あらかじめ予定された帝王切開の場合は問題が少ないのですが、正常分娩の予定で出産が進行している途中で、胎児の心音が弱くなったり、陣痛が弱くて分娩が進まなくなったり、早期破水、胎盤早期剥離、臍帯脱などが発生し、正常分娩の予定を緊急に帝王切開に切り替えることがあります。
 
 このような緊急帝王切開では、胎児が酸素不足で仮死状態になることがあります。

 在胎36週未満の早産、陣痛第Ⅱ期が長引く、臍帯が胎児の頸に巻きついたり、臍帯がねじれたりして臍帯の血流が止まってしまう場合も、予期しない胎児の酸欠を起こします。

 生まれてきた赤ちゃんが産声を出さず、皮膚の色が蒼白く、筋肉が弛緩しているなどの、仮死状態で生まれてきた赤ちゃんには、さっそく蘇生処置が行われます。
 
 蘇生処置は、分娩台の傍のインファント・ウオーマー(写真1)の上で行います。赤外線光で温められた台の上で赤ちゃんの体温低下を防ぎ、口中・上気道の分泌物や羊水を吸引し、酸素を陽圧で肺に吹き込んだり、皮膚を摩擦するなどして手早く蘇生処置が行われます。
 赤ちゃんの指先につけたセンサーにつながった「パルスオキシメーター」という装置で、皮膚を流れる血液中の酸素飽和度を測り続けます。 ほとんどの場合、数秒から数分以内に呼吸が始まり、血中酸素飽和度が90%を超えますが、こうなればもう心配はいりません。

 状況によっては、より高度の設備のある病院に転送されることも稀にはおこります。
 
 この処置の間に、血中酸素飽和度の上昇が悪かったり、体温が低下するような場合は、保育器に収容し、保温と酸素の供給をします。この際、赤ちゃんの手足や体に幾つものセンサーを付け(写真2)、呼吸数、心拍数、心電図、血中酸素飽和度を液晶画面に表示し続ける「総合モニター」が使われます。この装置で、保育器内の赤ちゃんの呼吸、循環、体温を常時監視することができます(写真3)。

 在胎36週未満、体重2500g未満の赤ちゃんも、保育器に収容して呼吸・循環が安定し、保育器外に出しても大丈夫な状態まで観察します。
 
 保育器に収容する必要がない場合も、コットに収容して湯たんぽ、キャップを付けて体温を維持し、必要に応じて酸素飽和度、体温、呼吸、脈拍数、心雑音・不整脈の有無を観察します。
 
 もちろん、スタッフの目、手、カンは、器械以上に大切です。「なんとなく元気が無い。なんだかおかしい」というスタッフの感じが、感染症や低血糖の始まりだったということは、少なくありません。
 
 早産児、低体重児は、生後0-1日に多呼吸を起こすことがあり、目が離せません。鼻翼呼吸や呻り声、呼吸音に水泡音が混ざるときには、もう一段慎重な観察と保育器収容が必要です。

 もちろん、スタッフの観察、処置も、きめ細かく続けられます。その結果や、測定した体温、呼吸数などの数値、処置の内容は、「赤ちゃんのケア(3)」のブログに写真で添付した「新生児クリティカルパス」に記録されます。

 コットの赤ちゃんは、新生児室とママの入院室の間を往ったり来たりして、授乳、おむつ交換、その他たくさんの育児技術をママに覚えていただき、母児の接触をなるべく密にするよう考えられています。
 スタッフの手で行う処置やケアは、ナースステーションにつながった新生児室で行われます。出産第1日以後に予定されている沐浴も、ナースステーション内の別室で行います。

 ママの目に触れないところで、赤ちゃんがこのように見守られていることを御理解ください。  
 
 新生児クリティカルパス(写真4)の各項目の意味については、次回のブログで説明します。

<写真1・インファントウォーマー>
1IMG_0436

<写真2・保育器内でモニター>
2IMG_0435

<写真3・モニター>
3IMG_0434

<写真4・新生児クリティカルパス>
image