神経管閉鎖障害の予防だけでなく、葉酸は生涯を通じて必要なビタミンB群の一員です。

 19世紀半から20世紀前半にかけて、ビタミンA,ビタミンD、ビタミンC、ビタミンB群などのビタミンが次々に発見され、その働きが明らかにされました。
 
 葉酸は、1930年頃、イギリスのルーシー・ウイルス(Lucy Wills)という女性医師によって発見されました。彼女がしばしば訪れていたインド、ボンベイの紡績工場で、女工が妊娠すると悪性貧血を起こすことを知り、酵母エキスから作られた栄養補助食品「マーマイト」が治療効果をもつことを発見しました。この時は、アカゲザルを実験動物に使って研究をすすめたので、ビタミンM(monkeyのM)と名付けられたようです。ビタミンMという名は、今は使われていません。ビタミンB 群の一員なのですが、葉酸と呼ばれています。
 
 葉酸という名はまだそのころには無く、1940年頃のアメリカで、ホウレン草から抽出された結晶が貧血治療に効果があることが発見され、葉酸(folic acid)と名付けられました。ホウレン草の缶詰を食べるとパワーが出るポパイの漫画は1928年から始まったそうですが、ポパイに熱狂した少年が成人して研究者となり、ホウレン草の缶詰を筋肉増強剤の研究対象にしたというストーリーもありそうですね(笑。 私の勝手な想像ですが。
 

 その後の研究で、葉酸は、核酸が体内でつくられる過程で働く酵素の働きを助ける、「補酵素」であることがわかりました。人体は、複雑な有機化学物質の集合体ですから、例えば自動車工場で、幾つもの部品が作られ、その部品を組み合わせて複雑な部品が作られ、という順に何段階もの過程を経て、自動車がつくられるように、人体という化学工場でも何段階もの物質がつくられ、その各段階で働く酵素、その酵素の働きを助ける補酵素があります。葉酸のように一番末端の補酵素であっても、それがなければ完璧な製品は完成しないのです。葉酸の大切さを理解していただけたでしょうか。
 
 「核酸」は、遺伝情報を保存・伝達し、人体を作り上げるために、人体を構成する細胞に必ず含まれる大切な物質です。「遺伝子」といえばわかりやすいですね。
 
 胎児の体を作り育てるためにも、貧血になりがちな母体の貧血を予防するためにも、葉酸を摂取することが必要です。妊娠早期の胎児の神経管を作るためには葉酸は妊娠前から摂取する必要がありますが、妊娠の診断がつき、母子健康手帳が配布されてからも、葉酸が不足しないよう、葉酸を多く含む食品を食べ、足りない分をサプリの形で口に入れることを忘れないでくださいね。妊娠中、授乳中だけでなく、女性だけでなく、老若の別なく、すべての人に葉酸は大切なビタミンです。

 葉酸は、牛レバー(妊娠中は、トキソプラズマや細菌感染を起こさないよう、気をつけて扱って、よく加熱して食べなければなりませんが)、ホウレン草、グリーンアスパラガス、キャベツ・芽キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、大豆・大豆製品、えび、ビール酵母、ジャガイモ、アボカド、ライ麦粉などに含まれています。加熱では壊れにくいとされています。以上のような食品をなるべく食べてください。妊娠中は胎児の分まで葉酸を食べなければなりませんから、普段よりたくさん、葉酸を含む食品を食べるよう気をつけてください。
 それに加えて、葉酸、それにプラスしてビタミンB2、6、12,などを配合した市販のサプリで、400μgほど追加した方がよいといわれています。食品とサプリ合わせて1000μgを超えなければ、過剰摂取による副作用はないとされています。1000μg口にするのはかなり大変ですから、とりすぎの心配はまずないと思います。