澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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2016年09月

 私が小児科医として勤務している産科ヤナセクリニックでは、月1回、いちごママクラスという集まりを開いています。

 生後2-3ヶ月の赤ちゃんとママに来ていただいて、ママ同士のお話やら、スタッフが企画した写真撮影やらをして、育児に奮闘中のママに楽しいひと時を過ごしていただく集まりです。私も出席して、2-3ヶ月以後の赤ちゃんの成長や育児上の注意などをお話しています。

 いちごママクラスの雰囲気は、1ヵ月健診でのママの緊張が無くなって、とても和やかです。私のこころも暖かくなります。

 小児科医を長年続けてきた私ですが、病気でない健康な2-3ヶ月の赤ちゃんを観察する機会はほとんど無かったと思います。いちごママクラスで見る赤ちゃんは、病児のお相手をしてきた小児科医には、驚きと発見の連続です。2-3ヶ月で赤ちゃんがこんなに成長するのかと感心してしまいます。

 2ヶ月の赤ちゃんは、かなり体の動きが増えています。泣く回数が減り、激しい泣き方が治まってきています。授乳後に泣かずに起きている時間、、静かに眠る時間が長くなっています。首を回すこと、肩や腕を動かすことが活発になっています。しかし未だ、うつ伏せで首を挙げることはできません。ママの顔を見て笑いかけますが、声を出して笑うことはありません。

 3ヶ月の赤ちゃんは、だれかれの見極めなく、私の顔を見ても、笑ってくれます。笑い声も出始めます。うつぶせにすると、まだ鼻の頭がマットから離れませんが、懸命に首を挙げようとします。寝返り準備らしく、体をねじり横を向くことはしますが、腕が抜けません。

 授乳の回数が減ってきて、3ヶ月過ぎには、口の動きや表情でオッパイを催促するようになってきます。哺乳時間は短くなって、5-6分しっかり飲んで、遊び飲みをして、そのまましばらく起きていたり、眠ったりしています。

  3カ月頃には、赤ちゃんは空腹、満腹を自覚するようになります。おっぱいが欲しい時の赤ちゃんからママへのサインも、ママに聞くことにしています。赤ちゃんの頬をママの胸元にすり寄せてくるとか、唇をちゅっちゅ吸って見せるとか、赤ちゃんによっていろいろですが、ママにはそのサインがちゃんと通じるようです。赤ちゃんをいつも見ているママには、赤ちゃんの変化がよくわかるのでしょうし、赤ちゃんもちゃんと意思表示をするのですね。それまで意味もなく泣いていた赤ちゃんが、わずか2カ月くらいで、自分でママに意志を伝えるようになるってすごいことだと思いませんか。人間として絶対必要な社会性の芽生えは、こんなに早く始まるのですね。

 1ヶ月健診前の赤ちゃんは、それほど目だった成長が無いようですが、大脳の発達は急速に進んでいます。
例として、視聴覚の発達を考えてみましょう。

 生まれてすぐの赤ちゃんの眼球はほぼ完成しています。光や色や物の形はちゃんと網膜に投影されています。レンズの焦点はまだ調節ができず、ほぼ40cm弱、ママに抱かれた時ママと赤ちゃんの眼のきょりとほぼ同じです。 だから生まれてすぐの赤ちゃんは、ママに抱かれると、ママの眼をじっと見つめます。光は感じますから、明るい光源をジッと見る事もできます。
 しかし、眼球と大脳の視覚中枢の神経細胞との間はまだ繋がっていませんし、視覚神経の神経線維の髄鞘化(配電工事で言えば、被覆電線で電気の通る道を繋ぐこと)もできていません。左右の眼球は共同して動くことは無く、ばらばらに勝手なほうを見ていますから、寄り目になったり、どこを見ているのか分からないぼんやりした目の表情を見せたりしています。

 1ヶ月過ぎると、左右の眼が共同してひとつのものを見、形や色を脳の視覚中枢で感じるようになり、遠近のものを区別できるようになります。具体的にいうと、1ヵ月過ぎると寄り目はなくなります。授乳中にジッとママの顔を見つめるようになります。
 
 2ヶ月過ぎると、眼球のレンズ焦点距離の幅が広がり、見える範囲が遠近左右とも広がってきます。2ヶ月頃の赤ちゃんは、目の前にいる人の顔を認識するようになり、人の顔を見るとなぜかむやみに笑いかけるようになります。何故、人の顔を見ると泣かずに笑うのか、理由は分かりません。いろいろ調べてみましたが、答えは見つかりませんでした。しかし、4ヶ月になると見慣れた顔と見慣れない顔の区別ができるようになり、見慣れない人の顔を見ると、笑わずに表情がこわばる様になります。人見知りの始まりと考えられます。

