海外進出企業の【税務会計】虎の巻

税理士法人名南経営 安田昌泰 公式ブログ

源泉票について、最近、聞かれた質問について、要点を整理しました。先に結論を述べると、
帰任後に日本でもらった給与だけを、源泉票に記載します。海外赴任中、日本の口座に給与が
振り込まれている場合でも、その分は除きます。以下、具体例です。

質問:帰任後、退職した場合、源泉票はいくらで交付するか?

前提1)海外の子会社に出向した社員が4月に帰任。日本の居住者となり月50万の給与を貰う。
    2)海外出向中、海外の子会社が20万円、日本の親会社が30万円を支払っていた。
    3)帰任前2月、日本の親会社の都合で10日間だけ一時帰国で国内業務遂行。
    4)帰任後5月末退職。源泉票の交付を行った。なお、退職した年の給与は5のとおり。
    5)1月~3月:海外の子会社からの給与月20万×3カ月= 60万円
              :日本の親会社からの給与月30万×3カ月= 90万円、両国で毎月50万円。
     4月~5月:日本の親会社からの給与月50万×2カ月=100万円、日本で毎月50万円。

回答:源泉票に記載する金額は、給与100万円、所得税は甲欄で源泉徴収された税額の合計。
    1月~3月、4月~5月の税金の取り扱いは、次のとおり。

 1月~3月:日本の非居住者、海外の居住者のため申告は海外が主となる。

        ⇒海外:海外分と日本分を合算して全世界所得課税。150万円を申告。
         内訳:海外の子会社からの給与月20万×3カ月=60万
            日本の親会社からの給与月30万×3カ月=90万

        ⇒日本:月30万の3カ月分は国外勤務のため、日本では課税対象外。
              :なお、一時帰国時10日間分は国内業務になり、国内源泉所得で20.42%
              の源泉徴収となり日本の親会社が納税。30万円×10/30日×20.42%=20,420円

 4月~5月:日本の親会社からの給与月50万×2カ月=100万は、扶養控除の申告書を最初の
           給与受給前に会社に提出すれば、甲欄で源泉徴収。

 5月の退職時に交付する源泉票 ⇒ ○ 4~5月の100万円で「給与」として作成する。
                                             ⇒  ×  1~5月の190万円で「給与」として作成しない。
                                           ↓
留意点)源泉票は居住者分のみ。1~3月の留守宅手当分は含めない。また、非居住者中の一
       時帰国時に源泉徴収された20,420円も含めない。

退職後)新しい会社に就職ならば、交付を受けた100万円の源泉票で、新会社の年末調整時に
       それを提出して、年末調整を受ける。

* 誤って100万円以上で源泉票を作成しないように注意が必要です。


 役務提供に関する請求額の5%上乗せは、その役務提供の総原価に対して行います
が、適用上の留意点は、次の1から5のとおりです。
 1)役務提供が支援的なものであり中核的事業活動に直接関連しない。
 2)役務提供において、無形資産を使用していない。
 3)役務提供において、重要なリスクの引受け若しくは管理又は創出を行っていない。
 4)研究開発、製造、販売、原材料の購入、物流又はマーケティング、金融、保険又は
   再保険などの役務提供ではない。
5)役務提供と同種の役務提供が非関連者との間で行われていない。
 実務上、すべての役務提供について、その内容に応じて区分してから、1~5の要件を
個々に確認して要件にあえば5%を上乗せします。ただし、不備があれば5%では不十
分?という調査での指摘があるかもしれません。
 計算根拠、契約書等の一定書類の保存も求められており、「事務運営指針3-10(1)の
取扱いに係る要件等」「留意事項等」で確認可能です。2018年2月変更の新旧対比表を
国税庁HPで確かめることができます。
http://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/kaisei/180228/pdf/01.pdf
        

 2018年2月、「移転価格事務運営要領(事務運営指針)」の一部改正により「役務提供取引の取扱い」
が変更されました。  http://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/kaisei/180228/pdf/01.pdf
 税務調査での留意点は、海外子会社に対する役務提供の請求額を5%上乗せして請求する点です。
従来のように、役務提供に係る総原価だけの請求では不十分になっています。たとえば、子会社に対
して、海外で10日間、役務提供した場合、改正前は、その役務提供した従業員の年間給与賞与額に、
会社負担の社会保険料額、通勤費及び間接経費配賦額を合計した総原価を計算し、海外での役務提
供日数で按分した金額でしたが、改正後は、別途5%の上乗せです。

改正前:年間給与賞与額    400万円、
     会社負担の社会保険額100万円、
     通勤費24万円、間接経費配賦額23.5万円、計547.5万円。
     実日数10日の場合、547.5万円×10/365日=15万円。
改正後:15万円に5%を乗じた15万7500円。

 5%上乗せは、独立企業間価格の「簡易な算定方法」であり、一定要件を満たす場合に適用できます。
要件を満たさない場合は、個々に独立企業間価格を算定しますので要注意です。新旧対比表から、改
正前は、対象となる役務提供の具体例はなく、総原価を最低限請求しておけば調査では問題にならな
かったと思います。
 これに対して、この改正では、具体的に役務提供の言及がありますから、この例示以外では、5%上
乗せでは不十分となるかもしれません。その場合、5%以上の請求が必要となりますから、調査での指
摘が懸念されます。今後に備えて、改正点を一度、理解しておく必要があります。

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