ドレミの歌の、「ラ」はラッパのラ。音楽的にはA4の音。
コーラスや楽器を趣味にされている方には、音合わせに使われる音。
世界中の民族音楽やすべてのジャンルの楽曲で、使われる頻度が高い音なんだそうです。歌ってみるとストレス無しに出しやすい高さの音です。私も「ラ」の音は耳ざわりとは感じません。人類が好きな音なのでしょう。

赤ちゃんの世界では、産声が「ラ」近辺の音(振動数400-500ヘルツ)で、日本人だけでなく、人種にかかわりなく共通なのだそうです。大先輩、日大名誉教授馬場一雄先生の著書「続・子育ての医学」 東京医学社2000年初版に根拠をもって書かれていますから、単なる俗説ではありません。読んだ当時は、なぜ「ラ」なんだろうと不思議に思いましたが、赤ちゃんの咽喉の構造を知って納得できました。それにしても、「ラ」の音で人生がスタートして、何歳になっても「ラ」の音が身の回りにあります。「ラ」の音の世界は広いですね。

生まれたての赤ちゃんの咽喉は、鼻呼吸をし続けながら母乳を飲みこむための特製で、いろいろな声を出すようには作られていません。赤ちゃんの泣き声は、産声に始まってすくなくとも一ヶ月間くらいは、「ラ」付近の1種類だけです。

赤ちゃんは鼻から空気を吸い込み続けながら、呼吸を止めることなくオッパイをゴクゴク飲むことができます。成人すると誰もこんなことはできません。おとなが空気を肺に送り込む時は、食べ物を飲み込むことはできません。食べものを飲み込む時は、喉頭蓋で気道をふさいで、呼吸器に食べ物を吸い込まないようにします。考え事をしながらでも食べ物が気道に入ることはありません。たまにむせることはありますが。

赤ちゃんの喉頭蓋は大人より高い位置、第3頸椎あたりにあり、口蓋垂(のどちんこ)が覆いかぶさっているので、喉頭蓋を開閉しなくても、空気も乳も自由に気道、食道に入っていきます。乳が鼻の奥に入ってグズグズ音がしたり、気道に乳がかなり奥まで入ると言われていますが、母乳であれば、原料ははママの血液なので、異物としてアレルギーや嚥下性肺炎の原因になることはありません。ミルクは百%異物ですから気道に入っては困りますが。むしろ、母乳の力で、ウイルスやほこりの侵入を防いでくれます。鼻の奥のグズグズは、鼻詰まりではありません。鼻呼吸しながらオッパイを飲み続けることができれば、鼻は詰まってません。鼻吸いや綿棒はいりません。

鼻から入った空気も、気道だけではなく胃にも入りますから、ゲップを出さないと母乳が口からあふれてくることがありますし、おなかも空気で張っています。ウンウンうなったり、大きな声を出したり、しゃっくりしたり、真っ赤な顔をしていきんだり、ウンチと一緒に頻繁にオナラをしたり。でも私は、空気を飲み込むことも、体外ではじめて使う消化器を早く慣れさせるためのトレーニングに役立っているのではないかと考えています。赤ちゃんは無駄なことはしないように作られているのですから。

赤ちゃんの咽喉は母乳を飲むための構造なので、高さが短い特製です。そのために、赤ちゃんの外見は、あごから下はすぐに胸で、のどがないように見えます。しかし首はだんだんできてきます。成人の喉頭蓋は第5-7頸椎あたりに下がり、咽喉の高さが伸びます。母乳を飲むための咽喉の構造が、言葉を話すことができる構造に変化するのです。

赤ちゃんの咽喉も4か月頃にはかなり伸びて、いろんな音声が出るようになります。眠い泣き声、おなかがすいた泣き声、じれている泣き声が違ってきます。この時期には、舌の押し出し反射が弱くなり、舌の動きが、口に入った乳以外の半固形食を咽喉のほうに送り込むようになりますから、口に入れた離乳食を舌でベーッと押し出してくることがなくなってきます。離乳を始める準備ができたと考えていいでしょう。6か月になったら、離乳を始めましょう。

赤ちゃんの口は、母乳を飲むために、もっといろいろ特別仕様になっています。上下の歯茎の間の、正中(真正面の真ん中)に乳首を噛みつぶさないように隙間があります。口をあけたときに見てみると、上の歯茎の内側に、もうひと並び土手があります。口の中をせまくして、乳輪・乳頭を舌と上あごの間でしっかり固定するためです。両頬のふっくらした脂肪層も口の中をせまくする役に立ちます。舌も、大きく頑丈で強い力をもっています。毎分60-80回、15分以上続けて、ママの乳首を上あごのくぼみに、リズミカルに押しつけることができます。この刺激が、ママの乳腺細胞で母乳を分泌するきっかけをつくるんです。この舌使いもおとなには真似ができない赤ちゃんの特技です。ご自分で試してごらんなさい。30秒でギブアップしますから。

泣き声の仕様はいい加減だけど、母乳を飲むための仕組みは、これでもか、これでもかというほど念入りにできています。赤ちゃんは、こんなにも精巧な母乳を飲むための道具や原始反射をもって生まれてくるんですよ。
いろいろな理由で母乳をあきらめるママは、これまでも、これからも無くならないでしょうけれど、とりあえず、母乳を飲ませてみませんか。赤ちゃんがこんなに準備して生まれてきているんですから。

哺乳瓶、人工乳首でミルクを飲むのは、この道具立てでは簡単なものです。乳首の穴は大きくてちょっとした陰圧でミルクが出てくるし、疲れないからつい飲みすぎてしまう。いうなれば、スマホをメールと通話にしか使わないようなものです。モッタイナイ。