2015年10月26日

RWC準決勝2試合をみて帰途につくMさんへ


Mさま  いまごろはトゥイッケナムでのRWC準決勝2試合を堪能し、帰国の途についていらっしゃる頃だと思います。

24日のNZ対南ア戦、息詰まるような攻防でしたが、後半に入ってすぐ、
FLジェローム・カイノのシンビンでNZが14人での時間帯に、
マイボール・ラインアウトからSHアーロン・スミスがSOダン・カーターにパスしてDGを決めたとき、NZが勝つな、と思いました。
TVではハーフ・タイムに両軍のドレッシング・ルームの様子が映し出されましたが、
南アの様子は先生が生徒に説教するといった印象だったのに対し、NZのそれは
リーダーたちが円座になって、選手とコーチとの間でゲームプランとそれを遂行する意志を確認する、といった風景でした。

その直後にNZはカーターのDGで3点を取り、結局これが準決勝の命運を分ける点差となりました。
南アはマイボール・ラインアウトをことごとくスチールされ、ゆえに後半はタッチキックを蹴ることならず、
効率的な陣地の前進、FWの疲労抑止につまずいた。
逆にNZは、防御の戦略をも絞ることができましたね。

アップセットこそなかったものの、準決勝2試合はともに素晴らしい試合で、でもわたしはどちらかというと翌日の、
豪州対アルゼンチン戦により深く感銘を受けました。特にアルゼンチン。
左WTBドリュー・ミッチェルのファンタスティックなランから右WTBアダム・アシュリー=クーパーがハット・トリックのトライを決めた後半30分、
点差が14に開いてなお残り10分にかけたロス・ピューマス、逆転は絶望的ながら果敢なアタックを繰り返す彼らの姿には、
2007年のときよりもはるかに感銘を受けました。

2007年のRWCフランス大会、南フランスを廻りながら、あなたとアルゼンチン・チームの素晴らしさを語り合ったことを思い出します。
あのとき、あなたがパリで買ったロス・ピューマスのジャージィは今回持参されましたか?
あれを着て、アルゼンチンを応援するあなたの姿を思い描きながら、TV観戦しておりました。

今回のアルゼンチンは、明らかに2007年のときよりも進化していますね。
エルナンデスはやや力が落ちたかと思えたものの(年のせいでしょう)、オフロードのパスは当時より磨かれていたし、
スクラムの強さは相変わらずです。でも、バックスリーの総合力は今回のほうが上、BKで点が取れるチームになっていました。

2007年の時にはFBにコルレトという豪快な走りっぷりの選手がいて、彼が大変に目立ちましたが、今回は3人とも素晴らしく、
誰かが特別にということもなかった。みんなが目立った。
それに「個の力」で勝負をかけられているし、勝負に行っている。
これがまた、力強い。
ジャパンには当分望めないところでもあります。

豪州ワラビーズには、私が大いに贔屓にしているルースFWのデイヴィッド・ポーコック、アシュリー=クーパーという2人がいて、
それぞれFWとBKのキーマンになっています。
アルゼンチン戦では、第1CTBマット・ギタウから外CTBクリンドラニとFBフォラウを飛ばしてアシュリー=クーパーに渡ったパスの美しかったこと!

でも今回RWCのワラビーズの感銘の肝は、これまでのところプール戦の対ウェールズ戦でありました。
2人退場で13人になった時間帯でのディフェンス、あれは見事というほかありませんでした。

ワラビーズにはマイケル・チェイカHCの下、スティーヴン・ラーカムとナイサン・グレイというこれも私の贔屓にする2人のアシスタント・コーチがいるのですが、
ラーカムさまは、エディ・ジョーンズを継ぐジャパンのHCとして私が推す、第一の御仁であります。
2019年のラーカム・ジャパン、決してありえないことではないと思えるのですが……。かれの現在の契約情況が気になるところです。

ところで8月の下旬、「エディさんRWC2015をもってジャパンHCを退任」のニュースのあとで、秩父宮のタバコ部屋であなたに会ったとき、
「今回のジャパンは結構やりますよ。日本人の性向は、上(協会)がバカだとわかったとき、現場は渾身の力を発揮するものです。
第二次大戦の優れた戦史を読んでも、それがよくわかります。
2003年の向井ジャパンのときもそうだった。
今回のジャパンはあのときよりもはるかに地力がある。2勝はありえますよ」
といったことを覚えていらっしゃいますか。
あの見立ては結構あたっていたでしょう?

でも、南アに勝つとは……。そこまでの予想はできなかった。
私は今回予想したジャパンの2勝を現地で見ることができまして、嬉しい誤算の感激に今も浸っています。

帰国匆々、お忙しいなか、長々と書いてしまいました。すみません。
当方、今回は現地着のとき時差ぼけなしだったので、帰国時もないと思っていたところ、とんでもない。
帰国して一週間をすぎたというのに、睡眠3,4時間のつぎはぎ生活が今も続いています。

次回お会いした折には、またゆっくりお酒でも愉しみましょう。
それまでお元気で。  


yas_terui at 13:08│ ラグビー