澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

検索エンジンから来られた方は最新のページではないかも知れません。こちらをクリックしてトップページにお越し下さい
携帯電話からのアクセスは右下のQRコードをご使用下さい。

2016年04月

”五つ月を 越すと近所へ 義理を欠き”
 岩田帯をしめる頃になると、おなかが目立って恥ずかしく、表へ出ることも遠慮するという、しとやかな江戸時代の女心を詠っています。
 いまや、五ヶ月以後は動いても流産の心配は無い、旅行するなら五ヶ月以後と言われています。看護師さんたちも、出産予定日6週間前まで仕事を続けています。

”子を持ってから 三ン日を やっと塗り”
 江戸時代は、月の一日、十五日、二十八日を式日といい、休日とされていました。お祝いや寄り合いは式日の行事です。子持ちになって、お化粧するひまがが式日の三日しかなくなってしまったという場面なのですが、今のママは、上手に余暇を見つけて、化粧もお出かけもしてますね。

”粉をふいた 子を抱いて出る 夕涼み”
 風呂あがりにベビーパウダーをつけた子を抱いて夕涼み。
 江戸時代のベビーパウダーは天花粉。天花粉とは、キカラスウリの根からとった澱粉です。牡蠣粉(牡蠣の殻を砕いて粉末にしたもの。日本画の胡粉にも使います)も使われたようです。内藤壽七郎先生は、ベビーパウダーをボレイコといってらっしゃいました。熊本生まれの内藤先生らしい。現在市販されているベビーパウダーは、タルク(滑石)の微細粉末を使っています。いずれも、微細な粉末が量あたりの表面積が大きいことから、汗を吸い取り蒸発させる目的で汗取りに使われてきました。タルクの粉末は肺に吸い込ま無いほうがよいので、赤ちゃんの顔や胸にパフではたきつけるのは避けたほうがよいでしょう。化粧品会社、育児用品会社は安全と言っていますが、肺に吸着すると取れにくいものですから。天花粉、牡蠣粉は名前だけが残って、今では使われていないと思います。
 江戸時代の風物詩として、路地の縁台に天花粉で白くなった赤ちゃんを抱いた母親が座っている様子が目に浮かびます。

”迷い子の 親はしゃがれて 礼を言ひ”
 長屋総出で迷い子探し。無事発見。しゃがれ声が親心をあらわしてます。迷い子探しは、大きな声でこの名を呼びながら、あちらこちら歩きます。そういえば、映画「ウッドジョブ」に、迷い子探しのシーンがありました。

”ねんねこの、腰は左右へ 少し振り”
 おんぶは、安全で暖かくて、子守しながら両手が使えると言う便利な方法です。しかし、明治時代に、ガニマタになると言って否定されました。それ以後現在まで、おんぶのメリット・デメリットがいろいろ論じられています。否定する人も肯定する人もあります。現在では、おんぶされた子を見ることは街中ではとても少なくなりました。家では、おんぶを愛用されているママもあります。前に抱くほうが、顔が見えて安心感があるのでしょうか。抱っこの外出は、足元が見えにくくて、はらはらすることもありますが。
 おんぶに限らず、前抱きのだっこバンドでもスリングでも、抱っこした子をゆっくり揺らしているママがほとんどで、ゆっくり揺すられることが赤ちゃんにとって心地よいことを、経験的にママが感じ取っていられるからかもしれません。理屈抜きで自然にママの体が動いてしまうのかもしれません。「腰は左右へ少し振り」は、今も残ってますね。
 おんぶも抱っこも、長時間続けることは避けてくださいね。エコノミークラス症候群と同じように、赤ちゃんの体や足の動きを束縛し続けると、股関節脱臼状態になることが心配です。
”負われた子 のどぼとけまで 陽があたり”も、子守に雇われる女の子がいたころはよく見かける情景だったのでしょう。

”女房は 客へ添乳の 申しわけ”
”添乳して 棚に鰯が ござりやす”
 子どもに乳を飲ませていれば、天下御免で仕事やしきたりを無視できたよい時代の情景です。客が来ても知らん顔、亭主が帰ってきても食事の支度をせずにすむといった、のんびりした社会環境は、母乳が子育ての絶対条件だった時代の生活が生み出したルールだったのでしょう。

