異類婚姻譚
本谷 有希子
講談社
2016-01-21



マンションに持ち家のある夫と結婚し、無理して働かなくてもいいと言われ専業主婦をするサンちゃん。子供もおらず、特になにかしなければならないということもなく日々を送っていたが、ある時、自分と夫の顔が似てきていることに気がつく。

注意して見るようにすると、夫の顔の輪郭は崩れ、夫の顔というものがだんだん分からなくなってくる。二人の境界が溶け合い、一体化していくことに、恐れを感じつつも抵抗しきれないものをサンちゃんは感じるのだった。



異類婚姻譚というと、始めから別の種族のものが人間のふりをして婚姻関係を結び、そのことがルールはあるものの一応福をもたらすという話なのかと思っていた。

なので、はじめから一応人間同士のサンちゃん夫婦がなんで異類婚姻譚なんだろうみたいなことを考え続けてしまって、よく分からないまま読了。


まず、働かなくてもいい、子供いないけどそのことで特に悩んでるわけでもなさそうだし、なんか羨ましい暮らしだな、と思ってしまう。しかし夫が、暴力をふるうわけではないが、幼稚で常識のないタイプで、他人と一緒に暮らせるような人ではないことが分かってくる。

島本理生や辻村深月なら、暴力の方向でとことん嫌な男になっていくだろう。

しかしこの小説では、えっ、こんな男ダメじゃない?という読者のドン引きもなんのその、緩やかに気持ち悪く夫が変質していくだけだ。夫がどうなろうと、サンちゃんには影響がない、とまでは言い切れないはずなのに。

夫イコールサンちゃんが進行しすぎているからか、流されるまま、引きずられるままの変容には、なるようにしかならない楽観すら感じる。


一緒に住んでいて、同じものを食べ、同じ生き物のようになっていても、相手のことを理解できているわけではない。同化に抵抗がなくなっていたサンちゃんだが、夫に冷静に批判され、相手への拒絶が沸き起こる。

女が、一緒に堕ちよう、面倒見ようと覚悟しても、結局突き放すのは男だよなという気がした。

結局、夫がなりたかった姿というのも突拍子がなさすぎて、男女の相互理解の難しさ、ということなのかなという感想。


「藁の夫」などの気味の悪さも、夫婦が理解しあえないことを、種族が違うから仕方ないのだというベースを敷いているものの、それでもやはり嫌な気持ちになるので、結婚前の人は読まない方がいい本かもしれない。