 耳も胎内で音を感知できるのですが、胎内でママの腹壁を越えて赤ちゃんに届く音は、出生後胎外で赤ちゃんの耳に届く音のように多彩ではありません。音やリズムを感じることも、出生直後から始まると考えていいでしょう。胎内でママの心音を聴いているから心臓のリズムを聴かせると赤ちゃんが静まるとか、胎内の赤ちゃんは、おママのおなかの外で聴かせた音楽を出生後も覚えているようだとかいわれていますが、どちらも疑問です。記憶力が未発達で、胎児・新生児の記憶は数分単位で消えるともいわれていますしね。

 しかし出生後は急速に大脳の神経細胞が活性化されますから、授乳の度にママの顔や目を見て、ママの声を聞いて、ママの匂いや抱かれる感じを繰り返し経験しながら赤ちゃんは成長し続け、生後2ヶ月になるとママの顔を見て笑うようになります。出生後数週間の無意識なエンジェルスマイルとは違います。エンジェルスマイルは赤ちゃんは何も考えずに自然にママの心に灯を点すのですが、2ヶ月児の笑いは母と子が分かち合う笑いといってよいでしょう。
 

 1ケ月健診までのママは、特に初めての赤ちゃんの場合、心配しなくていい事まで心配の種になり、頻繁な授乳、赤ちゃんのケア、それに伴う心身のストレスで、気持の休まる時の無い1ケ月でしょう。その負担を少しでも少なくしていただこうと考えて、前回までのブログに最初の1ヶ月間の事を述べてきました。

 今回からは、1ヶ月健診以後初誕生までの赤ちゃんの成長を追ってみたいと思います。

 ヤナセクリニックには、赤ちゃんが2-3ヶ月になられた頃のママと赤ちゃんに集まっていただく「いちごママ・クラス」という企画があります。その時、私も最初の数十分間、赤ちゃんの成長についてお話しをします。
 
 「いちごママ」の雰囲気は、1か月健診の時のママの表情から緊張感が無くなって、和やかな楽しい集まりです。ママも自信ありげ、赤ちゃんも笑ったり、眠ったり、オッパイを飲んだり、直接育児をしているわけではない私にも、ひたすら可愛いく見えます。
 1ヶ月健診の時、ママに「最初の1ヶ月はたいへんだけど、2か月に入ると、だんだん育児が楽になって、楽しいことが出てくるよ」とお話しするのですが、「いちごママ」の時間は、私のお話しが当たりーだと思えます。ママの実感はどうなのでしょうか。

これから、このブログで、月齢を追って赤ちゃんの成長を述べたいと思います。

 まず、赤ちゃんの体のサイズの変化から。

 出生時に身長50cm、体重3kgの標準サイズの赤ちゃんは、満1ヶ月で身長53cm、体重4kg、満2か月で身長57cm、体重5kgくらいに増えます。しかし、授乳のルールやら、人工栄養の補足やら、生活環境やら、赤ちゃんの固有の成長プログラム以外の条件の差で成長は変わりますし、赤ちゃんひとりひとりの個性、個体差がありますから、身長・体重の数字にこだわる必要はありません。また、標準とされている数字を”決して”努力目標にしないでくださいね。うちの子はこれでいいんだと考えてください。

 頭囲は出生時の34cmから、毎月ほぼ2cmくらいづつ増えます。脳の発達並行して頭囲は大きくなり、イギリス風に表現すると、10歳でパパの帽子が被れるようになります。

 大脳の重量は、出生時平均400g、6か月で2倍の800g、3歳で3倍の1000g以上と、子どもの体のどの部分より速く成長します。

 大脳の神経細胞数は出生時ほぼ140億個になっていて、この神経細胞数は生涯を通じて減ることはあっても増えることはないと言われています。海馬という部分の神経細胞数は出生後も増えるということですが例外的です。

 出生後の脳重量の増加は、神経細胞がコードで互いにつながり合って働くように配線工事が進むため、神経同士をつなぐ神経線維の重量が増えるのです。生まれてすぐ意味もなく泣いていた赤ちゃんが、2か月になればママに笑いかけるようになり、4か月になれば泣き声の違いで、してほしいことを表現できるようになり、夜は眠り昼は起きている時間が多くなるなどの成長ののもとは、脳の神経細胞の配線工事の進行に並行しているのです。







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