”安産着 鷺とすっぽん 舞ひ遊び”
 産着は昔は大切なものでした。背中に糸飾りを縫いつけた背守り、すくすく伸びるようにという祈りをこめた麻の葉模様、魔よけの色とされていた赤い産着など、定めない赤子の生命をつなぎとめるための心づかいが込めらtれていました。鶴が鷺に、亀がすっぽんに見えたところで、親心は親心、貧しい親の姿を茶化していますが、つきはなしていないところが私は好きです。

 江戸川柳は、飾らない江戸庶民の姿を今に甦らせるタイムマシーンです。
 誹風柳多留という川柳集から幾つか拾って見ましょう。

”かみなりを まねて腹掛け やっとさせ”
 金太郎の腹掛けをご存知ですか。昔の男の子には、おなかを冷やさないように、腹掛けをさせていました。
昔話の絵本の定番だった、熊と相撲をとる金太郎の絵なんて、もう過去のものでしょうか。
夕立がきて空気が冷えてくると、子どもがおなかを冷やすのが心配です。そこで、「かみなりさんにおへそ取られるよ」と腹掛けをさせる口実に雷さんが登場するのですが、江戸時代に限らず、つい50年位前までは、子どもがおなかを悪くすると生命に関わることが多かったので、この川柳はおかしいだけでなく、懸命な親心も感じられますね。

”取揚婆 屏風を出ると 取り巻かれ”
 取揚婆は産婆、今の助産師さんのこと。お産は家でするもので、屏風の陰で。産婆さんの手で赤ちゃんが取り揚げられていました。生まれた子が五体満足か、男の子か女の子か、一刻も早く知りたい気持ちは今も昔も変わりません。

”子ができて 川の字なりに 寝る夫婦”
 明治以後の欧米育児学が、川の字なりの添い寝添い乳を奪ってしまいました。赤ちゃんを窒息させるから危ないとか、自立心を妨げるとかいう理由で。でも、赤ちゃんは這えるようになると、勝手にママの布団にもぐりこんで来ます。現在では、母と子のふれ合いや、授乳の視点から、添い寝添い乳の利点が見直されています。睡眠薬や、泥酔や、睡眠薬・鎮静剤の服用の場合を赤ちゃんの窒息の危険も考えられますが、ママはそばに寝ている赤ちゃんの体動に合わせて、ベッドの上でダンスをしていると、添い寝の観察をしたイギリスの研究者が表現しています。

”乳貰いの 袖につっぱる 鰹節”
”乳貰いは 冬の月へも 指をさし”
”南無女房 乳をのませに 化けてこい”
 この3句は母をなくしたこのために貰い乳に行く男やもめの父親がテーマです。
 
 産後の母子の死亡率が高かった時代には、乳の無い子と、飲む子がいなくなった母が、町にたくさんいました。乳の無い子の父親が、子を亡くした母の乳を飲ませてもらいに子を抱いて歩く姿が珍しくなかったのでしょう。袖に突っ張る鰹節は、赤ちゃんが泣いたら鰹節をしゃぶらせて一時しのぎをするためのもの。貰い乳のお礼は鰹節だったという説もあります
 
 2句目は、母を亡くした子を貰い乳に連れて行く途中、泣き出した子ををあやすために、冬の寒空の月を指差して、ホラお月さんだよと話しかけている父親の姿。
 
 3句目は、亡くなった妻の位牌に、乳を飲ませに化けてきてくれと拝んでいる困惑した父親像でしょうか。

 いまや、日本中どんな離島でも山の中でも育児用粉乳が手に入ります。母を亡くす子も、子を亡くす母もほとんどありません。
 この川柳は、幸いなことに過去のものとなりました。 でも、母乳の通信売買という記事が新聞に載ったのは、ついこのあいだでしたね。

 母乳に関係して、初産のママが心配されることが多く しかし、心配要らないいくつかの事をまとめてお答えします。
  ゲップが出しにくい。
  よくオッパイを吐く。しゃっくりが多い。
  おなかがパンパンに張っている。
  よくいきむ。真っ赤な顔をしてうなる。
  排便回数が多い。オナラが多い。
 この5つの問題は、すべて赤ちゃんが母乳を飲む仕組みに関係が有ります。
 
