2010・J2第21節 正田醤油スタジアム 7,946人
ザスパ草津 2−1 栃木SC
得点:0−1 崔根植(23分)
得点:1−1 後藤涼(52分)
得点:2−1 ラフィーニャ(72分)

    ロボ  崔
高木          廣瀬
    本橋  パウ
入江  大久保 落合  赤井
      武田
―SUB―
GK柴崎
DF余
MF岡田
MF佐藤(`81←本橋)
MF杉本
MF水沼(`74←廣瀬)
FW林(`82←崔)


■最善を尽くして負ける

 試合後すぐに、オーバーアタックや選手交代の遅れを指摘する声が挙がっていたが、腑に落ちなかった。
 それが遠因であっても、決定的な敗因ではないと感じていた。
 記者会見で松田監督の声を待った。
「選手はよく頑張ったと思う。結果は出なかったが内容的には悪くなかった」
 それが第一声。雰囲気も重くない。ホッとした。
 狙いどおりセットプレーから得点も奪えた。
 栃木は悪くなかった。 
 悪くなかったが、負けた。
 最善を尽くして負ける。それもサッカーだ。

 やはり、決めるべきを決めたか。
 内容に大差はなくとも、スコアには差が付いた。
 ロボは前半3本、後半4本、全選手最多で計7本のシュートを放ったがゴールならず。ラフィーニャは計6本。そのうち1本を逆転ゴールに結び付けた。
 
 前節の横浜FC戦、栃木はロボがいなければ勝利できなかっただろう。そして今節、草津はラフィーニャがいなければ勝利できなかったはずだ。
 栃木側からすれば、今節は”ロボの日ではなかった”ということか。


■ダービー戦の闘志

 ミックスゾーンで選手に聞いた。
「内容はまったく悪くなかったのではないか?」と。
 ある意味で誘導尋問かもしれないが。
 
 聞いたのは、入江利和、赤井秀行、落合正幸。いずれもDF陣だ。
 三者とも頷き、否定しなかった。
 声を揃えた点がある。
「でも今日はダービーだったし、サポーターのためにも絶対に結果を出さなければいけなかった」
 
 ダービーへの意気込みを、ひしひしと感じるプレーがあった。
 後半4分頃。相手CKから一気のカウンター。センターサークル付近まで飛び出したのは、まず入江だ。ドリブルで駆け上がり、並走して駆け上がった斜め前にいる赤井にパス。赤井は相手DFを引き付け、大外を駆け上がった大久保裕樹にラストパス。大久保は相手DFを交わしてスライディングシュート。これは惜しくもサイドネットの外を揺らした。
 
 DF陣だけでカウンター、シュートまで漕ぎ着けた。
 「たまたまですよ」
 と入江。
 「チャンスをつくるだけじゃダメ。結果に繋げることを課題にやっている」
 
 その入江。前半から左サイドを再三駆け上がった。
 前半は、DFラインからビルドアップし、パウリーニョや本橋卓巳から、ロボやクンシクに、グラウンダーでくさびのボールが収まっていた。
 入江はオーバーラップのタイミングが掴みやすかったはずだ。
 入江のお得意、高速グラウンダークロスが再三好機を演出した。
 

■5戦負けなし、正田スタの勢い

 この前半の流れは、相手の虚を突いていた。
 敵将・副島博志監督が話している。
「栃木は2トップへのロングボールが多いと踏んでいたが、思っていた以上に多くなく対応が遅れてしまった。栃木のしたたかなプレーに後手を踏んでしまって先制を許してしまった」
  
 前半は完全な栃木ペース。一方の草津はラフィーニャを基準点とするカウンターのみ。DF落合も「的が絞りやすかった」と話している。
 
 だが、この流れは後半一変する。 
 草津・後藤涼に決められて同点になった後の時間帯だ。 
 草津はボランチの松下裕樹、櫻田和樹を中心に中盤を支配し始めた。ラフィーニャ以外にも、熊林親吾や後藤涼が前線で機能し始めた。
 
 松田監督はハーフタイムに「FWがMFの守備を助けよう」というコメントを残していた。
「ボランチへのコースが切れていなかった。センターバックからボランチへのボールに対する対応が少し悪くて、サイドチェンジをされてしまう」
 警戒はしていたが、後半、相手ボランチ陣に流れを持っていかれた。
 5戦負けなしの草津、そして約8千人を集めた正田スタの勢いを食い止められなかった。


■ピッチ上に声はあったか

「栃木の選手の運動量が落ちた」
「オーバーアタックだったのではないか」
 いずれも、前半と比べた相対的な話に感じる。
 
 後半、流れは草津に渡った。
 ベンチで松田監督は逡巡していただろう。
 栃木の選手は誰ひとり悪くなかった。極端に運動量を落とす選手もいなかった。
 廣瀬浩二にもまだ”足”は残っていただろう。ベンチの杉本真や水沼宏太に比べれば、前への推進力は期待できる。ベンチで指揮官も判断に苦しんでいたはずだ。
「タイミングが一つ、二つ遅れたことを後悔している」
 ただ、非常に難しい試合展開だったことは確かだ。
 
 注視すべきは、あの時間帯に、声があったかどうか。
 苦しい時間帯に、仲間が共有できる声があったか。チームのベクトルを同一方向に向けられる声があったか。
「ここはいくな!」
「いったん引いて落ち着け!」
 なのかはわからない。
 
「今チームが好調なのは、自分たちで仕掛けることができているから」
 
 かつては米山篤志がそのコンダクトの中心を担っていた。
 指揮官のベンチワークにすべてを頼らず、言葉を掛け合うことで共有できるチームの意志がピッチ上に存在していた。

 中断明け東京V戦以降、栃木はボランチが変わった。
 かつてあった、良い意味での腰の重さが、今のチームにはまだない。
 甲府戦、横浜FC戦、草津戦と続けて経験した、不安定な時間帯を回避するためのキーファクターが、今、ピッチ上の声にある気がしてならない。
 肝心なのは、誰が、どう、リードしていくのか。
 
 
 鈴木康浩