最初の赤ちゃんに母乳を飲ませる→うまくいかない→乳房マッサージを受ける→やっぱり授乳がうまくいかない→哺乳瓶で人工ミルクを与える→こちらもうまくいかない→哺乳瓶と乳首をいろいろ探して取り替えてみる。

 ずーっとつながりのある一連の成り行きに思えますが、「授乳の技術」と「乳房マッサージ」と「哺乳瓶による人工栄養」はまるきり違う別の問題で、一連のものと考えないでくださいね。

 一番大切なのは、ママの乳首と赤ちゃんの口をしっかり結びつけることです。これを助産師さんはラッチオンと表現しています。英語では”latch on”、latchはドアなどの掛け金のことです。掛け金を下ろすように、赤ちゃんの口とママの乳首を繋ぐことをラッチオンといいます。

 ラッチオンしたら、ママの乳首が赤ちゃんの上顎の深い位置に届いて、赤ちゃんの舌がママの乳首を包むように、転がすようにくわえて、クチュクチュ刺激できるようにしてあげる必要があります。これが「深吸い」の状態です。乳輪がほとんど見えなくなるほど深く乳首を赤ちゃんの口に入れるという表現と同じ意味です。

 これがうまくできないで、乳首を赤ちゃんが歯茎でくわえてしまうと、乳首をいためますし、おっぱいは乳腺から分泌されません。この状態を助産師さんは「浅吸い」といいます。    
    浅吸いと深吸いを、船の錨に例えて見ましょう。浅吸いは錨が海底に届いてない状態、深吸いはしっかり海底に錨が降りて船を動かないようにしている状態です。錨本来の働きは海底に届いていなければなりのません。海底に届いてない錨は役目を果たさず、船は流されてしまいます。

 浅吸いでは、赤ちゃんの舌はママの乳首におっぱいの分泌をうながす刺激を伝えることができませんから、何時間も乳首をくわえさせてもおっぱいはでてきません。赤ちゃんは、じれてのけぞったり泣いたりしてママを疲れさせます。

 うまく深吸いさせることができたら、乳首に伝わる刺激がママの脳に送られ、脳下垂体からプロラクチンやオキシトシンが分泌されて乳腺でオッパイが作られ乳首から赤ちゃんの口の中へ母乳が流しこまれます。赤ちゃんは吸わなくてもオッパイがほとばしり出てくるんです。射乳という表現そのままに。人工栄養の哺乳瓶での哺乳と、まったく違いますから、この順序を覚えておいてくださいね。哺乳瓶による哺乳を説明するときに必要ですから。

 母乳栄養の赤ちゃんは、授乳の間に乳管にたまったおっぱいを飲むのではなく、毎回新しいおっぱいが作られて赤ちゃんはそれを飲み込めばいいのです。乳首にクチュクチュ刺激が与えられて、赤ちゃんにオッパイが届けられるまでの時間は約40秒です。この時、赤ちゃんがむせることがあります。母乳を飲ませると赤ちゃんがむせると言われるママは少なくありませんが、大部分は乳首をくわえさせて40秒後の現象です。

 新生児の赤ちゃんは夜昼かまわず、短い時間間隔で眠ったり目覚めたりしていますから、眼が覚めたら頻繁に泣きますが、前回の授乳から5分後に泣き出しても、2時間後であってもかまわずに乳首を含ませてくださいね。乳首を与えられさえすれば赤ちゃんは泣き止みますから。生後1ー2ヶ月は飲ませ過ぎの心配は不必要です。

 授乳間隔があいて乳房の張れを感じたら、せっかくたまったおっぱいがもったい無いとは考えず、搾乳して捨ててください。乳房が張った状態は、乳腺に対しては、これ以上おっぱいは要らないよという、おっぱい分泌を抑えるサインになってしまいますから。なるべく乳房の張れを感じないようにしてください。

     さて、言葉で表現すれば以上のようになるのですが、始めて赤ちゃんに授乳されるママには、活字で読むだけでは、言葉通りに深吸いさせるのは難しいでしょう。コツと時間と経験が必要な個人プレーですから。

     そこで必要なのは、一対一でコツを教えてくれる経験豊富な助産師でしょう。

     私が勤務しているヤナセクリニック外来には、助産師チームによる「母乳外来」という組織があります。  乳房マッサージでおっぱいの流れる路作りもお手伝いしますが、乳房マッサージより大切な深吸いのコツ、赤ちゃんの抱き方、手首を痛めない授乳を、ママと赤ちゃんペアに熟練助産師が一対一で授乳の様子を観察しながら助言しています。

     乳房マッサージは、おっぱいが作られて乳頭から噴き出してくるまでの水路作りで、どんなに水の流れの良い水路があっても、そこを流れるおっぱいが作られなければ意味ないですよね。水路は乳房でいえば乳管ですが、そこを流れるおっぱいを作るノウハウをママに知っていただく役割が助産師チームのもう一つの重要な役割です。

   ヤナセクリニックの母乳外来は、自画自賛ではありますが、とても優れたシステムと思います。このようなチームが、日本中に、もっともっと増えればいいのですが。

   乳房マッサージと、ママが赤ちゃんにおっぱいを上手に飲ませる技術は、別のものであることを理解してくださいね。
     
   ヤナセクリニックでは、助産師チームの母乳外来の他に、保育士6人のチームがあり、色々な育児クラスを開いています。託児もお引き受けしています。   
   
   いちごママクラスは2-4ヶ月のベビーとママのクラスです。ひとり育児になりがちなママには、お友達作りの機会になりますので、月1回のクラスに数回来て下さるママが少なくありません。私が生後数ヶ月間の赤ちゃんの成長や発達についてお話をし、質問にお答えし、保育士が楽しい時間をママにすごしていただけるよう工夫を凝らしてお相手します。  
   
   だっこ&ねんねクラスは、ベビー整体と、赤ちゃんの落ち着くだっこの仕方、スリングの使い方、赤ちゃんの寝かしつけのコツなどをテーマにしたクラスです。  
   
   ベビーマッサージクラスも月1回のクラスです。  
   
   育児サークルは外部の講師をお招きしてお話を聞いたり、保育士が企画するクリスマス、七夕などの季節の行事を行うクラスです。  

   離乳食クラスもあり栄養士が担当します。お料理クラスもあります。  
   ママとベビーのための、ヨガ、ビクス、フィットのクラスもあります。  

   医療チームの手が届かない育児の方法などを、保育士チームがきめ細かくうめています。  

  医師、助産師、看護師、保育士、栄養士が、それぞれの分野で、ママとベビーのためのチームワークを行なっているヤナセクリニックのあり方を、その一員としての私は、ひそかに素晴らしいと声援を送っております。