの下、くびすじなどに汗が目立つのは、もともと汗腺が多い場所のうえに、衣類、枕、風通しの悪さなどで汗が蒸発しにくいからです。
  
  基本的な前置きはこれでおしまい。次回からは、具体的に汗対策、暑さ対策を書きたいと思います。

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