澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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2015年03月

  従来から、出生数は男子の方が女子より少し多いといわれています。

  日本の、「母子保健の主なる統計 2008」を見てみますと、性別出生数は、
    1960年 男子824,761人 女子781,280人。
    1980年 男子811,418人 女子765,471人。
    1990年 男子626,971人 女子594,614人。
    2007年 男子559,847人 女子529,971人。
男子の出生数のほうが女子の出生数より多い傾向がわかります。この理由として、前回のブログに、Y染色体を持った精子の方が、X染色体を持った精子より身軽なので受胎の可能性が高いのではないかという考え方もあると紹介しました。

  今日(2015年3月31日)のYAHOO!Japanニュースに、この問題についてハーバード大学とオックスフォード大学の共同研究チームが調査して、米科学アカデミー紀要に発表した論文が紹介されています。それによりますと、

  受胎時の性比は男女同じ。

  受精後第1週は、女性の受精卵より男性の受精卵ほうが異常が多い。

  10~15週の間は女子のほうが胎内の死亡リスクが高い。

  妊娠後期、特に28~35週の流産数は男子のほうが多い。

  しかし結果的には男子の出生数が女子よりわずかに多い。

  と結論が述べられています。

  受胎時から男子数が多いのではなく、女子の胎内死亡数が男子より多い期間があるという結論で、これまで考えられていた、受胎時から男子数のほうが多いという説とは違っています。

  出生後はいつの間にか女子数の比率が高くなり、年齢を重ねるほど女性の生存率が高くなるという傾向は、今後も変わらないでしょう。

 

  妊娠期間の数え方は、受胎の瞬間を知ることは難しいので、最終月経の開始日を基準に280日、40週と数えるのが普通です。月数で数える場合は最終月経から4週までを1ヶ月、8週までを2カ月と数えます。
  
  妊娠期間が長くなればこの数え方でもいいのですが、受胎から8週までの赤ちゃんの成長を考える場合には、受胎の瞬間から数え始めなければなりません。ですから、今回のブログ、受胎から第4週頃までに関しては、最終月経から6週、1ヶ月半の出来事と考えてください。前回の生理から2週間ぐらい経って次の排卵が起こり受胎の機会が来るという前提で、受胎後第4週というのは、妊娠の自覚がまだない受胎直後から、次の生理が来なくて約2週間後まで、赤ちゃんできたかなと疑問符が付くころにかけてのお話です。
  
  動物は卵生:卵を体外に出して、卵の中で仔が成長し卵外生活が可能になってから孵化する動物と、胎生:排卵後ある期間卵子の中で成長し、卵から孵化した後は胎盤に繋がって子宮内で成長を続け、体外生活が可能になって出産する動物とありますが、ヒトは、他の哺乳類と同様、胎生の生物です。ですから、ヒトの卵子も、ニワトリやオタマジャクシの卵と同様に、染色体を含む核は卵殻の中に保護されています。

  動物によって卵殻の構造は違います。日常身近に目に触れるニワトリの卵は、炭酸カルシュウムの殻に包まれていて、卵の中の雛のために、酸素をとりいれ炭酸ガスを吐き出すことができる構造になっています。
  
  ヒトの卵子の殻は、核を含む卵細胞の周りを透明帯というゲル状物質が囲み、その外側に卵胞上皮という細胞が取り囲んでいます。精子は卵胞上皮の層を突き破り、透明帯に穴をあけて、幸運な1個の精子だけが卵細胞に取り込まれます。その瞬間に卵細胞は透明帯の構造を変化させて、他の精子の侵入をブロックしてしまう仕組みになっています。取り込まれた精子がY染色体を持っていれば男性に、X染色体であれば女性になります。男女の性別は受精の瞬間に決まってしまうわけです。赤ちゃんの性別は、男の子が女の子より少し多く生まれるのですが、Y染色体はX染色体の半分の大きさしかなく重さも軽いので、その分Y染色体も持った精子の方が動きが早くて卵子に遭遇する機会が多いからではないかと書かれた記事もありました。

  受胎物語を、中世ヨーロッパの騎士物語風に考えてみました。
  堅固な城壁に囲まれたお城に、魅力に富んだお姫様が一人で住んでいました。姫は各地の騎士に呼び掛けました。剣一本で城壁を破って私のもとに来ることができたら、その騎士と結婚しようと。
  たくさんの騎士が集まって、同時に城に向かって旅立ちました。途中の様々な障害に、多くの騎士が城に行きつくことができませんでした。
  500人ほどの騎士が城の周りに到着し、剣一本で壁に穴を開けようと競いました。もう少しで壁に穴が開きそうだ。その時、騎士のひとりが、その場所に最後の一太刀を振るって、自分が通ることができるだけの穴をあけ、城の中に飛び込みました。それに気付いた他の騎士たちがその穴を通り抜けようとしますが、その穴はあっという間に塞がれてしまって城に入ることができず、ただ城のまわりをさまようしかありませんでした。城に入った幸運な騎士は姫と結ばれ、素敵な子宝に恵まれて、幸せな一生をおくりました。めでたし、めでたし。

