澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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2014年10月

  先日の朝日新聞デジタル版の記事の紹介です。

  ママオケという表題を見て、最近よく目にする、またまたママ・マタ記事かと思いましたが、ママたちのオーケストラの略、「子連れオーケストラ西宮きらきら母交響楽団」の活動の紹介でした。

  関東にもママオケがあるようですが、ひとつは「音大卒の育児が終わって家庭に留まっているママ」を募集しているオケです。その他にも、2006年頃発足して現在は活動休止状態のママオケもあるようです。
  
  西宮の子連れママオケは、育児真っ最中の音楽大好きなママが、練習場所に赤ちゃん・幼児連れで来て、練習中も子どもが同じ部屋で遊び、授乳もオムツ替えも自由、メンバーは器楽の専門教育を受けたママだけでなく、趣味で楽器に触れていた、これから楽器を習ってみよう、どんなママでも、ママでなくても、子どもでも、オケに興味がある人ならオーケーというおおらかな交響楽団です。抱っこバンドで赤ちゃんを前抱きにしてフルートを吹いているママの写真には驚嘆しましたが、赤ちゃんをオンブしてバイオリンを弾くママもあり、楽器を傍らに哺乳瓶で授乳しているママもあり、写真を見ながら私はスゴク感動しました。
  動画では、指揮に合わせて、背中の赤ちゃんをあやすように体を揺らしていられるママの姿、指揮者のそばで指揮の真似をしている男の子、すばらしい光景が繰り広げられます。赤ちゃんは、音楽と、ママの腕や背中のゆりかごに揺られて、気持ちよさそうに眠っています。
  
  今年(平成26年)4月に、ひとりのママの呼びかけで始まり、8月には団員が50人以上になったそうです。
  金曜午前2時間半と月一週末が練習時間、出欠自由。すばらしいと思います。これこそ、女性尊重、女性の地位向上の王道と思います。母を女性に引き戻して仕事に引っ張り出そうとする、アベノミクスの見せかけ育児支援より、はるかに優れたアイディアです。
  国家公務員のママのように、仕事の権利を確保したまま3年間の育児休暇をとる事がすべての働くママに与えられたら、母と子が一緒に過ごす時間がたっぷりできて、子連れオーケストラももっと活動しやすくなるでしょうし、子も母もどんなに幸せか分かりませんが、今はまだ夢物語。その不公平さについて、ママも政治も話題にしようとしませんね。余計な私見かもしれませんが、私にはなぜ女性が、母の手による育児の重要性を主張し、そのための政策を求める声を上げられないのか不思議でなりません。
  
  子連れでママの趣味を楽しむことは、音楽だからできるのでしょうね。音を聴き、楽しむことは、年齢、性別、国家を超えて、世界中の人が、公平に、誰でもできます。赤ちゃん時代からママの演奏を聴いて育つ子たちには、音楽への興味と母の暖かさを同時に与えられて、未来の地球を支える素敵な人材が育つことと思います。
  
  絵は親子一緒に描けるかもしれませんね。文章を書くこと、造形美術は、先ず子連れでは不可能に思えます。社会で働くことも子連れでは難しいでしょう。できるだけ子連れで可能な職場を広げることはできるかもしれません。そう考えると、子連れオーケストラという音楽を柱にした育児グループのアイディアはすばらしいです。私はこの記事を読んで、すごく楽しく、こころが暖かくなりました。
  
  ママのために、子どものために、このようなアイディアが女性の手で次々に生まれることを期待しています。



追記:子連れオーケストラ「きらきら母交響楽団」は、最初広島に誕生し、2007年から現在まで、活動が続けられています。このブログでご紹介した「西宮」きら響は、「広島」の「妹きら響」です。広島も西宮も、馬場京子さんが立ち上げられたもの。馬場さんには動画の画面でもうお目にかかりました。ブラーヴォ!ブラーヴァ!馬場さん!メンバーの皆さん!
  私自身は、年齢のせいでフットワークが悪くなっていますが、是非、西宮の「きら響」を訪問したいと思っています。「きら響」の音と雰囲気を体験したい。
  「広島きら響」の皆さんには、ご紹介が遅れまして、ごめんなさい。「広島・西宮きら響」のますますの発展を祈念しますと一緒に、このように母と子が一緒に楽しめるママの手作り育児活動が、これから全国に数多く生まれることを期待しています。

