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柱谷幸一監督の来季続投

 今月21日、柱谷幸一監督は新井賢太郎社長と会談し、来季の監督続投で合意した。「できれば3年、5年と長く」という希望を抱きつつも、来季の1年契約。今季のJ2昇格を逃した結果責任と、来季は「なんとしてもJ2に上げなくてはならない」という意気込みがひしひしと伝わってくる。
 監督続投に関する契約の詳細を確認すれば、実は「まだ仮契約もしていない」とのこと。確かにオフィシャルでは一切の発表がない。新井賢太郎社長との口約束に過ぎないようだが、笑顔で「もう1年、やりたいと思います」ときっぱりと語ってくれた。監督続投は間違いのない事実のようだ。
 来季は選手、コーチ陣も全員がプロ化。現有の選手たちも大幅に整理され、27人前後のチーム編成が組まれる模様だ。11月、12月、1月に来季のチームの骨格が出来上がる。

 フロントの動きが慌しい、その一方でリーグ戦は2試合を残している。今季のJ2昇格は逃してしまったが栃木サポーターの熱気には陰りを感じない。今節、緊急の事情によりスタジアムへの到着が遅れたが、慌てるように飛び乗ったタクシーの窓越しに、はっきりと栃木サポーターのコールが聞こえてきた。バックスタンド席、ピッチを挟んだ向こう側の強大なコール音が、確かに車中まで届いていた。メインスタンドを見やれば、向かって左側半分が黄色一色ではないか。同日は、最寄りの柏市でJ1柏レイソルの試合も行われていたが、間違いない、それは、400、500人はいるであろうアウェーに大挙した栃木サポーターだった。

スターティングメンバー及び交代は以下のとおり。
FW:上野優作、横山聡
MF:(左から)深澤幸次、米田兼一郎、久保田勲、小林成光
DF:(左から)石川裕之、谷池洋平、山崎透、片野寛理
GK:原裕晃
上野優作→山下芳輝(57分)
深澤幸次→只木章広(86分)
横山聡→小原昇(86分)

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失点後のモチベーション

 同日に大学リーグ戦を残し、1軍不在の流通経済大学の選手たちは2軍相当。前期第16節(1−1)で対戦した“ほぼベスト布陣”の同チームとは少々質が落ちる。ファインセーブを連発し、栃木の決定機をことごとく阻止したGK林彰洋(U−20日本代表)の姿もない。

 前半はポゼッションに勝る栃木。ゲーム自体の流れは悪くなかったが、一瞬の隙を付かれ失点。35分、右コーナーキックをフリーになったDF飯田真輝に決められた。マークすべきはDF片野寛理だった。その後、栃木のビルドアップが上手くいかなくなった。簡単なパスミスですぐにボールを失う場面が増えた。
 「悪いゲームをやっていないのに、コーナーキックでポンと点を奪われた、それだけでチームが変わるの?何回も同じことをするな!」
 ハーフタイム。しびれを切らした柱谷監督の怒声が飛んだ。槍玉(やりだま)に挙げられたのは片野寛理だった。
 「これで負けたらお前の責任だからな」
 「自分のせいで失点した。ちょっと落ち込みますね・・・。切り替えて出来るようにならないといけない」(片野寛理)
 前半の失点シーンの他、流通経済大学の40番、左サイドの加来謙一のドリブルに、片野寛理が翻弄される場面が度々あった。左サイドの石川裕之を右サイドに、片野寛理を左サイドに移すことも考えた柱谷監督だったが、結局は後半も同じ陣形を維持した。
 「片野を左サイドに入れて、それで勝っても片野のためにはならない。責任感を持たせてやらせないといけない」

 「片野のためにも周りが頑張って、点を取り返してやろう」
 柱谷監督の一声に選手たちが奮起する。後半の栃木は見違えるような動き、とは言えないまでも、前半の失態は繰り返さなかった。
 49分、ゴール前のこぼれ球を山崎透が押し込み同点。60分、横山聡がペナルティーエリア外から振り向き様のシュートを放ち勝ち越し弾を決めた。
 その2分後、流通経済大学の武藤雄樹に決められて再び同点とされるが、栃木の選手たちはすぐさま3点目を奪いに行った。終盤の15分間、疲労からか栃木の中盤にスペースが出来始めたが、前半のようなモチベーションの不安定さは感じられない。両サイドを中心に、頻繁に前線に駆け上がる栃木の選手たち。
 そのアグレッシブさが結実した。84分、右サイドの片野寛理のセンタリングがフォアサイドに抜けた。横山聡が折り返したボールは、ゴール前の混戦をこぼれ・・・最後は山下芳輝が冷静に押し込んだ。途端場での勝ち越しゴールだった。そのまま逃げ切った栃木が、今季初の逆転勝利を手に入れた。