 赤ちゃんは乳首をくわえっぱなしで、口で呼吸をすること無しに、スースーと鼻で呼吸をしながら、母乳をゴクゴク飲み込んでいます。離乳が始まって、オッパイ以外のものを飲み込むことができるようになるまでの最初の数ヶ月間だけの離れ業です。ママは鼻呼吸しながら口の中の物を飲み込むことは絶対できないはずです。離乳期以後は、食べ物を飲み込むときは呼吸を止め呼吸器に誤嚥することを防ぎ、呼吸する時は食べ物を飲み込むことはできません。
 
 生後間もない赤ちゃんは、首が短くて、顎のすぐ下は胸のように見えるでしょう?月齢が進むに従って、赤ちゃんの咽喉は縦に伸びてきて、4ヶ月にもなれば、呼吸と嚥下がオトナのようにきちんと分かれます。この頃には、泣き声が多彩になって、高低長短強弱さまざまな声、泣き声が出るようになります。眠い、おなかが空いた、オシリが汚れてるなどの赤ちゃんの訴えをママが聞き分けられるようになります。お話しするように、いろいろな声を出すようになります。
 
 生まれてすぐの赤ちゃんの咽喉はオッパイを飲むことだけに特化していると言っていいくらいで、泣き声の高さは産声と同じように、ドレミの「ラ」周辺の高さの泣き声一種類だけで単調、おなかが空いたとかオシリが汚れて気持ちが悪いとかを泣き声で聞き分けることはできません。前回書きましたように、生まれてすぐの赤ちゃんは頻繁に泣きますが、その泣き声に対して、何故泣くんだろうと泣く理由を考えて首をひねる必要は無く、赤ちゃんが泣いたら、余計なことを考えず、赤ちゃんを抱き上げてオッパイを飲ませてあげれさえすれば、赤ちゃんの泣き声の役割はかなえられるというわけです。

 赤ちゃんの喉頭蓋(気管を開閉する喉の蓋)は、オトナより高い位置、第3頚椎辺りにあり、口蓋垂(ノドチンコ)が気管入り口に覆いかぶさっているので、口蓋垂を開閉しないでも、空気と母乳が混ざったオッパイが、うまく気管にも消化器にも流れ込みます。

 消化器にはオッパイと一緒に大量に空気が流れ込みますから、胃にたまった空気を追い出すためにゲップを出させる必要があると考えられています。でも、ゲップを出さなくても、最初の1ヵ月間ぐらいは、赤ちゃんには胃ー直腸反射という奥の手を持っています。オッパイを飲むとそれに反応してオシリからオナラとウンチを出す反射です。この反射は1ヵ月間だけでそれ以後は消えます。

 2ヶ月目にはいると赤ちゃんの排便回数は激減することが多いのですが、これは、胃腸の消化液の分泌が増えて消化能力が高まることと、空気をたくさん呑む哺乳から、あまり空気を呑まない哺乳に変わってくるために、自然に排便回数が減り、胃ー直腸反射が必要なくなるからです。母乳が出なくなってウンチの回数が減るのではありませんから心配要りません。排便回数が減った分、水分量が少なくよく消化された白いブツブツがない軟らかいウンチがまとめて大量に出るようになります。固くて出にくいウンチになることは無いはずです。
 言い換えれば、胃ー直腸反射は、ゲップの形で口から空気を追い出さなくても、口からゲップを出さなくても、オシリからオナラを出す働きをしているのです。

 呼吸器(気道上部)にも、空気と母乳が混じったものが入りますから、鼻の奥がグジュグジュ音を出し、喉の辺りではゼロゼロが聴こえます。どちらも、母乳である限りは悪いことはしませんから、心配する必要はありません。この状態を鼻がつまっていると表現されるママが多いのですが、鼻呼吸しながらオッパイが飲み込めるなら、鼻づまりではありません。鼻の奥まできれいにしようと考えないでください。鼻の穴をのぞいてみて、ハナクソがあるようなら、それは取り除いてください。

 気管の中にも、かなり奥まで母乳が入るのだそうですが、母乳である限りは問題ありません。母乳は、100%ママの血液から作られるもの、赤ちゃんの体のどこに入り込んでも、アレルギーや肺炎の原因にはなりません。私は、鼻の奥や喉の母乳は、空気中の異物を気管の奥に入らないよう防ぐ役割を持っているのだろうと考えています。赤ちゃんにとってマイナスの現象ではなく、赤ちゃんを護る役割を持っていると思っています。
 人工栄養でもミルクが鼻や喉や中耳や気管にに入ると思われますが、ミルクの場合は、アレルギーや中耳炎の原因になりうると考えます。
 赤ちゃんの咽喉の構造が母乳用にできているのですから、赤ちゃんになるべく母乳を飲ませるほうが自然で安心ではありませんか?
 