どちらのきら響も、ネットで検索していただけば、すぐにホームページに到着できます。ぜひ、ご覧になってください。

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  感覚器を通して脳に取り込まれた情報は、幾通りもの経路を経て海馬や大脳皮質にとどき、記憶されたり、体の動作に移されたりします。これまで「感じる力」のブログで扱ってきたのは、理性・知性に関わる感覚の話です。

  今回は「感じる力」の中の、感情に関わる扁桃体を取り上げます。感情抜きでは、人生は成り立ちませんものね。素敵な景色や絵画・音楽に感動することも、人道的行為に感動することも、夜道で後ろから近づいてくる足音に無意識に駆けだしてしまうことも、人前でお話しをするときに緊張して顔が青ざめ冷や汗が流れることも、みな、扁桃体が仕切っています。

  先ず、「扁桃体(ヘントウタイ)」について説明しましょう。「扁桃体」は形がアーモンド(扁桃)の果実に似た形の脳の一部分です。咽喉にある「扁桃腺」もアーモンドの形をしたリンパ組織ですが、この両者の機能はお互いに無関係です。「扁桃体」はこれまで何度も登場した「海馬」のすぐ傍、内前方にある左右一対の脳の一部です。こめかみの奥4-5cmにあり、長さ1.5-2.0cmの大きさです。小さな器官ですが、重要性は海馬や大脳前頭野に劣りません。いろんな種類の神経細胞の集合体で、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経細胞同士の情報を伝達する物質を分泌し貯蔵しています。  

  扁桃体の働きを相撲に例えてみましょう。
  
  理性・知性部屋の横綱が大脳の前頭前野で、大脳皮質の各部分が大関以下の関取です。地球上でもっとも進化した人類出身です。

  感情部屋の横綱は扁桃体、一人横綱です。土俵外では理性部屋のほとんどの関取と付き合いがあり、記憶・感覚・知性・理性を共有していますが、一方、人類以外のすべての脊椎動物(サル族、イヌ族、ウシウマ族、ネコ族、ネズミ族などなど)とほとんど共通の扁桃体を持ち、進化過程では理性・知性族に一歩遅れた動物族の子孫です。
  この両者、どちらが強いかといえば、理性・知性横綱より感情横綱の方が強いのではないでしょうか。感情は理性の抑制を無視して強引に暴走することがあり、感情横綱ががむしゃらに暴走した時には、理性横綱は土俵の外に放り出されてしまうでしょう。

 もうひとつ別の比べ方をすると、大脳皮質と前頭葉は、がり勉でクールな優等生、扁桃体は、頭はいいけど、勉強嫌い、遊び大好き、けんかに強い、だけど友達に好かれるタイプ。きれると危ないヤツといったところでしょうか。

  扁桃体のこのような性格は、人類の未来に大きく関わってきそうです。野生動物か家畜かを問わず、動物がみな持っている扁桃体を人類が共有している限り、人類が闘争・戦争を避けることは不可能でしょう。人類が利他的になって助け合うこともできません。何とか扁桃体をてなづけないと、いずれ人類は滅亡するしかないでしょう。
  
  戦争による人類の危機は、どこかの国の少数の指導者グループの扁桃体が暴走することによってもたらされると言っても過言ではありません。
  
  温暖化対策の遅れは、扁桃体の暴走が主な原因ではなく、政治的駆け引き・国家経済の利害・指導者・国民の無知などによるものです。しかし、人類の危機という意味では、扁桃体も、理性・知性も絡み合った問題です。対策にもたついているうちに地球そのものが対策不能な状態に変貌してしまう危機が近づいてきています。

 「扁桃体のもっとも重要な働きは、危険に対して、逃走するか、闘争するかを瞬時に判断する能力」という、語呂合わせ的表現がありますが、危険が身に迫った時、感情は理性の判断を超えて反射的に闘争か逃走かを選んでしまいます。
  
