海外進出企業の【税務会計】虎の巻

税理士法人名南経営 安田昌泰 公式ブログ

 最近の調査では、海外に関する指摘が多く、5年間遡っての指摘もあります。
  海外子会社の新設直後の事業年度は、特に要注意です。親会社からの短期海外出張で
サポートした場合、役務提供対価の請求もれが多く、国外関連者の寄付金課税の修正申
告を求められがちです。
 調査では、海外出張の日報、海外出向者の契約書、賃金台帳、出張経費精算書の提示
を求められ、海外子会社にとって商業的な価値のあるサポートに対しては、その者の総人
件費から合理的な日当を算出し、サポート日数分の金額と、航空代等の実費に対する精
算の有無を調査され、もれがあれば「寄付金」と調査官に指摘されます。
 その際、以下の点を確認し、過大に修正を求められていないかを確認すべきです。
1)国税庁HP「移転価格事務運営要領第2章調査」8)役務提供」の論点を確認して、株主
  としての立場等で請求する必要のない部分がないかどうか。
 https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/010601/02.htm
2)調査官が主張する請求すべき日数について、土曜、日曜など、実際に稼働しない日数
  が入っていないかどうか。アバウトな総日数で修正を求めていないかどうか。
  例)出張期間1カ月で30日分の修正を求められたときは、実稼働の20日~22日程度が
    妥当なはずです。30日での修正は過大な修正要求では。
3)旅費規程に職制に応じての日当基準があるならば、調査官が修正を促す根拠となる総
    人件費をもとにした金額ではなく、その基準を採択できないかどうか。
  例)日当200ドルなど。200ドルを切っていると修正の可能性は高くなり、たとえば、日当
    100ドルでは見直しが必要です。総人件費からの算定でも200ドルを切る場合は少な
    いと思います。
 5年間の遡りで指摘されると、過去のことであるために、調査官が決めた数字で、詳細を
検討せずに修正に応じるかもしれません。過大修正で損かもしれませんので要注意です。


 最近の調査では、海外に関する指摘が多く、論点は次の通りです。
1)海外子会社への貸付金利の利率の妥当性
2)出向者の較差補填の損金算入額の妥当性
3)海外出張に伴う費用負担の妥当性
4)技術支援に伴う費用の請求
5)海外子会社への取引価格
6)海外子会社への預け在庫、積送品等の計上
7)出向者の赴任直後の賞与で国内勤務分の源泉税納付

 国税庁HP「移転価格事務運営要領第2章調査」によれば、「6)金銭の貸借取引、
8)役務提供、11)調査において検討すべき無形資産、14)費用分担契約、19)国外
関連者に対する寄附金」の論点を確認できます。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/010601/02.htm
 これらの主論点は、調査において、3期にわたり国外関連者に対する寄付金として
の修正を促されることが多々あります。たとえ自主的に、国外関連者寄付金として計
上していても、なんらかの指摘をしてくるのが実情です。時には、5期分まで遡って
の指摘を受けることもありますので要注意です。解釈の違いによる場合もあるので、
税務当局に対しては、指摘事項に関して、根気よく説明することが求められます。

 海外進出により、海外渡航の機会が増え、その支出も高額になりがちですが、海外渡航費で
押さえておきたい留意点は以下の3点です。
 1)法人において全額損金処理が可能かどうか?
 2)支出効果が事前に精査されているかどうか?
 3)海外子会社への請求が必要でないかどうか?
 1)の判断基準は「業務の遂行上必要かどうか」です。法人税法基本通達9-7-6「海外渡航費」
9-7-7「業務の遂行上必要な海外渡航の判定」、9-7-8「同伴者の旅費」、9-7-9「業務の遂行
上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行った場合の旅費」を参考にします。
業務内容により、日数按分等による検討が必要です。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_02.htm
 税務調査でも、この通達に沿った確認が想定されますので、事前検討により、業務起因性の
薄い観光、私的事情に係る旅費等は、立替金で処理して、損金から除外しなければなりません。
これを怠ると、役員の場合では、役員賞与の修正の可能性があります。
 2)は海外渡航前に、渡航目的、現地スケジュール、商談内容と相手を十分検討し、具体的
に、帰国後、どのような効果が期待できるかの精査が必要です。よくあるのは、そうした目的
が希薄なまま、高額な旅費をかけて海外渡航したが、まったく効果がない場合です。数十万円
の支出がかかる海外渡航には、より慎重な事前検討が必要です。
 3)は親会社の事情で渡航した場合、子会社に対しての旅費負担等は必要ありませんが、子
会社支援目的等の場合は、旅費と役務提供対価の請求が必要です。渡航前に目的を明確にして、
その旅費等の真の負担者の検討が必要です。判断の際、「移転価格事務運営要領第3章調査」
の3-9「企業グループ内における役務の提供の取扱い」が参考になります。子会社にとって、
「経済的又は商業的価値を有するものかどうか」により判断して、その価値があるならば、子
会社への請求が必要な場合があります。精算の有無は、決算前に再度確認が必要です。

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