 さて、ゲップの問題です。ゲップはいつも上手に出るものではありませんから、長時間抱っこしてゲップが出るまで背中をさすっている必要はありません。ゲップが出なくて胃に空気が残っていても、じきにオシリからオナラとして出て行きますから。
 ゲップが出ないままて仰向けに赤ちゃんを寝かせると、口からダラダラと、時には吹き出すように大量に、母乳が溢れてくると思いますが、ふきとっておきさえすればそれで充分です。頻繁に、みぞおち辺りが凹むくらいに嘔吐する赤ちゃんの場合は消化器の異常を考えなければなりませんが、胃の中の空気に圧されて溢れてくる溢乳は、赤ちゃんはすぐにオッパイを飲んでくれますし、体重の増加にも影響しません。吐乳と溢乳は全く別の現象で、吐乳は発育に影響が出てきますし検査も必要ですが、溢乳は心配する必要がありません。溢乳を防ぐためのゲップ出しは、母乳栄養の赤ちゃんではそれほど気を使わずに、程々にした方がいいでしょう。極端な言い方をすればゲップ出しは、どうでもいいことのひとつです。

 シャックリはオタマジャクシから始まって、水陸両棲動物には必要な反射です。急に呼吸器に液体が押し寄せてきた時、気道を瞬間的に閉鎖して肺が水浸しにならないようにする反射がシャックリです。人間の赤ちゃんも、胎内で羊水に浮いている赤ちゃんはよくシャックリをしています。胎児は未だ働いていない肺を持っていますから、水陸両棲動物状態ですからね。
 出生後も、赤ちゃんはよくっシャックリをします。オタマジャクシの名残だと考えてください。心配しないでも赤ちゃんのシャックリはそれほど長い時間続くものではありませんから。シャックリは子ども時代に多く、成長するにしたがって減り、高齢者では脳神経系の病気が無ければ、ほとんど出なくなります。

 おなかが張っている、よくいきむ、真っ赤な顔をしてうなる。これも、空気を一杯飲み込むからです。どの赤ちゃんもそうですから、心配の種にしないでください。胃ー直腸反射が消える頃には減少するはずです。「赤ちゃんが苦しそう」と表現されるママもありますが、これはママの感情移入、赤ちゃんは苦痛が有っていきむのではないと思います。赤ちゃんに聞いて見ても返事は返ってきませんから、小児科医の勝手な判断ではありますが。

 排便回数が多い、オナラが多いという心配事の答えは、もうお分かりですね。最初の1ヵ月、胃直腸反射が活発な間は、オッパイを飲ませればオナラとウンチが出るようにできているのが、赤ちゃんです。

「母乳を飲ませても泣き止まない」
 
 まず、このように考えてください。赤ちゃんが泣くのは、おなかがすいているからでも、オッパイがたりないからでも、どこか不快な感じがあるからでもない。ただ無意識に泣いているのだ。
 
 前回も触れましたが、数多い哺乳類の中で、赤ちゃんが大声で泣くのは人類だけです。集団生活の中で、ヒトの赤ちゃんは外敵から守られています。だから遠慮なく泣くことができます。
 
 人類の赤ちゃんは、出生したとき、他の哺乳類の赤ちゃんに比べて、自分でできることが極端に少ないのです。大きな頭が無事産道を通り抜けられるギリギリのタイミングで生まれてきますが、生存に必要な基本的な機能以外に、考えて行動することはできず、体を動かす能力もありません。
 それを補うために、ここにいるよと存在をアピールする手段として、頻繁に泣く能力が与えられています。

