初誕生のお祝いには、もう一つほとんど全国共通の行事がありました。

 お餅踏みでも登場した「箕」の中に、筆、矢立(携帯用の毛筆と墨壺のセット)、そろばん、本、鎌、ものさし、はさみ、餅、百つなぎ銭など、七種の道具や物を入れ、子どもに品選びさせる風習です。子どもが手に取ったもので将来の職業を占うのです。たとえば書物や筆をとれば学者に、そろばんをとれば商人に、はさみや糸巻きを手にする女の子は裁縫上手な人になるというわけです。

 この行事は、もとは中国から渡来したもので、礼(儀礼の知識)、楽(楽器の演奏)、射(弓矢の技術)、御(馬術)、書(文字を書くこと)、数(計算の技術)、合わせて成人するために身につけなければならない「六芸」を象徴する道具から一つを選ばせる行事でした。
 歴史は昭和初期ではなく、ずっと古くから続いてきた風習です。

 この行事もまた、お餅の行事同様、時代を超えて、親が子に託してきた夢を教えてくれます。

 いまのように、無限に大きい可能性の中からその頂点に到達する道を選んで、人をおしのけて、目の色変えてがんばらなければなければならない時代から考えると、身分制度や貧富の格差に苦しめられたむかしの、分相応の道を歩んでくれればいいという親の望み、安らぎのための行事だったと思います。

 時代が変わって、お誕生餅の必要性はもはや無くなったといってよいのではないでしょうか。わざわざ一升餅を通販で購入するより、どんな初誕生祝いでもいい、両親の子に託する思いが子に届きさえすれば。

 さて、たった今、一升餅が一番華やかにインターネットに登場しているのはどのサイトでしょうか?
 答えは、お食い初めや、お宮参り、一升餅など、赤ちゃんの成長に合わせた行事に使う品々のセットを販売している、商魂たくましい通販業者のサイトです。手を変え品を変えて、魅力ありげな宣伝を繰り広げています。赤ちゃんそっちのけで。