  精子が卵子に取り込まれると、各々の細胞の核が融合し、このとき、卵子、精子がそれぞれ減数分裂によって1本づつもっている染色体が合体し、私たちヒトのすべての細胞と同じように、2本の染色体が対になった細胞が誕生します。受精卵といいます。ヒトの受精卵の大きさは、0.1~0.17ミリメートルです。
  受精後1~2日の間に、受精卵が分裂して2個の細胞になり、さらに4個に、続いて8個に分裂します。4個に分裂した段階では、各々の細胞が別々の個体に成長することができます。2個に分裂した細胞が別々に成長すると一卵性双生児になります。可能性としては四ツ子もありうるわけですね。8個に分裂すると1個づつの細胞が一つの個体に成長することはできなくなります。一卵性の八つ子はありえません。

  性行為は快楽と、ヒトという種の保存と二つの意味を持っています。どちらにもせよ、受胎が成立すれば、性行為のあとの数日間に、こんなにも劇的なドラマが女性の胎内で進行するのです。女性が意識する、しないとは関係なく。でも、受胎後8週間は、卵細胞、胎芽にとっては、とても危険に満ちた大切な期間と考えられています。そのわけは次回以後のブログに書きます。

  旧約聖書の創世記風にいえば、一個の卵細胞が8個に分裂して、これで赤ちゃんの成長「第一の日」が過ぎました。第二日以後のドラマは次回に。

  精子は、1回の射精で2-3億という膨大な数が女性の胎内に入ります。でも、卵子と結合して実際に役に立つ精子はただ1個。この数字、不思議に思われませんか?何故これほどの数の精子が必要なのか。
  
  精子の寿命は、約48時間。射精されて膣に入った精子が卵管で待っている卵子にたどり着く時間は約10時間です。精子の身長は0.06mm(卵子は直径0.1mm)、精子が女性の体内で移動する速度は1分間に2-3mmで、膣から卵管膨大部まで約20cmですから、単純計算では2時間もあればいいことになりますが、20cmの移動の間には、様々な障碍があります。
 
  もともと、精子の1/3は、何かしら欠陥を持っていると考えられています。欠陥精子は移動速度が遅いかもしれません。X染色体を持つ精子はY染色体を持つ精子より少し重いので、それが移動スピードに関係するとも考えられます。膣、子宮頚部、子宮には、精子が生存しにくい環境がいろいろあります。精子は女性の体内では本来存在しない異物ですから、白血球が精子を捕まえようと襲ってきます。精子を体外に追い出すような粘膜の構造、運動も精子の移動をじゃまします。膣内の分泌物のpHも精子には快適なものではありません。そのため、すんなりいけば2時間の移動距離に平均10時間もかかってしまうのです。

  2-3億個の精子のうち、膣上部に到達できるのは300万個に減ります。子宮頚部を通り抜けて子宮に入れる精子は3万個、子宮では、卵管の入り口が左右2つありますから、精子はどちらの卵管に入るか選ばなければなりません。卵子が待っていない方の卵管を選べば、精子の運命はその段階で終わりです。

  最終的に卵子の周囲に到達する精子の数は5百個くらいです。この5百個がいっせいに卵子に接触して卵子の中に入ろうとするのですが、勝負は瞬間的についてしまいます。一個の精子を受け入れた卵子は、瞬間的に入り口を閉ざしてしまいます。残された数百の精子は、むなしく卵子の周囲を動き回ってやがて消えてしまいます。

  これから先の受精卵の行動は、本文のなかで。

  精子の熾烈な婚活、ヒトの競争社会を思わせて、男性である私には、なんだか切ないですね。
  
  

  赤ちゃんの成長は受胎から始まります。卵子が精子と合体した瞬間から、ママがまだ妊娠を自覚しない時期、妊娠したかなと首を傾げられる時期にかけて、受精した卵子はめまぐるしく活動を始めます。赤ちゃんの一生を支配する基礎は、受胎後9-10週の間(まだ胎芽と呼ばれる期間)に作られてしまいます。一生の間で最もめまぐるしく、目を見張るような劇的な変化です。
  
  卵子は、ママが、ママのママの子宮の中でまだ胎児でいる間に、胎児であるママの卵巣で6百万個以上作られています。思春期には卵巣の中で4万個に減りますが、赤ちゃん候補として毎月排卵される卵子の数は、一生を通じて、4万個の中の4百個です。
  
  生殖細胞(卵子と精子)以外のヒトのすべての細胞の中には、染色体が対になって23対、46個入っています。 
  
生殖細胞の中には、減数分裂によって、一対ではなく片方だけの性染色体が入っています。卵子の中には女性を決定するX染色体を持った性染色体のみが、精子には、男性を決定するY染色体を持つ精子と、卵子と同じようにX染色体を持つ精子の2種類があって、どちらが卵子と結合するかによって、受精した卵細胞が男の子を作り育てるか、女の子を育てるか決まってしまいます。男女の性別は、受精の段階で、妊娠の瞬間に決まってしまうわけです。
  
精子は男性の胎内で1秒間に千個の速さで作られ続けます。男子の一生の間に12兆個にもなります。一回の射精で膣内に入る精子の数は2-3億個といわれています。そして卵子と結びつく精子はただの一個です。
  
卵巣内では、排卵準備として、15-20個の卵細胞が活動を始めエストロジェンを分泌し始めますが、その中のただ一個だけが卵巣外に放出され(排卵)、残りの20個弱の卵細胞は役目を終えて消えていきます。
  
排卵される卵子、卵子と結合する精子がそれぞれ一個だけ、2-3億の精子、4万個の卵子から、無作為に選択された一個づつの卵子と精子だけが、胎内で赤ちゃんになるのです。あらためてこの数字をみて、赤ちゃん誕生がいかに奇跡的なものであるか、ビックリされませんか?

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