 赤ちゃんの眠りは浅く、ちょっとした刺激で目が覚め、眼が覚めれば泣きます。空腹感・満腹感の脳の中枢は、満3ヵ月以後で無いと働き始めません。
 赤ちゃんが母乳を飲みやめるのは、1分間に60-80回も、舌で強くママの乳首を刺激し続けることに疲れて飲みやめるのであって、満腹して満足して飲みやめるのではありません。
 哺乳に疲れて乳首を口から離して、しばらく浅い眠りに入って、ちょっとした刺激ですぐ目を覚まして泣く。生後間もない赤ちゃんの毎日は、泣いて,ママに抱き上げられて、オッパイを飲んで、飲み疲れて、まどろんで、またすぐ眼が覚めて泣くことの繰り返しです。

 
 立場を変えて、母乳を飲ませても泣き止まないというママの表現に含まれるママの心配には、どんな内容があるのでしょうか。

 
 「じゅうぶん時間をかけてオッパイを飲ませたのに、また泣いてきた。私のオッパイの出が悪いのかなあ。」
 (赤ちゃんは泣くものだと思ってくださいね。赤ちゃんの生存権がかかっているのですから。
 生後2-3ヶ月の赤ちゃんとママに集まっていただく機会に、「赤ちゃんは想像以上に泣いたでしょう?」と質問すると、「赤ちゃんってあんなに泣くものとは思わなかった」という答えがほとんどのママから返ってきます。
 オッパイと赤ちゃんの泣きを結び付けて考えないでくださいね。)
 
 
 「こんなに間を空けずに授乳していると、オッパイが出なくなるんじゃないかなあ。」
 (オッパイは、プロラクチンの作用で乳腺細胞が作り出すものです。間が空かなくても、赤ちゃんの舌がママの乳頭を刺激すれば、その刺激に反応してママの脳下垂体前葉の分泌細胞からプロラクチンが分泌されます。乳腺細胞もいつでもプロラクチンに反応します。どんなに頻回授乳でもだいじょうぶです。)


 「時間を決めて、ルールを決めて飲まさないと、けじめがない、だらしない子になるんじゃないか。
 私も少し休む時間が欲しい。」
 (明治時代にはそういう考え方がありました。キリスト教的倫理の影響で。でも、赤ちゃんの実像が分かった現在では、けじめ・しつけは、生後6ヶ月間くらいは考える必要はありません。ママの休み時間は赤ちゃんの成長に従って、ちゃんと与えられますから、最初に1ヶ月間は我慢してがんばってください。)

 
 「夕方から夜中までずっと起きて泣く。この時間帯、オッパイ張らないし、オッパイ出ているのかなあ。」
 (夕方から夜半まで頻繁に泣く赤ちゃんが多いようです。妊娠中の胎動が多い時間帯と合っているようです。
赤ちゃんが頻繁に泣いて、ママが頻繁に授乳していると、オッパイが張る暇が無いのは確かですが、むしろオッパイを張らさないようにしている方が乳腺細胞の母乳分泌能力が高まるのに対して、オッパイが張ると、乳腺細胞にはこれ以上オッパイを作るなという指令が届くと言われています。赤ちゃんが夜まとめて数時間眠るようになるのは4ヶ月頃、それまでの間にも、日々赤ちゃんの生活リズムが変って、ママの手がだんだん省けてきますから、それを待ってください。)

 「赤ちゃんは、泣いて、ママに抱き上げられて、オッパイを飲むことの繰り返し以外に生きる手段を持ってない。泣いたら抱き上げてオッパイをあげましょう」と考えてください。
 
 
 オッパイ以外の手段で泣き始めた赤ちゃんを静める方法は無いと考えてくださいね。背中が丸くなるように抱いて部屋の中を歩いてみることが唯一の方法ですが、それで泣き止んでくれたらラッキーです。たぶん、よけいに泣きをひどくしてしまって、おお泣きさせるとオッパイをくわえさせるのが難しくなりますから、泣いたら抱いてオッパイを飲ませることが、唯一の、最善の泣き対策と考えてください。ミルクを足すことも意味ありません。赤ちゃんは、おとなのように満腹になれば眠くなるのではありませんから。