  ふだんの生活でも、私たちがよく使う感情表現を思いつくままに書いてみます。虫の居所が悪い、どうしてかわからないけど大嫌い、理屈抜きでイヤ、どうしてこんなに好きなんだろう、悪い人じゃないのに傍に来られると鳥肌が立ってしまうくらい嫌。理性が働かない状況を私たちは、日常このように表現していませんか。これらは理性・知性を超えたもっと強い力があることを証明していませんか。
  
  パニック症候群、リストカット、うつ病、自殺願望、自殺、凶悪犯罪などは、扁桃体の暴走によって引き起こされる病的状態です。宗教紛争も、民族間闘争も、戦争の引き金を引くことも、同じように扁桃体の仕業です。
  
  では、扁桃体を暴走させないためにどうすればいいのでしょうか。
  
  子どもの時から、叱られたり、いじめられたり、無視されたりし続ければ、扁桃体は、自己に不都合な状況にすぐに反応できるよう、常に興奮状態に置かれてしまいます。赤ちゃん論から言えば、赤ちゃん時代から、理性や穏やかな感情を育てるような環境で育児することが先ず必要でしょう。今の日本の風潮の中でこれが可能かどうか、可能にするためにどのように行動すべきか、人類の未来をかけて、今、議論して知恵を出し合わなければならないと思います。この問題、とても重要なことと思いますから、次回も続けます。

  2014年ノーベル医学生理学賞は、ジョン・オキーフ・ロンドン大学教授、ノルウェー科学技術大学教授モーザー夫妻3氏に贈られると、今日(2014年10月7日)の朝日新聞朝刊に記事が載っていました。授賞理由は「脳の空間認知に関する細胞の発見」です。
 
  以下朝日新聞の新聞記事を紹介します。
  ”人間は、自分がどこにいるかを認識したり、同じ道を通って目的地にたどり着いたりできる。そのためには、脳の中で場所や空間の情報が記憶されていることが必要だ。3氏は、神経ネットワークが「地図」を作り、「脳内GPS」によるカーナビゲーションのような機能を可能にしていることを細胞レベルで明らかにした。
  オキーフ氏は1971年、ラットの実験で、記憶にかかわる脳の海馬の中にある神経細胞に注目。Aという場所では特定の神経細胞が、Bという場所では別の神経細胞が働くことを見つけ、「場所細胞」が「自分がどこにいるか」を認識していることを突き止めた。
  モーザー夫妻は2005年、海馬周辺の皮質にある「グリッド細胞」と呼ばれる空間情報の処理にかかわる神経回路を見つけた。ラットや人間は脳の中に空間座標を作り、ナビゲーションをするような働きをしていることを明らかにした。”

  前回のブログ「感じる力を育てよう」(7):番外で、ロンドンタクシードライバーの海馬の細胞が増殖して海馬が大きくなっている話を紹介しましたが、ドライバーの海馬の中には、ロンドンの複雑な道路マップが詰め込まれているだけではありません。彼らは、一人ひとりのドライバーの海馬のマップをもとに、空間認知に関する細胞の働きによって、今どこを走り、次はどの道に入りと感じながら運転していたのですね。今年のノーベル医学生理学賞によって、彼らの自信、誇り、技術の裏付けが得られました。

  私にはとても興味深い記事でしたから、読者の皆さんにも、「海馬」の働きを理解していただく助けになるよう、ご紹介します。

  一夜明けて、ノーベル物理学賞に、青色発光ダイオード(LED)に関する研究と開発をされた日本の赤崎勇、天野浩、中村修二のお三方の受賞が報道されていました。それぞれに努力して、脳の力をフルに活用された方たちです。(個人的好みからいえば、私はあのLEDの青色は好きではありません。ツユクサの青が大好きです。でも、白色光LEDは、明るくて、発熱しないので、手元に置く光源としては最高です。発明に感謝です。)

  人間の脳ってすごい能力を持っているんですね。世界中で70億を超える人類の脳のすべてが平等に素晴らしい可能性を持っている。その可能性を実現させるのは個人、個人の努力と研鑽。ベビーたちも無限の可能性を秘めている存在。そう考えると、海馬ではなく、私の扁桃体が興奮して鳥肌立つ思いです。(扁桃体については、次回のブログでご紹介します。)

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