いつから始まった行事かわかりませんが、初誕生のお祝いとして、江戸時代から昭和初期まで日本中共通だったのは、餅を負わせたり、踏ませたりする行事です。
 
 農耕民族、稲作民族の日本人は、米や餅に特別な力があると思っていました。「重体の病人の耳元で、米粒を入れた竹筒を振って音を聴かせると持ち直す」というような言い伝えもありました。
 
 このように米に不思議な力があるという考えは、弥生人がまだ日本に渡来する前からあったのか、江戸時代の農民や奉公人は、年貢を米で納めて自分たちは雑穀を食べ、米や餅はめったに口に入らなかったから、特に米や米製品を大切に思ったのか、私にはそのあたりの知識がありません。

 しかし、初誕生に餅を搗くこと自体たいへんな贅沢だったに違いありません。そのお餅を赤ちゃんに背負わせるのですから、いかに赤ちゃんが一歳を迎えることが嬉しい大切な行事だったか、現代の私たちには想像もつきません。昭和に入っても、一歳までに亡くなる赤ちゃんの数は生まれてくる赤ちゃんの2割以上、時には5割以上だった時代なのですから。

 昭和初期に、民俗学者柳田国男氏が母子愛育会で、日本中のお産と育児に関する習慣、行事(産育習俗)が集められました。戦争をまたいでその記録は、ようやく、昭和50年に、恩賜財団母子愛育会編「日本産育習俗資料集成」として出版されました。私はその当時母子愛育会に勤めていましたから、一冊もとめて今も手元にあります。この中に、「初誕生」という項目があって、そこに日本中の初誕生祝いの習俗が記録されています。もちろん、お餅を背負うことや、それに似た行事が詳しく集められています。それをもとに、初誕生とお餅の関連を書こうと思います。