 人間の赤ちゃんは、運動能力も大脳の働きも未熟な状態で、母体外で生きるための最小限度の能力だけを身に付けて、生まれてきます。

 人間以外の哺乳類の赤ちゃんに比べて、大脳皮質が大きいため頭囲が大きく、直立二足歩行ができる唯一の哺乳類なので、母体の骨盤の形が左右に長く前後に短く、赤ちゃんが出てくる産道のいちばん狭いところの縦径は、赤ちゃんの頭の横径くらいしかありませんから、赤ちゃんはそれに合わせて廻旋しながら、赤ちゃんの頭が産道を通過できるギリギリのタイミングで、産道を降りてこなければなりません。そのため、すべての機能を胎内で完成させることができません。生まれてすぐから必要になる、胎盤経由では無く、肺呼吸で酸素を取り入れ炭酸ガスを排出する呼吸機能、酸素や炭酸ガスを運ぶ血液とそれを体中に配送する循環器(心臓や血管)の働き、エネルギー源になるオッパイを飲んで排泄するまでの消化管の働きは胎内で完成していますが、この働きを制御するには大脳皮質は必要ではありません。

 大脳皮質には、出生するまでに胎内で140億個の神経細胞は詰め込まれますが、未だ働いていません。神経細胞は胎外の生活を始めてから、周りの刺激を取り込んで神経細胞同士のネットワークを作って働き始めます。眼球も聴覚器官も完成していますが、目で見、耳で聞いたものを大脳の神経細胞に送る回線は未完成です。
 だから、生まれてきたばかりの赤ちゃんは、大脳の判断抜きで生きています。
 
 おなかがすいた、いっぱいになったという感覚は、生後3ヶ月まで待たなければなりません。
 
 赤ちゃんにできることは、他の哺乳動物と共通の、呼吸、循環、危険の感知と言う原始的な能力以外には、泣いてママの注意を引くことと、乳房を口に含ませて貰ったら、鼻で呼吸しながら同時にオッパイを飲み込むという離れ業、それを可能にする原始反射(具体的には、唇に触れるものには、指でも、衣類でも、自分の唇でも、難易でも吸い付く反射、口の中深く吸い込んだ乳首を舌で強く押す反射)くらいなものです。空気とオッパイを同時に飲み込みますから、鼻の奥や咽喉には母乳が入り込んで、鼻づまりに似たグズグズいう音、咽喉の奥で聞こえるゼイゼイゴロゴロがいつも聞こえています。消化器は空気で充満しますから、飲み込んだオッパイが胃の中の空気に圧されてあふれ出してくること、胃直腸反射といわれる原始反射で、オッパイを飲むと、ウンチが出てオナラが出ることが満一ヶ月くらいまで続きます。1日10回授乳したら、10回ウンチをし、しょっちゅうオナラをしているのが赤ちゃんだと考えてください。

 では具体的に、前回の記事をもとに私の考えとアドバイスを。

「母乳が出ているかf\どうか心配」
 母乳がどれだけ出ているか、足りているかを数字で知ることはできません。哺乳量測定は、たまたま一回だけの授乳についての測定で、ほんとうの分泌量に近い数字を知るためには、授乳の都度、1日10回以上授乳するなら、その都度哺乳量を測定して、それを全部足して総哺乳量を出さなければなりませんが、そんなこと不可能です。ただ一回の哺乳量測定の数字に振り回されないようにしてくださいね。
 
 赤ちゃんが乳首をくわえて、舌で乳首を押して刺激すると、40秒遅れくらいでママの乳腺で、オッパイが新しく作られて赤ちゃんの口に入ります。その時、オッパイの量が急に増えるので赤ちゃんがむせると思いますが、これは、オッパイがよく出ているサインです。その時、反対側の乳首からオッパイが出るかもしれません。
 これは射乳反射という、「オッパイ出てきた」反射です。

「体重が増えているか心配」
 体重を頻繁に体重計で量って一喜一憂することはやめましょう。生後2週経って出生時体重に戻っていたら大丈夫です。1ヶ月健診頃の体重増加は1日当り20グラム以上なら心配要りません。
 1日30グラムの体重増加を目標にしないでくださいね。見た目、赤ちゃんらしい肉付きで可愛いなと感じられるようなら問題は有りません。抱いた時の赤ちゃんがだんだん重くなってきていると感じられれば、秤は不必要です。逆に、母乳だけで1日70グラム以上増える赤ちゃんもありますが、増えすぎと心配することも必要ありません。

↑このページのトップヘ