澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

小児科医・澤田啓司(三重県津市乙部ヤナセクリニック)のブログ

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2017年09月

 血液中のビタミンDが少ないと、くる病になります。
 
 2013年頃、NHKTVの放送で、人工ミルクに比較して、母乳中のビタミンDが少ないという話題が取り上げられました。
 育児用粉ミルクには、たっぷりビタミンDが混ぜられていますので、この放送を見たお母さんたちの中には母乳をやめて人工栄養に切り替えなきゃと考えた方がたくさんあったようです。

 最近また、先日開催された「外来小児科学会」という医師の集まりで、母乳栄養児の血液中のビタミンDが、人工栄養児の血液よりずっと少ないという研究発表があり、それが日経メディカルという日経新聞の医学関係のネット記事で取り上げられ、最近また、ママの間で、わが子がくる病になっては大変という心配が広がり、今回もまた、一日一回は人工栄養を与えるようにされた方があるようです。

 結論からいえば、母乳栄養児では確かに人工栄養児に比べて血液中のビタミンDは少ないが、くる病になっている子は調査対象の赤ちゃんには見当たらなかったということでした。でも母乳栄養児にはビタミンD欠乏児が多いというタイトルが付いてしまうと心配になりますよね。
 NHKの場合も、今度の場合も、番組製作者や研究発表者は、事実を述べただけで責任はないのかもしれませんが、この発表が拡散した時のママたちへの配慮には欠けていたと言わざるを得ません。

 ビタミンDはご存じのように太陽光の紫外線を皮膚にあてれば、体内で合成されます。太陽光が弱く、日照時間が少ない極地に近いところの人種は色が白く、美人に見えますが、あれは紫外線を目いっぱい体に取り込みたいからです。赤道に近くなると、メラニンの多い肌の色が黒い人種が増えてきます。日本はその中間。やや薄褐色の肌です。肌の黒い人がイギリス以北に行くとくる病になります。逆に、肌が白い人たちは、赤道の近くでは強い赤外線、紫外線の為に肌を傷め皮膚がんの原因にもなります。日本人は、日本人の肌の色で、ちょうどよい太陽光を受け取ることができます。普通に手足を日光にさらしていれば、ビタミンD不足は起こりません。何かの理由で戸外に出ず、食物制限をしたりすればビタミンD欠乏を起こします。

 日本に住んで、自然の中で、自然に生活していれば、何も問題は起こりません。このことを、特に強調しておきたいと思います。

 地球上の生物はすべて、人類も含めて、太陽が何億年もかけて、地球に与えてくれたものによって、生命を維持していますし、現在も、これからも、太陽を離れては生存できません。
 
 私たちが現在使っている化石燃料は太陽エネルギーが姿を変えたもの。
 
 自然エネルギーは太陽系の一員としての地球が太陽の運行によって与えられたエネルギーです。
 
 唯一、太陽エネルギーによらないエネルギーは、核(原子力)エネルギーですが、人類はまだ核エネルギーを安全なものに手なずけることが出来ていません。

 太陽の力を再認識すべきですね。ビタミンDもその一つです。肝油も、もとはと言えば、太陽光の恩恵を受けて生存している動物の肝臓から抽出しているんです。

 私たちは、人類の手で獲得してきた文明の恩恵を受けて現在生活しています。しかし、文明の利器は両刃の剣で、本来人類が持っている力を弱めています。自動車、エアコンによってどれほど本来の生命力を弱めているか考えてみてください。

 太陽の下で、文明の利器を離れて、本来人類が持っている力を、できる限り鍛え、取り戻すべきです。文明を離れても生命を維持しうる体力を取り戻して初めて、文明を上手に活用できるのではないでしょうか。

 これからママになる女性も、ぜひ、日本人には無理な白い肌に憧れたりせず、日焼け止めを使ったりせず、体の中にビタミンDをたくさん作ってください。胎内の赤ちゃんにもママの血液中の豊富なビタミンDが胎盤をとおして与えられます。母乳中にもビタミンDが出てきます。
 生まれてきた赤ちゃんの為にも、日光が柔らかな朝夕の一刻を、手足を出して日光に当たりながら散歩する習慣をつけてください。

 母乳にはビタミンDが不足しているなどという、舌足らずな、センセーショナルなニュースに惑わされないで、日光を浴びながら、母乳を赤ちゃんに飲ませ続けてあげてくださいね。

 それでも足りないと心配なら、肝油製剤もありますし、ビタミンDが豊富な食物もたくさんありますから。

 難しい学問的な説明は省略しますが、私は充分その知識を持っていますから、いつでもご質問、ご相談ください。

 神経管閉鎖障害の予防だけでなく、葉酸は生涯を通じて必要なビタミンB群の一員です。

 19世紀半から20世紀前半にかけて、ビタミンA,ビタミンD、ビタミンC、ビタミンB群などのビタミンが次々に発見され、その働きが明らかにされました。
 
 葉酸は、1930年頃、イギリスのルーシー・ウイルス(Lucy Wills)という女性医師によって発見されました。彼女がしばしば訪れていたインド、ボンベイの紡績工場で、女工が妊娠すると悪性貧血を起こすことを知り、酵母エキスから作られた栄養補助食品「マーマイト」が治療効果をもつことを発見しました。この時は、アカゲザルを実験動物に使って研究をすすめたので、ビタミンM(monkeyのM)と名付けられたようです。ビタミンMという名は、今は使われていません。ビタミンB 群の一員なのですが、葉酸と呼ばれています。
 
