海外進出企業の【税務会計】虎の巻

税理士法人名南経営 安田昌泰 公式ブログ

 2018年2月、「移転価格事務運営要領(事務運営指針)」の一部改正により「役務提供取引の取扱い」
が変更されました。  http://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/kaisei/180228/pdf/01.pdf
 税務調査での留意点は、海外子会社に対する役務提供の請求額を5%上乗せして請求する点です。
従来のように、役務提供に係る総原価だけの請求では不十分になっています。たとえば、子会社に対
して、海外で10日間、役務提供した場合、改正前は、その役務提供した従業員の年間給与賞与額に、
会社負担の社会保険料額、通勤費及び間接経費配賦額を合計した総原価を計算し、海外での役務提
供日数で按分した金額でしたが、改正後は、別途5%の上乗せです。

改正前:年間給与賞与額    400万円、
     会社負担の社会保険額100万円、
     通勤費24万円、間接経費配賦額23.5万円、計547.5万円。
     実日数10日の場合、547.5万円×10/365日=15万円。
改正後:15万円に5%を乗じた15万7500円。

 5%上乗せは、独立企業間価格の「簡易な算定方法」であり、一定要件を満たす場合に適用できます。
要件を満たさない場合は、個々に独立企業間価格を算定しますので要注意です。新旧対比表から、改
正前は、対象となる役務提供の具体例はなく、総原価を最低限請求しておけば調査では問題にならな
かったと思います。
 これに対して、この改正では、具体的に役務提供の言及がありますから、この例示以外では、5%上
乗せでは不十分となるかもしれません。その場合、5%以上の請求が必要となりますから、調査での指
摘が懸念されます。今後に備えて、改正点を一度、理解しておく必要があります。

海外進出企業は、海外のコンサルタント、通訳、翻訳などを利用する場合があります。
非居住者であるため、源泉税、消費税について、注意が必要な場合があります。まと
めると次のようになります。

1) 非居住者に支払うコンサル料に対する源泉所得税
判定:コンサル業務が国内源泉所得か国外源泉所得かを判定。
         ⇒人的役務提供は、その業務が行われた場所で内外判定を行う
            例1) 日本でコンサルティング ⇒ 支払額の20.42%の源泉徴収
                     例えば海外からコンサルタントが出張して、日本でアドバイスを行ったり
                     文書提案を行ったりする場合は国内源泉所得で源泉徴収。
            例2) 海外でコンサルティング ⇒ 国外源泉所得で源泉徴収は不要

2)非居住者に支払うコンサル料に対する消費税の取り扱い
判定:役務提供を行った場合、その取引が国内取引に該当するかどうかを判定。
            例3) 日本でコンサルティング⇒課税取引
            例4) 海外でコンサルティング⇒不課税取引
留意点⇒役務提供が国内及び国外の両方で行われる場合、または、その役務提供の
              場所をどちらかに特定できない場合
                ↓
コンサル会社の事務所が国内にあれば課税取引、国外にあれば不課税取引。
国外取引ならば不課税となり、コンサルティング料は、仕入税額控除できない。
契約締結時に、役務提供場所を明示して、対価を合理的に区分明記する。

海外赴任者が、住宅ローン控除を検討する場合、留意点は次のとおりです。
 1)海外赴任で非居住者になる場合、赴任中は適用できません。単身赴任で家族が日本に残り、
       日本での留守宅手当を日本で受け取り、ローン返済を日本で継続中でも同様です。日本で
       の納税額がないので控除自体できません。なお、一時帰国で国内源泉所得税20.42%の納
       付をしていても、この納税額からの控除は不可です。
2)海外赴任の出国前に税務署に対して届出を提出し、赴任終了後、日本の居住者になった場
       合、所要の手続きで帰国後年末に日本居住ならば適用できます。
3)2は、平成28年の税制改正により、非居住者が一定要件を満たす場合、適用が可能になり
        ましたが、実際の適用は1のとおり、帰国後の居住者で納税額が日本で生じる場合です。
4)平成28年の税制改正前は、海外赴任前、居住者が住宅等の取得等をして、実際に居住の用
       に供した場合に限り適用対象でした。そのため、単身での海外赴任中に、日本に残る家族
       のために住宅等取得と借入をしても、本人が住んでいないので適用できませんでした。
       改正後は非居住者が一定要件を満たすと適用可です。
 5)適用例としては、住宅ローン控除の適用中に単身で海外赴任となった場合、または、海外
        赴任中に日本で住宅等取得と借入をして家族が住む場合です。
 参考:住宅ローン控除、すなわち「住宅借入金等特別控除」は、居住者が、居住目的で住宅
            を購入した場合、一定要件を満たすときに、例えば、住宅ローン残高×1%相当額を税
            額控除します。非居住者は適用外です。
 国税庁HPNo.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1234.htm
 

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