猫の地球儀 焔の章<猫の地球儀> (電撃文庫)
秋山 瑞人
KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
2014-03-26



猫の地球儀 その2 幽の章<猫の地球儀> (電撃文庫)
秋山 瑞人
KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
2014-03-26



三十六番目のスカイウォーカーに託されて、研究成果とともに閉じこもったロボットのクリスマス。長い長い時間か経った後、そのクリスマスを見つけたのは三十七番目のスカイウォーカー黒い子猫の幽だった。
地球儀と月球儀の間を漂う宇宙ステーション・トルクには、猫たちと猫の食料となるネズミとゴキブリ、菌類が生息し、一つのコロニーを形成していた。
そのなかにたまに現れるスカイウォーカー。地球儀を魂の返る場所とは信じず、宇宙を飛び出し地球に帰ろうとする彼らを、猫の社会は許さず、見つけ次第抹殺しようとする。

不動のスパイラルダイバー班を破った、孤高の白猫・焔に、幽はある目的をもって接近するが……。


昔のラノベの良さというか、読みやすいSFの良さというか、そういうものが詰まった小説だった。
スカイウォーカー、パラレルダイバーなど用語が特に説明されないまま話が進み、登場人物の視点も章単位でころころ変わるが、猫であり、単純なロボットの思考なので分からないことがストレスにならない。
そして、猫だからといって、軽く思えたりもしない。強さと勝つことを求めているだけの焔の目的のない苛立ちも、かっこいいものに素直に惹かれる楽も、生き生きとしていて微笑ましい。
目的のわからない幽が現れての、この三匹の馴れ合わない関係が楽しくて、ずっとこのままで平和に暮らしてほしいような気すらしてくる。

しかし焔はパラレルダイバーであり、一度負かされた後に生きていることが耐えられず、幽との再戦をせずにはいられない。
一方、幽はスカイウォーカーであり、何代も続いてきた好奇心の現れ、地球儀の謎を解き、地球儀にたどり着くことを願わずにはいられない。
それぞれの矜持と夢、それに対する犠牲が一番弱くて無邪気なものに強いられるのが辛かった。猫じゃなく人間で描かれると、ちょっと重すぎるかもしれない。

夢を叶えるにしても戦うにしても、それを観ている視点が必要なのだと思う。幽と焔は殺しあう仲だが、互いの夢を見合った。見届けたよという確認も、受け取ったよという返事もできない関係は、なんと寂しいのだろうと思う。
通じ合わなかった言葉とか、楽への感謝とか、それを読み知ってしまう読者とはなんなのだろうと思う。こういう小説を読むと、無条件に本は面白いよとか言えなくなる。
シビアで孤独だからSFは嫌いだが、読書が個人的な行為だということを教えてくれるジャンルなのかもしれない。