澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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2016年06月

 産院退院からの1ヶ月間、初産の場合、母と子の生活は、予想以上に大変だと思います。

 9回にわたって、1ヵ月健診時までに経験された心配事、気がかりなこと、1ヶ月以後の経過などへの答えを、数千人の赤ちゃんの健診に携わってきた私の経験から書きました。ママの気持をやわらげることに役立てていただければ嬉しいと思います。

 赤ちゃんが子宮内で過ごす40週の間、ママやご家族は、赤ちゃんの成長を早くしようとか、栄養をもっとたくさん胎児に届けようとは思われなかったと思います。自然任せ、時間任せの時間だったはずです。

 赤ちゃんは出生した後も、胎内にいるときと同じように、自然に育つプログラムを身に付けています。
 
 間違ったおとなの発想で、余計なことをしようと考えるから、ママは赤ちゃんが期待にこたえてくれないと焦ったり、悩んだりされるのだと思います。1ヵ月健診のときのママのお話から、私は育児不安のかなりの部分は心配しないでよいこと、知ろうとしないでよいこと、知りようの無いことであることを痛感しています。

 なるべく単純で自然な育児を考えてくださいね。小さな不安、心配しないでいいことを積み重ねて、心配しながら育児をすることは、母乳の分泌を悪くしますし、赤ちゃんも絶えず緊張していなければならないだろうと思います。

 愛育病院の内藤壽七郎院長は、育児ノイローゼに近いママに、「お母さん、鏡で自分の顔を見て御覧なさい。ひきつってませんか?そんな顔だと赤ちゃんが落ち着けませんよ。笑った顔をして御覧なさい。口元をニーッと笑顔にして」と話されてました。

 赤ちゃんといることが楽しくて、楽しくてと考えながら育児されるママのほうが、赤ちゃんにとっても幸せです。

 疑問や心配事が生じたら、前回までの記事を読み直してくださいね。

 赤ちゃんの眠りが浅くて、よく泣いて、どうしてこんなに泣くんだろう、睡眠不足になるんじゃないかと心配されるママやご家族は少なくありません。
 
 これまでも何度かこのブログに書いてきましたが、ヒトの赤ちゃんにとって泣くことには生存権がかかっています。他の哺乳動物に比べて、ヒトの赤ちゃんは生まれてすぐには体を動かすことができず、泣いてママを呼び、抱き上げられてオッパイを飲ませてもらうことで生きていくことができます。頭が大きくて、頭のサイズに合わせて生まれてくるヒトの赤ちゃんは、生まれてすぐから自分で母の乳房まで移動できる他の哺乳動物より1年近く早産で生まれてきます。大声で頻繁に泣くことは、ヒトの赤ちゃんの特技です。体を動かせない代わりに与えられた生きる手段です。

 だから、赤ちゃんは眠りが浅く、ちょっとした刺激ですぐ眠りから覚め、大声で泣きます。頻繁に大声で泣くことを許されている赤ちゃんは、哺乳類の中でヒトの赤ちゃんだけです。家族、仲間集団が赤ちゃんを護ってくれるから安心して泣くことができるのです。

 産声の周波数はほぼ400ヘルツ(ドレミのラの音)で万国共通といわれていますが、最初の1ヶ月くらいは、赤ちゃんの泣き声は単調で、複雑な発声は不可能です。オッパイを飲むことを最優先にしている咽喉の構造のため、泣き声は一種類で事足りるように、ただ泣けばいいようにできています。おなかが空いた、オムツが汚れた、眠いなどを泣き声の変化で知らせることは4ヶ月ころにならないとできません。

 ただし、泣き声が単調でも困らないためには、赤ちゃんが泣いたら、なるべく早くママが抱き上げてオッパイを含ませるというフォローがなければならないのですがが。オッパイ以外に赤ちゃんを泣き止まさせる方法は無いと考えたほうがいいと思います。抱き上げてあやしても、赤ちゃんは泣きやんでくれません。明治時代のように新生児のうちから規律を身に付けさせようとか、時間を決めて3時間おき授乳しようとか考えないでくださいね。
 泣くのはおなかが空いているからだとか、ママのオッパイの出が悪いからオッパイ不足で泣くんだとか、母親失格だとか、ママが自分で自分を追い込むようなことは考えないでください。
 赤ちゃんの泣くことを母乳不足と結びつけることは絶対にしないで下さい。
 赤ちゃんは頻繁に泣くように作られて生まれてくるのだから、泣いたら抱っこしてオッパイをもませるだけでいいんだと考えてください。3ヶ月になれば、赤ちゃんは自分でオッパイを欲しがり、飲みたいそぶりを見せるようになりますし、夜まとめて眠るようになりますから。