 葉酸という名はまだそのころには無く、1940年頃のアメリカで、ホウレン草から抽出された結晶が貧血治療に効果があることが発見され、葉酸(folic acid)と名付けられました。ホウレン草の缶詰を食べるとパワーが出るポパイの漫画は1928年から始まったそうですが、ポパイに熱狂した少年が成人して研究者となり、ホウレン草の缶詰を筋肉増強剤の研究対象にしたというストーリーもありそうですね(笑。 私の勝手な想像ですが。
 

 その後の研究で、葉酸は、核酸が体内でつくられる過程で働く酵素の働きを助ける、「補酵素」であることがわかりました。人体は、複雑な有機化学物質の集合体ですから、例えば自動車工場で、幾つもの部品が作られ、その部品を組み合わせて複雑な部品が作られ、という順に何段階もの過程を経て、自動車がつくられるように、人体という化学工場でも何段階もの物質がつくられ、その各段階で働く酵素、その酵素の働きを助ける補酵素があります。葉酸のように一番末端の補酵素であっても、それがなければ完璧な製品は完成しないのです。葉酸の大切さを理解していただけたでしょうか。
 
 「核酸」は、遺伝情報を保存・伝達し、人体を作り上げるために、人体を構成する細胞に必ず含まれる大切な物質です。「遺伝子」といえばわかりやすいですね。
 
 胎児の体を作り育てるためにも、貧血になりがちな母体の貧血を予防するためにも、葉酸を摂取することが必要です。妊娠早期の胎児の神経管を作るためには葉酸は妊娠前から摂取する必要がありますが、妊娠の診断がつき、母子健康手帳が配布されてからも、葉酸が不足しないよう、葉酸を多く含む食品を食べ、足りない分をサプリの形で口に入れることを忘れないでくださいね。妊娠中、授乳中だけでなく、女性だけでなく、老若の別なく、すべての人に葉酸は大切なビタミンです。

 葉酸は、牛レバー(妊娠中は、トキソプラズマや細菌感染を起こさないよう、気をつけて扱って、よく加熱して食べなければなりませんが)、ホウレン草、グリーンアスパラガス、キャベツ・芽キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、大豆・大豆製品、えび、ビール酵母、ジャガイモ、アボカド、ライ麦粉などに含まれています。加熱では壊れにくいとされています。以上のような食品をなるべく食べてください。妊娠中は胎児の分まで葉酸を食べなければなりませんから、普段よりたくさん、葉酸を含む食品を食べるよう気をつけてください。
 それに加えて、葉酸、それにプラスしてビタミンB2、6、12,などを配合した市販のサプリで、400μgほど追加した方がよいといわれています。食品とサプリ合わせて1000μgを超えなければ、過剰摂取による副作用はないとされています。1000μg口にするのはかなり大変ですから、とりすぎの心配はまずないと思います。

 神経管とは何かの説明から始めましょう。
 
 私たちの脳脊髄などの中枢神経組織は、脳は頭蓋骨、脊髄は脊椎という骨の壁で密閉されています。骨の下には硬膜、クモ膜、軟膜という3層の脳脊髄膜がすっぽりと脳脊髄を包んでいます。脳や脊髄と脳脊髄膜との間にはクッションとして髄腋が充満し、脳脊髄は髄液の中に浮かんでいます。硬膜下出血、くも膜下出血、脊髄液減少症とかの病名を聞かれたことがおありと思います。脳脊髄が入った腔間には、血液とリンパ液以外は入れません。
  
 この大切な脳神経系の基になるのが神経管です。
 神経管は、受精後3-4週の間に、板状の胚葉が丸まって筒状になったものです。この期間にちゃんと筒が仕上がるのを助けるのが葉酸です。受精後3-4週といえば、まだ妊娠の自覚は無い時期です。こんなに早く大切な脳脊髄の原型が出来るってことをご存知でしたか。

 神経管が完全な筒状にならず、腰椎あたりに隙間が残ると、出生後、二分脊椎という診断名がつけられます。

 隙間が狭ければ丁寧に触診しなとそれとは分かりませんが、水頭症を起こしてくることがあります。潜在性二分脊椎という診断がつけられます。

 隙間が広ければ、袋状に髄膜が飛び出しますので、手術をして脊椎を閉じることが必要です。

 このような神経管閉鎖障害の発生頻度は、出産1万例に付き6-7例です。頻度が少ないようですが、もし閉鎖不全状態なら重い後遺症をのこします。妊娠成立前1ヵ月以上前から葉酸を充分量、食品とサプリメントで摂取していれば、頻度がぐんと減ります。

米国予防医学専門委員会(USPSTF=US Prevenntive ServicesTask Force) は、今年1月に、出産が可能な、または妊娠をを考えているすべての女性に、葉酸サプリメントの摂取を推奨すると発表しました。「米国女性の大半は,最善の効果を示すのに必要とされる量の食品を摂取していないので、400-800μgの葉酸サプリメントを内服すべきで、サプリの効果が最もよく現れる時期は、受胎の少なくとも1ヶ月前に始まり、妊娠お最初の2-3か月を通じて続く。」というものです。
 以上は神経管閉鎖障害の予防に関してのお話です。

 では、妊娠に気付いてから葉酸サプリを飲んでも意味が無いのかといえばそんなことはありません。母子健康手帳を交付されてからでも、葉酸サプリを飲み続けることには大いにメリットがあるのですが、そのあたりについては、次回に続けたいと思います。(続く)

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