ヒトの脳は、大脳皮質、大脳辺縁系、脳幹など幾つかの層に分かれていて、それぞれ、感覚器から取り込まれた情報を分類し、記憶し、再生し、判断して、末梢の器官の行動を制御しています。
前回のブログでは、考えることと感じることの役割分担の基本として、大脳皮質、海馬、扁桃体について書きました。

  感情を引き起こす脳の働きは、実はもっと複雑で、扁桃体や海馬のある場所、大脳辺縁系の周りには、快感を感じる側座核という場所や、やる気、喜び、悲しみなどを引き起こす場所がたくさん点在して、ヒトらしい感情を作り出してます。
大脳、大脳辺縁系、小脳は、皆つながっていて、例えば、扁桃体は恐怖、不快感だけの中枢ではなく、快感、喜びなど、恐怖の正反対の感情の生起にも関わっています。だから、扁桃体を無力化したらヒトは闘争心、恐怖感を感じなくてすむとは言えません。神経細胞はそれぞれニューロンという突起を出し、その先端にシナプスという別の神経細胞への中継部分があり、ニューロンのネットワークを作っています。このネットワークはとても複雑で、ニューロンネットワークを介して、ずっと離れた神経細胞同士がちゃんと情報交換できる仕組みになっています。シナプスと神経細胞は直接はつながっていませんが、100種類以上の脳内物質を介して、情報を伝えます。セロトニンとか、ドーパミンとか、ノルアドレナリン、アセチルコリンは脳内物質の代表格で、ドーパミンはやる気、快感達成感、セロトニンは前向きな気分、アセチルコリンは頭の冴えなどの感情、気分を生み出します。

  ヒトの感情がとても複雑なことは、自分自身を振り返ってみてもよくわかります。喜怒哀楽という簡単な分け方もありますし、もっと複雑に何十種類にも分ける感情の分類もあります。そのような学問的な分類はさておいて、感情の動きがめまぐるしいことは、生きている限り日々経験していますよね。
感情が強すぎると、激情の原因を理性で考えることを忘れて、とんでも無いことをしでかす事があるということも、経験をお持ちでしょう。
ヒトは感情のコントロールが上手にできないと、切れやすいとか、乱暴とか、不愉快なヤツとか評価されて生き難くなってしまいます。

  ではどうすれば感情を手なずけることができるでしょうか。幾つかに分けて考えてみましょう。

   赤ちゃん時代は、先ずママに愛されることが必要です。母と子が愛情と信頼関係で結ばれることが第一段階です。母と子の絆がしっかりと結ばれたら、幼児期になって母に叱られるようなことがあっても、家庭の外で辛い経験をするようなことがあっても、子は心の傷をママに甘えることで癒すことができます。逆に、赤ちゃん時代から、母がイライラして、赤ちゃんがいつも緊張していなければならないようだと、扁桃体がすぐに危険、恐怖に反応できる状態に置かれることになります。そして、成長して切れやすい性質になってしまうでしょう。感情コントロールに必要な第一条件は、母と子が愛情の絆で強く結ばれることです。

  次は、考える力を育てることと思います。これは扁桃体の暴走を理性で抑制する為に絶対に必要なことです。恐怖にしろ危険にしろ、なぜかわからない出来事に対して扁桃体は強く反応します。
  考える力を作る乳幼児期のママの役割は、子どもの疑問に対して、うるさがらず、ごまかさず、ちゃんと答えてあげることでしょう。それを基礎に、子が育つにつれて、母以外の知識源からも知識を得、たくさん経験をし、記憶を増やし、新しい疑問にぶっつかった時、冷静に考えて対処できるようなおとなに育つでしょう。いつでも戻ることができる場所、母の膝があるという安心感を頼りにして。

  幽霊の正体見たり枯れ尾花という俳句がありますが、幽霊と思えば恐怖を覚え、枯れたススキとわかっていれば恐怖は生まれないでしょう。社会の出来事が裏付けを持って理解できたら、意味もなく相手を憎むこともなくなるでしょう。残念ながら世界中にはたくさんの宗教があり、その宗教を利用して他国をバカにしたり、憎んだりする国家があります。他国の正しい知識を隠して自国の統制をはかる国家もあります。理由もなく他国を敵とみなすような教育を何世代にもわたって続けている国もあります。例えば反日教育を70年にわたって続けることで、日本が憎い国、自国より劣った国と考える人たちを増やし続けている国も有ります。

  かつての日本がそうでした。私の人生を振り返ると小学生時代はまさに天皇を柱とする神国日本、憎き米英という教育を受けていました。相変わらず、おろかな人類は同じ過ちを今も続けています。
  他国の実情を知り、理解し、理性的に相手を見る能力がある人の数が増えることは、理由もなく他国への憎悪を焚きつける国家政策をとり難くすることにつながります。
  考える能力の基礎造りも、扁桃体同様、ママの子育ての手の中にあります。いたずらにテレビで放送してるから、お隣もそうしてるからといった軽い考えで体制に迎合するのではなく、正しいか間違っているか、善いことか悪いことかを冷静に判断できれば、人と人、国と国の争いに巻き込まれることが避けられるのではないでしょうか。そうできる大人に子どもを育てることが必要です。ママもそれができるような母になっていただきたいと思います。ママ自身が学んで、考えることによって。
  
  これは絶対にその子を産んだ母にしかできない大事業です。未来のわが子、わが孫に苦しい思いをさせないように、子にとっての母はどうあるべきかをよく考えてください。こればかりはアベノミクスの子育て支援にも育メン奨励の知事さんにもできないことです。子どもの未来を忘れた育児は間違っています。たとえ就業によって子どもと離れる時間があっても、母であることを忘れないで欲しい。昔から人類の女性は、子育てに専念したのではなく、働きながら母であり続けてきたのです。

  感情抑制にはもっともっと考えるべきことがありますが、私は穏やかな扁桃体を作る母の愛と、理性的判断の基礎となる考える習慣を子の身につけさせる母の賢明さの二つが特に大切だと思います。