海外進出企業の【税務会計】虎の巻

税理士法人名南経営 安田昌泰 公式ブログ

ベトナム100%子会社を設立後、日本の親会社は、「外国子会社から受ける配当等の益金不
算入等」を適用して、受取配当金の95%を課税対象にしないで申告可能です。
海外進出後、利益を出して配当に至るまでには様々なトラブルに遭遇しますが、ジェトロの
「ベトナムビジネス トラブル事例100選(2018年3月)」はとても参考になります。
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2018/02/7fe5a7cb87295eea.html
事例から、既に進出している又は検討中の関与先への助言ポイントが確認可能です。


会計検査院が、2016年11月に公表した平成27年度決算検査報告に「国外に所在する中古の建
物に係る所得税法上の減価償却費について」が含まれています。
最近、このスキームに関する不動産会社の提案に対して意見を求められたために、留意点を検
討しました。節税スキームについて、不動産会社の提案では、次の特徴があります。
1)提案対象者は富裕層。高額な役員報酬などの国内所得が比較的多い。
2)海外中古不動産を利用した節税は、損益通算と中古耐用年数の減価償却。中古耐用年数の
  適用で早期償却が多額となり、投資後の初期段階で不動産所得を大赤字にして他の所得と
  損益通算。結果、国内の他の所得との通算後の税負担が低くなる。
3)減価償却が早く済むため、償却がなくなった後に、長期保有しないで売却。キャピタルゲイン
  を得る。海外中古不動産の市場価格は、日本と異なり、下落しにくい場合がある。
会計検査院の指摘事項は、税制改正につながる場合が多いので要注意です。
想定される改正として、次の2点が考えられます。
1)海外不動産の損益通算に制限をかける。たとえば、海外不動産の赤字は切り捨てとして国内
  の他の所得との通算を認めない。
2)海外不動産の中古耐用年数を認めずに法定耐用年数を強制する。結果、投資初期段階で多
  額の減価償却を不可とする。
その他の留意点は、次の通りです。
1)海外中古不動産の市場価格が下落して、転売見込のキャピタルゲインが実現できない。
2)不動産会社が提案する予定賃料が確保できなく、投資の回収がうまくいかない。
3)為替のリスクがあり、海外での税務申告が必要となる。

参考)建物の法定耐用年数は、構造別に下記の通りで中古耐用年数で短縮可能。
 例)法定耐用年数の全部を経過した中古資産⇒法定耐用年数 x 20 / 100
  ・ 木造又は合成樹脂造       : 22年 ⇒4年
  ・ レンガ造、石造又はブロック造 : 38年 ⇒7年
  ・ 鉄骨鉄筋コンクリート造等    : 47年  ⇒9年

・法定耐用年数の一部を経過した中古資産:法定耐用年数 – 経過年数 + 経過年数 x 20 / 100

会計検査院の指摘 
 http://www.jbaudit.go.jp/report/new/characteristic27/fy27_kanshin_ch10.html
本院は、証拠書類として提出を受けている所得税の確定申告書等の中に、国外に所在する建物
を取得して不動産事業の用に供し、多額の減価償却費を計上して、不動産所得に損失が生じて
いる納税者が見受けられたことから、国外に所在する建物に係る減価償却費の算定方法は建物
の現状に適合しているかなどに着眼して検査した。
  検査したところ、アメリカ合衆国、英国等では、日本よりも住宅が長期間使用されているなど建
物を取り巻く状況は大きく異なっているが、国外に所在する建物に対しても国内に所在する建物
と同一の税制が適用されることとなっている。そして、国外に所在する中古と判断される建物(以
下「中古等建物」という。)の中には、使用可能期間の年数を見積もることが困難な場合に一定の
算式により得た年数を減価償却費の計算に用いる耐用年数とすることができる方法(以下「簡便
法」という。)に基づき耐用年数を算定したものが相当数あると見込まれる状況となっていた。この
ような背景の下、国外に所在する中古等建物について、賃貸料収入を上回る減価償却費を計上
している納税者が多く見受けられる状況となっていた。また、簡便法により耐用年数を算定する場
合に用いられる100分の20という割合は、昭和26年に定められて以降現在に至るまで変わってい
ない。これらのことを踏まえると、国外に所在する中古等建物については、簡便法により算定され
た耐用年数が建物の実際の使用期間に適合していないおそれがあると認められる。そして、賃貸
料収入を上回る減価償却費を計上することにより、不動産所得の金額が減少して損失が生ずるこ
とになり、損益通算(不動産所得の金額の計算上、必要経費が総収入金額を上回ったことにより
損失が生じたときは、一部の資産の貸付けに係るものなどを除き、当該損失の金額を給与所得等
の総合課税に属する他の各種所得金額から控除すること)を行って所得税額が減少することになる。
  したがって、本院の検査によって明らかになった状況を踏まえて、今後、財務省において、国外
に所在する中古の建物に係る減価償却費の在り方について、様々な視点から有効性及び公平性
を高めるよう検討を行っていくことが肝要である。
  本院としては、中古の建物に係る減価償却費について、引き続き注視していくこととする。

源泉票について、最近、聞かれた質問について、要点を整理しました。先に結論を述べると、
帰任後に日本でもらった給与だけを、源泉票に記載します。海外赴任中、日本の口座に給与が
振り込まれている場合でも、その分は除きます。以下、具体例です。

質問:帰任後、退職した場合、源泉票はいくらで交付するか?

前提1)海外の子会社に出向した社員が4月に帰任。日本の居住者となり月50万の給与を貰う。
    2)海外出向中、海外の子会社が20万円、日本の親会社が30万円を支払っていた。
    3)帰任前2月、日本の親会社の都合で10日間だけ一時帰国で国内業務遂行。
    4)帰任後5月末退職。源泉票の交付を行った。なお、退職した年の給与は5のとおり。
    5)1月~3月:海外の子会社からの給与月20万×3カ月= 60万円
              :日本の親会社からの給与月30万×3カ月= 90万円、両国で毎月50万円。
     4月~5月:日本の親会社からの給与月50万×2カ月=100万円、日本で毎月50万円。

回答:源泉票に記載する金額は、給与100万円、所得税は甲欄で源泉徴収された税額の合計。
    1月~3月、4月~5月の税金の取り扱いは、次のとおり。

 1月~3月:日本の非居住者、海外の居住者のため申告は海外が主となる。

        ⇒海外:海外分と日本分を合算して全世界所得課税。150万円を申告。
         内訳:海外の子会社からの給与月20万×3カ月=60万
            日本の親会社からの給与月30万×3カ月=90万

        ⇒日本:月30万の3カ月分は国外勤務のため、日本では課税対象外。
              :なお、一時帰国時10日間分は国内業務になり、国内源泉所得で20.42%
              の源泉徴収となり日本の親会社が納税。30万円×10/30日×20.42%=20,420円

 4月~5月:日本の親会社からの給与月50万×2カ月=100万は、扶養控除の申告書を最初の
           給与受給前に会社に提出すれば、甲欄で源泉徴収。

 5月の退職時に交付する源泉票 ⇒ ○ 4~5月の100万円で「給与」として作成する。
                                             ⇒  ×  1~5月の190万円で「給与」として作成しない。
                                           ↓
留意点)源泉票は居住者分のみ。1~3月の留守宅手当分は含めない。また、非居住者中の一
       時帰国時に源泉徴収された20,420円も含めない。

退職後)新しい会社に就職ならば、交付を受けた100万円の源泉票で、新会社の年末調整時に
       それを提出して、年末調整を受ける。

* 誤って100万円以上で源泉票を作成しないように注意が必要です。

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