 赤ちゃんの眠りは、頻繁に目を覚まし泣いて存在をアピールするために、浅い眠り(REM睡眠)がおとなよりずっと多くなっています。胎内で胎動が多かった時間帯、夕方から深夜に掛けて、出生後も頻繁に泣くことが多いようです。その時間帯、頻繁に授乳するとママは疲れるし、おっぱいの張りもなくなるので、ママが私のオッパイ出てないんだと落ち込んでしまわれる魔の時間でもあります。
 でも、これは何の不思議も無い現象で、2ヶ月にはいると赤ちゃんが変わってきますから、それまで待ってください。決してママ自身を追い込まないように、責めないようにしてください。もちろん、ミルクを補足して解決することでは有りません。
 オッパイは、張りを感じないほど授乳するほうが分泌量が増えます。どんなに頻繁に授乳しても、赤ちゃんが吸いついたら40秒後には乳腺で新しい母乳が作られ、射乳反射があり、赤ちゃんはごくごくと飲んでくれるはずです。これまでに何度も同じことをこのブログに書いてきましたから、以前のブログをお読みいただいて参考にしてくださいね。

 よく泣いて、長い時間オッパイを離さないから、赤ちゃんが睡眠不足になるんじゃないかという心配は、まったくありませんからね。出勤時間も約束の時間もなく、好きなだけ寝たり起きたりできる特権を赤ちゃんは許されているのですから。
 
 赤ちゃんは泣くように作られてるのだから逆らっても無駄、もっと眠らせようという働きかけも不可能で、赤ちゃんはマイペースを崩してくれませんから、おとなの発想で逆らわないでください。

 母乳栄養、人工栄養どちらでも、赤ちゃんは鼻呼吸を続けながら、乳房・哺乳瓶をくわえっ放しでオッパイを飲んでいます。オッパイを飲み込むために短い時間息継ぎをしているという説もありますが、私は空気を鼻から吸い込みながら同時にオッパイを口から飲みこんでいるのだと考えています。
 
 生まれてしばらくの赤ちゃんの咽喉や口の構造は、オッパイを飲むためだけに適しています。よく泣きますが、単純な音域の泣き声で、空腹や不快感を知らせるような複雑な泣き方は、3-4か月にならないとできません。
 
 赤ちゃんは、空気とオッパイの混じったものを胃に飲み込み、呼吸器にも吸い込んでいます。気管上部にはオッパイが入り込み、咽喉や鼻腔にオッパイがたまります。
 
 胃に入った空気は腸を経て、オナラになって体外に出て行きますから、赤ちゃんは頻繁に、授乳の度にオナラをします。腸に移動した空気は、おなかを膨らませますから、赤ちゃんのおなかはカエルのおなかのように空気で充満しています。真っ赤な顔をしていきんだり、ウーンと大きな声を出したりするのも、おなかの空気の仕業ですから心配要りません。おとなから見ると苦しそうに見えるので、ママが心配されますが、心配の種にしないでくださいね。
 
 胃にたまった空気に圧されて、オッパイが口から溢れ出ますから、その対策として赤ちゃんを縦抱きにしてゲップを出させます。でも、ゲップはうまく出るとは限らないし、胃の中の空気はゲップで口から出さなくても、オナラになって出て行きますから、ゲップが出るまで必死に背中をさする必要は全然ありませんから、儀式のつもりで適当に切り上げてください。
 
 鼻や咽喉や気管上部など呼吸器に入ったオッパイは、鼻の奥のグズグズ音や、咽喉のゼロゼロ音の原因になります。

 鼻のグズグズは鼻つまりと表現されることが多いのですが、単にオッパイがたまっているだけのことが多いようです。ほんとうに鼻がつまれば赤ちゃんはオッパイが飲めなくなります。くわえた乳首を離して苦しがります。乳首をくわえたままで、スースー鼻呼吸ができている限り、鼻つまりではありません。咽喉のゼロゼロも同じです。
 
 母乳の場合は、鼻の奥や咽喉の母乳は、鼻から侵入する外界の異物や病原体をブロックする役目を果たします。中耳に入っても、気管上部に入っても、母乳である限り心配する必要はありません。
 
 ミルクの場合は、赤ちゃん糸って100%異物ですから、呼吸器の感染や、中耳炎の原因や、アレルギーの原因になりますから、小児科医として私は、できることなら赤ちゃんは母乳で育って欲しいと願ってます。

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