澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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2016年10月

 赤ちゃんの成長を評価する調査方法は2種類あります。
 前回のブログで取り上げた、母子健康手帳の乳幼児発育曲線のように、赤ちゃんの月齢1か月ごとに男女500大変な人づつ、12カ月で12,000人の赤ちゃんを全国から無作為に選び出し、各月齢別、男女別に身体計測値を統計処理し、平均値、標準偏差値を求めてグラフ化する調査方法は、横断的調査といいます。短期間に一気に数字が得られ、結果が出ますから、ほとんどの統計調査は横断的調査です。
 それに対して、ひとりの赤ちゃんの成長を時間を追って観察する方法は、縦断的調査といわれます。縦断的調査は、長い時間が必要で、情報を得るには、赤ちゃんの場合、いつも赤ちゃんの傍で赤ちゃんの成長を見ているママに情報提供をお願いせねばなりません。縦断的調査ができれば、赤ちゃんの横断的調査と違い、個人差、環境の影響を含めて、赤ちゃんの実態に即した成果が得られるのですが、実施が困難です。

 これから、このブログでは、3か月以後の赤ちゃんの成長について、縦断的調査に協力をお願いした一組の母と子の、ママによる赤ちゃんの成長観察記録を基に、満1歳のお誕生日までの成長を追っていきます。
無味乾燥な横断的調査の数字、グラフと違った、血の通ったレポートをお読みください。

 協力していただいた赤ちゃんはアカネちゃん、平成27年8月生まれ、母乳育ち。ママは20歳代後半、アカネちゃんは初産です。アカネちゃんは、在胎38週6日で生まれ、出生時身長47.5cm、体重3118gでした。
 観察と記録はママにとって大きな負担だったことと思います。アカネちゃんレポートを始めるにあたって、心から、ありがとうと申し上げます。

 早速、始めることにします。」

 3か月半ば:面白いことがあると、「ウゲー」と声を出して笑う。
 おもちゃを、ママが握らせなくても、
 自分で手を伸ばしてつかむようになった。
 足のキックが強くなった。
 22時に寝て、3-5時まで眠る。

 4カ月:床の座布団の高低差を利用して、偶然に、寝返りができた。もう少しで、平らな床でも寝返りができそう。
 ご飯粒をつぶして口に入れてみたら、舌で押し出してきた。
 仰向けに寝た状態で、両足を挙げて、かなり激しく、ドーンと下す。寝返りを試みて、できないとくやしそうな顔をする。泣き顔、得意げな顔、表情が豊かになった。

 4カ月半ば:「ブーブー」と言う。キャーと奇声。
 ご飯粒をつぶして口に入れたら、いつの間にか口から無くなって、ヨダレがたくさん。
 眠い時は目をこする。あくびをする。高めの声で「ンー」とぐずる。体や頭が熱くなる。
 うれしい時は、ニコニコ顔で声を出している。抱っこしていないときは、体を支えていると、ピョンピョンして飛び跳ねる。
 おむつがぬれた時は、低い声で「ンー」と言って、足を挙げる。泣く。
 お腹がすくと、「ンーン」と言いながら、体をのけぞらせる。オッパイを飲むときの口付きをし、舌を出して「クチュクチュ」する。しっかり飲む時間は5-10分、遊び飲みはする時としない時とある。寝る前は、寝付くまで遊び飲みしている。5-10分くらい。
 授乳回数は1日8回くらい。入浴直後にオッパイ、1時間後くらいにもう一度続けて欲しがる。
 睡眠時間は、5-6時間続けて眠る。
 4カ月健診は近所の小児科で受けた。軽い股関節脱臼があると言われたが、整形外科を受診し、レントゲン写真を撮り、異常なしと言われた。

 4カ月後半:朝から晩まで「ブルル、ブルル」と唇を使って声を出している。おもちゃをしっかり持って振り回し、おもちゃがすっぽ抜けて飛んでしまうほど。
 寝返り練習をパッタリ止めてしまった。仰向けで頭をグーッと上げてくる。腹筋運動のように。
 声は、アー、ウー、ウンガー、キャーなど。

 5カ月になる前日に寝返りができた。

 アカネちゃんの動作などの意味については、次回のブログで。image
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 赤ちゃんの成長を理解するには、母子健康手帳の巻末の方にある、乳幼児身体発育曲線のグラフが役に立ちます。母子健康手帳ならどの赤ちゃんにも交付されて、ママの手元にあって、いつでも見ることができるでしょう。

 このグラフは、厚生労働省が10年ごとに実施する「乳幼児発育調査」の結果をグラフ化したものです。現在交付されている母子健康手帳には平成22年度に実施された「乳幼児発育調査」の数字が使われています。
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第1図
 
 この表(第1図)は、女の子の0~12カ月のグラフです。ピンクに色付けされた帯状のグラフがありますね。赤ちゃんの体重・身長をこのグラフの中に点で書き込むと、その赤ちゃんの体重や身長が、100人の赤ちゃんの何番目くらいにあたるかが、おおよそわかります。帯の中には、大きい方から4番目から94番目までが入ります。帯から外れていても気にすることはありません。

