たまには、和菓子のはなしもしてみたい。
毎日散歩のことばかりで、いささか辟易しているかたもいるだろう。
「お店のお菓子でなにが一番のお薦めですか?」。
ときどき、尋ねられることがある。先月まで行われていたご開帳のときも、わずかではあるが長野県外らしいかたもお見えになった。
地元のかたは「石童丸という最中はかるかや山の故事で有名です」。
などと言わなくても、ちゃんと知っている。
でも、これは100%朝日堂製という訳ではない。最中の種というか皮は専門の業者に頼んで作ってもらっている。中につめる「あん」は朝日堂でつくるけれど。
その点、画像の羊羹舟に流してある「きんつば」は、中のあんから皮まですべて手造りだ。
あんを作る作業に三日かかる。
まず、小豆をよく洗い、ごみなどをとりのぞく。
一晩水につけてから、煮始めるのだが、これがまぁ時間もかかり、気のぬけない作業が続く。
小豆の芯を感じないように、しかし全体がふっくらと。
皮は割れずに、つややかに。
文字にすればこんなもんだが、作業は緊張する。
もし、失敗すれば二枚分150個分がパアーだ。
さらに、砂糖を加えもう一晩寝かす。
翌日、適当な大きさに切ってから、皮の生地をつけて6面を焼く。
「きんつば」は通年販売しているので、四季を問わずつくる。
そのときの温度や湿度の変化で微妙に豆の煮かたも変化させる。
言葉では伝えられない、豆の様子を見ながらの製餡作業だ。
自分の思い通りに作業が進むと、素直にうれしい。
失敗すると、その夜まであとを引く。
いずれにしても、小豆を見守っているときが、和菓子屋の仕事を実感する一瞬だ。