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ピッチ上の微妙な空気感

 気付けば、今節のゴールで10ゴール目。ゴール数を二桁に乗せた横山聡。
 「チームがいい感じになってきているので、いいボールも出てくる。ボールが入ってくる時にペナルティーエリア内に自分が居れている。それがゴールに繋がっているのかな」
 季節は契約更新の時期。最近のゴール量産はFWとして最大限のアピールになっているのではないか。そう話を向けると「アピールになっていればいいですけど・・・」と遠慮気味にこう続けた。
 「まあ、ブルーですね、本当にこの11月は。僕は2年連続ゼロ提示を受けているので、本当にこの時期は嫌です・・・。でも悔いは残したくない。栃木に来た時に、栃木で終わってもいいと思っていた。自分らしさを全部出して、1年1年のつもりでやってきている」

 契約更新か、それとも、ゼロ提示か・・・。
 J2昇格を逃した最終盤のリーグ戦。チーム内の各個人に蔓延する微妙な空気感が、ピッチ上のプレーに影響があるのかどうか。
 「そんなことはないと思うけど」
 そう断った上で、石川裕之がこう話す。
 「でも少し難しい感じはあるね。リーダーシップというか・・・誰が、どう、どこに、引っ張って行くの?」
 前半35分の失点で、「それまではそんなに悪くはなかった」(柱谷監督)チームに微妙な混乱が生じた。失点でリズムを崩す悪い癖はこの試合に始まったことではないが、そこに方向性を指し示すべきリーダー不在のチーム事情の一端を垣間見ることが出来るのかもしれない。最近の若手の台頭に加え、契約更新という時期的な微妙感が、ピッチ上にチームの不安定さ、メンタル面の脆さを露呈する。その可能性はゼロとは言い切れない。
 その不安定さをカバーし、チームを逆転勝利に導いた要因には、龍ヶ崎市まで駆け付けた多くの栃木サポーターの存在もあるだろう。

 ハーフタイムに槍玉に挙げられたのは片野寛理だが、それは同選手に期待を寄せる柱谷監督の愛情の裏返し。「高さがあって、ダイナミックさは持っている」と一定の評価を明かす。片野寛理だけではなく、メンタル面を成長させるべきなのは、このチームに共通して言えることでもある。
 「技術的なものが足りないとか、戦術的なものが足りないとか、そういうことじゃなく、メンタル面の強さがこのチームには欠けていると今日改めて感じた。俺たちはプロなんだし、これで飯を食って行こうと思うのなら、1点くらい取られたくらいでゲーム内容がガラリと変わるようなプレーをしてはダメ。もう1回後半やれと伝えて、そしたらある意味で開き直った部分もあった」(柱谷監督)

 契約更新については「今は全く何も分からない」と選手たちが口々に言う。「メディアには言っても、僕たちには言わないこともあるので、本当に何も分からない」と吐露する選手もいる。ある意味で情報から隔離された選手たち。今後の生活が大きく左右される現在の心理状況は計り知れないものがある。
 その状況の中で、ハーフタイムに片野寛理が槍玉に挙げられ、引っ張られるように周りの選手たちが触発された。後半の栃木は3点を奪った。
 やはり、ピッチ上の選手たちのメンタル面を掌握しているのは柱谷監督。今後の全ての構想や情報を一手にしている柱谷監督が最終節に向けてこう語っている。
 「今、みんなに嫌な雰囲気があると思う。一人一人が「俺はどうなのかな」という感じで。それを最終節前に出さなくてはいけないので、ゲームに影響が出ないように、どの選手も高いモチベーションでやれるように何とか持っていきたいと思う」
 プロ契約の選手たちは、11月30日までにそれぞれが通達を受ける。

第9回JFL後期第16節 流通経済大学 (2−3) 栃木SC  
龍ヶ崎市陸上競技場たつのこフィールド  観衆815人
 

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