 体重に関してこのグラフでわかることは、出生後3か月間に3kg程度体重が増え、次の4か月間に2kg、次の5カ月間に1kg増加することです。最初の3か月間は空腹・満腹を感じることができず、くたびれるまでおっぱいを飲んで体重を増やす期間、次の4カ月は赤ちゃんが自分で飲む量を加減する、残りのお誕生日までの5カ月間は離乳食とおっぱい併用期間で体重増加が緩やかになる期間で3kgで生まれた赤ちゃんはお誕生日ころ9kgになると考えればいいでしょう。

 このグラフには、下の方に首すわり・寝返り・一人すわり・はいはい・つかまり立ちができるようになる時期が横棒で書かれています。横棒の左端が約半数の子ができるようになる時期、右端が9割の子ができるようになる時期の目安を表しています。(第2図)
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第2図
 
 第1図に戻って、身長の増加は、体重に合わせて表現すると、最初の3か月間に10cm、次の4カ月に7cm強、お誕生までの5か月間に8cm増加して、出生時身長50cmの赤ちゃんが誕生日に75cmになります。
どの数字も増加の勾配も,個人差がありますから、帯の勾配に赤ちゃんの成長が合うように育てようとは考えないでください。帯の真ん中を努力目標にしないでくださいね。運動機能の発達も同様に、遅い早いに一喜一憂する必要はありません。赤ちゃんは、ひとりひとり、成長・発達のパターンは違いますから。

 もう一つ大切なのは、頭囲の増加です。頭囲は、脳の発達に合わせて増加するものですから、知恵付きの様子を間接的に知ることができます。
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第3図
 
 第3図には1歳までの乳児期の頭囲の増加曲線が上の帯に、1歳から6歳までの幼児期の頭囲の増加は下の帯グラフに表示されています。
 
 乳児期前半に急速に頭囲が増加しているのがわかります。目には見えなくても、赤ちゃんの脳では、神経細胞(ニューロン)と神経細胞が神経細胞をつなぐ線(シナップス)で縦横に連絡網を作っている状態が頭囲の増加でわかります。3歳以後頭囲の増加曲線の勾配が緩やかになって6歳になるとほぼ大人のサイズに近くなります。6歳以後も頭囲はゆっくり増加しますが、10歳になれば大人の帽子がかぶれるようになります。パパ・ママとお子さんが帽子を共有できるというわけです。

 今回載せたグラフの外にも、太り具合を示すグラフや頭囲の成長が止まった後も伸び続ける身長、それに伴う体重の増加曲線が母子手帳には載っていますからご利用ください。
数字の羅列より、グラフの方がわかりやすいと思い、グラフから読み取れる情報を解説してみました。

 2か月に入った赤ちゃんは、ウンチの回数が激減します。空気まじりの母乳を飲んでいた赤ちゃんは、おなかに充満した空気をオナラとして追い出す必要があり、そのために「胃直腸反射」という原始反射が赤ちゃんには備わっていて、おっぱいを飲むと反射的にウンチとオナラをします。
 
 しかし1カ月過ぎると胃腸の働きや消化酵素の分泌が多くなり、ウンチの回数が減って、その代わり、1か月時代の頻繁なウンチの回数を1回にまとめて大量に排泄することができるようになります。赤ちゃんによってウンチの回数はまちまちですが、2か月の終わりころには、1日1回どころか、3日に1回とか5日に1回の排便回数になることが少なくありません。ただし、母乳を飲む赤ちゃんのウンチは、コロコロの出にくいウンチになることはありません。よく消化された白い粒粒の混じらないウンチになっているでしょう。

 私が小児科医になったころの育児書には、母乳不足のサインとしてウンチの回数が減ると書かれていました。ひいおばあちゃんの中には、ウンチの回数が減ること即母乳が足らない、だからミルクを足さないといけないと考える方があるかもしれません。そうではありません。

 生後数週から出てきている乳児湿疹(新生児にきび)は2か月の半ばには消えます。アトピー性皮膚炎の傾向があるご家族の場合は、乳児湿疹に入れ替わって、アトピー性皮膚炎ができてくるかもしれません。

 母乳黄疸は2か月頃には消えるでしょう。黄疸の消え方は、まず白目の黄色みがとれて、手のひら、足の裏から、体の端っこから中心にかけて黄疸は消えていきます。

 目に見えない変化も大きいと思います。モロー反射は残っていますが、体の動きが増え、首を回せるようになります。泣き方にも変化が見られ、激しい泣きが減り、授乳後も起きている時間が増え、静かに眠る時間も長くなってきます。しかし、2か月では、うつぶせで首を挙げることは難しいようです。人の顔を見て笑いかけるのも2か月頃、でもまだ声をあげて笑うことはありません。
 
 前回にも書きましたが、3か月になると、赤ちゃんは空腹感、満腹感を自分の脳で感じるようになります。おなかがすくと、口の動きやママの胸に顔をすり寄せてくる動作でなどで、おっぱい飲みたいサインをママに送るようになります。授乳回数は1-2か月より減り、飲む時間も短く、遊び飲みして、いつか眠ってしまっているように変わります。

 ママのおっぱいの張りもほとんど感じなくなる方が多いようです。おっぱい足りているのかなと、ふと、ママが不安を感じられる時期かもしれませんが、心配いりません。その証拠に、体重の増え方はそれ以前より少し少なくなりますが、確実に増えているはず。

 脂肪が多い肉類やスイーツは食べてもいいのかなとメールしていただいたママもありました。気にせず、好きなものを食べて、楽しい育児をしてください。

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