このタイトルは、7月13日のyahooニュースに載った記事のタイトルです。
 
 ニュージーランドとカナダの研究グループによる、乳幼児期の指しゃぶり、爪かみ習慣と、成長後のアトピーの頻度を調べた研究の紹介です。
 
 アトピー性皮膚炎の増加は石鹸の使用量に正比例すると言われていますが、その逆に、現在では不潔と顔をしかめられそうな、指しゃぶりや爪かみをする子には、アトピー性疾患が少ないという結論です。
 石鹸で皮膚の防御機構を洗い流すと、アトピーの原因になる抗原が皮膚から入りやすくなるというわけです。

 日本でも国立成育医療センターのグループが、新生児に保湿クリームを塗り続けることで皮膚の防御層を守り、アトピー性皮膚炎を防げるという論文を発表しています。保湿クリームそのものが効果があるのではなく、洗いすぎた皮膚を保湿クリームで覆えば、抗原の侵入を減らすことができるという保湿クリームの間接効果の証明です。だから、石鹸で皮膚を洗いすぎなければ、保湿クリームに頼らなくても、自前の皮膚防御物質が抗原の侵入を防いでくれます。

 もう一つは、腸内細菌叢や寄生虫がアレルギー抗体の攻撃目標になっているとアトピーが現れにくいのに、抗生物質の使い過ぎで腸内細菌叢を壊したり、寄生虫駆除を徹底させると、腸内細菌や寄生虫という標的を失ったアレルギー抗体が、かつてはアレルギーの原因にならなかった物質を標的とし、アレルギーを発症しやすくするという研究もあります。

 また、親子のキスは、現代では、歯周病菌を親から子へ移植することになるので避けるべきだと言われるようになりましたが、スウェーデンの調査では、子どもが落としたおしゃぶりを母親が舐めてから子どもに渡すと、腸内細菌叢の多様性が上がるという結果が出ているそうです。

 すっかり清潔志向になった現代社会ですが、清潔・不潔の功罪を改めて考えなければならないようです。

 ヒトの細胞数は60兆個(36兆個という数字もありますが)ですが、ヒトに寄生する細菌数は100兆個、2kgにもなるそうです。腸内だけでなく、鼻咽喉、耳、皮膚、口腔、生殖器にそれぞれ細菌が住み着いています。そして、ヒトに寄生する細菌は、ヒトの生命活動を助けていることがわかってきました。ヒトの生体プラス細菌叢が一つの生態系を作っていて、それをマイクロバイオームと名づけて研究が進められています。

 腸内細菌叢の細菌の種類は、ひとりひとり違っているし、消化しにくい根菜類を多く摂取する民族、乳製品や牧畜動物の肉を食べる民族とで、腸内細菌叢は異なります。腸内細菌は、ヒトの消化管内では消化しきれない食物をヒトが吸収できる形に変えて、細菌も生存し、寄生しているヒトも養ってくれているというわけです。欧米人では、海藻は消化されずに腸を通過するだけの食品とされていますが、日本人で、海岸に住む人たちは、海藻を消化する腸内細菌を持っていて海藻を栄養に変えているのだそうです。

 前回ブログ、遺伝子と文明シリーズで、助産師冨田江里子さんがモルディブで栄養失調になられた話を紹介しましたが、ひょっとすると、日本からモルディブに出張された冨田さんと、現地の人たちとの腸内細菌叢が違っていて、日本人には栄養に変えられない食物を現地の人の腸内細菌が栄養に変えてくれていた、その差が冨田さん栄養失調の背景にあるのかもしれないと考えます。私だけの仮説ですが、案外、正解かもしれません。

 清潔はいいことだと決めてかかって、せっせと石鹸で洗い、皮膚防御物質を除き過ぎることを反省すべきだとも考えますし、何でもかんでも感染症は抗生物質で治療して、せっかくの腸内細菌叢を混乱させることにも一考すべき必要があるように思います。清潔志向は文明社会の象徴ですが、そのために失われたヒトが本来持っている能力を損なっていることに気付かないと、人類の未来が危ぶまれます。