海外進出企業の【税務会計】虎の巻

税理士法人名南経営 安田昌泰 公式ブログ

 海外進出により、海外渡航の機会が増え、その支出も高額になりがちですが、海外渡航費で
押さえておきたい留意点は以下の3点です。
 1)法人において全額損金処理が可能かどうか?
 2)支出効果が事前に精査されているかどうか?
 3)海外子会社への請求が必要でないかどうか?
 1)の判断基準は「業務の遂行上必要かどうか」です。法人税法基本通達9-7-6「海外渡航費」
9-7-7「業務の遂行上必要な海外渡航の判定」、9-7-8「同伴者の旅費」、9-7-9「業務の遂行
上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行った場合の旅費」を参考にします。
業務内容により、日数按分等による検討が必要です。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_02.htm
 税務調査でも、この通達に沿った確認が想定されますので、事前検討により、業務起因性の
薄い観光、私的事情に係る旅費等は、立替金で処理して、損金から除外しなければなりません。
これを怠ると、役員の場合では、役員賞与の修正の可能性があります。
 2)は海外渡航前に、渡航目的、現地スケジュール、商談内容と相手を十分検討し、具体的
に、帰国後、どのような効果が期待できるかの精査が必要です。よくあるのは、そうした目的
が希薄なまま、高額な旅費をかけて海外渡航したが、まったく効果がない場合です。数十万円
の支出がかかる海外渡航には、より慎重な事前検討が必要です。
 3)は親会社の事情で渡航した場合、子会社に対しての旅費負担等は必要ありませんが、子
会社支援目的等の場合は、旅費と役務提供対価の請求が必要です。渡航前に目的を明確にして、
その旅費等の真の負担者の検討が必要です。判断の際、「移転価格事務運営要領第3章調査」
の3-9「企業グループ内における役務の提供の取扱い」が参考になります。子会社にとって、
「経済的又は商業的価値を有するものかどうか」により判断して、その価値があるならば、子
会社への請求が必要な場合があります。精算の有無は、決算前に再度確認が必要です。

  海外進出の際、子会社設立を円滑に進めるために、進出国の役人から袖の下を要求されて、
ついつい応じてしまう場合があるかもしれません。税務上、その支出は損金不算入です。従業
員が勝手に賄賂を渡したとしても、それは会社の違法行為です。
 万が一、渡してしまった場合、帳簿上、「手数料/現金預金」で仕訳するかもしれませんが、
全額損金不算入であり、法人税の申告上、使途不明金又は使途秘匿金で処理します。ペナル
ティの加算負担があるので税負担は重くなります。賄賂は違法ですから、一般的には、使途不
明と思いますが、かりに明らかにした場合、調査で追及を受け、修正申告となります。会社の違
法行為を晒すことになりますから、ご注意下さい。

参考:国税庁HPから抜粋
1)「No.2210 やさしい必要経費の知識 」
  http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2009/taxanswer/shotoku/2210.htm
  「公務員に対する賄賂などについては必要経費になりません」
2)「No.2217 公務員に対する贈賄や、外国公務員に対する不正な利益」の供与の取扱い」
   http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2217.htm
   「公務員に対する賄賂(刑法198条)や、不正競争防止法18条により供与が禁止されている、
    国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得ることを目的として、外国公務員等に対
    し金銭その他の利益供与を行った場合のその費用は、必要経費になりません。 なお、不正
    競争防止法18条において供与が禁止されている、外国公務員に対する金銭その他の利益
    供与については、経済産業省のホームページをご覧ください。
 http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/zouwai/index.html
   また、外国公務員への贈賄や不正な利益の供与については、国際的な動向に係る下記情
    報もご参照ください。外国公務員への贈賄に対抗をするための税の措置に関するOECD理
    事会勧告(所法45)
3)「No.5385 公務員に対する贈賄や、外国公務員に対する不正な利益の供与の取扱い」
  http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5385.htm
  「法人が、賄賂(刑法198条)又は不正競争防止法第18条により禁止されている、国際的な
    商取引に関して営業上の不正の利益を得ることを目的として、外国公務員等に対し金銭そ
    の他の利益の供与を行った場合のその費用又は損失の額は損金の額には算入されません。
   なお、不正競争防止法第18条において供与が禁止されている、外国公務員に対する金銭
    その他の利益供与については、経済産業省がQ&A等を公表しています。
 http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/zouwai/index.html                        

 10月27日、国税庁はHPに「移転価格税制に係る文書化制度(FAQ)」を公表しています。
http://www.nta.go.jp/sonota/kokusai/takokuseki/pdf/01.pdf
問97までの質疑回答様式で構成されており、今後の文書化に関する疑問点が網羅されて
います。
 海外進出している中小企業は、規模が小さくてもローカルファイルの作成が必要となります。
問2で適用時期、問10で書類作成義務者判定フロチャート、問11で様式の入手方法、問17
で罰則、問68からはローカルファイルに関する質疑がありますので、一度、目を通しておく必
要があります。

  【共通】
   ○文書化制度の概要、改正の背景・理由(問1~問3)
   ○免除基準・提供義務者(問4~問10)
   ○様式の入手方法(問11)
   ○提供方法(問12~問17)
  【最終親会社等届出事項】
   ○概要(問18)
   ○提供義務者(問19)
   ○代理親会社等の指定の指定(問20~問21)
   ○最終親会社等届出事項への法人番号の記載(問22~問23)
  【国別報告事項】
   ○提供義務者(問24~問28)
   ○構成会社等の範囲(問29~問32)
   ○作成上の留意点(問33~問46)
   ○子会社方式による提供(問47~問54)
   ○情報交換(問55~問57)
  【事業概況報告事項(マスターファイル)】
   ○提供義務者(問58~問59)
   ○免除基準(問60~問61)
   ○作成上の留意点(問62~問64)
   ○その他(問65~問67)
  【独立企業間価格を算定するために必要と認られる書類(ローカルファイル)】
   ○同時文書化義務(問68~問71)
   ○同時文書化義務の免除基準(問72~問78)
   ○作成上の留意点(問79~問88)
   ○提出期限(問88~問95)
   ○その他(問96)
  【その他】
   ○BEPSプロジェクト(問97)

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