2021年1月24日、国際ボンディング協会の第3回ボンディングカフェがオンラインで開催されました。熊本県人吉市の水害被災地で行った母子支援の報告を助産師のうらさきさだこさんが話してくれました。

2020年7月コロナ禍のなかで、熊本県で集中豪雨による大災害がおきました。人吉市は過疎地域で、助産院もなく、孤立した状態で母子は不安な毎日を送っていました。コロナ禍のため、県外からのボランティアを受け入れられません。熊本地震の時は、多くのボランティアの人が県内に入り、とても助かったそうですが、今回は、コロナ感染を防ぐためには、そういうわけにはいきません。地元の高齢の方、自衛隊の方が、後片付けに働いていました。うらさきさんは、すぐに母子支援にたちあがり、毎週人吉市に通い、母子支援ステーションをたちあげました。自分自身の熊本地震の被災の体験、その時のネットワークがすぐに動ける原動力になりました。
毎週2日間、洪水被害地の子ども達の健康な発達・成長のために、日常的な生活を取り戻すためのケアを行いました。支援内容は、母子の健康観察:育児の不安や悩みの相談に応じて母親の育児を支援します。母親がゆっくり過ごせるような環境を整えます。休息をとってもらうこともできます。その間、赤ちゃんを預かります。必要な時は、母乳ケア・沐浴・授乳指導、アロママッサージ、ベビーマッサージなどを実施します。場所は、地元のお寺が快く場所を提供してくれました。コロナ禍で三密をさける対策をして、自分達が感染をもちこまない、感染しないように最善の注意を払いながらのケアを行いました。
水害被害後、ママは家事・育児に頑張ってきて身体の不調がでているようでした。いつもは穏やかなのだろう上の子どもがケア中もなかなかママから離れません。パパは被災復興に拘束されて、家のことは手伝えないようです。たとえ自分の住居の被害はなかったとしても、家族や友人たちの被害者を支えるために急遽一緒に同居したり、手伝いをしていました。目を覆いたくなるような地域の景色の被災地で、非日常の暮らしをしていました。
熊本地震からの学びでは、赤ちゃんは恐怖の体験を語れません。赤ちゃんも神経が高ぶり、ママもゆっくり気が落ち着かずにいます。そんな時、たったの10分でもベビーマッサージで赤ちゃんと向き合い、スキンシップをすると、マッサージの後、赤ちゃんはよく眠るようになります。母子支援ステーションでのベビーマッサージクラスが始まりました。
うらさきさんは、熊本地震で、助産院兼自宅が大規模半壊しました。その時から、日常を失った自分が、何が何だかわからないままひたすら突っ走っていました。その時の思いが重なり、すぐに支援の手を差し伸べていかなければという思いになりました。自分は、日常の生活のありがたさや、ほんとうに人々に支えられていること、一人でないのだと思えるのに時間がかかりました。今はたくさんの人に援助を頂いたことをこころより感謝しています。その恩返しの意味もあって人吉にきています。
今後、ボランティアを続けていくためには、資金調達、ボランティアスッタフの確保など、問題は山積みです。長期間になれば、ボランティアの人たちの日常もあり、継続していくことは難しいかもしれません。しかし、困っている母子がいる限り、支援にいきたいと思います。

支援のためにすぐに動けたのは、日頃の人と人との繋がりだそうです。困ったこと、助けてほしいことがあれば、人に相談する。その人たちの繋がりで、助け船もでて、打開策がみつかり、困難な道も開けてくる。日頃の生活の中で、人との温かい繋がりが、災害時の非常事態の時に助けあえる。そんなことを教えていただきました。