海外進出企業の【税務会計】虎の巻

税理士法人名南経営 安田昌泰 公式ブログ

 日本の親会社が、海外事業部を設けて、海外に子会社を新設後、海外出向辞令により
出向させる場合、出向者に対して留守宅手当を日本の親会社で支払う場合、よくある間
違いは次の通りです。

1)海外赴任後の給与計算で、従前と同様に、介護保険料を徴収し甲欄で所得税の源泉
    徴収をしている。市町村で脱退手続が可能。
2)非居住者により国内源泉税は、海外にいる場合に課税しないにもかかわらず、毎月の
    源泉徴収は放置して、年末調整で還付すればよいと思い込んでいる。
3)年が明けて1月1日現在、非居住者であるために、住民税が課税されないにもかかわら
    ず、1月提出の給与支払報告書を居住者として提出してしまい、6月に住民税課税通知
    をもらってしまう。
4)短期海外出張で183日ルールを意識して出張をしていたが、うっかりそれを超えてしま
    い、居住者要件を満たしていないにもかかわらず、年末調整を行ってしまった。また、海
    外先での申告をしないで後日、海外で課税される。
5)非居住者が留守宅手当を受けている場合、一時帰国により、国内業務を行ったときに、
    月額の留守宅手当を、国内業務日数で按分計算した金額の20.42%で納付すべきとこ
    ろを、概算で源泉徴収し、その過大徴収分を、年末調整してもよいと思い込んでいる。

海外出張費に関して、調査で指摘を受けそうな論点は次の3点です。

1)海外出張手当を定めた旅費規程の内容確認、海外出張日報の作成状況。
2)海外出張手当の支給金額と給与課税の是非。
3)海外子会社に請求すべき海外出張旅費「実費相当額」の精算の有無。

・1は、海外出張が法人の業務として妥当かどうかの判断材料であり、法人税法
 の基本通達で明らかにされている海外渡航費の損金算入に関する論点です。業
 務起因性が低いと損金不算入となります。

・2は、原則、給与課税である日当について、所得税法上、不相応に高額でない
 ということで、非課税として取り扱ってもよいかどうかが論点です。

・3は、法人税法上、海外子会社が負担すべき費用を、日本の親会社が未精算の
 ままとすることで、国外関連者への寄附金等にならないかが論点です。

・2と3について、2の従業員へ支払う日当と、3の負担すべき日当精算額に相
 当の乖離があるというご意見をときどき受けますが、まったく別なので混同し
 ないように注意したいものです。下記の例の通り、金額は一致しません。

例1)海外出張手当を定めた旅費規程の日当:従業員の海外出張1日1万円
例2)海外子会社に請求すべき海外出張旅費「実費相当額」
    ↓
  日当は「総原価+間接経費配賦額の合計額」をもとに計算。たとえば、海
  外出張者の年間給与総額400万円、社会保険料会社負担額70万円、年間通
  勤費等12万円、計482万の場合、365日で除すると日当は13,205円。

 調査で必ず確認を受けるのは、海外出張費の負担についてです。旅費規程
又は契約書を求められ、現況確認を受けます。海外出張費は、役務提供の負
担と紐付と考えますから、国税庁HP「移転価格事務運営要領第3章調査」「8)
役務提供」が参考になります。
 子会社などに対して請求すべき精算額について、出張旅費は「実費相当額」、
日当は「総原価+間接経費配賦額の合計額」をもとに計算します。
 たとえば、調査で想定される日当の算出例として、海外出張者の年間給与総
額400万円、社会保険料会社負担額70万円、年間通勤費等12万円、計482万
の場合、365日で除すると、日当は、13,205円です。この金額に対して、精算す
べき実日数を乗じて請求をします。
 なお、社内で従業員に支払う旅費規程に基づく日当とは別のものとなります。
この日当は不相応に高額でない場合、給与ではなく旅費交通費で非課税とでき
ます。

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